2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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組織課題を丹念に読み解く調査&コンサルティング会社・ビジネスリサーチラボが開催するセミナー。今回は、近年注目される「ボスマネジメント」について、同社代表の伊達洋駆氏が解説したセッションの模様をお届けします。ボスマネジメントに効果的な3つの戦術が紹介されました。
伊達洋駆氏:次に説明したいのは、影響力の戦術が上司に対するボスマネジメントのやり方によって、上司との関係性や自分のキャリアに対して良い影響を及ぼす場合もあれば、そうでない場合もあるという点です。
最初に取り上げるのは、上司との関係性やキャリアに対して良い影響をもたらす影響戦術、すなわち「ボスマネジメントでおすすめのやり方」です。さまざまな研究から明らかになっている戦術として、「合理的説得」「鼓舞訴求」「相談」の3つがあります。
「合理的説得」は論理的に説得する方法です。「鼓舞訴求」は上司の価値観や理想に訴えかける方法です。「相談」は協力を求めて意見や提案を修正する方法です。これらの戦術は、ボスマネジメントにおいて有効であり、実際に上司を動かし、自分に対する評価を高めることができます。上司との関係を良好に保ち、キャリアの発展に寄与できるのです。
「ボスマネジメントで有効なのは何ですか?」と問われれば、「合理的説得」「鼓舞訴求」「相談」の3つです、と答えることができます。これらの戦術の特徴を考えてみましょう。それは、論理的に説明すること、相手の価値観に訴えかけること、そして相手の参加を促すことです。「相談」は特に参加を促す行為になります。
これらを行うことで、上司の納得感を醸成し、影響力を効果的に行使することができます。無理に押しつけるのではなく、納得を引き出すことが重要なのです。
さらに、この「影響力の行使」は、上司に対してだけでなく、部下や同僚に対しても有効です。つまり、下方や水平的な影響力においても、「合理的説得」「鼓舞訴求」「相談」が非常に重要であることが、これまでの研究で示されています。
他方で、半ば強制的に働きかけるような「圧力」や「連合」、「正当化」といった戦術は、あまりうまくいかないことがわかっています。想像するとわかりやすいですが、強制的に従わせようとしても難しいのです。
上司も自由裁量を持っており、その裁量に対して働きかけることが影響力の行使にあたります。したがって、上司には自発的に動いてもらう必要があります。強制しようとしても自発的には動いてくれないため、「圧力」「連合」「正当化」といった戦術は有効ではないのです。
ここで、これらの戦術を振り返ると、「連合」は他の人の支持や助けを引き合いに出して働きかける方法です。「正当化」は「組織のルールではこうなっている」と権限や方針、規則を引き合いに出して働きかける方法、「圧力」はプレッシャーをかける戦術です。これらの直接的な影響力を行使する方法では、上司を動かすのが難しいことがわかっています。
ここまでの話から、上方影響力の姿が少し見えてきます。影響力を行使するというのは、上司の意思を尊重しながら味方につけることです。強制的に何かをさせるのではなく、相手を尊重しつつ味方として引き入れる繊細なプロセスです。
「自分対上司」と敵対関係にあるように考えると、ボスマネジメントはうまくいきません。いかに上司を味方にするかという発想が重要です。
これまでの研究から、特に注意すべき戦術として挙げられているのが「取り入れ」です。取り入れとは、相手を褒めたり好意を示したりして、自分に対する印象を高めようとする方法です。これは機嫌を取るような方法ですが、上司に対しては逆効果になることが実証されています。
興味深いのは、同僚や部下に対する「取り入れ」は有効だという点です。水平的な関係や下方的な影響においては、取り入れが効果を発揮することがわかっています。褒めたり好意を示したりする取り入れの戦術は、上に向かってはあまりやらないほうが良いですが、下に向かってやったり同僚に向かってやったりするのは有効です。
しかし、今回のテーマである「ボスマネジメント」においては、取り入れ、すなわちおべっかを使うようなやり方はあまり得策ではなく、逆効果になることがわかっています。具体的なネガティブな影響として、「取り入れ」を行うと昇進可能性が下がるということがあります。
