
2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
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高橋晋平氏(以下、高橋):あらためまして、高橋晋平と申します。今日はありがとうございます。よろしくお願いします。
(会場拍手)
財前英司氏(以下、財前):今日の僕は時折質問なり、いろいろ聞いたりしたいなと思ってます。ただ、聞き入っちゃって沈黙のまま終わるかもしれないです(笑)。
高橋:ごゆるりとという感じで進めたいと思います。僕は質疑応答が大好きなので、なんでもいいから聞いていただけたらうれしいです。
ご紹介いただいた高橋晋平と申します。職業はおもちゃの開発者です。おもちゃ開発者がなぜ、アイデアの本を書いたかは、追って説明していきます。
『1日1アイデア 1分で読めて、悩みの種が片付いていく』(KADOKAWA)
本業でいろいろなおもちゃやゲームを作って、もう少しで19年です。バンダイという大きいおもちゃ会社にちょうど10年ほど勤めて、独立・起業して9年です。いろいろなおもちゃを作ってきていて、今まで120種類ぐらい作ってきました。詳しくはTwitterを見ていただけたら、いろいろ載っています。
高橋:ここに写真がいくつかあるんですが。今日は全部説明する時間がないので、財前さん「これ、なんだ?」って気になるものがあったら1個ぐらい質問してもらってもいいでしょうか。
財前:そうですね。この猫背の猫とか。
高橋:よくお気づきですね、猫背の猫。ここにすごく猫背で擬人化されたというか、腰かけて座ってたり歩いてたりするカプセルトイなんですけど。
まさに『猫背』というタイトルの商品です。僕が作ったカプセルトイの中では一番ぐらいに売れた商品です。4センチぐらいの大きさの、『猫背』の猫のフィギュア。なんかキモかわいい感じのものなんですけど。
これはなんなのかというと、猫背の人が多いじゃないですか。日本人って世界で一番猫背が多いらしいんですよ。いつ猫背になるかというと、一番はPC操作をしている時らしいんですね。
だから、このフィギュアをPCの横に置いといて、仕事をしてる時にこのおもちゃががふと目に入ったら「やばい」と思って、自分が背筋を伸ばすという、猫背警告フィギュアなんですよね。
これを作ったきっかけなんですが、僕が肩こりがひどくて、首も痛くて、整体みたいなところに行ったんですよ。その整体の先生が「君、めちゃくちゃ猫背だね」「だから肩とか首、痛いんだよ」みたいに言われました。
「じゃあ、先生どうしたらいいんですか。ここに通ったらいいんですか」って言ったら、「いや、こんなとこ通わなくていいから、ちょいちょい気をつけろ」と言われたんです。ということで作ったのが、この猫背の商品ですね。猫背を気をつけられるフィギュアにしようとして作りました。
それでプレスリリースを出して、日本人は世界で一番猫背が多いんだと。80パーセント以上が猫背だから、200円のカプセルトイで、日本の猫背率を下げて、この健康に貢献するみたいな内容のプレスリリースを出して、そうしたらすごい売れました。
あのカプセルトイって、カプセルの中にアンケートが入ってるんですよね。この消費者アンケートみたいのが返ってきました。購買理由を見たら、ダントツ1位で「キモかわいい」と書いてありました。
(会場笑)
猫背を治したくて買った人、ほとんどいなかったみたいなんですけど。
財前:僕が個人的に一番好きなのは、IoT鳩時計の話なんですよね。これで実家とのこじれた関係が解消されたっていう。ただ、この話をすると長くなりますよね。大丈夫ですかね?
