2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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生成AIやメタバースなど、日々進化するテクノロジーをどのように捉え、どう使いこなせばいいのか。本イベントでは、各界の識者たちが登壇し、これからの時代のテクノロジーとの向き合い方について語りました。本記事では、早稲田メンタルクリニック院長/精神科医でYouTuberの益田裕介氏が、社内のテキストコミュニケーションや企業のSNS運用でトラブルを起こさないためのポイントについてお伝えします。
山田裕輔氏(以下、山田):(SNSにおける)企業内でのコミュニケーション(の問題)もあると思うんです。マルハラ(テキスト上のやりとりで、文末の句点を威圧によるハラスメントと感じるというもの)が出てきてしまうと、テキストのコミュニケーションが難しくなってしまうのかなと思うんですけど、企業側はどう認識しておくべきですか?
益田裕介氏(以下、益田):やはり社内向けのコミュニティガイドラインを作るべきではないかなと、僕は思いますね。僕はオンライン自助会とか家族会をSlack上で作っていて、体験談を語ったりしています。やはりいろいろトラブルがあったんですけど、トラブルがあるたびにルールをつけ足したり消したりして変えていって、Slackの構造自体を変えたりもしているんですよ。
おそらく、コミュニティガイドラインを作ることってめちゃくちゃ大事なんですが、けっこう膨大になるんですよ。だからどうやって抽象化していこうか、すごく考えていたんですけど。実は最近、自分たちがやっている中で「もうAIの時代が来るから抽象化する必要がないんじゃないか」という説があって。
もう来年再来年、年内かもしれないんですけど、AIでもっとうまく検索ができる時代が来るので。きちんとテキストベースで作っていても、データとして保存できるんじゃないかなと思っています。
企業内であっても、コミュニティガイドラインを作っておいて、何かあった時にはそこを検索して、(マルハラの例で言えば)「我々の会社は『。』をつけるものだ」という一文があれば、みんな不安にならないんじゃないですかね。コミュニティガイドラインがあれば、(コミュニケーションの問題も)いき過ぎないので、そういうのが大事ですね。
益田:あと企業によっては、外に向けて発信していくSNS運用を若い子とか、下手したらバイトの子に丸投げしていたりするんですよね。そういう若い子たちにSNSを一任するんじゃなくて、大人がちゃんとチームを組むとか、「我々はどういうかたちで情報発信をするか」のSNSガイドラインを作って、ディスカッションをするべきではないかなと思います。
ある企業だと、「SNSが流行っているらしいから(運用を)やっといて」みたいに、入って3ヶ月目くらいの新入社員の女の子に全部丸投げしている。これはやはり良くない。
山田:よく聞きますよね。
益田:「たまには(SNSで)ちょっとおもしろいことも言ってよ」とか言って。いや、それはさすがに無理でしょみたいな(笑)。おじさんの思いつきで、そんなことできるわけがないので、社内でガイドラインをしっかり作るべきだと僕は思いますね。やっている企業はちゃんとやっています。
山田:AIが普及していけば、逆にガイドラインから外れた場合も、アラートを出してくれたりする可能性もありますからね。
益田:そうですね。だから、企業ポリシーとかビジョンに合わせて、ガイドラインをどこまでやるのか。お堅い企業だったら遊び心は少ないだろうし、軽い炎上リスクがあってもいい企業とかもあると思うので。遊び心をどんどん出していきたいとか、パロディとか皮肉をやってもいいよ、ぐらいだったら、そこまで含めて(ガイドラインを作っておく)。
山田:ありがとうございます。もう1つ「デジタルデトックス」の効果自体はそもそもあるのかを、おうかがいしたいです。
益田:僕が臨床をやっていて思うのは、恐らくデジタルデトックスというよりは、自分と向き合う時間があまりにもなさすぎる人が多いんですよね。
例えば「将来どうするのか」「この人と結婚するつもりなのか、そのつもりはないのか」を風呂の中でボーッと考えるとか、1日の中でちょこちょこ考えるはずじゃないですか。
でも、デジタルデトックスが必要な人やスマホ依存の人は、そういう時間がまったくないんですよ。ご飯を食べながらLINEを見て、お風呂の間もスマホをいじっているか、YouTubeを見ているか、もしくは5分ぐらいですぐ出てしまう。1時間ボーッとしろとは言わないけど、スマホをいじらずに、目を閉じてぼんやりしている時間が本当にないんですよね。
うまくいっている時はそれでもいいと思うんですけど、うまくいってない時には、やはり冷静に自分の人生とかを考えないといけないじゃないですか。毎日スマホでSNSを見ながら「結婚しようかな、しないかな」とか考えてられないですよね。
ちゃんと腹を据えて考えて、「向こうの親御さんはどうで、自分はどうするのかな。転職するのかな、しないのかな」とかを考えないといけないので。そういう時はデジタルデトックスをして、ちゃんと向き合う時間を作らないと、うまくいかないだろうなと思いますね。なんか説教臭いですかね(笑)?
山田:いえいえ。なるほど。デジタルデトックスを「必ず週1回やる」というよりは、やる時間を決めたほうがいいですか?
