2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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清水久三子氏(以下、清水):みなさん、こんばんは。
松岡永里子氏(以下、松岡):こんばんは。
清水:清水久三子です。それではさっそく始めたいと思います。今日、私は1日中ずっと講義をしていて(笑)。まだ次回の準備もあったりするんですが、今回はすごくリラックスした場にしたいなと思っています。
ぜひみなさんも、ざっくばらんにいろいろなご意見、ご感想、質問などをチャットに入れながら参加していただけると、非常にいい場になるかなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは自己紹介から入ります。1998年に外資系のコンサルティング会社に入りまして、コンサルタントとしてのキャリアをスタートしました。専門領域は企業変革戦略で、お客さまの企業の変革の実現をご支援する戦略部門のリーダーを務めてまいりました。
変革のご支援をするうちに「社員のみなさんにスキルを身につけて変革を乗り切っていただきたいな」と思い至るようになりまして、専門領域を人材育成に移してまいりました。
当時、IBMという会社にグローバルで吸収統合されておりまして、当時の社長から「社内の人材育成をしてほしい」という命を受けました。コンサルタントやエンジニアの方々数千人の事業部で、人材育成部門のリーダーを務めてまいりました。2013年に独立して、現在はビジネス書の執筆や講演、研修講師として活動しております。
清水:本を23冊出しておりまして、2024年1月には『リスキリング大全』を出版しました。学びに関する本を何冊か出版させていただいています。
いつもはご依頼いただいて書くケースが多いんですが、今回は自分から企画を持ち込んで「書かせてほしい」というお願いをして書きました。
理由としては、私は「リスキリング」という文脈でいろいろなメディアに出させていただいたり、取材を受けることはあったんですが、どうやらその受け取られ方というか、報道のされ方が非常に暗い感じなんですよね。
「リスキリングをやらないと取り残されてダメになる」といった文脈で紹介されることが多くて、なんとなく自分としては「これは余計に良くない結果になるのではないのかな」と思いました。
変化を生き抜いていく上で、リスキリングは悲壮感を漂わせてやるものではなくて、もっと楽しんだ気持ちで取り組んでいただきたいなと。自分としては「ポジティブリスキリング」というタイトルを付けてやっていきたいなと思い、この本を書きました。
みなさんも、変化に対する不安や「この先どうなるんだろう?」とか、いろいろな思いがあると思います。「このスキルを身につけたら不安がなくなる」「リスキリングができるようになったら、より楽しく人生を切り拓いていける」と、そんなふうに思っていただけたらと思っております。
清水:それでは今日の内容です。今日は短い時間なんですが、けっこう盛りだくさんで、たくさんのリクエストをいただきました。まずは、リスキリングに成功した方から学ぶ「3つの成功の要点」をお話ししたいと思います。
みなさんがいろいろなことを学んでいく上で「自分はちゃんと学べているのか?」と、ご心配の方もいらっしゃると思います。私も見ていると「この人はすごく吸収力が高い」「この人はあんまり学べてないかな」という方も中にはいらっしゃいますので、学びの取れ高をチェックしたいと思います。
あと、やはり収入アップにつなげたいと思っていらっしゃる方は多いと思いますので、リスキリングをどうやって稼ぎにつなげていくのかというアプローチ、手順をご紹介します。
そして「リスキリングマップ」です。リスキリングの準備をする上で、どんなマップを作ったらいいのかをご紹介します。最後に「越境学習」について。ここはエンファクトリーさんのご専門のところなので、越境がどうして大切なのかというお話をしたいと思っております。
じゃあ1つ目のテーマです。みなさんは「リスキリング」と言っていますが、従来から「スキルを上げましょう」という話はよくあったと思います。従来のスキルアップと(リスキリングは)何が違うと思いますか?
松岡:「直線的に上がるものではないのかな」というニュアンスはあります。
清水:直線で上に上がる感じではないと。
松岡:そうではないのかなと勝手に思うんですが、どうですかね?
