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片付けパパ対談 #09 実は説明上手な人がやっている「数学的な話し方」~ 「伝える」から「伝わる」コミュニケーション術 ~(全6記事)

ビジネスで「例え話」がうまくなるコミュニケーション術 別のものに置き換えたり、事例で説明できる人の特徴

『片付けパパの最強メソッド』の著者・大村信夫氏が旬なトピックでゲストと対談するシリーズ。第9回目は『「数学的」話し方トレーニング』の著者で、ビジネス数学教育家の深沢真太郎氏が登壇。「『伝える』から『伝わる』コミュニケーション術」をテーマに、数学的な5つの動作や、物事を細かく分けることの重要性について語られました。

前回の記事はこちら

数学的な5つの動作

深沢真太郎氏(以下、深沢):「数学的思考」は、説明という行為ととても仲良しです。だから今日、私が「説明する」という文脈でお話しができるんです。じゃあ具体的なところにいきますね。説明がうまい人がやっている数学的な、さっき「動作」と言いましたよね。実はここに書かれている5つです。

大村信夫氏(以下、大村):へぇー……「定義」「分解」「比較」「構造化」「モデル化」。急に難しく感じてしまうんですけど。

(会場笑)

深沢:「出た、なんだか数学っぽいのがきたぞ」という感じですよね。

大村:共感でいいんですよね? 僕が「バカじゃない?」という話ではなくて。

深沢:今、会場のみなさんもこうやって「うんうん」と頷いているので。そうそう、「数学~」とか「ロジカル~」みたいな先生はこういう言葉を使うわけです。やな感じです。

大村:使いますよね、そうそう(笑)。

深沢:でもぜんぜんいやな感じではないですよ。

大村:ではないんですか?

深沢:ではないです。なぜこの5つが数学をする時にする行為かは、みなさまにも納得していただきたいので、少し説明に付き合っていただきたいと思います。本当に簡単な話です。

大村:1番目が「定義」でしたよね。

深沢:はい、「定義」。定義とは、「~とは~である」と言葉にすることです。例えば、何だろうな、「人生」を定義してください。

大村:それ、難しくないですか?

深沢:(笑)。

大村:いきなり超難題というか、解けない人のほうが多いんじゃないですか。

深沢:そうですか? じゃあ大村さん、「休日」を定義してください。

大村:休日?

深沢:大村さんにとっては、「休日とは~である」。

大村:みなさんもよかったら「休日とは」で、チャットに書いてください。

深沢:そうですね。そうか、そういうふうにチャットを使えばいいですね。「休日」の定義をお願いします。人によってぜんぜん違うよね。

大村:「仕事をしない日」って。

深沢:そうそう、そうですね。

大村:僕もこれを言おうかなと思っていました。

深沢:「休日とは仕事をしない日である」。

大村:「義務がない日」。

深沢:「義務がない日である」。

大村:でも「仕事をしない日」が多い。「意義がない日」とか、「安息日」「旅行する時」。なるほど。「自分のために時間を使える日」。こう見ると、ある程度類型化はできるものの、みなさん違いますよね。

深沢:はい。言葉は少し違ってきますよね、

大村:「旅行してもよい日」なんていう。

深沢:「休日とは、寝坊をしてもよい日である」。

大村:いいですね。

深沢:すばらしい定義じゃないですか。

大村:なるほど。

「定義」をしないと始められない

深沢:そこまではOKですよね。数学では、この行為を最初にするんですよ。例えば、書いてありますけども、「素数」というものがありましたね。

大村:素数ってあれでしょう?

深沢:あれですよ。

大村:1とその数でしか割れない数。自然数。

深沢:おお、すごいすごい。そう。1と自分自身以外では割り切ることができない。だから2とか3とか5とかは、「素数」なんて言いますね。それが「素数の定義」です。

大村:なるほどね。

深沢:ということは、「素数」について勉強したい、研究したい時は、まず最初に「素数とはこういう数である」と定義しないと始められないと思うんですよ。だから円の勉強をしたかったら、「円とはこういう図形である」と定義しないと始められないんですよね。

大村:なるほどね。

深沢:つまり何が言いたいかというと、数学という学問は、「定義をしないと始められない」という作法があるんです。

大村:なるほど。

深沢:ここまでどうですか。

大村:ちょっと、わかってきました。さっきの数学と思考とかが仲良しだから、説明の前にくる思考は、この「定義」という要素が重要ではないか、みたいな感じでしょう。

深沢:お、鋭い。その通りです。あとでちょっと出てきますけどね。

大村:なるほど。

深沢:そういうことです。オンラインでご参加のみなさんも、「定義をしないと始められない」という作法があることだけ、覚えておいてください。

物事を細かく分けることの重要性

深沢:2番目、「分解」。これは、優秀なみなさんはよくご存じですよね。「物事を分けましょう」なんてよく言いますよね。

大村:はいはい。

深沢:(ルネ・)デカルトさんという哲学者も、「難しい問題は小さく分けて考えるのがいいよ」と言いますね。その通りだなと思います。そして、なぜこれが数学と仲良しかというと、さっき大村さんが、「微分・積分」とおっしゃっていましたね。

大村:微分・積分。

深沢:「因数分解」なんて、言葉としてよく聞きます。

大村:でも僕ね、微分・積分って、高校で習ってから一度も使っていないですよ。

深沢:実は数学の考え方はいろんなところで使われているんですよ。ここで注目してほしいのは、「因数分解」にしろ「微分・積分」にしろ、使われている言葉があることです。

大村:「分ける」という漢字がありますね。今気づいた。

深沢:その通りですよ。「分ける」という言葉が使われている。つまり数学とは、物事を細かく小さく分けていくことで、「わからなかったものがわかるようになるよ」とか、「解けなかった問題が解けるんだよ」と教えてくれる学問だということです。

大村:なるほどね。

深沢:だから「分解」という動作は、とても数学的ということですね。

大村:「おお」と、チャットできているな。こういう反応はすごくいいですね。ナイスリアクションです。

深沢:ナイスリアクション。もっとちょうだい。

説明上手につながる「構造化」

深沢:では3番目。「比較」。これはわかりやすいですよね。比較なくして数学は絶対にできないです。

大村:イコールって比較ですか?

