2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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3万人以上を指導してきたリスキリングのプロ、清水 久三子氏。今回は清水氏の22冊目の著書となる『リスキリング大全』の出版を記念し、リスキリングの始め方、成功させるための方法を解説します。本記事では、学びの取れ高が高い人・低い人の特徴の特徴を元に、リスキリングを効果的に行うためのポイントを紹介しました。
清水久三子氏(以下、清水):学びに使える資産は有形・無形のものがあります。有形のほうは、端的に言うとお金です。何かを勉強するための費用とか、時間がない方は新しい家電で家事を自動化するとか、何かのツールを買う。
あるいは仕事を1回辞めて違う職に就く場合に、収入が減る時期をどれぐらい許容できるのか。1ヶ月も持たないとか、3ヶ月や1年持つのかによって、どれぐらいリスキリングできるのかが変わってきます。
もう1つの無形資産は形がないものなんですが、これは「どれだけ自分のチャレンジを早く促進できるか」ということになってきます。これまでに保有している能力もありますし、自分が持っている人的ネットワーク、自分の信用、肉体的・精神的な健康などがないと、やはりチャレンジって難しいですよね。
特に人のネットワークとか、自分がどれぐらい信用されているのかによって、集まってくる情報が桁違いになります。なので、自分1人で孤軍奮闘するのではなく、いろいろな人にいろいろなことを教えてもらったり、フィードバックを受けながら進めていくことで、リスキリングのスピードが圧倒的に速くなるんですよね。
ちょっとプライドが高い方は、人に言わずに黙って闇練しちゃう方が多いんですよね。「学んでいるところを見せるのが恥ずかしい」「よくできていないのに言うのは恥ずかしい」とか、いろんな思いがあって(闇練を)してしまうんですが、それは本当におすすめしないです。
闇練をすると、逆にスピードが落ちてしまうんですよね。あまりやらなくていいことをやって遠回りしてしまったり、あるいはもっといいやり方があったのに、それを知らないのでものすごく時間やお金がかかってしまうとか。要するに、立ち上がりが本当に遅くなってしまうんですよね。
先ほど言ったようにリスキリングはスピードが命ですので、いかに自分が持っている無形資産をきちんと活用するのかが重要になってきます。
よく「自分はネットワークとかないです」という方がいるんですが、ぜひ書き出してみてください。意外な人が出てきたりするんですよね。「こういうことだったら、あの先輩に聞いてみようかな」「以前お仕事でご一緒したこの人にちょっと連絡してみようかな」という方は、絶対に出てくると思います。
自分で気づいてないだけで、今までお仕事をしてきた方でしたらいろんな無形資産をお持ちだと思いますので、ぜひこれを有効活用するというマインドになっていただきたいと思います。
清水:ということで、リスキリングに必要な3つの成功要因のお話をしました。とはいえ学んでいくと、取れ高の高い人・取れ高の低い人が表れてくるんですね。私もいろいろなリスキリング支援や研修をやっているんですが、高い人・低い人の特徴をまとめてみました。
まず、取れ高の高い人は自分の自己満足ではなくて、本当に必要なレベルを理解しています。いろんな人のフィードバックを受けて、「これぐらいやらないと使い物にならないんだな」というレベル設定が正しくできている。
取れ高の低い人は、すぐにできそうなことをやる習性があるんですね。私も「『すぐにできる』『これだけで済む』みたいなことを教えてほしい」と言われるんですが、「それだけで済む」ということはほぼないわけですよね。そのマインドでいると、なかなか難しいと言えます。
抽象から具体化するとか、具体的な体験を抽象化する。この「抽象」と「具体」を行ったり来たりすることは、何かを学んで習得する上ですごく重要なんですよね。これをきちんとできるかどうかがポイントです。
先ほどお話しした27回ジョブチェンジをした方は、ここがすばらしいところなんです。自分が経験したいろいろなことを抽象化して、フレームワークにしてまとめておく。またそれを使ってみて、具体から学んだことを抽象化するとか、この行ったり来たりができると取れ高は高くなります。
多くは、わかった気になっているんだけど、実際にやってみたら具体化できないとか。あるいは具体的に活動はしているんだけども、そこからの気づきをまとめていないので再現性が低いというパターンが多いです。