清水:なるほど。ありがとうございます。他のみなさんも「何が違うんだって、自分でもよくわからない」という方はいらっしゃるかなと思います。
清水:定義を見てみたいと思います。「Why」「What」「How」で見てみると、リスキリングを何のために行うのかという「Why」は、「新しい仕事や職に就く」というところがポイントなんですよね。なので、学ぶこととしては「新しい仕事や職に必要な、実践的なスキルやノウハウ」になります。
学び方としては、新しい仕事に就く直前、もしくは仕事に就いてから、並行しながらやっていくことになります。
じゃあ従来の「学び」とは何かと言うと、「スキルアップ」「アップスキル」のことなんですね。「上に向かって」というお話がありましたが、生産性を向上させるとか、今の仕事のスキルを熟練させるとか、今の延長にあるところの学びです。
あと、よく使われる似たような言葉で「リカレント」もありますよね。いったん職を離れて、例えば大学院やビジネススクールに通って、これまでやってきたことを体系的にまとめ直したり、学び直しをしたり、次の職に備えたりすることです。「いったん職を離れる」という特徴があります。
学ぶテーマもビジネスだけではなくて、より人生を豊かにするような趣味の領域だったりとか、リカレントには(学ぶテーマの)多様性もあるんですね。
今、私が注力しているところはリスキリングです。リスキリングの成功事例を見ていくと、新しい仕事に就けているかどうか、そこできちんと成果が出せているかどうかが、リスキリングの目指すところになるわけですね。
清水:私は本の中で、リスキリングの成功事例を取材したものを書いています。今日は全部はご紹介できないんですが、こういった成功事例があります。
営業だった方がまったく違う研究職の領域に越境をして、そこで視座を高めてマーケティングの領域に移していったり。あるいは昨今は本当に多いですが、いわゆる文系の職種の方が、ぜんぜん関係ないDXプロジェクトにいきなりアサインされたとか。いろいろな試行錯誤をされて、デジタルスキルだけではなくて、いろんなスキルを身につけて成功したり。
会社を辞めてフリーランスのライターになって成功された方や、27回というすごい回数のジョブチェンジをしてきた方などが挙げられています。
「こういった方々は、なんで成功してきたのかな?」というところがポイントになってくると思いますが、成功の要因・秘訣としては必要なものが3つあります。
1つ目は「キャリアアダプタビリティ」。よく「キャリア適合」という言い方をしますが、時代や環境の変化に自分のキャリアを適合させていくことができるかどうか。
2つ目は、まさに今日の(テーマでもある)「リスキリングスキル」。ちょっと変な言葉ですが、新しい仕事で価値を出すために、自分を変革していく力があるのかどうか。3つ目は、これをやるにあたって活用できる資産をきちんと持っているか、もしくは備えているかどうか。この3つが必要になってきます。
清水:それぞれがどんなものなのか、概要をご紹介します。「キャリアアダプタビリティ」は、時代や環境の変化を受け入れて、自分の物語・ストーリーを作っていく力です。
もしかしたら、自分の意に沿わない変化もあったりしますよね。「こういうのはちょっと……」と、思うこともあるかもしれないです。それに対して、単に抵抗するだけではなくて、自分なりのストーリーや必然性を作っていく力ということですね。
聞いたことのある方もいらっしゃるかと思いますが、スティーブ・ジョブズの有名なスピーチ「コネクティング・ザ・ドット」がありました。点と点をつないで、自分の物語を作っていく力が必要になっていくわけですよね。
物語を作るために必要な4つの資質として、キャリア・アダプタビリティの専門家の方は、4つの「C」が必要ですよというお話をしています。
いろいろなものに関心を持つ。そして「Curiosity」と書いてありますが、それを探求して、好奇心を持って深めていく。「Control」とは何なのか? と思うかもしれないんですが、自分がコントロールできることにいかに集中するかということです。
いろんな変化の中で、自分ではコントロールできないことってありますよね。多くの方はそこに目を向けすぎてしまって、不満な状態になってしまうことが多いんです。そうではなくて、変化の中でも自分がコントロールできることにいかに集中していくか。それによって、点がきちんとつながっていくんですね。
あとは、やはり自信が必要になってきます。この4つの「C」があることで、点と点をつなげていくことができるんですね。
清水:2つ目の「リスキリングスキル」。これは仕事を変えるということになりますので、ある意味、自己変革が必要になってくるんですよね。
スキルアップでしたら1つのスキルを身につけることになるんですが、新しい仕事に就くとなると、リスキリングは「1つのことを身につけておしまい」ということはほぼないと思ったほうがいいです。これはスキルだけではなくて、場合によってはマインドセットも変える必要があるんです。
例えばリサーチ業務があったとしても、マーケティングで必要なリサーチのマインドセットと、研究職で必要なリサーチのマインドセットは違うわけですよね。
マーケティングだったら「仮説検証をどれだけ早く回していけるか」、研究職だったら「確からしさ」といったところが求められてくるわけですよね。なので、単純に1つのスキルを身につけるだけではなくて、周辺のスキルや自分の仕事に向かうマインドセットも変えていく必要があります。
スマートフォンに例えると、アプリだけではなくて、OSアップデートが必要になってくるということもあり得るわけですよね。
よく聞くのは「技術系のテクニカルなスキルを身につけたのに、ぜんぜん仕事で成果につながらない、稼ぎにつながらない」というものです。それ単体だと、やはり成果を発揮できないことが多いんですよね。なので“アプリ”だけではなくて、“OS”自体も変えていく必要がある。これがリスキリングで求められることです。
清水:特に自己変革で必要になってくるのは3つの資質です。まず1つ目に「Pivot」とありますが、これは先ほどの「点と点をつなぐ」というものに近いです。軸を定めて、どういう方向に自分が動いていくのかを決める。
よくスポーツでは「ピボットターン」と言って、バスケットボールでは軸足を決めて方向を変えたりしますが、軸を定めて、自分を方向転換していくことです。
あとは、やはり「Speed」。立ち上がりの早さですね。先ほどジョブチェンジを27回した方の事例をお話ししましたが、ものすごいスピード感なんですよね。ベンチャーもご経験されていますので「立ち上がりの早さはとても重要だ」と、おっしゃっていました。
今日はお話しできないんですが、その方はどうして成功したのかというと、自分のやっていることをフレームワークとしてどんどんまとめていって、再現性を高めていかれたんです。
そういったことをやっておくと、違う領域にスライドしたとしても、自分の中にあるフレームワークで「これはこうだな」と、いろいろな判断をして、素早く立ち上がることができると言えます。
3つ目は「Resilience」。打たれ強さです。ある領域ですごく成果を上げてきた、年齢やポジションが上の方が、ここでけっこうつまずくこともあるんです。これまですごく成果や実績を上げてきて、いろんなプライドがおありなんだと思うんですが、新しい領域に行くということは、当然ながらチャレンジや失敗はつきものなわけです。
そこで「自分が失敗することを許せない」となってしまうと、早く立ち上がるとか、OSをアップデートすることはできないわけですよね。なので、この3つがリスキリングをする上では非常に重要になってきます。
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