深沢:そうですね。「こっちとこっちを比べて同じです」という意味なので、比較です。

大村:ああ、そうなんだ。

深沢:「こっちのほうが大きいですよ」。

大村:不等号とか。

深沢:そう、よくご存じで。だから数学とは、比較をすることで行う営みです。だから、比較も実は数学的な行為だということです。

4番目「構造化」。少しだけ抽象度が増すので、ここはちょっと丁寧にいきたいと思いますが、言葉が嫌ですね。

大村:そうですね。

深沢:(アンリ・)ポアンカレという数学者さんが、「数学とは異なるものを同じものとみなす道具です」という言葉を残しているんですね。

大村:僕だけじゃなくて、みんなポカーンです。

深沢:大丈夫。ここからわかるから。でも、意味がわからないでしょ?

大村:意味がわからないですね。

深沢:例えばスライドのこれは、ポアンカレの言葉で、下に2つ数式があるのが見えますか? ちょっと読んでみてください。

大村:「100X+100Y=100」。

深沢:はい。もう1個も読んでみてください。

大村:「X+Y=1」。

深沢:そうですね。この2つの数式って表面上は違う式ですよね。

大村:表面上はね。

深沢:違うものですよね。でも数学をちょっとお勉強したみなさんだったら、この2つが同じ式であるともわかるはずです。

大村:わかりますね。

深沢:そうですよね。だから、「この2つは表面上は違うけれども、構造上は同じものだよ」と言えないでしょうか。

大村:はい、言えます。

深沢:違うけれども同じ。「違うものを同じものとみなす道具なんだ」とはこういう意味です。

大村:なるほど。そういうことですか。

深沢:世の中的には「具体⇄抽象の思考法」なんて呼ばれるものですけど、数学にはこういう側面があるんですね。

大村:なるほど。抽象度を上げて物事を理解するみたいな話ですかね。

深沢:そうそう。だから、「構造化」みたいな頭の使い方が得意な方は、何か出来事があった時に、それを構造にして、「あ、このメカニズムの構造になっている別のものってこれがあるよね」と、別のものに置き換えることが上手です。

大村:なるほどね。

深沢:だから、例え話が上手かったり、他の業界の事例でものを説明できたり、別のものに置き換える人は(構造化が)上手な人。

大村:はいはい、「野球で例えると」とか、例えている人ってけっこう説明が上手な人が多いですよね。

深沢:その通りです。今大村さんは「説明上手」とおっしゃったじゃないですか。つまり今日の文脈でいうと、説明上手になるためには、「構造化」はとても大事な頭の使い方だということです。

大村:なるほど。

深沢:これが4番目。もうちょっとでおしまいですね。

性質や特徴を「型」にして説明する

大村:次が最後ですね。

深沢:はい、「モデル化」ですね。数学はモデルを作る学問です。

大村:三平方の定理。

深沢:はい。これはさっきおっしゃいましたよね。

大村:ラプラスの法則。

深沢:そうそう。数学って「ナントカの公式」がたくさんありますよね。

大村:等差数列、等比数列。

深沢:ありました。

大村:大嫌いです、僕。

深沢:嫌いなままでいいんです。大丈夫なので。

大村:大丈夫ですか。

深沢:大丈夫です。好きにならなくていいんです。ただ、こういう性質や特徴を「型」にして説明することが、数学の1つの特徴だということだけは、知っておいてもらえるとうれしいです。「ナントカの定理」「ナントカの公式」って、要はそのものの性質を説明しているんですよね。

大村:なるほど。

深沢:どうでしょう? あるものの性質を説明するって、数学の文脈を離れても、私たちの日常にたくさんあると思うんです。例えば「パレートの法則」なんて聞いてことがありますか?

大村:ああ、「2:8」でしたっけ。

深沢:はい。「ランチェスターの法則」とか。今日は会場にマーケティング関係の方もいますけど、ありますよね。要は、あれと同じことなんですよね。「こうなっていますよ」「こういう性質がありますよ」と説明しているものです。

大村:なるほど。

深沢:こういったものをうまく使うとコミュニケーションに大いに役立つというのが「モデル化」の話です。

大村:なるほど。

「数学的な思考」が身につくと「数学的な話し方」になる

深沢:みなさま、よくがんばってついてきてくれました。数学って、この5つの動作でものを考える学問です。今日は「コミュニケーション」。「どう伝えるか」という話ですが、なんでこんなに時間を取って、考えるお話を2人でさせていただいたかというと、「思考が決まるから話し方も決まるのではないか」と思うからです。

大村:はい。考えてから話しますよね。

深沢:そうですね。考え方が決まるので、話す内容や言葉も決まるイメージです。

大村:なるほど。

深沢:例えば、すごく前向きに考える人、ポジティブな思考の人は、たぶん話し方もポジティブで、前向きな言葉がたくさん出てきますね。逆はたぶんネガティブな言葉がたくさん出てくる。それと同じで、ものを考える時の方法、考え方が決まるから、話し方も決まるのではないか。

ということは、さっきご案内した「数学的な思考」が身についていると、自動的に数学的な話し方になっているんですね。

大村:なるほど。

深沢:だからさっきの5つを身につけたほうが、みなさんにとって得なのです。

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