2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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佐藤政樹氏(以下、佐藤):AIに取って代わられない、人間でしか伝えられない言葉って何なのか? という部分を、みなさんと一緒に考えていきたいなと思います。つまり、人間にしかできない部分ですよね。それを理解するために、今日は簡単にお伝えできたらなと思っております。
(僕からは)「3つの言葉の意識のスタンス」というお話をさせていただきます。僕は劇団四季というプロの表現の世界にいたので、人が話したり表現しているのを見ると、3つのポジションに分かれて見えてしまうことがあります。
別に人のあらを探しているんじゃなくて、人が話しているところを見ると、感動する話とか、「なんか表面的だな」と思ったり、「ぜんぜん入ってこないな」ということがあります。
そういった人が話しているのを見ると、言葉を3つに分類できるんじゃないかと思っているんです。
じゃあ、その3つが何なのかを見える化して、「感覚を見える化する」ということをちょっとやってみたいなと思います。この感覚を見える化することによって、意識が変わるんですよ。意識が変わることによって、僕たちの行動が変わってくるということです。
佐藤:この本(『人を「惹きつける」話し方』)でも紹介しているんですが、ここでみなさんに、僕がおもしろいなと思った考え方をお伝えしたいなと思います。
それが「発声は発想」という言葉なんです。まず、これを習った時に「ああ、なるほどな」とすごく思いました。よかったらメモしてみてください。
「発声は発想」とはどういうことかと言いますと、「声を発するからには、その奥には想いが発していますよ」ということですね。想いが発するから、それが声となって出てきます。
声を発するには、言葉を発する理由が必ずあるという考え方ですね。これが一致するから、自分の中で言葉が出てくるんです。これが演劇の世界で考えられている「発声は発想」というロジック、言葉のメカニズムなんですね。
自分のこととして捉えていただきたいんですが、私たちって何か漠然とした想いを持っていますよね。「伝えたい」「聞いてもらいたい」とか、漠然とした想いがあるじゃないですか。
この「想い」に対して、人間にしかできない「言葉」でかたちを与えて、そして自分の中から引っ張り出して相手に届けていくのが、「話す」とか「伝える」ということだと思います。
もう1回言いますが、輪郭のない漠然とした「想い」が自分の体の中にあって、その想いに対して、人間にしかできない「言葉」を与えてかたちにして、自分の中から引っ張り出して相手に届けていく。これが「話す」とか「伝える」という、人間にしかできない行為じゃないかなと思うんですね。
佐藤:この「言葉」の出どころがどこなのかが、伝わるのか・伝わらないのかの差でもあると思っているんですね。
私たちは、自分の想いを相手に届けようとする時とか、自分の大切な考え方を届けようとする時には、「意識の置きどころ」が3つに分けられると思っています。
自分が相手に何かを話す時だと思ってください。意識はどこに向かっていますか? これをまず、見える化してみたいと思います。
1個目は「頭」ですね。みなさんの頭に自分の意識が向かっている時って、だいたいこういう時なんですよ。「次、何だっけ?」と考えながらしゃべっている時。あとは、自分が用意したメモをしゃべっているだけの時。
あとは、人から借りた言葉だけしゃべっている時とか、自分の持っている情報だけを一方的に説明しているだけの時。
それから営業マンで言ったら、立派なスライドや資料や動画を用意して、それを使って分析して説明している時です。これは別に悪いというわけじゃありません。これを「頭の意識」と僕は呼んでいます。
頭の意識から生み出される言葉、発声と発想が一致して、頭から生まれる言葉のことを、僕は「頭のポジションの言葉」というふうに本の中では表現しています。
佐藤:さっき、「言葉を発するからには、その言葉を発する理由がある。これが一致するから言葉になるよ」と言いました。
例えば、僕は今、お茶を用意して飲んでいるんですよ。このお茶を飲んで、「清宮さん、このお茶すごくおいしいです」と言うとするじゃないですか。僕は清宮さんに「おいしいです」と言ったからには、「おいしい」と言う理由が必ずあるということです。
今日、僕は動画を2本撮影してきました。その後、このセミナーが始まる直前に実はもう1本撮ったんですね。15分ぐらいだったんですけど。つまり、今日のイベントの前に動画を3本撮っています。
