2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
リンクをコピー
記事をブックマーク
岡田奈々氏(以下、岡田):続きまして、(BtoBマーケに関わっている方の悩みランキングのTop10の)5位に移りたいと思います。「人材の雇用」が悩みで23.6%です。ということで、「若い人材の確保」「資金不足による人材不足」「人材流出」「人材不足で、他の業務と兼任せざるを得ない」などのコメントをいただいております。
吴笑冬氏(以下、吴):なるほど。「マーケが雇えない」ということですよね。
岡田:そうですね。
吴:世の中的には、マーケの採用ってどうなんですか?
垣内勇威氏(以下、垣内):今は厳しいですよ。
吴:厳しいですか。
垣内:はい。本当にできるかどうかはわからないですけど、「デジタルマーケター」と呼ばれる人の採用は非常に難しい。
岡田:(笑)。
吴:そうなんですね(笑)。
垣内:「ちょっとでもデジタルにいた」という人材は、そもそも高騰していますね。これは何が本質かと言うと、「人材要件の要件定義が甘い」ということだと思うんですよね。何でもできる人なんていないので。
よく「CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)が欲しいです」と言われるんですけど、いきなり要件も定義せずに、CMOとかバクっと言っていたら取れないし、「何それ、1億円とか積むんですか?」という感じじゃないですか。
吴:(笑)。
垣内:1億円は嘘だけど、5,000万円くらい積むんだったら採れるかもしれないですけど、「本当ですか?」という感じになると思うんですよね。
吴:なるほど。要は要件定義って、「その会社にとってのマーケは何をするのか」とか「どういう能力を兼ね備えていなきゃいけないのか」ということですね。
垣内:そうです。マーケターに99パーセント必要なのは、PM要素なんですよ。プロジェクトを回すということです。例えば「ウェビナーをやります」と目的を設定して、目標を設定して、スケジュールを引いて、人を集めてきて、ウェビナーを開く。ここのアレンジをするのが、マーケターに最も必要な能力だと思うんですよね。
垣内:そこになぜか、「SEOができる人」とか、よくわからない要件がグチャグチャとついて「マーケター」になっているんですけど、専門知識なんて外注してもいいし、2回か3回伴走すれば覚えるじゃないですか。
吴:はい。
垣内:「そういうのでいいよ」と要件を割り切れば、おそらく採用できるし、年収も抑えられると思うんですよ。
吴:なるほど。
垣内:これがいろいろついてくると、いっぱいできる人はそれだけ希少価値が高いので流出しやすいし、年収は高いし、採用できないということになるので、「要件を明確に絞れ」ということだと僕は思っていますけどね。
吴:なるほど。前に「プロなんていらないよね」という話をしたことがありますが、それと一緒ですよね。1個1個の「SEOができます」とか「広告回せます」というより、やっぱりPM的な要素のほうが大事ですか?
垣内:絶対にそうだと思いますよ。SEOのプロがいる会社なんて、SEOで食っているような会社で、かつマーケターが20人から30人いるということであれば、SEO専業でもいいと思うんですけど、厳しいです。
あとは、社内のSEOだけやっていても知見は上がらないというか、維持できないですね。100社とかを見て、ようやくSEOが全部見えるという世界なので、社内SEOだけやっているのは相当厳しいです。
吴:確かに。冷静に考えるとそうですね。
垣内:僕もSEOは詳しくないですよ。本質は知っていますし、トレンドは追っていますけど、わからなかったら普通にプロに聞きますね。「これってどうなんですか?」と聞いて、「こうです」「あ、なるほど」という。それで解決するので、いらないスキルや知識って、多いですよね。
吴:確かに。我々はITトレンドの16年目を迎えるところですけど、16年間ずっとSEOとリスティングをやってきたんですが、それでもやっぱり外部のパートナーがいないと、最新のトレンドとか他がどうなっているかはわからない。
まず、全体の中での自分のポジションがわからないんですよね。だから、「やるべきことってなんだろう」と、毎回新しい示唆をいただくので、確かにそうですね。
垣内:本当に日々変動しますからね。例えば、「そもそも、今はうちみたいなベンチャーのドメインは弱い」という前提の中で、ブログの訪問数はどんどん落ちてきています。
それで、ヤバいと思っていっぱい記事を書くのか、SEOの担当者に「本当にドメインが弱っているので、これ以上やってもしょうがないからやめておけば」と聞くのかで、方針がまったく変わるじゃないですか。
垣内:「内製にこだわってもしょうがない」というのもあると思うんですよね。なので、「マーケターって、社内に何を求めているの?」というのをちゃんと定義するのが一番必要です。
吴:なるほど。先ほどの「社外との連携」もかなり重要になってくると思うので、「パートナーをいかにマネジメントして自分たちの役に立たせるか」という観点も大事ですよ。だから、要件定義ですね。
垣内:フリーランスの方を使うとかでもいいと思うんですよ。SEOについては、月1回聞くかどうかだと思うんです。
吴:なるほど。
垣内:SEOについて聞かなくないですか?
吴:毎週聞いてもしょうがないですものね。
垣内:そういう業界もあると思います。ただ、BtoBで普通のビジネスだったら、SEOなんて月1回聞けば多いほうなので、「月1回、1時間聞かせてください」となったら、おそらく月額5万円とかでプロを雇えるんじゃないですか?
吴:なるほど。
垣内:リスティングは、もうちょっと払わなきゃいけないですよね。メールは自分で覚えればできるようになるし、そういうのをちゃんと区分けしていけばいいと思います。
吴:おもしろいですね。マーケターに対しての幻想じゃないけど、「なんとなくすごそうな人たち」「専門性が高そう」と考えるとダメなので、そこの解像度を上げて、垣内さんの言葉で言うと、「要件定義をちゃんとする」ことがこれにつながるわけですね。
垣内:文化祭をちゃんと運営できる人だったら、学生でもいるじゃないですか。
岡田:(笑)。
吴:なるほど、文化祭。
垣内:(笑)。「プロマネ=プロジェクトマネジメント」という、ちゃんとしたビジネススキルだと思うんですよ。それができればいいと思います。たぶん、デジタルマーケとか1ミリも知らなくてもできると思いますよ。
吴:確かに。
岡田:では、次です。人材の話はまたあとで出てきますので(笑)。
ただアンケートをしても「何もわからない」のは当たり前 BtoBマーケのプロが語る、効果的な「市場調査」の活用法
「今すぐ客」になる質の高いリードだけを集めるのはダメ BtoBマーケのプロ・垣内勇威氏が「リードの量」を重視するわけ
予算を取って、施策で実績を示せば「次もある」 決済者に「費用対効果と根拠」を求められた時の対処法
「広告」や「SEO」ではない、マーケターに一番必要な能力 プロが教える、自社に必要なマーケターを採るための要件定義
営業とマーケの「溝問題」…なぜ両者の連携は難しいのか? 特に立ち上げフェーズの組織で対立が発生しやすいわけ
マーケに配置なら、営業成績優秀者か部門内で人気の営業事務 デジタルスキルより求められる、これからのマーケターの資質
分析しても「当たり前のこと」しか出ない、自社データの“盲点” なぜ集めたデータをうまく活用できないのか
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには