2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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世の中で流行する商品や店舗には、どんな秘密があるのか。本イベントでは、新たなビジネスを始める起業家や自社商品の売上に行き詰まりを感じている経営者に向けて、商品を売るための仕組みやマーケティング施策が語られました。本記事では、外資系企業などマーケティングの最前線で活躍された理央 周(りおうめぐる)氏が、マーケティングの戦略立ての順序や事業コンセプトを決める際のポイントについて語ります。
理央周氏:今日いただいているご質問にも「営業ってどうしたらいいでしょう?」みたいなことがあったので、営業とマーケティングの関係もちょっとお話をしていきます。営業ってよく考えてみたらすごく大事ですよね。「なりわいを営む」と書くので、会社にとってはなくてはならないですよね。
先ほど言ったセリングは製品を販売する活動です。なので、うちの会社から個々のお客さまに販売や提案をしていくわけですね。矢印の方向は、自社からお客さまです。
一方でマーケティングは、製品が売れるような仕組みを作っていくことです。なので、市場全体を見て、そこにいるお客さまとお客さま候補、ターゲットの方々に働きかけて、自社に問い合わせをいただいたり、お店を持っている人だったら来店してもらうというふうに、矢印が逆なんですよね。
これも深い話で、僕はYouTubeとかに上げているので、見ておいてもらえればいいと思うんですけど。矢印が逆だから、「じゃあ違うことをやっているのか?」と言うと、販売することなのでぜんぜんそんなことはないですよね。でも、「売」と「る」の間に「れ」が入っているだけで、目的は一緒だけど、やることがぜんぜん違うということです。
なので、売れる仕組みを作っていくマーケティングの仕組みを、営業の方が個々に、自分なりに解釈してお客さまにアプローチする。だから、部署としてマーケとか営業に分かれて、具体的にやることが違うだけで、(大本の)やるべきことは同じなんですね。なので、マーケと営業はこんな関係ということをちょっと頭に入れておいていただければと思います。
2022年ぐらいまで3年ぐらいコロナが続いて、やはり今までといろんなことが大きく変わりましたよね。そもそも2019年ぐらいまでは、アメリカなんかはZoomを使っていましたけど、(日本では)Zoomなんてぜんぜん使ってなかったのに、ここ3年で激変したと。
そういうふうに、コロナだけじゃなくて市場も変わると、お客さまも変わるから。いろんな企業の方とか個人事業主の方にとって、今持っている課題感や問題がだいぶ変わってきているんですよね。まず、マーケティングにしても営業にしても、「問題は何なのか」を把握しないと駄目です。
「どうしたんですか? 問題は何ですか?」と僕が聞くと、こんなことがよく返ってくるんですね。けっこう大きい会社の社長さんはこんな感じです。「じりじり売上が下がってきちゃったんだよね」とか、「新しいお客さんが取れないんです」とか、「値引きしないと売れないんですよね」とか。でもこれって問題でしょうか? ちょっと考えていただければと。
「問題」と「課題」をごっちゃにすると、結局やらなきゃいけないことが見つからないので、分けて考えてほしいんですね。「問題」というのは、予想をした時に、現状と理想が違っていることですね。例えば営業だったら売上目標の100万円とか。考えてみたら当たり前ですよね。現状と理想の姿がマッチしていたら問題ないわけだから。
(現状と理想の)ギャップがあることが問題なので、ここをどうやって解決していくかが課題ですね。だからさっき「売上が下がっている」とかいくつか言いましたけど、それは今の状況を言っているに過ぎないんですよ。
これを深掘りしていくとどうなるかと言うと、「なぜ売れないのか」とか「なんでお客さんが取れないのか」。そうすると、売上が下がっているのは、市場のつかみ方が浅かったり、ニーズを探り切れてないからお客さんに届かないとか、お客さんが価値を感じないから安くしないと売れないとかってなっちゃうんですね。
