2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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山田裕輔氏(以下、山田):本セッションに登壇いただくパネリストのご紹介です。早稲田メンタルクリニック院長であり、精神科医YouTuberの益田裕介です。益田さん、よろしくお願いします。
益田裕介氏(以下、益田):よろしくお願いします。
山田:では、私から簡単に益田さんについてご紹介をさせていただきます。益田さんは防衛医科大学校をご卒業後、防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院、埼玉県立精神医療センター、薫風会山田病院などを経て、2018年より早稲田メンタルクリニック院長を務められています。
また、現在は精神科医YouTuberとしてもご活躍されており、登録者数は51万を超える人気チャンネルを運営されております。また、オンライン上の患者会、家族会も運営しており、精神保健指定医、精神科専門医、指導医としてもご活躍されております。益田さん、よろしくお願いいたします。
益田:よろしくお願いします。
山田:ぜひ随時Q&Aやチャットにも質問やコメントなどを入れていただきながら、進めていきたいなと思います。それでは、まずは1つ目。メンタルヘルスの観点で、SNSの功罪を考えるということで、益田さんにおうかがいしていきたいんですけれども。まず簡単に私から、SNSについての歴史を見ていきたいと思います。
SNSは、ほとんどの方がご存じかなと思います。日本では2004年に誕生した会員制コミュニティ「mixi」が、SNSの先駆け的な存在で、iPhoneのようなスマートフォンの普及がありまして、2008年には日本語版「Twitter(現X)」がリリースされております。
そして、2010年代から2020年代にかけて、YouTubeやInstagram、TikTok、LINEなどが誕生してきています。もしかするとサービスによって少し捉え方が変わってくるかも知れませんが、今はこちらにあるものを「SNS」とさせていただいております。
山田:あとは、こちらは総務省が出している、「主なメディアの平均利用時間」のデータです。グラフが少し見にくい方もいらっしゃるかもしれませんが、(スライドの)左側が「平日に見ている主なメディアの平均利用時間」を出しています。
全年代まとめておりますが、左側の赤い棒グラフがテレビです。中にいくつか棒グラフの小さな山があるんですけれども、こちらはテレビの録画とか新聞、ラジオです。注目すべきは赤い棒グラフと青い棒グラフで、赤がテレビのリアルタイム視聴。青がインターネット利用時間で、やはり最近はネットの時間がテレビを上回っています。
さらに右側は「休日の主なメディアの平均利用時間」のグラフです。これは令和4年に初めて、全年代で休日もインターネットの利用時間がテレビのリアルタイム視聴時間を上回ったデータになっております。
益田さん、このインターネットの利用の流れに応じて、みなさんの心の部分でも、歴史を感じるところはありますか?
益田:テレビとネットの時代はぜんぜん違っていて、やはり(情報をキャッチできるスピードが)早いですよね。医療情報をみんなよく知っているというか。昔は患者さんはぜんぜん病気のことを知らなかったんですけど、今はネットで調べてから来る人とか、通院途中で調べているなんて当たり前になってきていますね。
山田:「メンタル面での病名をしっかりと認識しましょう」ということが最近少しあったりするんですけど、これとSNSの絡みはあるものですか?
益田:もちろんSNSの誕生によって圧倒的に情報量が増えたし、知識量が増えたのは確実ですよね。医学の分野に限らず困ったら調べる。そして共有するスピードが、めちゃくちゃ速くなっているとは思います。
山田:なるほど。ありがとうございます。続いてこちらは、ソーシャルメディアや携帯電話を、どのくらい利用しているかというデータです。10代、20代の平均利用時間が年々伸びているので、これは事実としてここに記載させていただいております。
あとは、こちらが主なソーシャルメディア系サービスで、どんなものが使われているかというデータです。LINEは一貫して増えていて、Xは20代の利用者が多いですね。Facebookに関しては(全年代で)若干利用率が減っていますけれども、Instagramの利用者は増えています。
LINEは知り合いとのコミュニケーションを取る部分があって、Twitter(現X)はいろいろな人に拡散をしていく。やはりSNSとメンタルと言っても、サービスごとによって違いますよね。
あとは利用状況のデータです。各年代で何パーセントの人たちがSNSを使っているかとか、どのような目的でSNSを使っているかが右のグラフです。
「コミュニケーションのため」「情報を探すため」「ひまつぶしのため」も3割ほど出てきています。
