2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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高橋浩一氏:こんにちは。本日はご参加いただきまして、ありがとうございます。TORiX株式会社の高橋浩一と申します。これから「究極の質問力を身につける初めの3歩」というテーマでセミナーをさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
まずは簡単な自己紹介をさせていただきます。営業の研修やコンサルティングをやっているTORiX株式会社の代表を務めております、高橋浩一と申します。私は新卒で外資系のコンサルティング会社に2年半ほど勤務して、2003年、25歳の時にアルー株式会社という人材教育のベンチャー企業の創業から6年間役員を務めておりました。
(アルー株式会社は)3人で始めた会社なんですが、6年経った頃には従業員70人ほどになりまして、中でも営業の仕組み化、体系化、組織化、要するに誰か特定の人が売れるだけじゃなくて、みんなが売れるようになるにはどうしたら良いかということは非常に重要だなと感じました。
その中で、営業の体系化をしっかりと突き詰めていこうということで取り組みました。今では現在の会社で、いろんな企業さまに対して営業のコンサルティングをさせていただいたり、あるいは本を書いたり、講演でお話しする機会をいただいております。
特に、今日のテーマである「質問力」というのは、営業スキルの中でも最も根幹と言えるスキルの1つじゃないかなと思いますので、このスキルの概要、あるいは身につけ方について、みなさんと深めていけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
では、本日のテーマの質問力について、まずはみなさんと共有したい問題意識です。質問力とは簡単に言うけれども、質問することってけっこう難しいよね、ということなんですよね。
例えばこちらは、『無敗営業』や『営業の科学』の本の中でも取り入れている、お客さま300人の調査です。「要件のヒアリングが不十分、情報の把握ができていない」と感じた営業担当者は、何をヒアリングできていなかったのでしょうか?
ざっくり言うと、質問してくれないことへの不満ですね。私はこの回答を見てかなりびっくりしました。と言いますのは、ちょっとこの数字を見ていただきたいんです。65.6パーセントや52.2パーセントって、もう半数を超えてるじゃないですか。こんなに多くの回答が集まるって、よっぽどめずらしいことだと思うんですよ。
でも、よくよく見てみると、「いや。こんなのって、普通は当たり前のように商談の時に聞くでしょ」と思いませんか? ということは、やっぱりわかってはいるけれども、お客さまからすると「ぜんぜん質問してくれてないじゃないか」と思われてしまう。すなわちギャップが生まれてるんです。
このギャップについてまずは考えていきたいんですが。当然そのギャップを乗り越えるべく、社内でOJTにて指導されるわけなんです。若手の方からは「やっぱりお客さまに質問するのは難しい」というお悩みを聞きますし、マネージャーの方からは「そういう質問ができる営業を育てるのは難しい」という声を聞きます。
じゃあ、まずはこのOJTの壁をどう乗り越えるのかということを、1歩目としてお話ししていきたいと思います。こちらに2人を左右に並べております。
左側が、がんばっていて成果が上がり、仕事も楽しそうな若手Aさん。右側が、がんばっているが成果が上がらず、悩んでいる若手Bさん。お2人とも若手の方なんですが、当社がご支援してきた企業さまの中で、年間300人ほどの新卒を採用されて、1ヶ月間当社でお預かりして育成・トレーニングをさせていただく企業さまがございました。
やっぱり気になるのは、この300人の成長ですよね。先方から相談されたのが、「やっぱり伸びる人もいるけど、伸びない人もいる。この違いがどこにあるのかを外部のプロの目から見てほしい」と言われたんです。
そこで私が直接お伺いしまして、ほぼ営業同行のようなかたちで1日ずつご一緒させていただきました。それがどんな感じだったかというと、イメージとしてはいわゆるルート型営業と言いますか、街中の事務所やお店に飛び込み営業的な活動をされている方々です。
当然、怖いお客さま、厳しいお客さまがいらっしゃいます。こんなお客さまに出会った時に、成果が出て楽しそうに仕事をしているAさんは、怖いお客さまや厳しいお客さまでも、ニーズがアリと見込めるんだったら、「行くタイミングを間違えてしまったので、次はタイミングを変えてアプローチを」と考えるわけです。
どういうことかというと、怖いお客さまや厳しいお客さまって、本当に「コラァ!」とか、喧嘩腰でいきなり言ってこられる方いらっしゃるんですよ。怖いじゃないですか。なんですが、「いや、ここはもう明らかにニーズがあるんだ」と見込んだら、タイミングを変えてアプローチをしようということなんです。