上司が「この部下は昇進するだろう」と思う気持ちに負の影響を与えるのです。取り入れを行う部下を見ると、上司は「この人は出世しないな」と思ってしまいます。これは深刻です。機嫌を取っている部下を見ると、上司は「駄目だな、出世しないだろうな」と感じてしまうわけです。
なぜかと言うと、上司にとって「取り入れ」の戦術は「自分を取り入れようとしている」行動に見え、ごますり的に感じてしまうからです。その結果、「この人は大丈夫かな?」と適性を疑われてしまいます。したがって、部下から上司に対して「取り入れ」の戦術を取ると、キャリアにネガティブな影響が及ぶことがわかっています。
ここまでのお話を簡単にまとめると、上司に対して影響力を行使する場合、「合理的説得」が重要です。事実や論理に基づいて説得することを中心に行うべきです。さらに、価値観や理想に訴えかけたり、相談を交える方法が有効です。つまり、上司の論理や価値観に働きかけ、上司に考えてもらい、その意思決定や行動に参加してもらうことが肝要です。
このような影響力の行使がキャリアに影響を及ぼす点が、上方影響力の恐ろしいところです。例えば、「友好的で合理的だ」と上司から認識される部下は、上司に好意的な印象を持たれ、その結果キャリアの成功にもプラスの影響を与えます。
一方で、「取り入れ」などの戦術を用いると、逆にネガティブな影響がキャリアに及ぶことがわかっています。したがって、上司に対しては「合理的説得」「鼓舞訴求」「相談」を中心に行うことが、キャリアの成功につながります。
また、自己主張が強すぎたり、「交渉ばかりしているな」と上司に思われると、その部下は上司から不快感を抱かれて、評価が下がる傾向があります。自己主張や交渉は大事ですが、これに関する研究結果は興味深いものです。
北米の文化圏では「自己主張はしたほうがいい」と思われていますが、部下からの自己主張は上司に好まれないことがわかっています。この傾向が個人主義的な文化でも見られるならば、調和を重視する東アジア、特に日本の企業では、さらに強い傾向があるかもしれません。
ただし、興味深いのは、「影響力の行使がうまくいったかどうか」と「客観的にパフォーマンスが高いかどうか」は必ずしも関係がないという点です。上方影響力がうまい人が必ずしも高いパフォーマンスを発揮するわけではないことがわかっています。
パフォーマンスを高める要因は、上方影響力もその1つかもしれませんが、能力やスキル、関係性、仕事とのフィット感、エンゲージメント、組織への愛着など、さまざまな要因が影響しています。そのため、上方影響力を高めれば必ずパフォーマンスが高まるというわけではないのです。
ボスマネジメントや上方影響力の行使は上司の主観的な印象には影響しますが、客観的な仕事のパフォーマンスには関連がありません。パフォーマンスには影響しないのに、印象だけ悪くしてしまうというのは非常に考えさせられる結果です。
他にも似たような研究があり、部下が用いる影響戦術の種類が上司の評価に影響を与えることが示されています。部下がどのような影響戦術を上司に対して行使すれば評価にプラスになるのでしょうか。それは「推論」と「好意の提供」と呼ばれる戦術です。
「推論」は「合理的説得」に近く、論理的な議論を展開し、事実に基づく証拠を提示することです。一方、「好意の提供」は、好意的な行動を取ることで関係を良好に保とうとする働きかけです。調和を維持するための努力が評価にプラスの影響を与えるのです。
「取り入れ」と「好意の提供」は似て非なるもので、「取り入れ」はわざとらしい称賛や過剰な好意を示すことで自分を良く思ってもらおうとする行動です。これに対し、「好意の提供」は関係を良好に保つために行われる行動です。
「取り入れ」は評価にネガティブな影響を与える一方で、関係を良好に保とうとする好意的な行動は評価にプラスの影響を持っていることがわかりました。その一方で、「交渉」や「自己宣伝(セルフプロモーション)」を行うと、部下に対する上司の評価がマイナスになることがわかりました。「交渉」は自分の要求を通すために取引を持ちかけることです。
「自己宣伝(セルフプロモーション)」は、自分の成果や能力を上司にアピールする方法ですが、これもあまり良くありません。上司の評価を下げる要因となってしまいます。セルフプロモーションが評価を下げるというのは、逆説的で悲しいことです。自分のパフォーマンスをアピールしているにもかかわらず、「この人は駄目だな」と思われてしまう可能性があるのです。
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