昨日は1日新人研修で、朝から夜までずっと話していました。実は先週、僕はのどを壊しちゃって本当に大変だったんですよ。ステロイドの注射を打って、なんとか回復したんですよね。
今日もみなさんの前でお話をして、今もしゃべり倒していますよね。このセミナーが始まってここまで、ブレイクはなかったんですよ。
でも今、清宮さんの前で堂々と「清宮さん、このお茶は本当においしいです」と言ったのは、いったんブレイクしてお茶を飲めたから、「あぁ良かった……。声帯が潤った……」と、安心したからなんですよ。
僕は発声と発想として「安心した」というのがあるから、「清宮さん。このお茶、本当においしいです」というふうに言えたんですね。つまり、この発声と発想が一致して、「おいしいです」と言えました。
佐藤:じゃあ、どこで一致しているのかが、伝わるのか・伝わらないのかの差ということです。答えを言うと、青い線から上が伝わらない、青い線から下が伝わる言葉なんですね。
青い線から上は「頭」のポジション、つまり頭の意識です。こういった意識に向かっている時から、頭から生まれる言葉は、発声と発想でいうとこういう状態なんですよ。「清宮さん、このお茶すごくおいしいです」(実演)。こんな感じです。
こういった言葉のことを、演劇の世界では「唱えている言葉」と言ったりもします。「このお茶、すごくおいしいです……」と、唱えている。
じゃあ清宮さんが、「佐藤さんのお茶、飲んでみたいわ」と思うかと言ったら、飲んでみたいと思ってもらえる可能性はなかなか低いですよね。
やはり、頭のポジションから生まれる唱えている言葉というのは、相手に響く可能性が低いんですよ。劇団四季では「佐藤くん、今の言葉は唱えているよ」と、即フィードバックが入ります。
佐藤:次は「胸」の言葉です。私たちは自分が「伝えたい」「本当にこの思いを伝えたいんだ!」というふうにその思いが先走ったりすると、神経が高ぶって意識が胸に上ずることがあるんです。
例えばみなさん、1,000人の前でプレゼンテーション、あるいは自己紹介をするとします。ドキドキと緊張してきました。この時、どこに手を当てますか? 胸に手を当てると思うんですよね。
胸に手を当てるということは、自分の意識が胸に向かっている証拠だと思うんです。胸に意識が向かっている時って、だいたいこういう時ですよ。
緊張している時、そわそわと落ち着かない時、気持ちが上ずっている時はありませんか? 本番前とか「どうしよう、どうしよう」と言って、浮足立っている時はありませんか?
あとは、「うまく話さなきゃ」「間違えないように話さなきゃ」「きれいに話さなきゃ」という気持ちが先走っている時です。それから、仲間内のプレゼン大会とかでよくありがちなんですが、情熱的に感情を込めて、神経を高ぶらせて伝えようとしている時です。がんばって、必死に伝えようとした時。
このお茶を飲んでいる時だったら、「おいしいことをわかってもらおう」と思って、わからせようとしている時です。
佐藤:感情論や精神論で、「感情を込めろ」「もっと気持ち込めろ」ってよく言いませんか? 営業のロープレとかでよくあるんですよ。先輩から後輩に「お前、もっと感情を込めろ」って言ってね。
こういった感情論で神経を高ぶらせて伝えようとする時です。多くの方が、これが「伝わる」ということだと思っているんですよ。
舞台の世界で、僕は本当に納得しました。これが実は、誤った自己認識を生むという考え方があったんですよね。ここが伝わるのか・伝わらないのかと言ったら、自分はやった気がするけど、相手はそうは受け止めていない。このギャップを生み出すのが、実はこの「胸」の言葉でもあったんですね。
だから劇団四季には、「言葉に感情を込めるな」という鉄の掟がありました。言葉に感情を込めちゃいけない。神経を高ぶらせて伝えることが、相手に伝わることじゃないんです。「伝えよう、伝えよう」と思った時にこそ、こういったギャップが生まれやすいんですね。
みなさん、主観と客観が違うのが自己表現のおもしろいところなんですよ。例えば、自分の声を録音して聞いたことがある方はいますか? けっこうびっくりしませんか? 「え、これ私の声?」って思いませんか。これがまさに、主観と客観の違いなんですね。
自分がやっているのと、相手が受けているのは違うんです。だから自分が「ものすごく伝わった。すごくがんばった」という時って、逆にお客さまはけっこう引いてしまっている時が多いんですね。
なので、演劇の世界では「胸」の言葉のことを、「上っ面」「説明的言葉」「上辺言葉」というふうに言っていました。
胸のポジションの言葉を「上辺」とか「説明的」と言うんですね。「清宮さん、このお茶、本当においしいです〜」「本当においしいんです!(実演)」みたいな感じです。これが伝わるのか・伝わらないのかといったら、伝わりにくく、自己満足になっちゃう可能性が高い言葉なんですね。
