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片付けパパ対談 #09 実は説明上手な人がやっている「数学的な話し方」~ 「伝える」から「伝わる」コミュニケーション術 ~(全6記事)

説明上手な人が口にする、本題に入る前の一言 なぜ上手い人が話すと「聞きやすい」「わかりやすい」になるのか

『片付けパパの最強メソッド』の著者・大村信夫氏が旬なトピックでゲストと対談するシリーズ。第9回目は『「数学的」話し方トレーニング』の著者で、ビジネス数学教育家の深沢真太郎氏が登壇。「『伝える』から『伝わる』コミュニケーション術」をテーマに、話の冒頭で定義すべき2つのことや、成田悠輔氏の話のうまさがわかる事例などが語られました。

前回の記事はこちら

説明上手な人が本題に入る前に行うこと

深沢真太郎氏(以下、深沢):話がうまい人、説明が上手な人は、この数学的な5つの動作を具体的に、「導入」と「解説」で使うんですね。一般的には「結論から言いましょう」とよく言いますよね。

たいていのビジネスコミュニケーションにおいて、「主張」と「結論」って同じだと思うんです。要は言いたいことだから、多くの人は「主張」、つまり「結論」から始めるわけです。

大村信夫氏(以下、大村):そして、「なぜならば」と解説していく感じですよね?

深沢:そうそう、その通りです。それでももちろんいいんですけど、上手な人は主張をする前にあることをするんですよ。それがここに書かれているものです。

大村:「定義」?

深沢:そう、導入で「定義」をしているんですね。定義という行為をした上で、「僕はこうだと思うんですよね」と主張をします。

その後に「それはなぜか」を説明する。解説するんですね。ここの部分で、さっきご案内した4つの行為を組み合わせてやっていく。説明上手な人は、簡単に言うとこういうモデルで話しています。だから『「導入」と「解説」の仕方で決まる』んだとお伝えしたい。

大村:なるほど。

深沢:この絵がすべてですね。

大村:じゃあキーチャートですか。

深沢:うん。だって「主張」と「結論」は決まっていますもの。だとすると、「導入」と「解説」で決まりますよね。

大村:確かに。「主張」とかはもうありますものね。

深沢:うん。だって、「新規事業はこれをやるべきだ」という主張があるじゃないですか。

大村:そうですよね。これはもう心というかね。で、結論も基本一緒じゃないですか。「だから、やりたいです」みたいな。

深沢:そう。となるとポイントは、どう考えても……。

大村:「導入」と。

深沢:説明、解説ですね。

大村:なるほど。

深沢:このように整理をしているんです。

話の冒頭で定義すべき2つのこと

深沢:じゃあ今日は時間も短いので、ここから先は明日からすぐできることでもある「導入に焦点を当てたお話」をしたいと思います。

「導入」ですることは「定義」だとさっき申し上げましたね。「定義」って何でしたっけ?

大村:前提条件とかを決めることですね。

深沢:そうそう、「~とは~である」と決めることでしたよね。ここの文脈にフォーカスをします。

大村:「言葉を定義する」。

深沢:「定義、定義と深沢さんは言うけど、具体的に導入で何を定義するんですか?」というのが、今日ご参加のみなさまの疑問だと思うんですよね。なので、ようやく実践的な、具体的な話になります。定義するものは2つあります。1つは「言葉を定義」します。もう1つは「場を定義する」。

大村:「場を定義する」はなんとなくわかるんですけど、「言葉を定義」がよくわからないですね。

深沢:はい、ありがとうございます。

大村:「日本語でしゃべります」とか。

深沢:あ、いいところまでいっています。

大村:「フランス語でしゃべります」という感じが。

深沢:そうそう、それも立派な「定義」ですよね。あるいは、例えば「生産性」という言葉を、会議とかを前提にしてビジネスコミュニケーションで使うとしますよね。でもどうでしょう。人によって「生産性」という言葉の解釈が違う可能性はないですか?

大村:あ、その「言葉の定義」ね。なるほど。

深沢:そうそう。それが違ってしまったら、その内容がどれだけ正しくても、どれだけすばらしいものでも、そこが違っている時点で、その場は成立しないと思うんですよ。

だから、まず最初にするべきは、「今からの話の中で、僕は『生産性』という言葉を使うんですけれども、『生産性』とはこういう意味合いで使います」。例えば「『売上÷広告費』のことです」みたいに定義をしてあげれば、認識のずれはないですよね。

大村:なるほどね。

深沢:これが「言葉の定義をする」ですね。

「場を定義する」ことの重要性

深沢:そしてもう1つが「場を定義する」ですけど、これはもう(スライドに)具体的に書いてありますね。

「目的・時間・前提」です。「今日のこの場は何が目的ですよ」と。なんとなくふわっと始めない。

大村:なるほど。

深沢:あるいは「時間を定義する」。

大村:時間? なぜでしょうか?

