2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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noteが主催し、KIRINの協賛で行われたイベント「みんなで考えるウェルビーイング」に、ウェルビーイングの研究・発信をしている予防医学者の石川善樹氏と、女性向けキャリアスクール「SHElikes」を運営するSHE inc.の代表・福田恵里氏、そしてキリンホールディングスで従業員の働きがい実現に向けた取り組みを担当する秋葉美樹氏が登壇。今回は、日本人に合った幸せの見つけ方などが語られました。
佐々木絢氏(以下、佐々木):福田さんは会社の代表としても事業でも、働く人といろいろと関わっていらっしゃるなと思うんですが、最近感じる変化はありますか。
福田恵里氏(以下、福田):私は働く女性の事業をやっているので、本当に働きながら子育てを両立する人たちが増えているなと思います。今、男女の就労人口はほぼ変わらないんですけど、給与総額はいまだに男女で3倍ぐらい差があるところもあって。
女性が第1子を出産した後に離職する割合は何パーセントぐらいだと思います?
秋葉美樹氏(以下、秋葉):え、きた。
福田:産んだ後に仕事を辞める。
佐々木:30パーセント?
福田:47パーセントぐらいあって。
佐々木:あ、半数ぐらいの方が……。
福田:半分ぐらいの人が出産を機に仕事を辞めている。これだけ就労する人口が男女変わらなくなっているのに、キャリアの分断や給与総額の差があることは社会問題になっているなとすごく感じています。
石川善樹氏(以下、石川):給与総額の差は3倍じゃないですか。消費総額はどうですか。
福田:消費総額。
石川:男性よりも女性のほうが多いんじゃないですか?
佐々木:肌感覚ではそうですよね。
福田:肌感覚ではそうですけど、私のデータベースにはそれはなかったんで。
石川:もうそれでいいんじゃないですか?
(一同笑)
大事なのは得ることじゃなくて、使うことだと。
佐々木:でも確かにお金をもらって幸せかどうかわからないですもんね。
石川:お金をもらうことより、どう使うかがウェルビーイングに影響するんです。
秋葉:確かに。買い物した後の幸せはすごい。
石川:誰かにプレゼントを買ったり。でも世帯収入は意外とウェルビーイングに効かないんですよ。
福田:へ~。
石川:それをどう使ったかなんですね。そのほうがよっぽどウェルビーイングに影響していて。
福田:消費よりも生産、創造することのほうがウェルビーイングなのかなと思っていたんですけど、そうじゃないんですね。
石川:そうじゃないですね。
福田:消費なんだ。
石川:どう使うか。使うというのは買い物もあるし、保険や投資も含めてです。貯金するのか、自分のために使うのか、誰かのために使うのか。
福田:なるほど。でももし女性のほうが消費が多いとしたら、日本の女性のウェルビーイングは高いはずだと思うんですけど。日本の女性の自己肯定感は世界で最下位らしいんですよ。だから消費以外に何かしなきゃいけない。
石川:日本の女性は世界の七不思議と言われていて。
(一同笑)
ジェンダーギャップもあるじゃないですか。自己肯定感も低い。ストレスも多いし、給料も低いし。にもかかわらず寿命は世界一という。「なんてたくましいんだ」と思われている。
福田:確かに! 寿命は世界一なんだ。
佐々木:すごいですね。
石川:あらゆるデータで「日本の女性は虐げられている、苦しんでいる」と出ているんです。でも長生き。
福田:忍耐力?
石川:本当に世界の不思議なんですよ。日本の女性には何かがあるんですよ。
秋葉:でもトマトとかも……。
石川:トマト?
(一同笑)
佐々木:いきなり?
秋葉:トマトは水が少ないほうがおいしくなるじゃないですか。
石川:そういうこと(笑)?
