会議やプレゼンで相手を惹きつける「最初の20分」のコツ　言いたいことが伝わり、記憶に残る3つの話し方　

会議やプレゼンの内容も、20分後には半分近く忘れる

鬼頭巧実氏：本日は「忘却曲線」についてお話しします。みなさんは「昨日の会議の内容、あんまり覚えていない」とか、「あのプレゼンって何が言いたかったんだろう」なんていう経験はありませんか。実はこれ、人間の脳の仕組みとして自然な現象なんです。

忘却曲線を提唱したのは、19世紀のドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスです。彼は人間の記憶がどのように失われていくかを研究し、そこでおもしろい事実を発見しました。

彼の実験では、人間の記憶は20分後には約40パーセントを忘れている。1時間後には約56パーセント、1日後には約66パーセントを忘れてしまうという結果です。つまり記憶はじわじわ薄れるのではなく、最初の短時間で一気に忘れてしまうんですね。

これ、なかなか衝撃的ですよね。20分後には半分近く忘れているというのは、会議とかプレゼンの内容は相手の頭の中にほとんど残っていないという可能性があるわけです。

「記憶に残る」話し方の3つのコツ

では、どうすれば忘れられにくい情報にできるのか。そのヒントも実はこの理論の中にあります。まず、プレゼンや会議で話す時のポイントを考えます。忘却曲線によると、記憶が失われるスピードが最も速いのが最初の20分です。つまり最初に最も伝えたい情報を入れることで、相手の記憶に残りやすくなります。最初の20分で印象的なメッセージを伝えるための3つのコツをお伝えします。

強烈な一言で始める

1つ目、「強烈な一言で始める」ことです。スティーブ・ジョブズが「今日はAppleが電話を再発明する日です」と言ったように、最初の一言で「お、何かおもしろそう」と思わせることが大切です。

他には、例えば「もしあなたが○○だったらどうしますか」というセリフで相手に想像させたり、「実はある調査によると……」と始めて、データや事実を示したり。「今日はたった1つのことを覚えて帰ってくださいね」と最初に要点を明確にしたり。

営業の場面であれば「今からこの10分間で御社のコストを30パーセント削減できる方法をお話しします」と最初に言えば、お客さんはそれを聞いてみたいと思うはずです。

ストーリーを使って感情に訴える

2つ目、「ストーリーを使って感情に訴える」です。人間はデータよりもストーリーを記憶しやすいという性質があります。

例えば「私が以前○○に挑戦した時のことです」というセリフから始めたり、「あるお客さまがこのサービスを使ってこんな変化を経験しました。それは……」と言って始めるとか。「実は私自身もこの問題で悩んでいました。でも、○○をしたら……」、このようにストーリーを交えることで、相手の感情を引き込み、より印象に残るプレゼンができます。

繰り返し強調する

3つ目、「繰り返し強調する」です。忘却曲線の研究では、何度も繰り返される情報ほど記憶に残ることがわかっています。言い換えると、繰り返さないと記憶に残らないと言えるんですね。

例えばプレゼンで「今日一番伝えたいのは○○です」と言ったのであれば、スライドの途中で再度強調する。違う角度でもう1度説明する。最後の締めくくりでも繰り返す。こうすることで、相手の記憶に残りやすくなります。

「最初の20分間」の使い方を工夫する

実は私も来週、大勢の前でプレゼンをする機会があります。今はグロービス経営大学院の大阪校に通っているので、その学生企画の1つで、心理学の内容を取り上げたプレゼンを1時間行います。

プレゼンを作っていると、自分は何を言いたいかや、スライドのデザインにフォーカスしがちなんですが、「どうやったら伝わるか」の視点は本当に大切ですよね。

なので、この忘却曲線の理論を意識して、最初の20分で一番伝えたいことをしっかり印象づける。特に「強烈な一言」「ストーリー」「リピート」。この3つを意識して構成をあらためて見直しているところです。

ふだんの会話でもそうですけども、話の最初に何を言うかで、その後の印象や記憶の残り方って変わってきますよね。もしみなさんも大事なプレゼンや会議があれば、ぜひ最初の20分間の使い方、そして「強烈な一言」「ストーリー」「リピート」。この3つを意識してみてください。

それだけで相手の記憶に残る確率がグッと上がり、あなたの伝えたいことがもっと伝わるようになると思います。