企業のマーケティング支援を行う株式会社Digital Arrow Partnersと株式会社SAKIYOMIの共催セミナー。今回はDigital Arrow Partnersの小畑匡平氏が登壇し、「リソースが限られる中で、何から取り組むべきか」に悩むマーケ担当者に向けて、60個のBtoB施策から“刺さる一手”を見極める視点と、やりきる組織の作り方を語りました。
BtoBマーケの“やることが多すぎる問題”をどう乗り越えるか
小畑匡平氏:僕からは、「BtoBマーケで失敗しないためのマインドや組織構造」といったテーマでお話しします。
あらためて自己紹介をさせていただくと、Digital Arrow Partnersの小畑と申します。

もともとは、大学在学中に起業を志して中退し、2015年ごろに仮想通貨やVR関連の事業を立ち上げました。その後、現在社員数が約500名ほどいる今の会社に、まだ12〜13人ほどしかいなかったスタートアップ期に入社しています。
これまで広告代理店事業の中で、自社のBtoBマーケにも取り組んできましたし、大手企業からスタートアップ企業まで、さまざまなクライアントのBtoBマーケティング支援も行ってきました。今日はその中でも、現在僕が新規事業として取り組んでいるサービスのBtoBマーケについてお話しします。
今取り組んでいる事業は、フリーランスのマーケターと企業をつなぐマッチングサービスです。いわゆる、リクルートさんが展開している「リボンモデル」に近い構造で、求職者側にはtoCマーケティング、企業側にはフリーランスを活用したい企業に対してのBtoBマーケティングを展開しています。本日はこのうち、BtoBマーケの側面に絞ってお話しします。
自社で行っているBtoBマーケとしては、例えばLP(ランディングページ)を制作して広告を運用したり、ホワイトペーパーを作成してSNSやダウンロードサイトを通じてリードを獲得したりしています。また、今日のようなウェビナーやセミナーでの登壇も、リード獲得の施策として実施しています。
先ほど
田中さんから「BtoBマーケの施策は60個ある」という話がありました。今日のセミナーを聞きながら、あらためて多くの方が「BtoBマーケは、やることが多すぎる」と感じられたのではないでしょうか。たぶん、画面の前でうなずいている方も多いと思います。
そこで今日は、僕自身の失敗経験なども交えながら、「どうすればBtoBマーケをやりきれるのか?」という視点で、お話しできればと考えています。
本日のアジェンダは大きく4点で、前半では「どうやってやるべきことを決めるのか」、後半では「どうすればやりきれる組織をつくれるのか」という観点から進めていきます。
ペルソナの解像度を高めるコツ
1つ目のテーマは、「施策に入る前に解像度を上げよう」という点です。これは非常によくある失敗例なのですが、顧客の解像度が低いために、刺さる施策がまったく見つからないというケースがあります。
例えばSAKIYOMIさんの例で言えば、YouTubeの運営やイベント登壇といった施策が行われていましたが、それがなぜ機能したかというと、「どういうクライアントに支援しやすいのか」「SAKIYOMIさんに依頼したいと思ってくれる顧客は、どんな課題やペインを抱えているのか」をしっかりと理解していたからこそ、BtoBマーケ施策がうまくいったのだと思います。
このように、顧客の解像度を高めることは非常に重要です。よくあるケースとして、「御社のサービスのペルソナってどういう方ですか?」と質問した際に、返ってくる回答がぼんやりしていることがあります。
実際、以前の僕もそうだったのですが、例えば「都内のIT系の会社に属する、SMB領域の部長職で決裁権を持っている人。マーケターを採用しようと考えているようなニーズがある」といった具合の答えになってしまうことがあります。

ですが、これはペルソナとは言えません。もし、自社のペルソナを考えた時に、こういった抽象的な情報しか出てこないのであれば、それはかなり危険な状態です。あらためて、ペルソナの解像度を高めるところから着手すべきだと思います。
ペルソナとは、例えば「都内のIT系ベンチャーで、〇〇領域の事業を担当している部長職である」といった具体性を持たせた上で、「どういった背景からそのニーズが生まれているのか」「その人が個人として抱えている課題は何か」といった要素まで落とし込んで設計する必要があります。

特に注意すべきなのは、会社としての課題やペインと、決裁権を持つ個人の課題やペインは必ずしも一致しないという点です。
例えば、うちの会社全体としては、「書類選考が面倒くさい」といった課題が直接的に出てくることはあまりありません。ですが、僕個人として話をした場合、「書類選考って面倒くさいな」と感じることは正直あります。実際、そうした声は他の方からもよく出てきます。
だからこそ、顧客がどこで「面倒くさい」と感じているのか、どんな課題を持っていて、どんなエピソードがあるのかまで理解できると、「では、そうした顧客に刺さるYouTubeコンテンツはどんな内容なのか」「その人たちが参加したくなるようなイベントとはどんなものなのか」といったことが、ぐっと見えてくるようになります。
まずは、自社でBtoBマーケの対象と考えているペルソナが、いまどんな状態なのか。ここを一度しっかり整理して考えてみていただければと思います。
60個のBtoB施策から「刺さる一手」を見極める
そして、ペルソナの解像度が上がっていないと、どうなってしまうのか。業界や業種ごとに「この業界にはこんなペインがある」「この職種の人はこういったことを面倒くさいと感じる」といった想定がないまま進めてしまうと、どんな施策も結果として凡庸になってしまいます。
BtoBマーケの施策は60個ある、という話がありましたが、単にYouTubeをやる、オウンドメディアを立ち上げる、事例記事をつくるだけでは刺さるものにはなりません。誰にも刺さらない、汎用的すぎるコンテンツになってしまう可能性があります。
例えば、テレビCMで化粧品を売る場合、「これは老若男女すべての人におすすめの化粧品です」といったアプローチは基本取りませんよね。通常は「20代女性で乾燥肌・敏感肌の方におすすめです」といったかたちで、具体的なターゲットを定めた訴求を行うはずです。
そうすると、「これは自分にぴったりだ」と思ってもらえて、購買につながっていく。BtoBマーケでもまったく同じで、業界ごと、業種ごとに課題が異なりますし、さらに決裁権を持っているのか、あるいは上申する立場なのかによっても、抱えているニーズやペインは変わってきます。
だからこそ、ペルソナの解像度を上げるという作業は、施策の精度を上げるうえで非常に重要になってきます。
「60個の施策すべてをやりきれない」という話でいえば、たとえ受注に近いところから着手するにしても、限られたリソースの中ですべての施策を実行するのは現実的に不可能です。
だからこそ、まずは「どの施策が一番刺さりそうか」を見極める必要があります。そのためには、やはりペルソナの解像度を上げたうえで、「このチャネル、このメッセージ、この形式なら届くのではないか」という仮説を立てて、優先順位をつけて取り組むべきだと思います。
そういう意味でも、あらためて考えるべき問いとして、「あなたの事業は、誰の、どんな課題を、どのように解決するサービスですか?」という点を明確に言語化することが大切です。そして、その問いに対する答えを、60個の施策それぞれに反映させていくことができれば、より成果につながるマーケ施策が打てるようになると考えています。