2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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君島朋子氏(以下、君島):プロフェッショナルに必要なスキルとマインドを、今度は柳沢さんにうかがってみたいと思います。
柳沢さんと言えば、2016年から複数年間、『Financial Times』の「世界で活躍する100人のLGBTエグゼクティブ」に選ばれている方なんですね。今日はプロフェッショナリズムと自分らしさをどうやって両立させるのか、うかがってみたいと思っています。
私も子どもが4人いるんですが、子どもを持って管理職として働いていくにあたり、マイノリティだなと思うことがいっぱいあって、自分を出すのがずっと嫌だったんですね。私が「母です」と言った瞬間に、仕事相手の目に管理職じゃなくて母に見えるんですよ。
「そうなんですか。お子さん小さいのに、夜遅く大丈夫? 帰ったら?」みたいな話になっちゃって、「今は仕事をしているんだから」と思うわけです。なので、プロになっていくには自分らしさは出さないほうがいいんじゃないか、という葛藤がずっとあったんです。
柳沢さんはそれを見事に克服されているんじゃないかなと思って、プロフェッショナリズムと自分らしさをどうやって両立させているのか、ぜひうかがってみたく思っております。
柳沢正和氏(以下、柳沢):ありがとうございます。実はこの話って、2人が言及された出る杭の話とちょっと似ていると思っています。「人と違う」ということを受け入れがたい日本の社会の中で、どうやっていくかが課題としてあると思うんですね。
数年前にグロービスのあすか会議でLGBTのことを話した時に、終わったあとFacebookの申請が来て。メッセンジャーでやり取りしていたら、「私もカミングアウトすることがあるんです。それは私がゲイだとかLGBTのことではなくて、癌サバイバーなんです」という話があって。
「癌サバイバーで、かつ5年以内に癌を経験して転職しているので、5年経つまで新しい職場で病気のことをとても言えません」「すごく同じような経験をされていると思います」ということを、共有いただきました。
誰しもどこかにマイノリティな部分が必ずあって、マイノリティ性とキャリアをどうやって両立するのかは、すべての人にとっての課題じゃないかと思うんですね。
柳沢:私がみなさんにおすすめしていることは1点で、自身の職場環境の心理的安全性の確保に尽きると思っています。
心理的安全性は、Googleが発表して話題になったテーマで、有名なテストがあるので、ぜひあとで検索して調べていただければと思います。
例えば、チームの中で「これは違うんじゃないか?」ということができるとか、自身がミスをした時にちゃんとリスペクトを持って扱われるかとか、そういった環境がある職場やチームだと、人は最大限のパフォーマンスを出すことができる。
逆に、そうじゃない職場にいたらなかなかできないし、業績が上がらない。これは「自分らしさ」というある意味人権的なことで、職場が何かをやらなきゃいけないとかじゃなくて、ビジネスが成長していくために会社は取り組まなきゃいけないことだし、個人も貢献していかなきゃいけないことだと思うんです。
そういった意味でも、自分のチームを安全性の高いチームにすることにかなりの時間を使うことを心がけているというか。それが、私自身の職務上の課題になっています。
そして自身が働く会社、チームのボスに対しては、ビジネスの売上を達成するのと同じぐらい優先的な課題であり、むしろ売上を達成するために必要なこととして、必ず確認するようにしています。
みなさんの職場の中でも、特に新入社員や転職したばかりでいきなり「心理的安全性にコミットできますか?」という会話は、できないと思います。けれども、これだけ「DEIをやらなきゃいけない」「ESG経営だ」という話が出てきているので、今ほど経営陣に伝わるタイミングってないと思うんですね。
先ほど4人のお子さんがいるという話をされていましたが、4人の子どもの心配、またはその両立の心配を上司がしてくれるのであれば、4人の子どものことに限らず、チームの心理的安全性を高めることに時間を使ってほしい。むしろ一緒に考えましょうと話していくことが、結果的に自身のキャリアと自分らしさを両立する一番の鍵になると思います。
君島:なるほど、ありがとうございます。みんないろんなクラスで「心理的安全性」というキーワードは聞いたことがあるんじゃないかなと思うんですが、今のお話を参考に、ぜひ自分の職場を心理的安全性の高いものにしていってください。
「誰の中にもマイノリティ性はあるよね」と言っていただいたんですが、みなさんも「こういう点ではマイノリティだよね」とか、もしかしたら「MBAに通っているってマイノリティだね」ということもあるかもしれないですね。そんなことを話せるような、受け入れられるような職場にしていきたいですね。どうもありがとうございます。
君島:このあとは会場のみなさんからの質問に移りたいと思いますが、最後にもう1個、パネリストのみなさんにうかがってみたいなと思います。それは、今日のセッションでずっと言われていた「変化」についてです。
この大きな変化の中で、どうやって変化を乗り切って、プロフェッショナルとしてがんばっていったらいいのか。大きな変化を乗り切るプロフェッショナルの心構えや考え方、リーダーシップとはどんなものかについて、柳沢さんからうかがってもいいですか?