益田:決めたほうがいい人も多いのではないかなと思いますね。内省をする習慣がない人や内省が苦手な人だったら、そういうかたちで強制的に時間を作ってもいいんじゃないでしょうか。
目を閉じて深呼吸をする「マインドフルネス」ってありますよね。呼吸に集中しろとか言うんですけど、ぶっちゃけ呼吸だけを考えている人はいないですよ(笑)。目を閉じながら呼吸をしているんだけど、頭の整理を行っているんですよね。悩み事を考えすぎず、「ああ、いかんいかん」と思って呼吸に戻るということなので。
Googleでは(マインドフルネスの)社内研修をしています。内省が苦手な人もいると思いますが、1日1回でも十分な効果があるとわかっています。
本格的にうつを治そうとするような、マインドフルネスの治療プログラムや論文で書くやつだと、「3ヶ月間、毎日45分やってみた」とかいう話になるので。さすがにそれをみんながやるのは無理だと思うんですけど、5分、10分とかやってみるとぜんぜん違うと思います。
山田:例えば「今の仕事を変えるのか、変えないのか」を根を詰めて考えるのと、マインドフルネスのイメージはちょっと違うのかなと思ったりするんですけど。要は考え込むのがいいのか、何も考えないほうがいいのか。
益田:いや、同じだと思いますね。根を詰めて考えるというか、無意識で僕らが考える要素ってすごく大事で。前頭葉で表面的に考えていくよりも、夢の中で考えていって、頭の中が整理されることのほうが重要なこともあるんですよ。
たぶんエンジニアの方とかはわかると思うんですけど、寝て起きたらいいコードが思いついているということが、けっこうあると思うんですよね。
それと同じで、複雑な問題も「うーん」と悩んでいるだけではなくて、ちょこちょこっと考えておいて、後は無意識が作用して、3日ぐらい経つとピコーンってひらめくこともあるので。何か道具を使うんじゃなくて、ちょこちょこ目を閉じて考えるのは、けっこう有効だとわかってきていますね。
山田:ありがとうございます。また「SNSとの上手な付き合い方」になりますけれども。デジタルデトックスやマインドフルネスをしていく一方で、我々はSNS自体からは離れられない。例えばXであれば、やはりその時々で自分の中で何かルールを決めていくしかないんですかね?
益田:そうですね。「夜中はやらない」とか「『。』が付いているかどうかで一喜一憂しない」とか、やらないことを決めればいいと思いますけどね。「炎上しそうな話題は避ける」「裏アカウントもできるだけ使わない」「怪しいサイトにはいかない」とか。
正しさを選ぶのは難しいけど、NG集を作るのは比較的簡単だと思うので。NGを踏まないようにするのがいいんじゃないですかね。
山田:TikTokで時間が溶けるみたいな、やはりSNSはそこをうまく突いてくる感じもします。例えば「あと1時間でやめよう」と思っているのに、気づいたら2時間経っていたみたいな。
益田:そうですね。ショート動画は依存性というか、ボーッと見られるので、できるだけやらないほうがいいですよね。僕も夜中に2~3時間見るとか、気持ち悪くなっても見ている時期がありました(笑)。
山田:ありますよね。映画1本分のショート動画を見ていたみたいな。
益田:そうそう。だけどまあ、気をつけるしかないですよね(笑)。
山田:なるほど。じゃあNG集を使っていくのが、1つポイントになってくるんですかね。
益田:そうですね。
山田:わかりました、ありがとうございます。事前にご質問をいただいているものもありますので、それもちょっと(読んでいきます)。依存することの良い点・悪い点がもしあればというご質問です。
益田:依存なので、良い点は基本的にないですね。「依存する」とは、そもそもの言葉の定義として「社会的に問題がある」ことなので。
山田:言葉遊びになりますけど、「ハマる」とはまた違うんですね。
益田:そうですね。だからマーケターだったら、「(世の中で)どういうことが起きているんだろう?」とSNSをずっと見ているのは確かにいいことですよね。だけど、そうじゃない仕事の人だったら、損なことになるだろうしね。
あとは特定の人間関係とかで、3人ぐらいのLINEを延々とやってしまうのは、人生の時間の使い方としてもったいない気がしますよね。やはり中高生ってそういう使い方をしがちですけど、そうしていると勉強する時間がなくなってしまうので(笑)。
山田:ありがとうございます。あともう1つ。アンケートで、「自身がSNSに依存しがちなので、メンタルヘルスにどれぐらい影響があるかを知りたい」「SNSの利用量は減らしていきたい」という声をいただいています。メンタルヘルスにどれぐらいの影響があるかは、言葉として定義するのはけっこう難しいですよね。
益田:これは言っていることはよくわかるんですけど、医学的にはまだぜんぜんわかっていないですね。でもどちらかと言うと、単純にメンタルヘルスが悪化した時に、SNSの悪さがすごく出るのではないかなと思うんですよね。
「マルハラ」のような、マルが付いているか・付いていないかで不安になってしまう人は、もともと不安になりやすい気質があると思います。
山田:なるほど。
益田:やはり日常や過去の不安がSNSに表れていると思います。誹謗中傷する人も、他人の発言が許せないというよりは、日頃の鬱憤が溜まって、何でもいいから叩きたいわけじゃないですか。
だからSNSは白い紙だと考える。SNSが悪いのではなくて、もともとのメンタルヘルスが悪いから、SNSという白い紙に悪いものが投射されていると考えたほうが、現代の精神科医の目線ではスタンダードかなという気がします。
山田:なるほど。今回のテーマは「SNSとメンタルヘルス」ですが、SNS依存になったとしても、基本的にはSNSと別に、ご自身のメンタルヘルスの状態が非常に大事だと。
益田:大事だし、その上でうまく付き合うことですよね。
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