2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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大江加代氏(以下、大江加代):そして3つめはコミュニケーションの話です。よくしゃべる主人と私、コミュニケーションがうまくいっているように見えるかもしれません。けれども、それには2人それぞれがそれ相応に気を使って、コミュニケーションを良くしようとしているところが正直あると思います。
私も主人も1回離婚をしているんですよね。離婚をするに至った経緯や背景はそれぞれ違うとは思うんですが、結論から言えば、夫婦で同じ方向を向いて一緒に生きていくことがうまくいかなそうだねということで、離れることになったんだと思うんです。
だからある意味、「コミュニケーションが成り立たなくなって離れてしまったのではないか?」と思うわけです。例えば私ですと、きっかけは不妊治療をしたことです。
これは1人で解決することはできないんです。けれどもこの話題を振ると、旦那さまは大変ご機嫌が悪いというか、避ける感じだったんですよね。まあ、普通だと思います。ただそうされると、パートナーが好まない話をあえてゴリゴリしにいくのは私としても苦しいので、控えたり我慢しますよね。
本当は共有したい気持ちがあったとしても、どんどん共有しないようになっていきました。やっぱり夫婦のコミュニケーションにおいて大事なのは、どちらかといえば「気持ちの部分の共有」だと思うんですね。
仕事のコミュニケーションは、仕事をする上で必要な業務に関わる事実というか、必要な情報を共有していくことだと思うんですが、夫婦の場合のコミュニケーションは気持ちの部分の共有のほうが大きいと思うんです。
大江加代:先ほど申し上げたみたいに、私が「ちょっと苦しい、どうしようか」と言ったから解決できるわけではないけれども、自分の抱えているものをなかなかずっと言えず、言う頃には相当差し迫った状態でしか話せない、ということになってしまったりするわけですよね。すごく難しいです。
楽しいもそうだし、苦しいもそうだし、本当に少しずつその瞬間、その瞬間になるべく共有していく。ボールを投げた時に、キャッチボールをする。
たまにはスルーされたとしても、数を投げれば相手の癖もわかってくるし、投げているうちにだんだん自分の思っていることも伝わっていったりする。または、「孤独ではない」と感じる部分もあって成り立っていくと思うんですよね。
なので、なんでもないことをどんどん話していくことが、夫婦のコミュニケーションにおいては大事だろうなと思っています。その点は、たぶん主人もそう思っているのではないかなと思うんです。
そういったものを成立をさせる魔法の言葉が本にも書いているんですが、「ありがとう」という言葉です。なんでもないんですが、我が家の場合は「ありがとう」という言葉が、たぶん1日に50回ぐらい飛び交っていると思います。
朝起きて、コーヒーバッグを出してくれて「ありがとう」。バターを出してくれて「ありがとう」とかね。朝ごはんを食べる時から、なんでもないことで「ありがとう」という言葉が飛び交っています。
もちろん、たまには気持ちが入っていないこともあると思うんですけれどね。でも、そういう言葉が飛び交っているんです。そうすると、ありがとうと言われた本人としては嫌な気はしないですもんね。
大江加代:そして、実は「ありがとう」という言葉を言うほうも、たぶん仏頂面で言うことはあんまりないと思います。にっこりすると脳が勘違いをして、幸せホルモンが出てくるんですよ。
セロトニンという幸せホルモンとか、モチベーションアップにつながると言われるドーパミンとか。なんとなく幸せ感を生み出していくエンドルフィンとかが分泌されて、脳のほうも「幸せだ」と勘違いして、言ったほうもいい気持ちですよ。言ったほうもいい気持ち、言われたほうもいい気持ちになる、本当にいい言葉だと思います。
あとは、「あなたがやってくれたことを見ています」というメッセージにもつながる魔法の言葉だと思います。最近夫婦の会話が少ない方については言ったほうがいい。そうでなくても、職場でもいいと思うんですけどもね。
(「ありがとう」と言うことは)別にお金がかかるわけではないし、自分もハッピーな気持ちになるので、積極的にこの言葉は使われたらいいのではないかなと思います。私からはこの3つということで、お話を終えたいと思います。
大江加代:ではここからは、リアル夫婦放談ということで2人で進めていきたいなと思います。
大江英樹:はい。よろしくお願いします。
大江加代:よろしくお願いします。
大江英樹:「ありがとう」は本当に大事だよね。心がこもっていなくてもいいから、「ありがとう」と言ったらいいんだよね。
大江加代:うん。そうそう。
大江英樹:要するに、そんなもん常に心がこもっているわけではないので。
大江加代:全身全霊を込めて「ありがとう」と言う必要はない(笑)。
大江英樹:そうそう。ただ多くのご夫婦の中では、特に男性は「自分の嫁さんに『ありがとう』なんか、照れくさくて言えるかよ」みたいなことを言っている人も多いと思うし、それはたぶんそうだろうと思うんですよ。
大江加代:それ、損してますよね。
大江英樹:そうなんだけど。でも、だったら他人に言えばいいんですよね。一番手っ取り早いのは、コンビニでお茶を買った時に「ありがとう」と言ったらいいんですよ。