今お伝えしたことが本来の問題なんです。これ(状況と問題)は何が違うかと言うと、深掘りの仕方が違うんですけど、よく見てみると、主語が違うんです。左側(状況)は全部「うちの会社」ですよね。でも右側(問題)の主語は「お客さま」なんです。ここがとても大事な、把握しておかなきゃいけないところですね。
だから、あなたが売れないんじゃなくて、お客さまが買わないんです。ここに何らかの問題がある。お客さまの立場で、お客さまの問題を解決しない限り、モノもサービスも製品も商品も、ニーズがなければ売れないですよね。なので、この目線の転換をすることが、最終的には営業、ひいてはうまくマーケティングができるかどうかの大きな課題になってくるわけですね。
よく本では「顧客視点になりましょう」と書いてありますよね。でも、そうは言っても難しいのが現状なんです。なぜか? 目線が違うからなんですよね。そこで今日は、お客さまから見た時の課題感をどうやって解決していくかみたいな話をしていきます。
マーケティング部門は幅が広いので、ざっくり言うと戦略を立てて、行動計画を立てます。準備して分析して、戦略を立ててやる。これが駄目だったら、またもう一回分析するみたいにやっていくことなんですけど。「何を」「誰に」「どうやって」買ってもらうか、この戦略がとても大事です。
「何を買ってもらうのか」「誰に買ってもらうのか」「どうやって買ってもらうのか」。これがうまいこといくと、売れる仕組みになるわけですね。これも「何を売るのか」「誰に売るか」「どうやって売るか」ではないですよね。売り方とかではなくて、お客さまが何を欲しいのか。それで「何を」「誰に」「どうやって」と表現しています。
1つ大事なことは、「何を」と「誰に」を徹底的に詰めてから「どうやって」を考えないといけないんですね。なぜかと言うと、どうやって買ってもらうかという戦略・戦術は、めちゃくちゃいっぱいあるんですね。
なので、良いものを選ばないと、私たちが持っている経営資源、ヒト・モノ・カネ・時間・情報は、全部限りがあります。無限なものは1個もないので、できる限り上手に使いたいですよね。だからムダ撃ちをしないようにしようということです。
ちょっと1個だけ事例をお話しすると、僕が15年前ぐらいに起業したばっかりの時に、コミュニケーション講師の先生たちと5~6人でご飯を食べていました。すごくちゃんとビジネスもやっていらっしゃる方で、ブログとかもしっかり書いていて、ITリテラシーもあるんですね。
当時、Facebookが流行っていた時で、僕はITとかはそこそこ得意なので、「いいね」とかいっぱいもらっていて。その方はエツコさんっておっしゃるんですけど、当時、コミュニケーション講師の引っ張りだこの先生でした。
「エツコさんって、なんでFacebookやらないの?」と聞いたら、「え、だって私のお客さんは見てないもの」と言うんですね。これは大正解です。ところが2ヶ月ぐらいして、急にFacebookのMessengerで連絡が来て、「理央さん、私Facebook始めたの。フレンドになってくれる?」みたいな。
「どうしたのエツコさん。『やらない』と言っていたのに」「だって、私のお客さんも始めたんだもの」と。こういうことなんですよね。
なので今だったら生成AIとか、ちょっと前だったらいろんなSNSとか、(流行っているものを)やるのはいいんですけど、お客さんが見ていないところに、私たちの大事な時間と労力をかけるのは、特に起業初期の時とかは難しいですよね。
早くやらなきゃいけない、ピボット的にやらなきゃいけない、リーンスタートアップ(画期的な新製品を開発していく起業方法、および製品開発マネジメント方法)をやらなきゃいけない。わかりますけど、「何を」と「誰に」という事業コンセプトをしっかり固めてから、「どうやって」をやる。ここの順番だけ(ブレずに実施)されるといいんじゃないかなと思います。
