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社内外問わず一発OK! どんな状況でも秒で伝わるプレゼン(全2記事)

カメラオフのWeb会議で感じる、参加者の“内職”の気配… オンラインでも対面でも使える、相手の心を掴むプレゼンのコツ

さまざまな壁を乗り越えてきた各界のトップランナーによる、人生の特別講義を提供するイベント「Climbers(クライマーズ)」 。今回は、プレゼンテーションクリエイターの前田鎌利氏と、パワポ芸人として活動する豊間根青地氏による「社内外問わず一発OK! どんな状況でも秒で伝わるプレゼン」の講演の模様をお届けします。

社外向けのプレゼンは「雰囲気」をつかむ

前田鎌利氏(以下、前田):社外に向けて(プレゼンを)やられる方もいらっしゃれば、やられない方もいらっしゃるとは思うんですが、営業さんなんかは、いわゆる「営業トーク」がまとめられた資料をただ単に読み上げれば契約が取れるかというと、そんなことはないじゃないですか。

豊間根青地氏(以下、豊間根):そうですね。

前田:じゃあ、勝手に(資料を)いじっていいかと言うと、保険業界の方は勝手に資料をいじってはいけないし、「いじってはいけない中でどう伝えるか」というので、こだわらないといけないポイントがたぶんあると思うんです。

豊間根:ありますね。

前田:でも、そうすると今度は「営業力か、コミュニケーション力」か(という話になってしまう)。たぶん僕らの共通認識は、(それら全部を)ひっくるめて「プレゼンテーション」と言う。その要素として「トーク力」だったりがあるとは思うんですけれども。

前田:ある意味、今日も我々は外の人に向けてのプレゼンをやっているんですけど、外向けでお話しする時に、豊間根さんは「これは気をつけてます」みたいなのはありますか?

豊間根:そうですね。やはり、最初に雰囲気をつかむのは大事だなと思っていて。

前田:雰囲気。

豊間根:例えば、「今日はふざけていいな」「この人はちゃんと堅めにカッチリ説明したほうがいいな」「カジュアルめな言葉を使っていいな」という雰囲気をつかんで、どこまでやっていいのかを見るのは大事だと思うんですよね。

前田:なるほど。

対面でもオンラインでも、相手の反応を見て話す

豊間根:よく、営業の商談でもアイスブレイクが大事と言うじゃないですか。いきなり本題に入るのではなくて、自己紹介から入ったり、天気の話をしたり、相手の会社のサービスの話を1個挟んだりする。

僕は「ラポール」と言ったりするんですが、自分と相手の心の架け橋を作ってから話を始めると、話が通りやすいかなと思いますね。

前田:3つ目の「オンライン」があるんですけど、オンラインの場合は対面ではないので、なかなかラポールを作るのは難しいと思うんです。

豊間根:難しいですね。

前田:オンラインの場合は、豊間根さんはどうしていますか?

豊間根:そうですね。なんか、僕ばっかり話してますね。すみません(笑)。

前田:いやいや。僕もなんとなくしゃべっていますから。

豊間根:いやいや(笑)。

前田:オンラインの場合はどうされていますか?

豊間根:でも、基本的には一緒だと思っています。対面であろうがオンラインであろうが、「この人、話を聞いてないな」「裏でこっそりAmazonを見ているな」って、なんとなく目線の動きや表情の変化でわかると思うんですよね。

前田:そうですね。

豊間根:なので、そういうのを細かく探りを入れながら、「ここまで大丈夫ですか?」とか、あるいはちょっとしたボケを挟んで反応を見ながら話すのは、対面であろうがオンラインであろうが大事かなと思いますね。

前田:なるほど。

カメラオフの場合、8割の人が“別の作業”をしている

前田:みなさん、知っていますか? オンラインでカメラオフだと、8割ぐらいの人が他のことをやっているらしいんですよ。

豊間根:間違いないですね。

前田:だから、カメラをオフにしていたら、違うことをやっている人が8割なんだなと思いながらお話しすると、伝わってないことが自分の中でも納得感がいくので、「ここは商談を取れなくてもいいかな」とか(笑)。

