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営業力とリベラルアーツの関係について(全1記事)

ひたすら「数字を上げる」ことに限界を感じている人への処方箋 「ビジネスパーソンとしての賞味期限」を伸ばすために必要なこと

『無敗営業』をはじめ数々のビジネス書を出版し、東京都千代田区で「かぴばら書店」という本屋も運営する高橋浩一氏が、営業力を人生や仕事に活かすコツを配信するVoicyチャンネル「毎日が楽しくなる営業力のヒント」。今回は、「営業力」が全人類にとって必要な理由を語ります。

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「営業力」が全人類にとって必要な理由

高橋浩一氏:今日は「営業力とリベラルアーツの関係」ということでお話しをしていきたいと思います。ふだん僕は、仕事で営業の方々に対するご支援をやっているわけなんですけれども。「営業力」をもう少し広く捉えると、世の中全体の人たちにとっても必要不可欠な力じゃないかと思っております。

そんな僕が、どういうふうに営業とリベラルアーツを結び付けているかについて、ちょっと考えてみたいと思います。

いつもは本を1冊ご紹介しながら、そこにひも付けたお話をするスタイルを取っているんですけども、試験的にこのままフリーハンドでお話ししてみたいと思います。

このVoicyの番組のタイトルの中に、「営業力」という言葉がありつつも、毎日僕がお話ししていることは、「お客さま相手の商談をどうやるか」ということよりは、もう少し全般的なことをお話ししています。

「それって、どういうふうに関係しているの?」という疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。僕は、まず「営業力」とは「お客さまに対して受注を獲得する」とか、「商品やサービスを売る」ということだけを指しているのではないと思っています。

もうちょっと広く、「人に気持ち良く動いてもらうことで、何らかの目的なりゴールなりを達成する」ということじゃないかなと思うわけです。こう考えたら、全人類にとって必要な力と言ってもいいぐらいだと思うんですよね。

現に、本当に営業職としても成果を上げていらっしゃるような方は、単純にお客さまから受注をいただけるだけではなくて、やはり人としての懐の深さだったり、見識の広さだったり、人間的な魅力で人を惹き付けていると、日常の中で感じるわけです。そうすると、人に対する根本的な理解がすごく大事だと思うんですよね。

「ビジネスパーソンとしての賞味期限」を意識する

人を動かすための心理学みたいなものは、世の中にいっぱいあります。僕自身も、仕事の中で必要に迫られて、そういうことを学んだりすることもあります。でも、根本のところでは人間に対するすごく深い理解が大事だと思うんですね。

その深い理解が、「ああ、そうか。人ってこういうものなんだ」とか、「こういうふうに言うと、人が動いてくれるんだ」ということで止めてしまうと、あまりにももったいない。

ただ、実際に僕自身も、重要な商談においてお客さまに動いてもらうために、「ちょっとここのポイントに気をつけよう」と意識することはもちろんあります。

でも、何でもそれで済ませてしまうと、やはりどこかで限界が来るわけですね。人間は他人から理解できる部分なんて一握りしかありませんから、やはり予想外のところでつまずくわけです。

そんなわけで、やはりこのリベラルアーツに関する見識を深めたり広げたりすることは、いろんな状況や相手にして対応ができる、受け口の広さにすごく関係してくるんだろうなと思っています。

「人間ってどんなふうにできているんだろうか?」と考えた時に 生物学的な観点や、中身の部分、人と人とが関わり合って、社会とか歴史がどう動いていくのかという視点もあると思います。そういういろんな角度を知っておくことによって、その場しのぎじゃないやり方ができるんじゃないかと思います。

そこで僕が意識しているのは、「ビジネスパーソンとしての賞味期限」です。どういうことかと言うと、やはり元気で活き活きと働くことができ、かつそれが、きちんと世の中の人の役に立っている。

そしてそれが、健全なかたちでの報酬やリターンとして返ってきて、またさらに大きく世の中の役立つための再投資ができる。このサイクルがしっかりと回るということで、この賞味期限をどのくらいまで長くできるかを、実はずっと意識しています。

「数字が増えていく喜び」だけでがんばれるタイプではなかった

いつ頃から意識をしているかと言うと、僕自身は25歳で起業して、営業担当の役員から組織や事業全体を見る立場になり、今ではまた会社を作って、代表として全体を見ておりますけれども。