清水:あとはやはり、マインドによって取れ高はものすごく変わってきますね。新しいことをやるので失敗はつきものなわけです。なので、それを悪いものだと思ってしまうと、リスキリングは成功しにくくなります。
例えば人からフィードバックを受けると、ついプライドが邪魔をして「そんなのわかっている」と言ってしまったり。あるいは自分とは違う領域ですと、自分がゼロとか下から始めることになりますので、なんとなくつらくなってしまって「本当は自分はすごい人なんだ」と、マウンティングしたくなってしまう。
そういった気持ちになってしまうと、なかなか他の人は「じゃあこれを教えてあげようかな」という気持ちにはならなくなってしまいますし、吸収できるものも少なくなってしまうんですね。学ぶためのリスキリングのマインドセットはとても重要です。
プライドが高いというか、失敗が怖い、失敗は嫌だという方は、マインドを変えるところがポイントですね。1つのやり方としておすすめなのは「今日1日、自分はいくつ失敗したか」をKPIとして数えることです。
「まったく失敗していない。失敗ゼロということは、何も新しいことを学んでいない」というふうに考えると、好んで「積極的に何かをやらなくちゃ」という気持ちになってくると思うんですよね。
なので「今日、自分は何か失敗したかな? ゼロだな。じゃあ明日は何か失敗しよう。失敗するために何かチャレンジしてみよう」と考えていただくといいと思います。
清水:では、実際に学んでいくとなった時に、リスキリングをどんなふうに進めていくのか。リスキリングのやり方、リスキリングを進めるための準備について、3つのマップをご紹介します。
まず1つ目が「スキルマップ」。「そもそもどういうスキルを身につけなくてはいけないのか?」をマップにしてみましょう。これをやらずにいきなり始めちゃう方もけっこう多いんですね。
たまたま目に付いた本を読み始めるとか、たまたま広告で見たスクールに入ってみるとかはけっこう危険です。「そもそもどういうスキルが必要なんだっけ?」というところをマップにすることをおすすめします。
2つ目は「学び方のマップ」。「このスキルを身につけるために、どういう学び方がふさわしいのかな?」と、まずはいろんな選択肢を洗い出すようにしてください。そこから選ぶことをおすすめします。
3つ目は「学びのロードマップ」です。「何を、どうやって、いつまでに学んだらいいのか?」という道筋を作っていきます。じゃあスキルマップはどうやって作っていくのかというお話なんですが、職種によって本当に違いますので、作り方は1つではありませんし形態も変わってきます。いくつかの例としてお見せしたいと思います。
例えばコンサルタントを目指したい場合です。コンサルタントはレベル別や段階別でまとめるのが好きなので、基本姿勢、プロジェクトワークで必要なスキル、アウトプット系のスキル、高付加価値を出すためのスキルというふうに、段階的にやっていくとリスキリングしやすいかなと思います。
清水:あとは最近ですと、ChatGPTを使うのもおすすめですね。ChatGPTにマインドマップを作ってもらうこともできます。例えば「自分はDX人材になりたい」、もしくは「ならなくちゃいけない」とかいろいろあると思いますが、そういった時にChatGPTさんに聞いてみると、こんなマップを作ってくれたりします。
私がその時に打ったコマンドを書いていますが、ChatGPTさんは人によって返す答えが違います。確実にこれが出てくるというわけではないので、ちょっと創意工夫をしてみていただくといいと思います。出てきたものをこちらのリンクに貼ると、マップ形式で出てきます。
これが正解かどうかは、そこまで気にしなくてもいいわけですよね。スキルって何か1つの正解があるというものではないので、これを1つの全体像として「ああ、これはこういう体系なんだな」というところを押さえておくといいと思います。
「自分はこれはできている」「このへんは弱いな」というふうに可視化すると、優先順位がつけやすいと思うんですよね。なので、マップの作成や下書きをする上で生成AIを使うのもおすすめです。
あと、その職種で必要な個別の特有のスキルってありますよね。それ以外にも「これがちょっと不足しているので、新しい仕事に移りにくいな」「移ったとしても価値が出しにくいな」というものがあるんです。