秋葉:そういうので、渇望があると生きる力が強くなるのかなと。ちょっと今、お話を聞いていて思ったりしました。
石川:「蝶よ花よ」と育てられちゃだめだと。
秋葉:逆に仕事もそうなのかなと思って。
石川:もちろん寿命が長ければいい話ではない。ただ男と女を比べると。女性のほうがウェルビーイング、生活満足度は高いです。
福田:そうなんだ。
佐々木:女性のほうが高いんですね。
福田:そこもなんか不思議ですね。自己肯定感は男女で女性のほうが低いのに、生活満足度は高い。そこはやっぱり消費に関係があるんですか。
石川:自己肯定感は、自分で自分のことを認めるという比較的西洋的な発想なんです。日本の自己肯定感は「いや、私なんてまだまだです」と卑下するじゃないですか。
福田:そうですね。
石川:相手の人が「そんなことはないよ」と言って肯定される。自己否定の否定が日本の自己肯定感なんです。
佐々木:否定の否定。
福田:奥ゆかしい。
秋葉:やりますね。
石川:それをやるじゃないですか。
秋葉:やります、やります。
石川:会社の査定でも「私はこんなにすごいです」と言わないですよね。
秋葉:言わないですね。
石川:「いやぁ、ちょっとまだまだ至らぬところがあります」と言って、それに対して「いや、そんなことはないよ」と。
秋葉:そうです。否定の否定をしますね。
石川:言われて「……恐縮です!」じゃないですか。
(一同笑)
佐々木:恐縮です……。
秋葉:確かによく言いますよね。
石川:だから単純に自己肯定感が低いからといって、本当に自分を肯定できていないのかは「わからんね」となっています。
佐々木:なるほど。
秋葉:日本人らしいですね。
佐々木:建前。
秋葉:そうですね。
佐々木:今のお話を聞いていて、働くことに対して自分の満足度が上がっていく人もいれば、バイト的手段であって、生活が楽しけりゃそっちがいい方もいらっしゃると思うんですね。
ウェルビーイングを高めていく時にどうしたらいいのか。例えば福田さんは、事業で女性の選択肢を増やして手綱を握れるように考えていらっしゃる。どんなかたちでウェルビーイングを高めていくことができると思いますか。
福田:「自分の人生の手綱を握って最高の価値を発揮し続ける人を作る」というのが、うちの人事のポリシーとして設定しています。SHE株式会社に入ってもらったら、従業員みんなに「それを約束しますよ」というものなんですけど。
そのためにやっているのが、センスメイキング力。自分で意義づける力をすごく大事にしていて。うちの独自の文化として「最高価値」と「呪い」というのがあるんです。「最高価値」は人に止められてもどうしてもやっちゃうことは何か。「呪い」は自分の中にある無意識バイアス。
「例えばマネージャーはこうあるべきだ」「こういう立場の人はこうあるべきだ」と押しつけている無意識のバイアスが何か。いろいろなワークショップの中でこの2つを言語化していきます。
最高価値が一番発揮できるその人のミッションや組織配置が何かを考えたり。あとはその人のモチベーションが下がったり、誰かに対して攻撃的になっていたりしたら、何の呪いが発動してそうなったのかを上長が一緒にひもといてあげます。
自分が今やっている仕事への意義づけ力、センスメイキング力を上げながら、仕事へのウェルビーイングを高めることを組織カルチャーとしてすごく重要視しています。それがうちの会社でやっていることですね。
秋葉:すごく共感するというか、キリンも会社のパーパスと自分のパーパスのどこが重なるのかを、自分で考えて言語化しています。要は自分がやりたいことが会社として成し遂げたいことになっていく。それがお客さまにとっても価値のあることになる。この3つがイコールになることがすごくいい姿だと。
そのために「自分にとっての喜びはなんだろう」と仕事における価値観を深掘りします。おっしゃっていた最高価値ですかね。すごく本能的でわかりやすいですね。今、ビビっときました。
福田:「16Personalities(性格診断テスト)」「ストレングス・ファインダー(才能診断ツール)」など自分の強みを見つけるフレームワークはいっぱいあります。
それも加えつつ、うち独自のものもあって。うちのビジョンが「一人ひとりが自分にしかない価値を発揮して熱狂して生きる世の中を作る」なんです。
それを社員ができていないと、社会に対して問う説得力がないよねと。「自分にしかない価値が何なのか」をたくさんコーチングして明確にするんです。そこが最高価値になっている感じですね。
佐々木:すごい。
秋葉:してほしいですね。
佐々木:今、2つの会社のお話をうかがって、石川さんはどうですか。
石川:実は「自分は何ですか」という問いがあって。
佐々木:すごく哲学的なのが来た。
福田:広い。
石川:これがすごく大事で。今、お二人に共通して「自分がしたいこと」「熱狂できるもの」「マイパーパス」という話があったんですけど。肉体的に閉じられた、「これを自分だ」と思っている人と、「みんなも自分」という自分の範囲が広い人がいるんです。
例えばエリザベス女王や天皇陛下は、自分という概念がめちゃくちゃ広いと思うんですよ。人によって「自分」と言われた時の考え方がけっこう違う。日本人は、周りも含めて自分と思っている人が多いんです。
だから「何がやりたいんですか」という時に、内発的に出てくるよりも社会課題やほかの人が何をしたいのを取り込んで、結果として「私はこういうことがしたいです」と発言される方が多いんですね。肉体的に閉じられた、「この自分がやりたいんです」という人は、そもそもサラリーマンにならないです。すでにやりたいことがあるから。
だからマイパーパスや会社のパーパスの融合は、たぶん起業家の人は考えないんですよ。
秋葉:そうなんですね。
石川:でも日本人は、自分の範囲が広い人が傾向として多い。これを、とある人類学者の人が日本に来た時に、「日本人は自分のことを出発点だと思わない人が多い」と発言しています。「日本人は自分を終着点だと思っている」と。
西洋人はどちらかというと個から始まり、自分が出発点で外の世界に働きかけることが多いんだけど、日本人は自分が終着点に見えると。外のものをいろいろ取り込んで、自分の物にしていく。子どもが生まれると、子どもも含めて自分になりません?
