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マッキンゼー流問題解決の技術 「仮説」と「打ち手」の作り方(全3記事)

なぜ「場当たり的」なタスク処理になるのか? マッキンゼー流、「優先順位づけ」のポイント

次世代の変革をリードする20~30代のハイクラス向けキャリアアップ支援サービス「MELIUS(メリウス)」のマネジメントセミナーに、元マッキンゼーで現在はMELIUS事業責任者を務める田中直道氏が登壇。実務の現場で直面する優先順位づけの2つの壁や、優先順位をつける上で考慮すべき2軸などを語りました。

打ち手の作るための「課題の優先順位づけ」

田中直道氏(以下、田中):よろしくお願いします。田中です。現在、「MELIUS」というハイクラス向けの人材紹介事業を立ち上げ、責任者をしています。

まずは簡単に自己紹介をさせていただきます。この事業は2023年5月頃に立ち上げたサービスです。私は、この事業を始める前はマッキンゼーというコンサルティングファームに新卒で入り、約6年間コンサルタントとして活動していました。その間、1年間だけ小売業のイオンに転籍し、事業会社も経験しました。結果的に、これまでのキャリアの8割はコンサルティング業務に携わってきました。

今回の「マッキンゼー流マネジメントセミナー」は4回目になります。対象者は、現在もしくは将来的に管理職としてマネジメントに関わる方々です。このセミナーでは、日々の業務で考えるべきポイントや使うべきテクニックをお伝えしています。

今回のタイトルは「『仮説』と『打ち手』の作り方」です。このテーマについて、教科書的にならないよう具体例を交えながら、みなさんにイメージしやすい説明を心がけたいと思います。

現在マネジメントされている方には、日々の業務をイメージしながら聞いていただければと思います。また、これから中間管理職を目指す方には、自分がメンバーを持った場合を想像しながら聞いていただければと思います。

このセミナーは、みなさんの日々の業務で実践するための準備として位置づけています。「わかった」で終わらせず、「やってみてできた」という成果にまでつなげていただきたいです。今日の内容を仕事で活かしていただき、実務の中で実際に試していただけると嬉しいです。

では、これまでお話ししてきた内容と、これから取り上げるテーマについて説明します。いわゆる問題解決のプロセスの一連の流れですが、スライドの矢羽根をご覧ください。



目標設定の下に「現状把握」「課題抽出」「課題の優先順位づけ」という3つが並んでいます。

今日のタイトルは「打ち手の作り方」となっていますが、その前提として重要な「課題の優先順位づけ」についてお話しさせていただきます。この部分が、後の打ち手の具体的な創出に直結するため、優先順位づけの重要性をしっかり押さえていただければと思います。

また、今日のセッションでは、私が一方的にお話しするだけでなく、みなさんにも作業をしていただく時間を設けています。可能であれば、紙とペンを用意していただき、手を動かしながら進めていただけると良いと思います。

実務の現場で直面する優先順位づけの2つの壁

司会者: 先月の第3回ウェビナーでは、課題解決の基礎として「現状把握」のコツや「課題抽出」の手法、特に課題ツリーについて、マッキンゼーでのご経験を交えてご説明いただきました。

ただ、事後アンケートでは「課題ツリーを書いた後、その先がうまく進まない」といった声も寄せられました。今日は、問題を分解し課題を抽出した後の具体的な進め方について教えていただけますか?

田中: そうですね、ご質問いただいた方がおっしゃるように、課題ツリーを書いた後でうまくいかないというケースは多いです。今、画面に投映しているのがその課題ツリーで、前回お話しした内容をまとめたものになります。



実際に現場で起きている問題を細かく分解していった結果が「課題」です。この課題をしっかり網羅的に洗い出すために、「課題ツリー」を作成するプロセスを前回ご紹介しました。ただ、その後のステップでつまずくケースがあるという話ですね。

大きく分けて2つの壁があると考えています。1つ目は、洗い出した課題に対して具体的な打ち手やアイデアが思いつかない場合です。この図で言えば、一番右側に7つの課題が出ていますが、それぞれにどう対処するかが明確でないという状況です。

2つ目は、課題が多すぎて、どこから手をつけるべきか、どういう順番で解決すれば良いのかがわからなくなる場合です。おそらく、実務の現場では後者に悩まれる方が多いのではないかと思います。課題にじっくり向き合えば解決策は見えてくるのですが、忙しい業務の中で期日に追われると、場当たり的にタスクを処理してしまい、結局やるべきことが十分にこなせなかった、という状況が起きやすいように感じます。

そこで、本日のテーマである「課題の優先順位づけ」が重要になります。効率的・効果的に動ける組織と、そうでない組織の違いは、この優先順位づけがきちんとできているかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。今日は、この優先順位づけについて、具体的な方法や考え方をお伝えしていきたいと思います。

優先順位をつける上で考慮すべき2軸

田中:では、「課題の優先順位づけ」の大枠についてお話しします。先ほどのツリーで出てきた7つの課題を、どの順番で解決していくべきかを判断する方法です。この優先順位づけは、インパクトとフィージビリティの2軸で評価します。



インパクトとは、その課題を解決した際に得られる効果、つまり影響の大きさのことです。一方、フィージビリティとは、実現性や実行可能性のことを指します。この2つの観点で課題を評価し、優先順位を決めていきます。

次に、インパクトをどのように評価するかについて具体的に説明します。インパクトを考える際には、3つのポイントを意識する必要があります。



まず、課題をシンプルな論理構造に分解することが重要です。そして、精緻な計算をするのではなく、大まかな数字でインパクトを見積もります。さらに、インパクトが最大化する可能性を意識することも大切です。このように、課題を解決した場合の影響をざっくりと把握することで、優先順位づけがしやすくなります。

優先順位づけの目的は、何から手をつけるべきかを判断することです。そのため、正確な計算にこだわるのではなく、おおよその見積もりが重要になります。例えば、ある課題を解決すると1億円のインパクトがあるのか、1,000万円なのか、それとも10万円程度なのか。このように規模感を大まかに把握することで、優先順位が大きく変わります。

具体的には、シンプルな式を立てて、その中に大まかな数字を当てはめていきます。最初に、課題をロジックに基づいて構造的に分解し、その後に式の各要素に適切な数値を置きながら、全体のインパクトをざっくり見積もるという流れです。こうしてインパクトを評価することで、課題解決における優先順位づけがより明確になるはずです。

効果を最大化するために大まかな全体感を掴む

田中:次に、「Maxを意識する」というポイントについて説明します。これは、インパクトを推定する際に重要な考え方で、現時点ではフィージビリティの要素をいったん脇に置いて考えるということです。現実的な制約を気にせず、「最大でどれくらいのインパクトが期待できるのか」をフェアに比較するための視点を持つことがポイントです。

例えば、ある市場に参入し施策を実施する場合、その市場の規模を大まかに把握することが重要です。詳細に調べれば、その市場内でお客さまになり得るセグメントと、そうでないセグメントに分かれるかもしれませんが、この段階ではそうした細かい分け方を考えずに、「その市場全体がどれくらいの規模なのか」を把握することに集中します。これが「Maxを意識する」という考え方です。

具体的には、その市場が100億円規模の市場なのか、それとも1億円規模なのかを把握することで、大まかな全体感を掴むということです。この時点ではフィージビリティ、つまり「現実的にどれくらい実現可能か」という視点は考えず、あくまで「最大限に期待できるインパクト」を比較することを優先してください。このアプローチを取ることで、課題や施策の優先順位をより正確に判断できるようになります。

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