2024.10.10
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安藤俊介氏:コミュニケーションって、対人や相手との関係性もあるんですが、実は自分との対話がより大事だったりします。
今日は「リフレクション」という1つの言葉にまとめてしまいますが、コミュニケーションを上手に取るためには、「内省」や「内観」とか、自分を見つめることが必要な作業になります。
いくら言葉選びが上手になろうが、世の中にある伝え方やコミュニケーションの本を読んだとしても、実はコミュニケーションはあんまりうまくならないんですよね。コミュニケーションって、自分自身を理解できるかどうかなんです。
自分自身を理解することで、結果的に人とのコミュニケーションがうまくなる。なので、コミュニケーションが下手な人って、実は自分との対話が下手な人なんですね。
そういう意味でも、リフレクションという自分を見つめる作業はやってほしいなということが、アンガーマネジメントやコミュニケーションの話をする中で常に思うことです。
そして(「良好なコミュニケーションのための4つのポイント」の)3つ目は「穏当なトーン、表現」。これも言わずもがなですよね。大声を出さないとか、穏やかに、ゆっくりと会話のスピードを落とすだけでも、表現はだいぶ緩やかになります。僕もどちらかというと非常に早口なほうなので、なかなか反省しなければいけないなとは思いつつ、できる限りゆっくり話す。
特にコミュニケーションが苦手な人って「空間」が怖いんです。空間が空いてしまうのが怖いので、文字で埋めようとします。人は、物事を受け取って、自分の中で噛み砕いて理解をするという作業が入るので、あまりにも文字を詰め込まれてしまうと、噛み砕いて・咀嚼して・理解をするという作業ができないんです。
5分前に話したことをずっと咀嚼をしている最中なのに、次の言葉が入ってきてしまうと、「あれあれ? 何だったっけ?」「今、何を話しているんだろう?」というふうになってしまう。
ということで、私がここで話をしていて「うーん、情報を詰め込みすぎかな?」なんてちょっと反省しながらも、今日はセミナーなのでなるべくお話しをしようと思っています。ですから、これがふだんのコミュニケーションだとすると情報が多すぎるんですね。
会話において、例えばこのペース・この状態で話をするのは情報量が多すぎます。噛み砕いて・咀嚼し・理解をする。本来であれば、一つひとつしゃべりながら反応を見て待つことが必要なんですが、今日は一方的に私がしゃべる場になっていますので、このままお話を続けます。
ふだんであれば、ゆっくりと、相手が理解をしているかどうかを確認するのが良好なコミュニケーションなので、お互いの理解度を確認しながら進めることが大事な要素の1つです。
それから「変わらない態度」です。いつでも・どこでも・誰に対しても同じ態度でいる。「強い人には弱く、弱い人には強く」みたいに、人によって態度を変えちゃうという人もけっこういるんですが、これはいいことではないです。
良好なコミュニケーションのポイントは4つです。感情を伝えるよりも、「どうしてほしいか」というリクエストを伝えてください。
それから、自分の常識と相手の常識は違います。じゃあ、それをどうやって推し量ればいいのかというと、「べき」「はず」「普通」「常識」「当たり前」といった言葉に注目してください。
穏当なトーン、表現。話すスピードを落とすだけで違います。そしてできる限り、いつでも・どこでも・誰に対しても同じ態度でいる。これを心がけるようにしてください。
今度は逆に「ミスコミュニケーションを起こす4つのワード」です。これらの言葉は会話の中で使いがちではあるんですが、この言葉を使っているとあんまりいいことがないんですよね。特に怒る・叱るという場面において、百害あって一利なしです。
今日ご参加されている方の中には、「部下をどうやって指導すればいいかな?」「後輩をどうすれば育成できるかな?」と、悩まれて参加されている方もいらっしゃると思いますが、特に怒る・叱るにおいては、この4つのNGワードはぜひ気をつけてください。
過去を持ち出す言葉は、「前から言っているけど」「繰り返し言っているけど」。なんでこういった言葉を使うのかと言うと、自分がいかに正しいかを強めるための修飾語なんですね。だから、言われている側からすると「今は関係ないじゃん」と思っています。
それから責める言葉。「なんで?」「なんで?」と繰り返し言われると、責められた気になるんです。責められたと思うと、言われた相手は逃げます。もしくは反抗します。
それから決めつけ言葉。「いつも」「絶対」「必ず」「みんな」という言葉を言われると、「いつもじゃないじゃん」と思います。大げさな言葉なんですよね。面倒くさいので「いつも」という大げさな表現を使ってしまうわけですが、言われている側からすれば、「いつもじゃないじゃん」「『みんな』って誰だよ」と思っています。
