2024.10.10
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第1035回 トレンド経営学『楽しむ力vsめんどくさがる力』(全1記事)
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加藤想氏(以下、加藤):グロービス経営大学院の加藤です。月曜日はトレンド経営学というタイトルで、「よく聞くニュースをいろんな視点から切り取った場合に何が見えてくるのか」という話をしていきます。
今日は「楽しむ力」と「めんどくさがる力」。どっちが大事なのかという話を、自分の息子の行動から感じたことをお話しできればと思います。
うちの息子は2歳半ということもあって、「イヤイヤ期」真っただ中です。多くの場面でこちらのお願いを聞いてくれないわけですが、自分の好きなことであれば、すんなりと聞いてくれます。
着替えたり、お風呂に入る。この行動を嫌がるのですが、「お風呂で好きなおもちゃ遊びを一緒にしよう」と言うと、前のめりになって言うことを聞いてくれます。一方で「ごみを捨てる」とか「物を片付ける」という、イヤイヤを発動されてもおかしくないようなお願いでも、意外と楽しそうにやってくれたりします。
これらの息子の行動から、まったく正反対の2つの気づきが個人的にありました。
1つ目は、楽しむ力の重要性です。入りたくないお風呂も、おもちゃ遊びを加えることで楽しい時間になる。ごみ捨てはゲーム感覚で楽しくやってくれる。今まで自分がやったことのない新鮮なものだからこそ、楽しめている部分もあるとは思うのですが、この「楽しむ」という特性には見習いたい部分があります。
これを今の我々に当てはめてみます。例えば、ごみ捨ての依頼を仕事の依頼に置き換えると、依頼を受けたら、基本的に「面倒くさいなぁ」と思う人が大半ではないでしょうか?
「面倒くさい」と感じるのは、これまでの経験があるからだと思います。「この依頼にはこういう作業があるし、こういう作業もしないといけないな」など、過去の体験から具体的にイメージできるからこそ、めんどくさいと感じるのだと思います。
しかし、実はやってみると、新しい発見につながるかもしれませんし、おもちゃ遊び、つまり自分なりに楽しめる要素を加えることで、前向きに取り組むことができるかもしれません。
以前紹介した、任天堂の元社長の書籍で『岩田さん』という本があります。この中に、仕事で成果を上げ続ける天才の定義として「人が嫌とか疲れることを永遠に続けられる人」と記載されていました。
あなたの中で、ずっと取り組んでいても苦にならない領域は、どんなものがありますか? その領域を見つけて、仕事の時間をなるべくその楽しい領域の時間の割合を増やすことで、成果にもつながり、何よりあなたが楽しみながら仕事をすることにつながるかもしれません。
そして2つ目の気づきは、先ほどとまったく真逆で、「めんどくさいと思う力」の重要性です。
「ごみを捨てる」とか「物を片付ける」といった動作を、楽しんでやってくれた息子ですが、何でもかんでも前向きに取り組めてしまうというのも、逆に問題があると考えています。
例えば、どんな作業も明るく前向きに楽しく取り組める人がメンバーにいたとしたら、確かに仕事の依頼をする側は頼みやすくて楽なのですが、仮に生産性の低い仕事を依頼してしまった場合に、作業自体を楽しんでしまうので、その仕事を改善することにつながらなくなってしまいます。
あなたの周りにいる、忙しいわりにアウトプットに疑問が残る人はどんな人でしょうか? 新しい仕事で苦労しているというよりも、2年前と同じ動作を長時間繰り返している人が多いのではないでしょうか?
Voicyでもご活躍されている山口周さんと一橋大学の教授である楠木建さんの書籍、『「仕事ができる」とはどういうことか?』という本の中で、センスがよくてめんどくさがりがいい仕事をすると、記載がありました。そういう人ほど生産性に敏感で、今まで当たり前にやっていた仕事の無駄を見抜いて抜本的に改善できる、というわけです。
逆に、「センスがないけど何でも真面目に取り組んでしまう人」は、余計な仕事を増やしてしまう危険性もあります。同書にはそんな記載もありました。
あなたが日々取り組んでいる仕事の中で、当たり前と思ってやっている仕事ほど、生産性向上のチャンスがあります。今はテクノロジーの進化もかなり早いので、例えば2年以上同じ動作をしている仕事は、一度見つめ直してみてもいいかもしれません。あえて「めんどくさい」と思ってみて、仕事を見つめ直してみてはいかがでしょうか?
というわけで、今日は息子の行動から「楽しむ力」そして「めんどくさがる力」の重要性をお話ししました。言葉の意味としては逆ですが、両者は共存し得ると考えています。
何をもって楽しむべきで、何をもってめんどくさがるべきかというのは、経験とか勘、センスというのが必要になる部分もあります。先ほど紹介した本、『「仕事ができる」とはどういうことか?』は、そのセンスの正体、そしてセンスを磨くためのヒントが得られるおすすめの一冊ですので、ぜひ手に取って見ていただけるとうれしいです。
それでは、今日はここまでとします。
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