深沢:意外とみなさんにはこの視点がないんですけど、「今からお時間をいただきます。時間にして5分程度です」と、定義をしてから話し始めてはどうでしょうという提案ですね。

大村:なるほど。

深沢:例えば、「今から5分間時間をいただきますね」と、まず本題に入る前に私が言ったら、聞いているみなさんは、「今からこのおじさんは5分話すんだな」と認識するんです。

その認識の下、私は5分間話をしますよね。聞いている人はその話を長いとは思わないはずです。なぜかと言うと、最初に「5分話しますよ」と言っているからです。でも、この定義をしないで話し始めると、参加しているみなさんは、「この人はぱぱっとしゃべって終わる」と思っているかもしれないわけです。

大村:なるほど。

深沢:そこで5分、10分話していると、「この人の話は長いなあ」になるのではないかなと思うんですよね。

大村:なるほど、そういうことですね。

深沢:それが「場を定義する」ことです。

大村:ごめんなさい。僕、上司とかには、「すみません、ちょっと相談があるので、3分お時間をいただいていいですか?」みたいな感じで、先に言うことが多いです。

深沢:とてもいいことだと思います。これは要するに、「どういうつもりでその話を聞けばいいのか」を先に伝えるんです。10分聞くつもりで聞けばいいのか、どういう前提で聞けばいいのか、ですね。「どういうつもりか」を先にセットしたほうがいいです。

大村:なるほどね。先方にスタンスを伝える。向こうも、身構えてもらうと言ったら変ですけれども、そういう状態になってもらうんですよね。

深沢:そうです。これが最初にすることではないか。数学は最初に定義するのが絶対です。

大村:なるほど。

深沢:それと同じ考え方をするんですね。

大村:「ちょっと今、1分いいですか?」とか、けっこう言ってしまいます。

深沢:いいですね。

大村:「エレベーターの中だけ1分、ちょっとしたご相談ですけど」とだいたい僕は言っています。

深沢:そういうことです。

成田悠輔氏の話のうまさがわかる事例

深沢:あまり理論ばっかり話していると抽象的で伝わりにくいので、例えばこの方のお話を。成田さんってご存じですか?

大村:眼鏡が三角……。

深沢:(眼鏡の左右のフレームの)どちらかが丸で、どちらかが四角形。変わった方ですよね。

大村:おもしろい方かなと思います。

深沢:今日ご参加のみなさまはすごく勉強熱心な方だと思うので、ご存じの方も多いでしょう。

今、成田悠輔さんというイェール大学の助教の方が、大活躍ですよね。いわゆる説明がうまい人、頭のいい人の代表で、1人挙げさせていただいたんですけど。この方、やっぱり私から見てもうまいです。「すごく話がうまいな」「説明がうまいな」と思うんですね。

それを端的に表す例をご紹介したいと思うんですけど、この方は、……200人、300人ぐらい参加者がいたある講演会で、冒頭、まさに「導入」ですよね。

大村:「たぶんご期待には添えない、非常に退屈な話をさせていただきたいと思います」。

深沢:と言ってから本題に入ったんです。

大村:へえ。

深沢:冒頭でこんな発言を私は初めて聞いたんですよ。なぜこんなことを言うんでしょうね。

大村:なんでだろう? 「みんな、そんなに身構えなくていいよ。リラックスして聞いてよ」ぐらいなのか。でも本当に退屈な話ではないはずじゃないですか。

深沢:その通り。

大村:ですよね。

深沢:今の大村さんの解釈はすばらしいなと思いました。もちろん成田さんに直接聞いたわけではないので、仮説の域は出ないんですけど、私もそう思うんですよね。絶対に意味があってこういうことを言うんですよ。

大村:そうですよね。

深沢:そうでなかったら、第一声で言う必要がないことなので。決して崇高な話をするわけではないんです。ものすごーく簡単な、彼的にはそんなにレベルの高い話をするわけではないので、「みなさんの期待には添えないかもしれませんが、退屈かもしれませんが、気軽に聞いてくださいな」と言いたかったのではないかなと思います。

上手い人が話すと「聞きやすい」「わかりやすい」になるワケ

大村:そうですね。こう聞くと、なんかすごくリラックスして聞ける気がするし、「退屈になったとしても大丈夫なんだ」みたいな、そんな感じもね。

深沢:たぶん会場は「そんなに身構えなくていいんだ。だらっと聞いてればいいんだ」となるんですよね。

大村:なるほど。

深沢:成田さんはこの一言で、その会場がどういう場かを定義したんですよ。ちゃんとしっかりメモを取りながら聞く場ではなくて、ゆるりと聞けばいい。

大村:なるほど。

深沢:「今から話すのは、そういう内容だよ。今日この場はそういう場だよ」と。

大村:なるほどね。僕も、この対談の場って、まさに『徹子の部屋』じゃないですけど、喫茶店で話すようなことを、ちょっとみんなに聞いてもらうみたいな感じだと定義している。

深沢:そう、それです。

大村:なるほど。

深沢:そうしてあげると、さっきも言ったキーワードである「どういうつもりで話を聞けばいいのか」がセットできるんですよ。そのつもりの通りにスピーカーは話すので、当然ながらイメージ通りの話が来るから、「なんか聞きやすいな」「イメージ通りだな」「わかりやすいな」「思った通りだな」になるということですよね。

大村:なるほど。具体例をありがとうございます。

深沢:まず最初に定義をしてから話し始めたほうがいいよという話ですね。

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