佐藤:今日のポイントは次なんですよ。本の中では、お腹の「腹」という字を使っているんですが、僕が本当に使いたかったのはこっちの「肚」という字なんですね。「肚」にはエネルギーが込められているそうです。これも「はら」って読むんですよ。
私たちは自分では気づかないんですけど、自分の意識が無意識で肚に向かっている時がけっこうあるんですね。意識が肚に向かっている時って、だいたいこういう時です。
何を聞かれても落ち着き払っている。動じない。絶対的自信を持っていることを話している時や、「私はこれを絶対にやっていくんだ」というような覚悟が決まったことを話している時です。
「絶対やる」と宣言して、覚悟が決まったこと。あとは、例えば人から「絶対に無理」って言われたことができるようになった話や、本当に苦しかったことを乗り越えた話とか、大変な病気を克服したとか、大変な困難を乗り越えた経験談を話している時。
それからコミュニケーションでいったら、上っ面とかじゃなくて本音で向き合っている時です。表面的じゃなくて、本音で向き合っている時。こういった時って、基本的に人は存在がすごくあふれているんです。
本当に、内側からありのままの状態で、自然体の魅力が内側からあふれ出ているんですね。これが「肚」の意識なんですよ。
佐藤:答えを言いますと、青い線から上が自己満足なんですね。本当に人に響く言葉や、人を感動させる言葉というのは、青い線から下なんですよ。
自分では伝わっていると思っても、伝わっていない。それが青い線から上です。これは、表現の世界に入ってから本当におもしろいなと思いました。
ここ日本という国では、私たちが何か1歩深い思いを相手に届ける時とか、1歩深い本当のコミュニケーションを取ろうとする時に、「腹」というキーワードを多用してきた文化があるんですね。「腹が○○する」とか。
じゃあ今から、「腹」を使った意思決定のコミュニケーションのキーワードだったり、意思決定の言葉、慣用句、昔から言い伝えられている言葉をチャットに記入してもらっていいですか?
ありがとうございます。「腹をくくる」「腹を決める」「腹を据える」。「腹をくくる」「腹を割って話す」「腹から声を出す」「腹を探る」。ありがとうございます。じゃあ、これで締切りますね。
なんか不思議じゃないですか。「腹を割って話す」だったら、この(スライドの)青い線をパーンッて割るイメージですよね。なんで割るんでしょうかね?
佐藤:「腹を決める」って、なんか深い意志を感じませんか? 「腹を割って話しましょう」「腹を決める」。あとは「腹をくくる」。「もっと腹から声を出して!」とかも言いますよね。
1歩深いエネルギーといいますか、1歩深いニュアンスが込められた時に、コミュニケーションや意思決定に、「腹」というキーワードを多用してきた文化が日本にはある。
この「腹」こそが、私たちの本当の思いを相手に伝えるとか、相手に届けるとか、感動といったものをひもとくキーワードでもあるんじゃないかなと思うんです。
先人たちは偉大で、「この『腹』こそ何かあり」というふうに考える文化があったんですね。この中で武道や茶道、あとは呼吸器系の楽器とかをやったことがある方はいますか? やったことがある方は、もうおわかりじゃないでしょうか。
「腹」の意識って、パフォーマンスすべての結果に影響するんですよ。腹がすべてなんですね。腹が抜けると、全部のパフォーマンスがぶれるんですよ。トランペットやホルン、サックスとか、こういったものは全部「腹」の意識が抜けるとパフォーマンスが下がるんですよね。
例えばスポーツでも、腹の意識が抜けると、けがをしたりするんですよ。つまり、結果にものすごく影響するのが「腹」なんですね。
佐藤:劇団四季に入って本当に目から鱗だったんですが、すべての答えは腹にあります。例えば呼吸ですね。(劇団四季に)入って一番最初に何をやるかと言ったら、呼吸の練習をやるんですよ。
僕を見てください。例えば、呼吸の意識が上がっていると、「みなさんこんにちは、佐藤と申します。どうぞよろしくお願いします」となるんですね。そうすると、「この人大丈夫かな?」ってなるんですよ。
アクションラーニングのコーチの人が、今からセッションを始めましたと。「あの、今日はどうぞよろしくお願いします」となったら、「この人大丈夫かな?」というふうになっちゃうんですね。セミナー講師の先生や講演会もそうですね。息が上がっていると、相手は不安に感じるんですよ。
舞台の世界も同じで、最初に何をやるかと言ったら、1,000人いようが2,000人いようが、まったくぶれない呼吸法によって相手の心をつかんでいます。そうすると、なんだか落ち着いて見えませんか? 存在感がありませんか? 「この人の話、聞きたいな」って思いませんか?
