2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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西舘聖哉氏(以下、西舘):ここまで家康の話やビジネスの話をいろいろさせてもらいました。視聴者の方が気になったところなんですが、大中さんは歴史研究をされているので、簡単にスライドの左下(「日本史で一番魅力的だと思う時期」)に触れたいなと思います。
もちろん戦国時代中心でもいいんですが、「日本史でここが一番魅力的だな」と思う時期や、「日本人はみんなもっと知っておくべきだよね」と思う部分は、大中さん的にはどのへんに当たりますかね。
大中尚一氏(以下、大中):今の時期から考えるとですが、正直現代の日本は落ち目で、非常に激しく変化している時期だと思います。
そういう時代に生きるヒントや知恵は、同じように古いところが落ちていって新しい人が生まれてくる時期が一番ヒントになると思いますし、ドラマの題材としても一番多いですね。
例えば、この間の大河の『鎌倉殿の13人』にありましたが、源平の争乱期も1つです。ちょっと遡りますが、壬申の乱という天智天皇側と後の天武天皇が戦った時期もそうですし、南北朝時代の足利尊氏の時代、戦国時代の特に信長、秀吉、家康の時代、幕末の大東亜戦争の時期が一番学びになるし、ドラマとしてもおもしろいかなとは思います。
西舘:ありがとうございます。その中で、幕末の明治維新周りはいろんなテーマの題材になっているものも読んでいるので、僕もすごくいいなと思うことも多いし、最近だと開拓者として坂本龍馬の名前をよく聞きます。
過去に活躍された人が、どういう考え方で・どういうアクションをしていったのかは非常に学ぶところが多いなと思うので、ぜひ今の魅力的な時代をいろいろ調べてみたいなと思いました。僕は明治維新周りを挙げさせてもらったんですが、大中さん的にこの中で特にこれ、みたいなものってあります?
大中:本(『家康の本棚』)的に言うと「家康を読んでね」という感じなんですが(笑)。
西舘:そうですね(笑)。
大中:最近で言うと、三谷幸喜さんの脚本の『鎌倉殿の13人』は本当におもしろかったです。ふだんあまり知られていない時代ではあるので、再注目するのはありなんじゃないかなとは思いますよね。
観光資源もたくさんありますし、戦国時代は本当に魅力的な時代なので、どの地域でもいろんなものが残っていると思います。例えば、自分の土地の戦国大名はどんなだったかとか、どこでどんな戦いが行われたかを調べてみてもおもしろいかなと思います。
西舘:一時期仙台に行くことが多かったので、伊達政宗の像をけっこう見に行っていました。
大中:そういう身近なものを調べるのもありかなと思います。
西舘:ありがとうございます。一応、今日用意してきたテーマはこれが最後になります。スライドの右下(「昔と今 本と電子書籍の学びの違い」)ですね。昔と今の学び方の違いはだんだん変化しています。
このテーマの中では特に読書にフォーカスしているんですが、読書をするための本があったり、教育現場での教科書や漫画本も含めて電子書籍化の流れもあって、「目から入ってくる情報や質感が違うよね」と、よく言われていると思います。
こういった、時代の変化や物の変化での学びの違いは、大中さんはどんな感じに捉えているかという話をさせていただければと思います。
大中:今はやはり動画が強いですよね。
西舘:すごくわかります。
大中:活用はしたほうがいいのかなと思うんですが、紙と電子書籍の違いは、正直脳科学的にはわからないです。好きなのは紙ですけどね。質感が気持ちいいというか、ゆっくり過ごす時間があるのであれば、スマホやタブレットで読むよりも紙で読みたいなとは思います。
大中:これもあくまで感覚の違いなのでどっちがいいとは言えないんですが、リスキリングで考えて言うのであれば、どんなに技術が変わろうと、何をしてもインプットするだけだったらあまり意味がないかなとは思います。
学んだことをアウトプットしたり、人にしゃべったり実践することがないと、ただ知識を蓄えるだけになっちゃうので、紙の書籍だろうが、電子書籍だろうが、音声だろうが、動画だろうが、それは一緒かなと思ってはいます。
もしこれをご覧になっている方が「何かに勉強を活かしたい」と思っていらっしゃるのであれば、アウトプットするつもりでインプットしないと効率が悪いかなというのは、1つ言えるかなと思います。
西舘:なるほど。書籍的なテーマに絡めると、読書が昔の時代の家康のインプットだとして、「家康のアウトプットはこういうものがあったよ」という事例はあったりしますか?