豊間根:(笑)。

前田:半ば諦めながらでも。

豊間根:そうですね。なかなかそうやって諦められないのが、営業パーソンのつらいところですけどね。

前田:そうですね。僕がオンラインですごくこだわっているのは、例えばリアルで商談相手と30分お時間をいただいたとして、商談する時間、要は一方的にワンウェイでプレゼンする時間を極力短くするんです。

豊間根:よく言いますね。

前田:(こちらが)10分しゃべったら、たぶん10分間も話を聞いていないじゃないですか。

豊間根:本当にそうです。

前田:僕、10分間人の話をずっと聞き続けるのが無理で。

豊間根:わかります。

前田:豊間根さん、もし今オンライン(でのプレゼン)をやるんだったら、何分ぐらいのプレゼンで止めますか?

豊間根:あんまり分数で考えたことはなかったんですけど、「これ、飽きられているな」と思う瞬間があるんですよね。なので、相手の気持ちになって、「もう、おもんなくなっているな」と思ったら、「ちなみに、ここまで大丈夫そうですか?」と言ったりしますね。

参加者の反応を見ながら“ボケ具合”を変える

前田:やはり、確認作業を入れる感じですか?

豊間根:そうですね。長さもそうですし、よくあるのが、例えばサービス資料をダウンロードすると商談を依頼されるじゃないですか。商談に入ると、自己紹介もそこそこに、いきなり自慢話をただただ続けられる。あれ、本当に醒めますよね。

まずはヒアリングから入って、「あなたのことをよく知りましたよ。それに対して、私のサービスでこういうお力添えができますよ」というお話をしないといけないので。それが十分できていれば、10分話してもいいと思うんですよね。

なので、「あなたのためを思ってこれを話していますよ」というマインドセット、もしくは相手のことを知りにいく気持ちのほうが、本質的には大事なのかなと思いますね。

前田:なるほど。ちなみに、オンラインのプレゼンとリアルのプレゼンで、豊間根さんが「ここを変えてます」みたいなことは何かありますか?

豊間根:逆に、どちらかと言うとこれはリアルだからこそできることなんですけど、みなさんの反応を見ながら、どのくらいボケていいかは変えますね。

前田:なるほど。

豊間根:「今日はあんまりボケられない雰囲気だな」と、僕は思います。

前田:マジですか!?

豊間根:はい。けっこう。

前田:比較的、大丈夫そうな方々が集まっているね。

豊間根:本当ですか? あ、すごい。めちゃくちゃうなずいている。ありがとうございます。じゃあ、もうちょっとボケますか。

参加者のリアクションを引き出すテクニック

前田:ちょっと僕……。

豊間根:そろそろ「あれ」ですね(笑)。

前田:みんなと写真を撮りたいなと思ったので。

豊間根:ここで、落合陽一さんのようなムーブをされていますね。

前田:(スマートフォンで客席を入れて自撮りをしながら)いいですか?

豊間根:ありがとうございます。みなさん。

前田:豊間根さんが入ってなかった。はい、チーズ。よかったよかった。

豊間根:あとでTwitterのDMでいただきます。

前田:でも、こういうのをインタラクティブにできるのが、リアルはすごくいいなと思うんですよ。オンラインはなかなかできないじゃないですか。

豊間根:そうですね。Zoomってリアクションができるじゃないですか。例えば、僕が最近セミナーでやっているのは、セミナー中にアンケートをとって「ここまで聞いて、1、2、3のどれに当てはまりますか? 1は『いいね』、2は『ハート』、3はパチパチしてください」と言うと、みんなリアクションを押すんですよね。

そうして一回でもリアクションを押すと、「リアクションしていいんだ」という雰囲気になって、セミナー中にみんながばんばんリアクションするようになるんですよ。これは、すごくおすすめのテクニックです。

前田:それをやることで、ハードルが下がるんですね。

豊間根:そうです。

オンラインだからこそ気にかけていること

豊間根:「していいんだ」と思ってもらうのは、やはりすごく大事です。例えば「チャットにコメントを書いてほしい」と言うだけではなくて、強制的にコメントを書く瞬間を一回作るとか。