秋葉:なりますね。
石川:旦那はなかなか含まれないかもしれないけど。
秋葉:それはないと思います。
石川:そんなふうに自分の概念はけっこう広がるんですよね。
佐々木:すごい。
石川:それ故なんですけど、日本人の場合「あなたは何がしたいんですか」と聞いても出てこないことがほとんどなんです。
佐々木:昨日、会社の人と飲み会に行ったんですけど、その時に「最初の1杯は何を頼む?」という話になって、最初の人がお店の名物を頼んで「私も」「私も」と。
石川:それです、それです。
佐々木:次の人も遅れてきた人も「みんなは何を頼んだ?」「じゃあ私も」となる。最後にやってきた主役だけ飲みたいものを頼んだので、もしかしたらその人しか内なる自分を持っていないかもしれないなと、今思いました。
石川:内発から始めたほうがいい人と、外発から始めたほうがいい人がいるんですよ。
佐々木:なるほど。どっちがいいとかじゃなくて。
石川:みんなが飲んでいるのを見て「私もそれが飲みたい」という気持ちが湧いてくるんです。
佐々木:そういう人のほうが会社員に向いている?
石川:会社員が向いているというか、日本人はそういう人が多いです。だから和を大事にするんです。和とは「自分が広い」とも言えるんですね。
福田:確かに。それはいい観点ですね。利他の精神のような日本人特有のものは、けっこう同調圧力を生んだりと悪く言われる場合もある。でもエリザベス女王や天皇のように「自分という主語が大きい」と言われると「私たちってすごくね?」と(笑)。
秋葉:そうですね。すごい。
福田:日本人は視座が高い。
石川:ある人に聞いたんですが、日本人は国際会議に行くと「ずるい」と言われちゃうみたいなんですよ。「日本人は私たちが考えていることを全部わかっているでしょ。それを踏まえてから発言するからずるい」と。「自分たちはほかの人が何を考えているかわからないから、主張するしかないんだ」と言っていて。
秋葉:確かに。わかったていで、人のこともそんなに聞かない。
石川:外国の人たちは、この肉体から出てくるものを外に広げたい人たちなんです。
秋葉:はい。はい。
石川:ほとんどの日本人は多くのものを取り込みたい。日本の歴史もそうじゃないですか。いろいろなものを取り込んで取り込んで、日本の文化ができあがっている。
佐々木:道しるべをくれる、自分と一対一で向き合う神様をもっている人が少ないのもあるんですかね。海外の人のお話を聞くと「もっと自己中心的になれたほうが生きるのが楽なんじゃないか。それで自分の満足度が上がったりするのかな」とも思いませんか?
福田:確かに。思っちゃうけど、今の話を聞くと別にそんなこともないんだなと。わざわざアメリカ人のまねをして「もっと自己主張をしていこう」とやらなくても、私たちに合った自分ごとを広げるやり方があるのかもと思いますよね。
秋葉:自己主張をすることを喜ばしいと思う性質がないんだとすると、ちょっと考え方が変わります。
石川:発信型の人よりも受容型の人が多いんですよね。
秋葉:受容型の人には受容型なりのウェルビーイングがあるということですよね。
石川:受容型の人は深掘りするんじゃなくて、外側にいろいろなものを置いてあげたほうがいいです。「会社はこう考えているよ」「誰々さんはこう考えているよ」と言っていくと、「じゃあ、私はこれがしたい」となりやすいです。
秋葉:なるほど。
福田:確かに。
福田:けっこうロールモデル不在の時代と言われますけど、ロールモデルが多様化していることでもあるじゃないですか。だから会社の中でも、内発的動機が生まれるような外発的なロールモデルを連れてくるのが大事ですよね。
石川:自分と似たタイプの人じゃないとロールモデルになりにくいと、今けっこう言われています。
福田:はいはい。
石川:自分と似たタイプの人を採用しちゃうんですよ。自分と似たタイプはすごくわかりやすいんです。
佐々木:本当にそう。
石川:だから応募者のタイプを事前に調べて、同じタイプの面接官をあてる会社が増えています。入社した時にその人と似たタイプの人を上司にする。あるいはメンターにするという。
秋葉:そっか。
石川:そうするとこの会社で私のようなタイプは、どうやったらやりがいをもって活躍できるのかが、よくわかるんです。
秋葉:そうですね。でも似たタイプを合わせるのも、簡単なようで難しいですね。
石川:今まではその人がどういうタイプなのかを判定するツールがなかったから、どの人とどの人が似ているのかがわからなかったんです。
秋葉:そういう診断になるんですかね。
石川:そうですね。最近そういうツールがちょこちょこ出始めて、取り入れ始められています。これまでの診断ツールは、個にフォーカスが当たり過ぎちゃって。
福田:ああ、フォーカスしているんですね。へえ。チームじゃないんだ。
石川:関係性をちゃんと見られるツールは、これまで限られていたんです。
福田:確かに。
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