30代に入り始めた時は、毎年倍々のスピードで大きくなっていくベンチャー企業の中で、どうやって売上を増やしていくかということばかりを毎日考えていた時期でした。

朝は昨日の(売り上げの)数字をチェックし、思うようにいっていないとなったら、みんなをどんなふうに叱咤激励しようかと考え、誰よりも早くオフィスに来て、準備をして、朝礼をする。営業チームは当時数十人いましたので、毎朝みんなに話をします。

それで1日が始まり、同行へ行ったり、メンバーにいろいろ教えたりします。でも、結局とにかく売上が増えるかどうかのところをひたすら見ていき、かなりチャレンジングな目標に向けて組織をリードしていく。これはこれで、やはりすごく充実した期間でしたし、すごくいい経験をさせてもらったなと思います。

一方で、「これはいつまで続くんだろうか」と思う自分もやはりいたわけです。もちろん、どんどん会社を大きくしていくことが性に合っていますよという方もいると思うんですけど。

僕はどっちかと言うと、ある意味途中で必要に迫られてビジネスを拡大する役割を担ったわけで、根本的に、ただ数字が増えていくことだけに喜べるタイプの人間ではなかったと、途中で気づいたんですね。

繰り返しになりますが、人にはいろんなタイプの方がいますので、「数字が増えていくのが好きなんだ」という方も当然いるでしょうし、そうでない方もいるでしょうと。そうなった時に、「じゃあ、数字が増えていく喜びということだけで、僕はこの先、どのくらいやっていけるんだろうか?」ということをチラッと思ったわけです。

リーダーやマネージャーは、自分自身を見つめ直していかないと限界が来る

ちょうどその時、人を増やし続けてもなかなか思うように売上が伸びないということを経験して、そこから本格的に人とか組織をしっかりと作っていくことを始めました。

ある時期までは、「自分が商談に同行して決めにいかないと、数字が上がらないんじゃないか」と思っていたのが、実は現場から遠ざかって人に任せれば任せるほど、どんどん数字が伸びていくということを経験し、「やはり組織の力ってすごいな」と思ったんですね。

そこで人とか組織に対してすごく知的好奇心というか興味が湧いて、いろいろ勉強するようになりました。そうすると、リーダーシップやマネジメントについて学び始めるんですけども、これに関するセオリーっていっぱいあるわけですよね。

でもそういった表面的なところだけを学んでいても、どうにも手応えがない。リーダーとかマネジャーという立場でやっていくには、自分自身をずっと見つめ直していかないと限界が来るなと感じたわけです。

そこで今から10年前ぐらいに、日本アスペン研究所というリベラルアーツの総本山みたいな、世界のリーダーを育成する機関のセミナーに参加しました。いわゆる岩波文庫的な古典が何十冊もある中で先生方が厳選を重ねたテキストを読み込んで、いわゆる大手企業の取締役のエグゼクティブの方々と、1週間閉じこもって対話をする経験がありまして。

そこで自分なりの見識がすごく広がっていく感覚があり、「ああ、自分はなんで今までこういうことを知らなかったんだろう」とすごく思ったわけですね。

自分の世界を広げるリベラルアーツの価値

ただ、本当に自分にとって幸せな体験だったなと思ったのは、当時50代半ばぐらいの、いわば従業員が何千人とか何万人といる会社のトップにいらっしゃる方々との関わりを持たせていただいたことによって、そういう人たちは、どういう視点で物を見ているのかに触れてられたこと。そしてその方々との共通言語となるのがリベラルアーツ的なもの(だったんです。)

もちろんそれ以外にもいろいろあるんですけれども、やはり根本的にそういう人としての土台を築いていくことが、これからすごく大事なんだなと思いました。今僕は45歳なんですが、今から10年前にそういう世界に触れて、当時も10年後についてのなんとなくのイメージは描いていたのですが。

もし当初どおりの、「とにかく会社の数字を伸ばしていくんだ」ということだけでいったら、自分はそういうことに向いている人間ではなかったというのが後になってわかるので、どこかで限界を迎えていただろうなと思います。

ということで、やはり自分の世界を広げるという意味で、リベラルアーツはすごく大きかったなと、今になって思います。

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