前田:いいですね。

豊間根:我々日本人って、みんながやっていないとできないので、「やっていいんだ」のタイミングを一回作るのは大事かなと思いますね。

前田:コロナが落ち着いてきたからといって、オンラインがなくなるかというと、ぜんぜんなくならないじゃないですか。

豊間根:そうですね。

前田:我々も今、こうやってリアルでお話しする機会はちょっとずつ戻ってはきているんですが、この3年でまだまだオンラインは多いですよね。

豊間根:そうですね。オンラインも便利ですからね。

前田:移動する距離や時間も減ってきたので、いいなと思いながらも、ただ、僕がすごくオンラインで気にかけているのが、映り具合や顔の明るさ、表情とか。豊間根さんは何か意識されてます?

豊間根:そうですね。そんなにちゃんとしたカメラやマイクを使うタイプではないんですが、基本的に、ちゃんとカメラを見てハキハキ話すようにはしていますね。

前田:なるほど。

豊間根:リアルと一緒ですね。

オンライン上では「横顔」が見えない

前田:オンラインって、どうしても画面がちっちゃいじゃないですか。ちっちゃいから大したことないかなと思うんですけど、ちっちゃくてもリアクションでしっかりと伝えるように意識しているんですよ。

特に、僕は笑うことをすごく大事にしていて。笑うリアクションとかうなずくリアクションを、なるべく大きめに取るようにするんですよね。そうすると、「聞いてくれているんだ」「理解してくれているんだ」と、画面越しですが距離が縮まるなと思います。

この前、まったく別の方で、俳句を詠んでいる俳人の方と対談したんですよ。その方が「オンラインって不便よね」というお話をしていて、「何が不便ですか?」と聞いたら、「横顔が見えない」と言うんですよね。

リアルだと、ちょっと横を向いたり、横顔が見えたり、角度がついているからいいんだけど、オンラインはずっと正面だから、その人の正面の顔しかわからない。なので、立体的にその人を把握することができないとおっしゃっていたんですよ。

確かにそういう見方はあるなと思いながらも、(オンラインだと)2次元でしかプレゼンをやらないじゃないですか。

今日のお題からは少し変わってきますが、今はChatGPTも出ていて、今後プレゼンテーションがどんどん進化していく中で、豊間根さんは「今後こうなっていくな」みたいな考えは何かお持ちですか?

豊間根:そうですね。でも本当に、最近のAIの進化はけっこう戦々恐々としているところがあります。それこそ、MicrosoftのCopilotとか。

前田:Copilotはすごいね。

豊間根:Wordでばーっと書いて、ばーっとやったら、ばーっと出てくる、みたいな。

前田:出てくる、出てくる。

豊間根:あいつらは今はまだ、我々のように図解を作るとかはできないので大丈夫ですが、5年後はどうかな? とは、不安には思っていますよね。

人間だからこそできる「間」の取り方

豊間根:プレゼンテーションで言うと、人が話すからこその良さは、たぶん今後出てくるんでしょうね。

だから、今も「人対人」でしか伝えられないことってあると思うんですよね。逆に、人が話す、人そのものが人に対してプレゼンテーションをすることの価値は、もしかしたら今後上がっていくのかもしれないですね。

前田:そうですね。

豊間根:「資料自体はAIが作ってくれるから」みたいなことは(AIを活用するメリットとして)あるかもしれないですね。

前田:先ほどCopilotの話が出ましたけど、Microsoftさんのソフトが今度バージョンアップすると、Wordでテキストを入れたらそれがパワポになる。今、Canvaもあらかたそれができるようになっています。

豊間根:そうですね。

前田:Canvaも、テキストを入れたらそれがスライドになるんですよ。精度はこれから上がっていくと思うんですが、ちょっと(技術が)進んでいっても、まだAIは「間」を取ることができないのではないかなと思っています。

豊間根:「間」ですか。

前田:うん。プレゼンのスライドができても、プレゼンの中で僕が話す間と、豊間根さんが話す間は違ったりするじゃないですか。一拍空けたり、しゃべらない間の取り方と言うんですかね。僕なんかは書を書くから、そこにすごく親和性を感じて、余白みたいなものと同じようなイメージを持つんです。

スライド資料で意識している「固まり感」

前田:プレゼンも、先ほどスライドを見せていただいた「DombraCo」もそうですが、全部を文字で埋め尽くさないで、やはり白い部分を残すじゃないですか。

豊間根:そうですね。

前田:この残し方が、すごく大事だなと思うんです。豊間根さんは、余白の取り方で何か気をつけていらっしゃいますか?