このように、呼吸はパフォーマンスにすごく影響しているんですね。だから劇団四季に入って、「プロとは呼吸」の一言が、すべてにつながっているんですよ。
佐藤:そして、呼吸が落ちてくると声も乗ってくるんですね。要するに、声が良くなってくるんですよ。みなさんの体って楽器なんです。共鳴して楽器が響くんですよ。
じゃあ、「息をすることや声を出すことだけですか?」といったら、そうではないんですね。例えば仕事の現場、学生さんだったら就職の面接で使う言葉ですよ。「言葉の意識を腹に落とし込んで、初めてその言葉は相手に届きますよ」ということだったんですよね。
ここで「発声は発想」なんですよ。どこで一致をしているかというと、発声と発想が一致しているのが「頭」なら、これは唱えているわけです。発声と発想が一致しているのが「胸」なら、これが「上っ面」とか「説明的」ですよね。
答えはシンプルなんですよ。発声と発想の一致。つまり「あなたは、なんでその言葉を発するんですか?」「あなたはなぜお客さまの前でその言葉を発するの?」。これだけなんですね。
その言葉を発する理由を、自分の中で磨いて、磨いて、磨いて、まずはその言葉を発する理由を磨く。
お客さまの前でその言葉を発する理由を、まずは自分の中で腹落ちレベルまで磨いていくのが、劇団四季で最初の最初にすることだったんですね。これを劇団四季では「フレージング法」と言います。
佐藤政樹氏(以下、佐藤):劇団四季の3原則が、「呼吸法」「母音法」「フレージング法」なんです。
「母音法」というのは、「ア」と「イ」と「ウ」と「エ」と「オ」のことです。日本語には母音が5つあります。それを、お腹が口だと思ってしゃべる練習をするんですね。
フレージング法というのは、「あなたはなんでその言葉を発するの?」「その言葉を発する理由を磨いて磨いて、腹落ちレベルまで磨いていきましょう」ということなんですね。
これが、発声と発想の一致で、唱えているのか、上っ面なのか、そしてそれを腹落ちレベルに落とし込んでいるかの違いになります。
例えば「おいしい」の場合……清宮さん(司会者)ばかりに言ってますが(笑)、「清宮さん、このお茶おいしいです……」と言うのか、「清宮さん、このお茶本当においしいんです!」と言うのか。
あるいは、清宮さんが僕の厳しい上司で、僕は清宮さんの言うことを絶対に守らきゃいけない場合に、「佐藤さん、絶対にお茶を2週間飲まないでください」と、清宮さんに言われたとします。僕は2週間飲みませんよ。
そして、「清宮さん、約束通り飲みませんでした」「佐藤さん、お疲れさま。じゃあ今からグラウンドを20周してきて」「へ? この状態で20周ですか」。水を飲んでないし苦しいけど、それでも20周します。「佐藤くん、よくがんばった。はい、飲んでいいよ」と言って、お茶を渡されました。これを飲みます。
飲んだ時に自分の中で、細胞が1個1個潤っていきます。これで、「助かった」という究極の安堵感”が生まれますね。
この時に、自分の中から生まれ出てくる「おいしい」という言葉は、絶対に「おいしー」とか「おいしい!」じゃないです。「清宮さん、このお茶、本当においしいです……」なんですよ。「本当においしいです」という言葉が、無意識に内側から出てくるんです。
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