大中:まず1つは、武田信玄に負けて、そこから武田信玄が『孫子』を研究しているのを知ったので、自分も『孫子』を読んで自分の戦略に活かして、非常に戦上手になっていったと。
これも本にも書いていますが、もう1つは政治でいくと、『貞観政要』という中国の唐の時代に書かれた書物です。唐の太宗という三蔵法師の時代の皇帝の言行録をまとめた『貞観政要』というのがありまして、これは政治指南書です。
これを読んで、江戸幕府の構築や江戸幕府の政治に活かしていたので、まさに趣味として読むのではなくて、自分の仕事に活かすために読んだ。それを実践して、わからないところをまた読んで繰り返したのが家康かなと思います。
西舘:なるほど。そう捉えると、家康がやってきた政府を作ることであったり、仕組みを変えるところに直結して活きる部分のインプットをちゃんとされていたんですね。
大中:そうですね。やはり今の時代はインプットするものがあり過ぎるので、何をインプットすればいいのかわからないと思います。
西舘:ありますよね。動画でも見れるし本もあるし、手段も環境もたくさんある中で何を学んだらいいのかって、きっとみなさんもけっこう迷われているところなのかな。
大中:逆にわからないかもしれないですよね。家康の時代はそんなに数があるわけじゃないですし、たぶん1冊を読み込んで実践して、読み込んで実践して……と繰り返したんじゃないかなと思います。今の僕らもそれは一緒かな。
10冊を適当に読むよりも1冊を読み込んで、それをもとに行動したほうが結果が出そうな気がするんですがね。
西舘:「深く読み込む」というところでいうと、僕はけっこうビジネスパーソンが書いている本を読むので、その人がこれまでどういった経歴を辿ってきたのか、どういったことを学んできたのかとか、好きな本を聞くのも好きだったりするんです。
そういう記事も出ているので、そういったところを通じてその人の背景を知ることが、もしかしたらより深い学びとして有効なのかなと思いました。
大中:そうですね、すごくいいと思います。僕は鑑定的なこともするので、自分のタイプと合っている人のものを読んだり、トレースするようにはしていますね。
西舘:大事ですね。
大中:結局、自分のタイプとまったく合わない人は、どんだけがんばって真似してもなかなかうまくいかなかったりするので、それはもったいないかなと思ったりはします。
西舘:僕の例で言うと、けっこうフォロワーシップ的というか、「こういうことをやりたいんです」という人を助けるのが好きで、自分が「こういうのをやります」と宣言するのが苦手なんです。
確かに、僕もリーダーに憧れている面があるのですがそういうやり方で突き詰めていったら、たぶんどこかで大コケしているだろうなと今思いました。
いろんな人のフォローに回るところを広げていったからこそ、今こうやって大中さんと話す場を任せてもらっているところもあるので、合うやり方を見つけるのは大事ですね。どうやったら見つかるのかとか、逆にこうだと見つからないんじゃないかとか、ヒントはありますか?
大中:「こうだと見つからない」というのははっきりしていて、憧れる人を追いかけるのはあまりおすすめしないです。
西舘:おお(笑)。やりがちですね。
大中:なぜ憧れるかというと、自分にはないものを持っているから憧れることが多い。もちろん、憧れている人がたまたま自分とタイプが一緒だったらぜんぜんいいと思うんですが、たぶんあまり(ケースとしては)少ないんじゃないかなと思うんです。
西舘:そうですよね。周りを見渡しても、憧れる人と自分のタイプが合うかなと言われると、そうじゃない感じがする。
大中:(笑)。あくまで僕が仕事をしてきた中で見てきたことですが、ある程度統計的なものが世の中にはたくさんあると思うので、自分とタイプが同じかどうかを見極めるのは1つの方法かなとは思います。
西舘:そういう意味でいうと、もちろん学びも大事ですが、自分を知るのも本当に大事なんだろうなと思います。
大中:本当に大事だと思いますよ。
西舘:その方法について、大中さんが実践されていたり、知っていることがあったりしますか? みなさん、たぶんけっこう悩まれているんじゃないかなと思います。
大中:これは本には書いていないですが、家康も絶対にやっていたはずです。昔、特に文字を読める人は暦で自分が生まれた生年月日を見て、自分がどういうタイプであるかを見ていたので、暦とか統計を使って自分のタイプを知るのは1つ有効なのかなとは思います。
これは本の中に書かせてもらっていますが、家康は別にオカルト好きなわけではなくて、当時の戦国大名はみんなそうだったという話です。ちゃんと東洋の思想を取り入れて町づくりもしていますし、それを政治に活かしたりもしています。
そういう観点で言うと、怪しいものとかオカルトということではなくて、過去から使われている統計を使って「自分はどういうものなのか」を調べるのはありかなと思います。
西舘:僕ももうちょっと自分のことをちゃんと知りたいなと思うので、そういった方法を実践してみようかなと思います。
