壁打ちとは「話しながら考えをまとめていく対話術」
石川:それは壁打ちっぽいですね。でも確かにそういう場面ってありますよね。答えがなかなかなくて、誰もどうしたらいいかなんて正解がわからなくて。だけど悩んでいるという事実はあって、「じゃあ、どうする?」みたいな(笑)。
秋山:そうそう。で、壁打ちという経験がけっこういっぱいあるんですけれども。石川さんは、なんでこの本を今書こうと思ったんですか? そもそも、今さっき壁打ちの質問をしたらほとんど(の人)が「聞いたことはあるけどやったことがない」と。
石川:そうですね。じゃあ、「僕の考える壁打ちというのはこういう感じです」というところからいってもいいですか?
秋山:そうですね、お願いします。
石川:壁打ちも、別に誰が正しい定義を持っているというわけでもないと思うんですが、一応著者なので、いったん自分が書いた本の中で壁打ちとはこういうものだと言っていますよ、というところから紹介をしたいんですけど。
一言で言うと、「話しながら考えをまとめていく対話術」という言い方をしています。対話はいろんなものがあると思うんですけど、ビジネスの場面で組織の中で行う対話ということで言うと、おそらく雑談、相談、依頼、交渉ぐらいの感じで、後に行くほどちょっと重くなるというか大変になるみたいな。

前のほうに行けば行くほど軽くなるみたいな4段階があるかなと思ったんですね。それぞれ目的と具体性ということで言うと、そもそも雑談に目的も具体性もぜんぜんないです。だけど、なんか相談しようといった時に、意図する目的はあるんでしょうが、何を相談したいのかハッキリわからないケースもあるので、具体性は△かなと。
明確な目的や意図がなくてもいい
石川:やはり「こうなりたい。こうしてほしい」という目的をハッキリさせて、具体性もそれなりにないと依頼もできないので。これがもっと交渉というレベルになっていくと、そこも具体的にしっかりやっていくという。こんなかたちで下に行けば行くほど、目的とか具体性がハッキリしてくるんだと思うんですが。
今回、壁打ちというところで置いたのは、この目的も具体性もちょっと曖昧なところ。この壁打ちをぜひみなさんももっとうまく使うといいと思いますよ、というポイントをいくつか紹介しています。

特徴としては、何か明確に目的や意図がなくても大丈夫です。具体性に欠けて、モヤモヤしたままで話し始めても別にかまいません。もうそこは本当に自然体で話すだけでもいいんです。
こうやって話をしているうちに自然と思考が整理できて、そこで何か新しい気づきが得られる。ただこれもやってみて、ぜんぜんうまくいかない時もあるので「うまくいくこともある」ぐらいの感じで期待しすぎないのがいいかなと思っています。
「壁打ちをやったんだけどぜんぜん成果がありません」と言っても、とはいえ壁打ちをやるのに大して時間も手間もかかりませんから、コスパは悪くないんじゃないかなと思います。
「上司との壁打ち」で準備しすぎる日本人
石川:なので、臨む姿勢としては、例えば相手が上司だから、話しかける時にはこっちもしっかり考えをまとめてからじゃないといけないみたいな、そういうことではなくて、準備とかそんなにしっかり考えないでとりあえず話しちゃいましょうよ。
それですぐに、何か成果が出るとも思わずに、もう話しちゃったほうがよくないですか。その準備を一生懸命がんばるくらいなら、話す回数を増やしたほうがよくないですか。
日本人はどうも真面目なのか、誰かの時間をもらうというと、申し訳ないのでしっかり準備してしっかり調査もやって自分の中で頭を整理しようとするんですけど、それができないから困っているので。僕はそんなのをいったん壁打ちと呼んでいます。