同じようなお客さまに遭遇したBさんはこう考えていました。「行く相手を間違えてしまったので、次はもっと優しいお客さんにアプローチしよう」。
表立ったセリフでは言わないんですが、要するにニーズがあるかどうかじゃなくて、こちらへの対応が優しいかどうかで判断されてるわけです。当然ながら、やっぱり左側のAさんのほうが成果は出ますよね。
さらに途中では、忙しいお客さまもいらっしゃいました。Aさんは忙しいお客さまに遭遇すると、「お客さまは忙しいからこそ、どんな一言を投げかけるか、いろいろと工夫してみよう」と、あれこれ言い方を変えるわけですよ。
なんですが、Bさんは「お客さまは忙しいから、あれこれ考えてもムダなので、とにかく簡潔に話そう」ということで、本当に同じセリフを繰り返し違うお客さまにされていたわけです。
さぁ、どうでしょうか。当然ながらAさんは売れそうだけど、Bさんはちょっと売れなさそうですよね。なんですが、AさんとBさんは最初の入社時1ヶ月においては同レベルだったわけです。
研修も全部ロープレしてスコアを測りながら、同じようなレベルで卒業できるようにトレーニングをやりましたから、配属直後は同じような水準だった。ただ、何が違ったかと言うと、思い込みなんですよね。
要するに、Aさんはちゃんと自分の中に成果を出すための考え方があって、それに対して健全にやってるわけなんですが、Bさんは「怖いお客さまはニーズの有無じゃなくて、とにかく行くべきじゃないんだ」と、勝手に脳内変換してしまう。
お客さまの忙しさについても、忙しいからこそ工夫すべきなのに、「忙しいから工夫してもムダだ」と脳内変換してしまう。この「脳内変換」というやつが非常に難敵です。
私は、あんまり小難しいことをあれこれ言うのは好きじゃないんですが、例外として絶対にこれだけは押さえておいたほうがいいキーワードが1つあります。心理学の用語で「認知的不協和」というものです。
認知的不協和というのはざっくり言うと、相矛盾する2つの思いでモヤモヤすると、人はその状態に耐えられませんから、なんとか自分を落ち着かせようとするということなんです。
例えば「ダイエットは明日から」ってありますよね。体に悪いから我慢しなきゃと思っても、食べたいと思ったらモヤモヤしますね。「我慢しなきゃ」と「食べたい」は反対なので、相反するわけです。
そうするとどうなるかというと、自分を正当化して落ち着かせる手段というのは、「ダイエットは継続する。ただし明日からだ」というふうにすると、目の前の誘惑に負けても自分を正当化できるわけですよね。
営業に苦しむ若手の例としては、「一応このお客さまはリストには入っているんだけど、アプローチしたら機嫌が悪かったということは、このお客さまにはニーズがないんだ」と思ったほうが、自分を正当化して落ち着かせられるじゃないですか。ここは大事なので注目していただきたいです。
ニーズがあるかどうかについて、機嫌の良さ・悪さという、関係のない情報から勝手に脳内変換して、そしてこのお客さまに踏み込んでいかない自分を正当化するということなんです。これが、成果が出ていない営業の方の頭の中で起こっていることです。
この認知的不協和の性質を少し見ていきたいと思いますが、情報が追加されると結論が変わるという性質が1つあります。
「ダイエットは明日から」と思っていても、健康診断のスコアが衝撃的に悪かった。こういう新しい情報を突きつけられたら、「やっぱり節制しようか」となりますよね。この突きつけられる情報によって結論が変わります。
また、これを営業の場面に例を置き換えると、リストにあるお客さまなんだけど機嫌が悪かったら、「リストが間違っているんじゃないか」と思ったほうが自分を正当化できますよね。なんですが、このお客さまが過去に受注しているケースがあったら、「そうか、ニーズはあるんだ。じゃあアプローチを工夫しよう」となるわけじゃないですか。
どんな情報を付け加えるのかはすごく大切なんですが、上司の主観に基づいて「自分の若い頃はこうだった」とか言われても、「いや、時代がちょっと違いすぎますよ」というふうになってしまったら、耳に入ってこないですよね。
さらには「いや、君のスタンスが悪いんだ」という情報を突きつけられても、自分を正当化しようとしたら「上司が間違ってるんだ」というふうになるじゃないですか。「量がいつしか質に変わる」と言われてしまうと、「いや、それはそうなんだけど、自分は向いてないのに営業やらされてるんじゃないかな?」みたいに考えるほうが、自分を正当化しやすいわけです。
ですから、どういう情報を追加するかはとても大切なんですが、営業現場においては上司の主観に基づく説得や指導がかなり多いわけです。どの事実を追加するかって、すごく大事なんですよね。
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