今回「SNSの依存」にスポットを当てているんですけれども、「SNS依存」で考えると、何を依存として定義すればいいのかと、悩むところがあります。我々としては、どうなったら「依存しているな」と感じるべきですかね。
益田:これはけっこう難しくて。日常生活に支障があるものを、まず「依存」と定義しますね。
だからSNSがやりたくて仕方がなくて、寝不足になって親が「スマホ取り上げるよ」と言うとケンカになってしまうとかは「依存」です。あと仕事中にSNSをいじっていて、仕事が終わらなくなってしまうとか、納期が遅れそうになるとか、集中できないというのが「依存」になりますね。
益田:先ほど説明している中で、ちょっとわかりにくいなと思ったので、補足します。「依存症」と言うと、楽しいからやってしまうとか、やりたいからやってしまうとイメージするじゃないですか。
「SNSをやりたいな」「みんなの話を聞きたいな」「ニュースを見ると楽しい」と、楽しいからやってしまうのが「依存」だと思いがちです。ギャンブル依存とか、ゲーム依存は「やりたい、楽しい」からやるんですね。
だけど反対に、やらないと不安になってしまう「依存」もあるんですよ。アルコール依存、薬物依存の末期ですよね。打たないと、飲まないと、吸わないと落ち着かないからやる。
あと自傷行為ですね。リストカットもやらないと落ち着かないんですよ。不安だからやってしまう。やったあとに「ああ……」と後悔するんだけれども、痛みがあってちょっと頭がスッキリするんですよ。そのあとにストレスが溜まると、またやってしまうのも依存行為です。
買い物依存もそうですよね。やりたくないんだけど、買うと楽になるからやる。万引き依存も、万引きをすると、その瞬間はハラハラドキドキしてスリルを味わえて楽になる。やったあと後悔するんだけど、日常生活でストレスが溜まったり不安になるとやってしまう。
あとは、鍵の開け閉め(を何度も確認してしまう)とかですね。これは強迫性障害とか言って、最近芸能人の方でも告白した方がいましたけど。最近は強迫性障害も依存症の一種だと考えられていて、やると落ち着くからやってしまう。火元の確認をしてしまうのも依存の一種ですし、ゴミ屋敷でゴミを捨てられないのも依存の一種ですね。
だからSNS依存も、楽しいからやるのではなくて、やらないと不安になってしまう。「他に誰が言っているんだろう」と確認しないと不安になるのは依存です。
最近だと「マルハラ」がニュースになりましたね。文末に『。』がついていたり絵文字がなかったりすると不安になって、「本当に大丈夫でしたか?」と確認して、「大丈夫だよ」と言ってもらってフウと落ち着く。「でもやはり違うかも」「もう1回確認しよう」とか、既読がついていないのが不安で何度も見るのも依存です。
益田:これがもっと悪化すると、高校生が夜中の3時くらいまでメッセージのやりとりをしていて、みんなが最後に送って30分くらい経って、「誰もメッセージ送っていないな。ようやく寝よう」みたいになると、これはもう依存ですよね。
「依存症」と言うと、さも楽しいからやってしまうものだけだと思いがちですけれども、臨床的には(不安で)「LINE」とかを何度も確認してしまうのがSNS依存のよくあるケースかな。どちらかと言うと、よく見るのはそっちですね。
山田:なるほど。SNSはのめり込んでしまうような何かがあるんですよね。「LINE」というコミュニケーションツールだけで言うと、メールのやり取りは昔からある。
益田:「すぐ(結果が)来る」のが依存です。すぐ気持ちよくなれるから、お酒を飲んでしまうんですよね。競馬とかパチンコも、すぐ結果が出るから「依存」になるんですよ。例えば、株の長期保有で、10年後に1.5倍、2倍になりましたと。これは依存症にならないですよね。
山田:積み立てですもんね。
益田:ただの貯金ですよね(笑)。デイトレードは上がったり下がったりが速くて、結果も、3時間後か1日後とかにすぐわかる。だから依存になるんですよ。
山田:なるほど。
益田:SNSはレスポンスが早いので。結果が早いのが依存症になりやすい特徴です。
山田:既読がつく、つかないとか。
益田:だから依存になりやすいですね。
山田:SNSを作っている側も、そこは意識しているんですか?
益田:もちろん。パチンコと一緒ですよね。昔のパチンコはピューッと風とか出ないじゃないですか。音とかも計算しているんですよね。
でも、それは脳科学で計算したのではなくて、ABテストで風が出る台と風が出ない台があって……あまりみなさんパチンコ知らないかもしれないですけど(笑)。「風が出るやつのほうが、はまる人が多いな。じゃあ風が出たほうがいいな」とだんだん進化してきた。
スマホとかITもそうですよね。ボタンの位置をちょっと変えると、「なんでだかよくわからないけどクリック率が上がるな。じゃあこれからこの場所にしようか」とか、理論があとからついて来るところがあって。(商品を開発する時に)どんどん依存させやすくしているんですね。
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