それから程度言葉。「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」。これも、面倒くさいからこの言葉を使っているんですよね。「ちゃんとしなさい」って、そもそも「ちゃんと」って何だろう? となるんです。「前から言っているけどさ、なんでいつもちゃんとしないの?」と、たぶん普通に言えちゃうんですよね。
これだとコミュニケーションがうまくいかなくなっちゃうんです。コミュニケーションがうまくいかない理由は何かと言うと、「相手が反発する」ということなんです。相手のことを聞きたくないと思った時点で、もう上手なコミュニケーションは成立しません。
だから、こういった言葉は相手が反発をするので、コミュニケーションを取りたいと思わない、素直に聞きたくないと思わせてしまう言葉なんです。ですから、特に「叱る」「怒る」という場面では、こういった言葉を使わないようにしてください。
さて、それでは「メッセージに含まれるもの」です。みなさんがコミュニケーションを取るからには、メッセージを伝えるわけなんですが、メッセージの中には「事実」「思い込み」「感情」「リクエスト」という要素が含まれています。みなさんに何かを伝える時には、この4つがごちゃ混ぜになって伝わることが多いんです。
例えば、今日はさんざん言っていますが、「ここに350ミリリットルのペットボトルが1本あります」と伝えたいだけだったら「事実」でしかないんですよ。だから、あまりミスコミュニケーションが起きにくいんですね。なんでかと言うと、思い込みも感情もリクエストも入っていなければ、別に「どうしてほしい」とも言っていないわけです。
ただ、ふだんの会話の中では、この4つが微妙に混ざり合ってきてしまう。そうすると、いったいどれがどれなのかがわからなくなってくることが大きな問題です。
事実というのは、客観的な事柄やデータです。リクエストは「今、どうしてほしい」「次からどうしてほしい」。そして思い込みというのは主観です。ですから、正しいこともあるんですが、単純に思い違いや勘違いをしていることもあるわけです。
そして、感情というのは気持ちのことですが、これはメッセージの強さに大きく影響を与えます。ですから、例えば「1本のペットボトルの水があります」に怒りを乗せることはなかなか難しいんですが、喜びを乗せるとすれば、「うわ、水があります。すごい! ありがとう!」。
こう言うと、「1本の水があります」よりは、そこに情報が加わる。それが気持ちだったりします。例えば、感謝の気持ちが乗っかると、「1本の水があります」から少しニュアンスが変わりますよね。
それから「思い込み」で言うと、例えば「これはフランスのどこそこの水なんです」みたいなことを話していても、それは思い込みでぜんぜん違うかもしれないわけです。なので、ただ単純に「ボトルが1本あります」という事実を伝えるにも、思い込みや感情が入ってくると、途端によくわからない話になるんですね。
じゃあ、メッセージを適切に送るためのポイントは何かと言うと、「事実」と「思い込み」と「感情」を分けましょうということです。誤解を与えたくないんだったら、伝えるのは「事実」と「リクエスト」に絞りましょう。
そして「相手の思い込みも理解する」。こちらにも思い込みがありますが、相手にも思い込みがあるんですね。
メッセージの伝達というのは、先ほど言ったように「事実」「思い込み」「リクエスト」「感情」が渾然一体となって発信されます。
そうすると、受け取る側の目の前には「受け取る側の思い込み」が入っているんです。「受け取る側の思い込み」というフィルターを通じて、メッセージを受け取るんですね。
渾然一体となって送っている時点で、そもそも何がどうなっているかがわからない。さらに言うと、受け取る側の目の前にも「相手の思い込み」というフィルターがあるので、ちょっと曲がって伝わるかもしれない。メッセージって、送る側と受け取る側のどちらにもエラーが起きているんです。
この仕組みが理解できるかどうかで、メッセージが正しく伝わるかが変わります。あるいは伝わりにくいものだったら、どうすればより伝わりやすくなるかを考える。
まずそのためには、「事実って何?」「思い込みって何?」「リクエストって何?」「気持ちって何?」ということを分けられるようになることが、送る側がやらなきゃいけないことなんです。
さらに言うと、「相手にもこういう思い込みがあるよね」と推察できるかどうかです。この話をしていくと、「コミュニケーションって面倒くさいな」という話になっちゃうんですが、それが自然とできる人は、やはり(コミュニケーションが)うまいんですよね。これは技術なので、練習すればできます。