柳沢:私自身、実はあすか会議の京都でそれに気づきました。数年前の田坂広志先生の講演はみなさんも聞かれていらっしゃると思うんですが、「逆境にどう打ち勝つか」というお話でした。病気とか大きな経験をされて、その中でも自分が生かされているということに気づく、というようなお話だったと覚えています。
さっきも(隣の山口氏と)「同い年だね」という話をしたんですが、やはり私自身も40歳を過ぎた頃ぐらいから、だんだん無理もきかなくなったり、人間ドックがドキドキ、みたいなところがあるわけです。
そういう中では「肝を据える」ことに尽きるんじゃないかなと思っています。先ほどの田坂先生の文脈で言うと、「生かされているこの命を何に使うんだ」というところに行きつくと思うんですが、何のためにこの仕事をしているのか、その肝を据えることが大事だと思うんです。
先ほどもちょっとお話ししましたが、前に働いていた会社の部門が閉鎖されて売却されるとか、そんなことはけっこうどうでもいいというか。「また来たな」「必ずこういうのがサイクルで来るよね」みたいな。部下がどこかに引き抜かれていっちゃうとか、一番大きいお客さんが突然消えるとか、職場の中ではそういう変化が必ずあるんです。
でも、「ああ、また来た」と思えばいいんですよ。試練と考えるとちょっとつらいので、「これは自分が変わっていくチャンスだ」と思う。もちろん、来た時にはなかなかそうは思えないんですが、チャンスだと思って次のステージに行ければと考えています。
君島:ありがとうございます。「肝を据える」ということで、変化が来ても「ああ、また来たんだ」と思えばいいということですね。ぜひみなさんも、そんな肝を据える気持ちを持って帰っていただければなと思います。
君島:山口さんはいろんな教育文脈でも、「DXだよね」と変化を語ってらっしゃる側の方だと思うんですが、この変化の時代をどうやって生き抜いたらいいか、ぜひ教えてください。
山口文洋氏(以下、山口):お時間もあれなのでキーワードを2つだけ言うと、「メタ認知力」と「抽象化」。今までみなさんがつけてきたプロフェッショナルなスキルや経験って、時代が変わるとどんどん陳腐化してくるんですよね。その時に、自分のやっている業界や自分のやっていることが無になることはないんですよ。
メタ化したり抽象度を上げた時に「これって違うところで応用できるじゃん」という、ある意味「メタ認知」や「抽象」。もしかしたら「情報編集力」も加わるのかもしれないんだけど、実は今まで自分のやってきたことが他だったらバリューが出るとか、応用発展できることがあります。
そういう考え方を柔軟に持つ力が、行き詰まらずに、しなやかにピボットしていける人生につながるのかなと思います。そのしなやかさが、これからのプロに問われるんじゃないかなと思っています。
君島:どうもありがとうございます。メタ認知力、抽象化する力。ぜひこれも持って帰っていただきたいと思います。
君島:じゃあ、最後にKollさんお願いします。
Jesper Koll氏(以下、Koll):すごいですね。プログラムを見てOh, my God! ウクライナ、戦争になるか、台湾をどうするか、インフレがどうなるか。Who cares?
(会場笑)
Koll:これは自分とは関係のない話なんですよ。僕の仕事もマクロの世界ですが、インフレがあるかないかが自分と関係があるの? というと、あなたの命やあなたの人生には、ほぼほぼ関係ない。
そして今、一寸先は闇。僕も還暦を超えて、毎年一寸先は闇だよ。だから自分自身のこと、自分自身の命、自分自身の生活、お父さんお母さん、家族のことは心配しないでください。まずアドバイスは、「Back to basic」。根本に戻ることです。
なぜ仕事をするのか。もしかしたら、最初の大学を卒業した時には考え方がぜんぜん違ったでしょう? ミッドキャリアでMBAを取るのは価値があるよ。その自信を見せてください。
でも、まず何のために仕事をするかを考え直して、そしてチャレンジしてみてください。これが一番大切なことです。日本社会はおもしろいね。みんな横並び。そういう言葉もあると思います。
これは「forget about it」なんですが、ミッドキャリアでプロフェッショナルのセンスとプライドもある。だからこそ、できることはちゃんとできるということです。今はすごくチャンスなんです。
最後のメッセージですが、いつも日本のエコノミストや政治家たちと喧嘩するんですよ。「人口減少。だから日本はダメだ」と言いますが、実は人口減少はすごくいいことです。競合するライバルがいなくなっちゃうから。
なにか失敗しても、また仕事があるのは間違いない。これは日本だけですよ。母国ドイツでやったら大変です。本当に今、ウクライナから200万人が入ってくるよ。どうするの?
そのためには、まずはBtoB。何のために仕事をするか、そしてどういうリスペクティングがあるか、お父さんお母さんの介護のことを考えないといけないということは、日本の事実なんですよ。だから、これも全部繰り返してチャレンジしてみる。
そして2番目のポイントは、マクロ観点でやるとラッキーです。だから今、実は日本は世界一のチャンスです。Thank you.
(会場拍手)
君島:ありがとうございます。
Koll:拍手をいただき、ありがとうございます。お酒、いただく?
(会場笑)
君島:ありがとうございます。すばらしいメッセージをいただきました。
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