何回も言いますよ。売れるということに魔法の解決策はないですけど、近づくことはできますよね。なので、売り方よりも先に売り物と売り先。何を買っていただくのか、誰が買ってくださるのか。ここを徹底的に詰めていくのはとても大事なことだと思っています。
考え方ばっかり言っていてもあれなので、ちょっと1個事例をお話ししていきます。「何を」ですね。そもそも「何を」というのは自社の売り物のことなので、製造業だったら製品とか、小売業だったら商品、サービスがあると思います。
これは起業の時に考えなきゃいけないんですけど、売り物ってご自身も売り物ですからね。そこもちょっといろいろと考えていくといいと思います。販売するものだけではなくて、ご自身も売り物というか、価値があるものなので。
プロダクトの「何を」の中身は「強み」。さっきのドラッカーは「強みから離れてはいけない」と言っているんですね。「弱みから生まれるものは何もない」と言っています。僕も9割ぐらい、それは正しいと思いますね。それで、「違い」をはっきりさせましょうということと、「値決め」ですね。
こういうのを合わせたものが売り物です。これを合わせていくと、お客さまが感じてくださる価値になるわけですね。ちょっとそれを頭に入れておいていただいて、そういう中で違いをはっきりさせて差別化をやっていきたいところなんです。
「差別化。そりゃそうですよね」という話がいっぱい出てくるんですけど、いろんな差別化や独自化の仕方があるんです。1個お話ししていくと、「ブルー・オーシャン戦略」という考え方があります。これも10年ぐらい前に出た本の名前ですけど、「青い海を探しましょう」というお話ですね。
なんで青い海なのかと言うと、この本を書かれた先生は「市場はめちゃくちゃ競争が激しくて、みんな値引き合戦になっているよね。そうすると営業利益が落ちるから、血が流れている赤い海のようなものだ。だから血が流れてない海を探しましょうよ」という考え方ですね。
僕も最初ささっと読んだ時に、青い海って、赤い海から遠く離れたところにあると思ったんですね。でもその先生は「赤い海に半分足を突っ込んだところにあるんだ」と。シルク・ドゥ・ソレイユとかそうだよねと言っています。
シルク・ドゥ・ソレイユって元はサーカスなんですけど、サーカスにエンターテイメントの要素、例えばミュージカルとか演劇を乗っけています。だからゾウとかはあんまり出てこなくて、エンタメ+サーカスというものなんです。
こうしていくとどうなるかと言うと、もうシルク・ドゥ・ソレイユはサーカスの1個として見られないわけですね。お客さんの目から見ると、木下大サーカスに行くのか、ボリショイサーカスなのか、シルク・ドゥ・ソレイユかっていう選び方ではなくなる。なので、「自社がやっていることと近いところに、チャンスはあるんだよ」ということですね。
考えてみたら、なんとなくわかりますよね。右の上のほう(赤い海から完全に独立したところ)に作ろうとすると、けっこう大変なんです。赤い海が何で赤くなるか、競争が激しくなるかと言うと、需要が多いからなんですね。みんなが「欲しい」って言うから、「うちも売ります」って売り手がいっぱい出てくると。そうすると競争が激しくなるわけです。
右端(赤い海から完全に独立したところ)で何かやろうとすると、需要がないかもしれないし、あってもお客さんにゼロから教えてあげなきゃいけないから、めちゃくちゃ大変なんです。なので、何かと何かをくっつけるといいんじゃないの、みたいなことです。
さっきのシルク・ドゥ・ソレイユもそうですよね。サーカスとエンタメ。そうすると、サーカス好きな人も来るけど、エンタメ好きの人も来るから、そこでまた市場が生まれますよねと。
僕の出身地は名古屋なんですけど、名古屋はけっこうこういう、新しくくっつけるのが多くて。味噌カツとか、うな丼とお茶漬けを組み合わせたひつまぶしとか。こういうのもブルー・オーシャンですよね。
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