高橋:この鳩時計は「OQTA」という名前の鳩時計です。一般的な鳩時計は時報機能がついている時計なんです。3時になったら、3回「ポッポ」って鳴くものですよね。これは時報機能が一切なく、Wi-Fiにつながってる時計端末です。アプリのボタンを押すと、遠くにある鳩時計を鳴かせることができます。ここに、そのボタンがあります。
僕の実家は秋田県なんですよ。今、秋田の実家には70歳ぐらいの両親が2人で住んでいます。雪もかなりすごいです。そこの居間に、この鳩時計が置いてあるんですね。今、例えばここでボタンを押すと、秋田の実家で鳩が鳴くんですよ。(2回、スマホアプリでボタンを押す)
今、鳩が2回鳴いてるはずなんですね。親は今、何してるかわかんないです。買い物に行ってるかもしれないし。リビングにいる確率も低いかもしれないです。もし家にいたとしたら「ポッポ」って聞いて「あいつが押したらしい」となりますよね。僕が押したから鳴いたのは確定ですよね。そうするとすごい喜ぶんですよ。何やってるかもわかんないこの40代の息子が……。
財前:あっ、今、晋平が押したって思うわけですよね。
高橋:そうです。「押した……」みたいな。「ま、適当に触ったんじゃない?」みたいな感じだけど、まあまあうれしいわけですよ。
高橋:まず僕は、本当に20年ぐらい親と喧嘩してきたという人生があって。そのことをずーっとすごく悩んでたんです。昔からすごく厳しい親だったので。そういう家庭教育みたいなものがあって、なんかこじれてしまいました。
大学ぐらいからうまくしゃべれなくて、「だめな息子だ」みたいな。自分を責めながら生きてました。今度帰省したら、必ず優しいことを言おうと決めて、秋田に雪の中帰るんですけど。顔を見ると、向こうもなんか話しても説教みたいになりますし。こっちも歩み寄れないので、20年も経ってしまった。
東京に戻ってくると、電話をすることもなく……大人だから用事があったらそれはかけますけど。電話は年3回ぐらいでしたね。現実、親は年をとっていてしまう。すごく切ない時間を過ごしてきてしまったんですよね。
どうしても電話して謝るってのもなんかあれだなと思いまして。電話して、なんか「元気?」とか談笑するとかできなかったけれど、ポッポはできると。押すだけですからね。
これを押すと、向こうは、僕がアクションしたと思います。しかも用事も情報も何も伝えてないですから、良くしか捉えないんですよね。
だって、悪意でボタンを押すわけがないじゃないですか。だから、こっちのこと気にかけてくれてるんだなと。アクションできて、僕もうれしいんですよ。もう本当にうれしい。
それからなんやかんやあって、1~2年前に完全和解を果たしたんですけど、本当に僕はおじさんになっちゃって。だから時間経っちゃったけど、すごい幸せな気持ちだったんです。
これはきっかけの1つに過ぎなかったんですけど、今までの連絡手段やコミュニケーション手段は、例外なく用事が必要だったんですよね。LINEスタンプ1つでも、感情や「おはよう」とか、なんか情報を伝えなきゃいけなかった。
だけど、この鳩が鳴くのは、何の情報もないですから、何言ってるかまったくわかんないし、感情もわかんないので、良いように捉えることしかできないです。こっちも、何の用事もなくても、何も考えなくても、怒りも伝えられない、悲しみも伝えられないので。
ただ押すだけで、いいように伝わることがポイントの鳩時計です。結局長めに熱く語っちゃったんですけども。
財前:(笑)。いい話が聞けました。
高橋:なんか、今日の話にもつながっていくんですけど、僕は猫背を治すとか、親孝行をするとか……画面のその隣の商品画像はアンガーマネジメントゲームというんですけど、遊ぶとイライラが減っていって、無駄な怒りを抑えることができます。僕は遊びの力で何かを解決したり、欲求を叶えることが好きです。
ということで、おもちゃを作りながら、ずっと遊びとは何かを考え続け、その結果、いろいろな悩みごとは遊びで解決するのが一番で、それがアイデアだと行き着きました。こうやって、おもちゃ開発者でありながら、アイデアや発想を、いろいろなところで伝えるお仕事にたどり着いています。
自己紹介が長くなってしまいました。
会場はスタートアップカフェ大阪さんなんですが、学生さんっていらっしゃいます?
(会場挙手)
けっこういっぱいいますね。起業とか興味あるんですかね。僕はスタートアップという言葉とはたぶん無縁の人です。スタートアップはできないですね。ゆっくりゆっくり生きていくやつなんで。みなさんが喜ぶ話をできるかはわからないんですけれども。
高橋:自分も起業して9年なんですが、いろいろな会社のお仕事のお手伝いもしている中で、2月22日に『1日1アイデア』という新刊を出しました。
ちょうど5年前の2018年の2月24日に出した『一生仕事で困らない企画のメモ技(テク)』という本があります。財前さんもその本を最初に見て、僕のことを知ってくださったと言っていたんですが、ここらへんから話を進めていきます。
この本は、まさに事業企画や商品サービスのアイデアを考えることに話をフォーカスした本で、メモを取り続けていけば、企画ができると語っています。
社会人の方はみなさん、いろいろなかたちでお仕事をされてますよね。学生さんも仕事を作っていくことに興味がある人が、もしかしたら、今日来ている割合が多いかもしれないですね。
これは一般論に近い話なんですけど、よく言われるビジネス企画の作り方や商売の企画の考え方は、よく言われる順番で言うと、まず解決すべき課題の発見。多くの人が困ってたり、何かを欲している種を見つけましょう。
次に、それを解決する商品とかサービスの具体的な内容。こんなものができたら、困っている人たちの悩みが解決する喜ぶものを考えましょう。
