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『ちょっと差がつくビジネスサプリ』。今回は、従業員の対応よりも重視したい視点についてお伝えします。
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こちら 顧客に「謝る」・「謝らない」の判断基準
加藤想氏:最近、従業員に対する要求が過度に高い、いわゆるクレーマー被害のニュースが多くあります。中でも、「謝罪をしっかりしていない」ということがトリガーになって、口論に発展するケースがあるようです。
今日は、ホテルサービスを利用した私の知り合いの事例を取り上げて、従業員の視点で、顧客に謝る基準について考えていきます。先日、知人から「ホテルに泊まって疑問に思う対応があった」というお話を受けました。ホテルの施設自体は良かったんですが、スタッフの対応にツッコミどころがあったということです。
自分に非がない場合はどうする?
話の内容はこうです。子どもと奥さんと3人で部屋を借りたが、子どもが予約の中に入っていなかった。そしてオプションでベッドを1つ追加したが、部屋に付いていなかった。
そこでフロントに電話をすると、(ベッドの追加は)高層階のプランなので、今いる低層階の部屋のプランには付いていないこと。ベッド付きの部屋へ移動できるのか確認をすると、それはできるが、スタッフの稼働の関係でいつになるかわからない。もし外に出る場合は、早めに連絡をするようにと伝えられました。
しばらく部屋で待っていても、なかなか連絡が来ないので、しびれを切らして「もうそろそろ外出します」と電話すると、「あなたが外出している間に、今いる部屋のベッドを設置しますね」と連絡があったというお話です。知人はホテルの対応に対して、けっこう怒っていました。
私がこの話で感じたことは、次の2つになります。1つ目は、顧客に謝るほうがいいのか、謝らないほうがいいのかの基準についてです。個人的には、何でもかんでもすぐに謝る人よりも、顧客に媚びることなく、しっかり基準を持って対応するビジネスパーソンのほうが信頼できます。
今回の対応では、「謝る」ということはされなかったわけですが、何をもって謝ったほうがいいのでしょうか? 個人的には、自分の会社に非がある場合は謝るべきだと思います。ただ、自分の会社に非がない場合でも、顧客に寄り添う姿勢はあったほうがいいと思います。
顧客対応よりも大事な視点
前職の通信会社にいた時に、コールセンターの現場を見ていました。問い合わせの多くは、「インターネットにつながらない」という内容で、ほとんどは顧客側の設定ミスが原因でした。
それでもオペレーターの方は、電話の冒頭に必ず、「ご不便をおかけし、恐れ入ります。これから原因を調査してまいります」と言っていました。「申し訳ございません」と謝るのではなく、「恐れ入ります」としっかり寄り添う姿勢を見せるところに、顧客対応の奥深さを感じました。
2つ目は、トラブルの発生要因を考えないといけないということです。例えば、今回のフロントとのやりとりの後、口コミで「接客態度が悪い」という悪口を書かれた場合。あなたがホテルの支配人だった場合、何をするでしょうか? わかりやすいのは、接客指導を行うことでしょう。
ただ、重要なのは、このやりとりが発生した根本的な原因を明らかにすることだと思います。今回この方は、外部の予約サイトからホテルを予約したそうです。それが原因なのかどうかはわかりませんが、それによって子どもの予約が人数から漏れていたり、オプションの追加のベッドが付いていなかったりした可能性もあります。
もしかすると、外部サイトとのシステム連携がうまくいっていないことが根本的な原因かもしれません。もしそうだとしたら、システム連携を改善するほうが、この顧客対応を改めるよりも、解決策につながる可能性もあります。
なるべく従業員と顧客とのやりとり自体を少なくする
以前お薦めした『おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係』という本でも記載があったのですが、顧客は「最小限のコミュニケーションで済ませたい欲求」があるそうです。なるべく従業員と顧客とのやりとり自体がなくなるような工夫をしたほうがいいかもしれません。
今日は、ホテルでの顧客対応から、謝る基準、そしてトラブルの発生要因について話をしました。悪い口コミは、いい口コミの何倍も拡散されやすい傾向があるようです。コミュニケーションが発生する際に、意識してもらえるとうれしいです。