これが「ポータブルスキル」と呼ばれているものです。「いろんなところに持ち運べるスキルですよ」という意味なので、いろんな職種で必要な、ベースとなるようなスキルのことですね。
これを私は「IPO」という3つの局面で作っています。例えば情報収集する「Input」の力。いろいろ考えたり実行する「Process」の力。その価値を伝える「Output」の力。あるいはそれに横たわって必要な力というふうに分けています。
職種を変えるということは、OSアップデートをする必要があるというお話をしました。「もしかしたら自分のOSの中で、このへんは弱いんじゃないのかな?」ということもあったりするんですよね。
もちろん職種によって同じリサーチスキルでも違いがあったり、プレゼンテーションスキルでも違いはあるんですが、ベースは同じということもあります。このへんも併せて強化していって、専門のスキルプラス、ポータブルスキル(の強化)をやると、リスキリングもかなり進みやすくなるかと思います。
清水:ということで、スキルマップの作り方をご紹介をしてきました。どういうスキルを付けたらいいのかがわかりましたので、次はどう学んだらいいのかという「学び方のマップ」です。先ほど言ったように、いきなり本を手に取るということではなくて、「どんな選択肢があるのかな?」というのを、ぜひ洗い出してみてください。
いろんなやり方はありますが、これは「例えば」の例だと思って見てください。「コンテンツ型」というのは、書籍とか、最近ですとYouTubeやいろんなセミナーがありますよね。ある程度まとまった時間があるのであれば、学位や資格を取ることもあると思います(学位・資格取得型)。その中だと、どういう選択肢があるのか。
さらに実践的なスキルを身につけたい「実践参加型」だったら、どういうものがあるのか。DXやプログラミングとなると、座学だけだとあんまり即戦力にならないので、「ブートキャンプ」と呼ばれる研修やプログラムが増えてきているんですね。
「ビリーズブートキャンプ」って、昔ありましたよね。そのように実践するということです。コーチみたいな先生の方がいて、プログラミングを書いては直してもらって、ずっとやり続けることですぐに即戦力となる力を付けるためのブートキャンプ形式のものなどがあります。
あとはコミュニティに参加するのも非常にいいですね。コミュニティには、同じことを学びたい、同じスキルを身につけたいといった成長意欲のある方がたくさんいらっしゃいます。そこに参加することによって、何を学んだらいいのかを学んだり、お互いに刺激をし合って高め合っていくことにもつながっていくと思います。
清水:私は最近いろんなところでコミュニティ参加をしていて、本当に成果を出しやすいのは「コミュニティへの参加」かなと思っています。人間は社会的な生き物ですので、隣の人ができるようになると、自分もできるようになったりするんですよね。
1人でやっていると刺激がまったくないので、「なんかぜんぜんできるようにならないな」という感じで、いつしかやりたくなくなっちゃうこともすごく多いです。実践する仲間を見つけ出すと、かなりリスキリングを早めることにつながります。
あとは「実戦体験型」。実践の「践」が「戦」になっていますが、フィールドに出るという意味で、武者修行じゃないですが、本当にスキルがつきます。先ほどご紹介があったような越境学習。
「越境学習者は2度死ぬ」と言うんでしたっけ。ある意味大変な体験もするかと思うんですが、それを乗り越えた先では見える世界が本当に変わってくると思うんですよね。なので、自分のOSをかなりアップデートできると思います。
越境とか、あるいは今のお仕事をしながら副業をしてみることも、本当に「実戦」ですよね。本業と副業と両方併せて、どんどんとスキルアップしていくやり方などもあるかなと思います。
まずは「どういった機会があるのかな?」というのを一度棚卸しをしてみる。そんなに時間はかけなくてもいいと思うんですよね。例えば2~3時間調べると「こういうものもあるんだ」とか、本だったらAmazonで一通り類書を調べれば、すぐに何十冊とか出てきますよね。
ちょっと時間をかけて「何があるのかな?」と調べると、「今、自分はこれぐらい時間や使えるお金があるから、これをやってみようかな」「いつまでに立ち上がらなくちゃいけないから、思い切って実践型に飛び込んでみよう」といった判断ができるようになると思いますので、ぜひ学び方マップを作ってみてください。
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