豊間根:余白は本当に難しいですよね。僕はいつも、「固まり感を見せてください」と言うんですよね。

前田:固まり感。

豊間根:どっちかと言うと、スライドのレイアウト的な話です。例えば、このスライドは、2つの固まりの真ん中に1個の固まりがあるわけですね。

(次の)このスライドは、言ったら1個の固まりですよね。グラフという四角形に近い固まりが1個あるというふうに見るわけです。

(次の)このスライドは固まりが3つあるわけですよね。3つの固まりがあって、その間に何かが動いている三角形の関係性になっている。この固まり感が見えないと、スライドの構造がわかりづらくなるよと、いつも言っていますね。

前田:なるほど、いいですね。固まりで見せていけば、その間は余白になってくるんですね。

豊間根:そうですね。固まりが見えるということは、関連性が見えているということで、関連性が見えているということは、関連してない部分が存在するということですからね。

前田:なるほど。デザイン4原則でいう「近接」みたいな話ですよね。

豊間根:ですね。だから、AI君が今後こういうことができるのかどうかは、けっこう悩んでますね。

社風によって違う、プレゼンのかたち

前田:でもさ、冒頭で言った「社内のプレゼン」って、企業文化がいっぱいあるじゃない。

汎用的なAIのプレゼンを作るならいいんですけど、いくらAIが学習しても、サントリーさんだったらサントリーさんの社風の、ソフトバンクならソフトバンクの社風のAIモデルができないと、最終的には会社の中での使い勝手は良くないですよね。

豊間根:間違いないですね。でも、それこそサントリーでは、「創英角ゴシックで、薄黄色の四角形に書く四角形は主張で、青の四角形は事実で」みたいな(パワーポイント作成時の)ルールがあるんですね。

前田:なるほど。

豊間根:そこを読み込ませてあげれば、意外とサントリー用のAIも一定できるのかもしれないですね。

前田:なるほど。そのためにはやはり、会社の中でルールがないとダメよね。

豊間根:そうですね。

前田:そこがすごくファジーだと、いくらやったって統一感はぜんぜん出てこないですものね。

豊間根:そうですね。そういう意味で、やはり前田さんの社内プレゼンの資料とかは、「グラフがどん、数字がどん」というルールが明確でいいですよね。

前田:あれを読ませましょう。

豊間根:(笑)。でも、わかりやすくていいですよね。

前田:そうですね。

変化する企業文化に合わせ、自分の引き出しを増やす

豊間根:わかりやすくメソッド化して、「この通りにやれば一定のものができるよ」というのを1個決めるのは、どんな仕事をする上でも大事ですよね。

前田:でも、最近はトヨタさんも、もともとA3・1枚だったのが、「パワポを使ってOKです」と(社内ルールが)変わってきているんですよ。

豊間根:へぇ、そうなんですね。

前田:なので、企業文化はどんどん変わっていくものですし、そこに合わせて自分の引き出しをどれだけ増やせるかが、プレゼンの場合は大事だと思います。今日は短い時間でしたが、みなさんの引き出しがちょっとでも増えたら良かったんじゃないかなと思います。

豊間根:とりとめもない話をして。

前田:いや、もう。みなさん大丈夫ですか?

豊間根:すみません、本当にこんな感じでやってます。

前田:オッケーですか。ということで、カンペに「お時間だ」と出ていますので。

豊間根:(笑)。あんまり(カンペの内容を口頭で)言わないんですけどね。

前田:どうもみなさん、ありがとうございました。

豊間根:ありがとうございました。

(会場拍手)

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