今日はいろんなことを聞いてきました。事前質問でいただいたものや、僕の聞きたいことを交えながらいろいろ答えていただいたんですが、まさに新時代を作っていった家康のことであったり、継続性的なところ。
あとは、失敗しても諦めないところだったり、最後に出てきたアウトプットを前提にちゃんとインプットしていくことについてお話ししました。
西舘:「これを勉強しておいたほうがいいんですか?」ともよく聞かれるんですが、どういう目的、アウトプット、成果につながっているのかを意識しないと、やはりモチベーションって湧かないよねとよく伝えさせてもらっています。
大中:そうですね。
西舘:そういったところにもすごくつながる話だなと思いました。昔で言えば、家康さんみたいな人が結果を出しているところからも、すごく学べることがあると思います。
現代にも、実践されて大きな結果を残されている人もいると思うので、そういった人たちに憧れるんじゃなくて、どこが自分に取り入れられるのかを知っていくことが非常に大事だという話は、僕もしっかり意識していこうと思えました。本当にいい話をありがとうございます。
大中:ありがとうございました。
西舘:ここからクロージングしていきたいなと思います。まず、本日の内容を聞いていただいている人たちは、本に興味ある方たちだと思います。
不確実で不安なことも多い現代ですが、そういう方たちに向けて、大中さんから今日の総括的なところでメッセージをいただきたいなと思うんですが、どうでしょうか。
大中:(視聴者コメントで)「本を読みます」ということで、ありがとうございます。僕も活字中毒で本を読んでいますので、これからも読みましょう。
西舘:ありがとうございます。
大中:家康は、人生とは「重荷を負うて遠き道を行くがごとし」と言っています。最後まで諦めずにひたすら忍耐と努力をされて、最後にすべてを勝ち取った人なので、ぶっちゃけあまり魅力がない生き方だなと思うんですよね(笑)。
西舘:(笑)。
大中:華やかさはゼロだから人気がないんだと思うんですが、すべてを勝ち取って新しい時代を作って、今の日本の礎を作ったのが家康さんなんです。
特に自分でお仕事をされている方とか、自分で起業したい人の場合は、華やかさに憧れる気持ちはとてもよくわかるんですが、どういう最後を作りたいかを考えて、長い時間を使ってやることも、選択肢の1つとして持っておけばいいんじゃないかなと思います。
この本を書かせていただいた著者として、そして元教師としての立場からいうと、勉強しない民族には本当に未来はないと思います。今の日本の地位がそれを如実に示していまして、先進諸国の中で日本が教育にかける費用の割合はめっちゃ低いんですよ。そして、さらに下がっていっているんです。
よく言われることでもあるんですが、国際的な論文に占める日本の比率もどんどん落ちていっているんですよね。たぶん今から日本人のノーベル賞はどんどん少なくなっていくか、生まれなくなると思います。
それだけ技術の面で劣っていく可能性が高いので、そういう面だけで言うと、本当に暗い時代になっちゃうかなと思います。だから、それは国としてぜひ考えていただきたいです。
大中:さっき言いましたが、個人として考えた時には、みんなが勉強しないんだったら自分が勉強したら勝ちです。圧倒的に差をつけられるので、ぜひ自分のために学んでいただきたいなと思います。
まずは本を1冊読むところからでもいいと思うので、その時にぜひこの本を読んでいただけると著者としてはとてもうれしいです。今日はお忙しいところ見ていただいて、ありがとうございました。
西舘:ありがとうございました。僕も学ぶモチベーションが増えたし、「千里の道も一歩から」と言いますし、ここからだと思うので、ぜひ『家康の本棚』から始めていただければうれしいなと思います。
大中:そうですね。
西舘:最後にJMAMからのお知らせとして、本日も紹介させていただいた『家康の本棚』は2022年12月24日発売です。Amazonでも取り扱っていると思うので、こちら(スライドのQRコード)からアクセスしてぜひお手に取っていただければと思います。
今日の動画は大中さんのチャンネルで公開しているんですが、他にもこれまでやってきたセミナーや、まさに今日テーマに出した越境学習やリスキリングはJMAM側のチャンネルにも上がっていたりするので、こちらもぜひチェックしていただきたいなと思います。
ビジネスパーソン向けの書籍やイベントをたくさんやっていますので、ぜひうちのFacebook、Twitterをチェックしてもらったり、あとは育児書を中心にInstagramもうちのメンバーがやったりしますので、ぜひ見ていただければと思います。
ということで、本日はこれで終了したいと思います。みなさん、長時間ありがとうございました。大中さん、本当に貴重なお話をありがとうございました。ぜひみなさんで学んでいければと思いますので、引き続きよろしくお願いします。ぜひまたお話ししましょう。
大中:みなさん、ありがとうございました。
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