そして、自分が欲しい利益の確認。自分たちが個人事業主だったら、自分が欲しいお金。会社組織だったら、その会社が欲しい規模の利益など、自分がいる立場の必要な利益を得るビジネスモデルに落とし込みましょう。それができたら、実現していい企画です。
これが一般論だとして、僕が『企画のメモ技』とかで伝えて、その後もずっと話している1つの企画の考え方の提案が……個人的欲求起点という考え方を取り入れてみてほしいという話です。5年間、ずっと同じことを言ってます。
それは、世の中の多くの人、あるクラスターの人が解決したいと思っている課題を探すのに対して、自分あるいは自分の側にいる具体的な最愛の人間1人が、お金を出してでも欲している欲求を見つけましょう。
それを解決する商品やサービスの相手を考えて、それによって必要な利益を得られるビジネスモデルにたどりつくことができれば、実現していい。この考え方も、取り入れてみてはいかがでしょうか。自分はこれでたくさん成功しているという話をしました。
高橋:さっきの鳩時計しかり、『アンガーマネジメントゲーム』しかり。『∞(むげん)プチプチ』も、昔から僕は不安症な性質を持っていて、何かを触ってないと落ち着かないという性格だったから、ただただいじっているだけでいいおもちゃを作りたかったという理由がありました。
自分がお金を出すものを作った瞬間にブレイクスルーしたかたちだったんです。それは最終的には、「いや、お前一人が欲しいからって、それはどうなんだ」って会社だったら言われて当然なんですけど。
そもそも、自分ごとにできない社会課題を、「こんなことで困っている人がどうやらいるらしい」というくらいで企画を作ると、大切なポイントを外してしまうと思います。
「じゃあ、それを仕事としてやっているお前は、それにお金出すの?」って言われてしまいますよね。「いや、僕はターゲットじゃないんで、僕はお金を出さないですけどお金を出す人いっぱいいますよ」と言ってる時点で、たぶんもう完全にずれてると思うんです。
まず、必ずお客さんが1人いるものを作れば、それはお客さん0人にはなりません。自分がお金を出したら、最低でも必ず1000人ぐらいはまったく同じようにお金を出す人がいる。そっちのほうが確実なので、ある時から僕はそうやって仕事を作るようになりました。
高橋:今の話を、企画の考え方という表現に落とし込んでいくと、同じことを言うんですけど、その1は「自分がお客さんとして欲しいものに気づく」。
僕の会社員時代は、大きい会社からキャリアをスタートさせたので、何十万個とか売らなきゃいけないと言われて、ビジネスパーソンとして育ち始めたんですよ。そうなった時に、自分のことを最初にないがしろにして、自分がお客という視点じゃなくて、自分は創造主なんだみたいに思っていました。
大企業にいる「我、開発者」「創造主なり」みたいな感じに誤解して、ショッピングモールのおもちゃ屋さんに買いに来る人たちが「お客なり」みたいに勝手に思ってたんですけど。
「いや、お前もショッピングモール行くだろ」みたいなことを、なんか見落としたまま物を作っていて、出した結果、ぜんぜん売れないみたいなことを繰り返してしまっていたんですよね。
その時に僕は、自分が作りたいとか思いついたアイデアで、かわいいから手がけたいみたいな気持ちで、物を作っていた間違いを何年も繰り返していたんですけど。
いくら、なんか笑えるなぁみたいなアイデアを考えたところで、「お前、お金出すの?」って言われて「いや、僕はターゲット外です」みたいなことを言ってる時点で、お客さん不在の可能性がすごく高いです。
自分がお客さんとしてお金を出すものに気づく。その欲求とはなんなのかを発見し、それを叶えるものはなにかとアイデアを考えて、その後に他にも欲しい人がいるかを聞いて回るというね。
ミニマムな表現で言うと、近くの人に「これが1,000円だったら買う?」と聞いて回って、ありなしを見定めていく企画の作り方なんですね。
高橋:そんな中、今回の本でよりフォーカスしていった内容が、この図の、黄色の3番目の丸まで考えなくても、人生を幸せにするアイデアを生み出せるということ。
そもそも、アイデアはビジネス企画作りのためのものではなくて。上の2つだけで、自分の人生を幸せにするアイデアはたくさん考えられますよね。当たり前に聞こえるかもしれないですけど。
まさに僕は20年間、親とうまく話せなくて、本当に泣くぐらい辛かったんですよね。僕はアイデアのプロと言っておきながら、親子関係はすごく難しいから、すごく苦しんできました。
それが実はほんの一瞬、あるたった1つの出来事で完全和解して、今はめっちゃビデオ通話でしゃべってる感じなんですよ。その話は今日は思い入れが強くなりすぎて、割愛します。それはブログサービスのnoteの記事に書いてるので、後で興味あったら見ていただきたいです。
それも、ほんのわずかなたった1つの偶然のアクションで、仲が復活してしまいました。だから、「アイデアってそういうことだよなぁ」という話が詰まっているのがこの本です。いろいろな事例があって、自分が今までこんな困ったことがあった。それはこうやって解決した。こういう考え方があるんじゃないかという、その事象と考え方をセットにしているものが365個載っています。
それを参考にしながら、「私ってこういうことが解決したら、心地いいな」という本音があったり、「これが起きたらもっと幸せなのにな」って願望があったりすると思うんです。それを発見して、それを解決することを繰り返していくと、どんどん仕事や人生が楽しく楽なものになっていくんですね。
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