例えば、伝える側が「前の会議で実施予定にしていたことをやってないじゃないか! やる気がないのか!?」「やると言ってやってないじゃん。お前、何やってるの。やる気あるのか?」というメッセージを送ったとします。そうすると、実は受け取る側の全員が同じメッセージを受け取るとは限らないんですね。
ある人は「行動できなかったことを反省して、次からどうすればいいか考えよう」と思う人もいるし、「これは期待されているから怒られるんだな。期待に応えるためにも努力しよう」と思う人もいるし、「期待もされてないし、こんなふうに怒られるなんて自分はダメなんだろうな」と思う人もいる。
初めに送ったメッセージと、受け取る側の受け取り方って、もはやどれが正しいかもわからないぐらい曲がっちゃっているんですよね。
なんでそんなことが起きるかと言うと、送り手側が「事実」「思い込み」「リクエスト」「感情」を混ぜているからです。そして受け取る側の目の前には、受け取る側のフィルターがある。これが、コミュニケーションにおいていろんなエラーを起こすんです。
なので、伝える側としてまず気をつけてほしいのは、「事実」と「思い込み」と「リクエスト」と「感情」があるならば、その4つを分けてみる。誤解されたくないんだったら、「事実」と「リクエスト」を中心に伝えるんです。
さらに、受け取る側の思い込みを推察できるかどうかです。受け取る側の思い込みをどうやって見ればいいのかと言うと、「相手の話を聞いているか」です。先ほど言ったとおり、「べき」「はず」「普通」「常識」「当たり前」という言葉は、会話の中にいっぱい出てくるので、それをふだんから聞いているかどうか。
コミュニケーション上手な人ってどんな人かと言うと、実は「話し上手」より「聞き上手」な人です。話がうまい人って、コミュニケーションがうまい人じゃないんですよ。話が聞ける人なんです。
さらに言うと、自分のことを理解している人。自分自身と対話をして、自分の声を自分で聞ける。そして相手の話も聞ける。これが、コミュニケーションが上手になるための絶対的な条件だと思っています。
コミュニケーションがうまいのは、「話がおもしろい人」ではなく、「話がうまい人」でもないです。自分と対話して自分の声を聞けて、相手とも対話をして相手の声も聞ける。
多くの人が「コミュニケーションをうまくなりたいな」というと、伝え方とか、話がうまくなる方法をすごく探してしまうんですが、そこじゃないんです。そして、「人の話をすごく聞きたい」と思っている人はあんまりいないです。
自分との対話ができて、人との対話ができる。私に言わせれば、まずは自分との対話ができることが、コミュニケーション上手な人になるための近道だと思っています。
そのためには何をすればいいかと言うと、アンガーマネジメントは自分を見つめるためのトレーニングです。「怒り」という感情が入り口ではあるんですが、結局は自分との対話なんですよね。だから、そのトレーニングをやり続けるのがすごく大事になります。
さあ、「良好なコミュニケーションが生まれる前提条件」です。こんなことを言ったら、身も蓋もないといえば身も蓋もないんですけれども、ふだんからの人間関係を良好にしておくことがすごく大事なんですよね。
ふだんからの人間関係をどうすればいいかと言うと、質より量です。「おはよう」とか「ありがとう」という、短いものでいいです。そして頻度。「1on1で1時間、1週間に1回しゃべりましょう」よりも、ふだんの日常の中でどれぐらい小まめに話せるかを意識してください。
そして今日は、トレーニングとして1つだけぜひ覚えておいていただきたいのが、もしできるのであれば上手な人をまねてください。みなさんの周りで、「この人はコミュニケーションがうまいよね」と思える人を探してみてください。
聞き方や伝え方とか、その人の何を・どんな場面で見て「この人は(コミュニケーションが)うまいな」と思うのか。「こういう人みたいに話したいな」「こういう人みたいに聞いてみたいな」という人がいたら、ぜひまねしてみてください。こういうのも、トレーニングとしてはすごく有効なんですね。
今日はいろんなお話をしてまいりました。私からのメッセージは本当に1つで、コミュニケーションが上手になるためには、とどのつまり「自分との対話」です。自分との対話が上手にできる人は、実は他の人との対話がうまくできる人なんですよ。
私たちはウィザスのカンパニーとして、能力支援、特に自分との対話を大切にしております。リフレクションなどのご要望があれば、お声掛けいただければお手伝いができるかと思います。
今日は「コミュニケーションをあらためて考える」ということで、私の専門であるアンガーマネジメント的な視点からお話をさせていただきました。今日の話が、みなさまの仕事の中で、あるいは私生活の中で、少しでもお役に立てれば嬉しく思います。ご清聴ありがとうございました。
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