2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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手塚貞治氏(以下、手塚):國學院大学の手塚と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
30年近くコンサルタントとしての経験を積んでいまして、その経験を基にしたフレームワークの使い方や、どんな思考パターンがあるのかについて、今日、50分ほどお話しさせていただければと思います。右下の本『武器としての戦略フレームワーク』が、今日の叩き台になります。
本日のアジェンダですが、まず「フレームワークってどうなの?」と思っている方が多いのではないかと思います。
今日お集まりの方の中にも「フレームワークなんて使えないよ」と思っている方が多いのではないでしょうか。まず、それに対する私なりの見解を申し上げます。その上で、フレームワークの根底にある5つの思考パターンのうち、時間の都合で3つを具体的にお話しさせていただきます。では、「フレームワークどうなの?」という話ですね。
英語でFrameworkというと、何かを計画決定するために使用されるルール、アイデア、または信念。幅広いですね。
我々実務家の間でカタカナで「フレームワーク」というと、物事を認知して思考するための枠組みや切り口といったところでしょう。
なぜ重要か。「“もれなくだぶりなく”網羅的に検討するために重要」なんです。「MECE」という言葉も、もともとは外資系コンサルティングファームで生まれた考え方ですが、今ではだいぶ一般的になりました。過不足なく、もれなくだぶりなく検討することが大切だという考え方をまとめた表現です。
例えば、(スライドの)3CやSWOTなどがありますね。
みなさん当然ご存じの方々ばかりだと思うので、3Cとは、SWOTとは何かという説明は省略します。こうしたものに代表されるフレームワークは、何十個もあるでしょう。
しかし、こんな気持ちを持っている方もいるのではないでしょうか。「フレームワークに当てはめても、どうせ陳腐な答えしか出ない」「フレームワークでイノベーションは起こせない」と。
では、こう考えてみてください。「自由に発想してみてください」「ゼロから考えてみてください」「制約なしに考えてみてください」。
これをやった時にどうなるのか。創造性の研究は昔からいろいろあります。その中の代表的なものの1つが、(ロナルド・A.)フィンケさんの『創造的認知』という研究です。30年以上前のことですね。さまざまな実験を行い、創造性を検証しました。例えば、いろいろな形を15個見せて、「それを使って独創的なものを作る」というお題を与えました。
結果はどうでしょうか。結論から言いますと、適度な条件を設定したほうが独創的なアイデアが生まれるということです。
つまり、適度な枠組みが創造性の高いアイデアを生むということです。「枠組みこそが創造性の高いアイデアを生む」と、言い換えてもいいでしょう。フレームワークはMECEに、論理的に考えるだけでなく、直観を働かせたり発想を促すためにも有用だということです。
なぜ適度な枠組みが必要なのか。ノーベル経済学賞の(ハーバート・)サイモンさんが指摘したように、人間には「認知限界」があるからです。
我々はこの世の森羅万象、複雑なものをそのまま、ありのままに認知することはできません。我々の五感には制約があり、すべてを理解することは難しいのです。
これは誰が悪いわけでもなく、人間としての限界です。物事を見て解釈したり発想するためには、フリーに考えるだけでは無理があります。枠組みがどうしても必要不可欠になるのです。
ここまでのまとめです。フレームワークは使えるか使えないかという話ではなく、そもそも論理的に考えたり直観を働かせたりするための前提として必要だということです。フレームワークに入れたら自動的に答えが出るわけではありません。そんなことは毛頭思っていません。ですが、フレームワークは考えるための前提として必要なのです。
フレームワークで答えが出るかと言われると、それは出ないでしょう。ただ、フレームワークなしで考えるのは難しいでしょうということです。
フレームワークは2つの局面で必要です。1つは、「シンキングツール」。自分一人で物事を効率的に考える時です。フレームがあることでアイデアが出やすくなります。もう1つは、「コミュニケーションツール」。多数の人とディスカッションをしたり合意形成をする時です。土台がバラバラだと議論になりませんし、合意形成もできません。フレームワークには、この2つの用途があると思います。
大切なのは、フレームワークは何十個もあるということです。私も知らないくらいの数があると思います。いろんな人がいろんなことを言っていますからね。その1つ1つのフレームワークを覚えるよりも、その根底にある思考パターンの本質を認識することが重要です。
私は思考パターンは5つあると考えています。
1つずつ見ていきましょう。まずは「並列化思考」です。その名のとおり、並列に列挙して網羅するということです。例えば、東西に南北を足せば、方位としてはMECEになります。360度をこの4つで網羅できますね。もちろん、東南東など細かく言い出せばキリがありませんが、4つで分ければ網羅できます。
語学、特に英語の学習では4つの技能、「聞く、話す、読む、書く」で網羅できます。英語の試験もこの4つの技能で測ります。
日本の地域別の人口分布を分析する場合は、47都道府県で分析すればMECEで網羅的になります。
中学生の学力を分析する場合、全科目でもいいですが、主要5科目(英語、数学、国語、理科、社会)で成績を見れば網羅的にわかります。
みなさん、「そんなことか」と思われるかもしれませんが、ここからが重要です。並列化にはいくつかのカテゴリーがあります。今言ったのは事実のカテゴリーです。東西南北、47都道府県、主要5科目。これらは事実に基づいているので、すべて網羅すれば間違いなく網羅できます。
それから、一般法則です。例えば、速さは距離÷時間、売上は数量×単価で分解できます。バランスシートは負債と資本/負債と資産で分けられます。こうして法則として網羅できます。次に、一般的な概念です。善悪、理想と現実、定量と定性などは、一対の概念なので理解しやすいです。
問題は、事実でも一般法則でもない、(スライドのように)それ以外の概念で3つ以上の場合です。
ここには恣意性が入りやすいのです。例えば、この4つを挙げると「いやいや、4つじゃなくて5つじゃないの」「いや、この6つめもあるんじゃないの」といった議論が出てきます。こうした議論が出てくると、どこまで網羅的と言えるのかが問題になります。
あらためて書くと、3つ以上になると複雑で恣意性が入ります。だからこそフレームワークで整理することが特に重要です。
47都道府県のような事実に基づく話だと、フレームワークは必要ありません。しかし、それ以外の概念では、恣意的にどうとでも切り分けることが可能です。例えば、経営資源を考えます。ヒト・モノ・カネと言いますが、「いやいや、ヒト・モノ・カネ・情報だ」「いや、ヒト・モノ・カネ・情報・技術だ」と、さまざまな意見が出てきます。これが、恣意性が入るということです。
なので、フレームワークで整理することが特に重要です。
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