(コンビニにいるお客さんを)見ていると、本当に仏頂面で出ていっているじじいが多いからね。あれは本当にだめですよ。「ありがとう」と言うだけでこっちも気持ち良くなるし、向こうもうれしいだろうし。
大江加代:本当にそうですよね。
大江英樹:だから、そうしたらいいのではないかなと思う。
大江加代:エレベーターを降りる時とかね。
大江英樹:そうそう。エレベーターを降りる時も、こっちが「開く」のボタンを押しているのに、何も言わんと黙って言ってしまう人もけっこういるからね。
大江加代:男性陣というか、シニアに多いんです。
大江英樹:そうそう。そういうのはシニアが多い。
大江加代:若い男性は礼儀正しい感じです。
大江英樹:礼儀正しいね。
大江英樹:あと、今日はこの本(『定年後夫婦のリアル』)のセミナーですが、これを書き終えたのはもう3ヶ月ぐらい前じゃないですか。
大江加代:そうです。
大江英樹:しばらく書籍を読んでいないので、内容がどうだったか覚えてない部分もあって。昨日出張の帰りに読んでみたら、これおもしろいわ。いや、ほんまおもしろい。やっぱり自分が書いているだけあって、センスが合うんだね。本当におもしろい。
大江加代:それはほら、読んでいただく方のセンスに合わないと意味がない。
大江英樹:そら、そう。だから読んだ人というか、書店で手に取ってみておもしろくないなら買わないだけだからいいんですけど、でも本当に参考になることがあればいいなと思っているんです。
大江加代:はい。本当に、嘘なく書いて。
大江英樹:期待していただいたらいいかなと思っております。
大江加代:参考になる部分があればと思っております。
大江英樹:リアル放談ね。
大江加代:ということで、私から質問していっていいですか。
大江英樹:はい。どうぞ。
大江加代:私は経験がないんですが、男性が家の大黒柱的な気持ちでいるとして、役職定年とか定年で給料ががっくりと下がると、案外ショックですか? これは男性に限らないんですが。
大江英樹:僕の場合はそれはなかったですね。というか、実を言うと私が勤めた会社には役職定年ぽいものはあんまりなくて。定年の直前までポストについていたので、そこはピンと来なかった。
だけど定年後、再雇用でパート社員で働いていたから、その時は給料が7分の1ぐらいになったんですよ。でもそれでショックかと言われたら、ショックというほどではない。最初からその金額はわかっていたから。だから、そんなものなんだろうなと思った。
大江英樹:さっきの話ではないけれども、「俺は大変な仕事をやってきたんだ」というプライドの塊みたいな人やったら、けっこうショックを受けるかもしれない。「所詮大した仕事なんかやってないんだからね、減ったからと言って別にそんなもんだよな」ということで、あんまり僕はピンと来ないんじゃないかなと思います。
大江加代:そうなんだ。
大江英樹:だけどさっきの話のように、「本当に自分はとってもすごいことをやってたんだ」みたいな自信過剰だった人は、ちょっとショックなのかもしれないですね。
大江加代:逆に女性陣営というか奥さまのほうも、家計を支えてくれていた夫の給料が下がると、なんとなく夫の価値が下がったというか。
大江英樹:確かに。稼いでくれなかったら価値が下がっているよね。
大江加代:役職定年って、ちょっと微妙な空気みたいなものが漂うのかなぁと思ったり。
大江英樹:きっと漂う人もいるでしょうね。そういうのもあると思う。だからこそ「自分はこんなにがんばってきたんだ」みたいに、あんまり過剰に考えすぎないほうがいいですよ。それを考えすぎると、本当にショックが大きいと思うから。「まあどうってことねえや」「大したことやってないしな」ぐらいでちょうどいい。
大江加代:じゃあそこは、成仏した気持ちで。
大江英樹:そう。早く成仏することですね。
大江加代:女性陣からそういう話を聞くと、案外(給料が下がったことについて、男性側が)痛いと思っているところに一言冷たい言葉を投げてしまったりすると、意外に男性は繊細なのでグサっと心に刺さる。
大江英樹:あえて話題にする必要はあんまりないよね。それはそうかなという気がする。そのことをすごく重点的に話題にする必要はないかな。
大江加代:うん。なるほど。わかりました。
大江英樹:定年後のことについて、夫婦で話し合っておくことがすごく大事なのはそのとおりだと思うんだけど、どういうきっかけでやったらいいのかを知りたい人が多いと思う。
大江加代:もし会社でリタイアメントセミナーみたいなものがあったら、夫婦参加がOKであれば、ぜひご夫婦で出たほうがいいと思います。でも私自身も、あなたがそれを受ける時に行きましたけど、会社のいろんな制度の説明とかを伝言されたら、情報が半減していたと思いますよ。
大江英樹:そうやね。
大江加代:聞きたいことがあったらプロが説明してくれますし、同じ状況に漬かれるわけなので、伝言では難しいですよね。
大江英樹:それはそうだね。やっぱり、夫婦揃ってのセミナーがいいよね。
大江加代:できればね。
大江英樹:中には従業員持株会とか、財形貯蓄の残高が奥さんにわかってしまうので困る人もいるかもしれないけれども、だけどそれはしょうがないよね。気にするのはそこか? という話だよね。
大江加代:そうよ、共有財産。何言ってんの!
大江英樹:ただ、私もいろんな企業の50代の人向けのセミナーに行くんですけど、ちゃんとした会社、本当に社員のことをきちっと考えている会社は、だいたい土曜日とかに夫婦で参加してもらうのが一般的ですね。
中には社員だけ集める会社もあるけれども、パートナーがいる人はパートナーにも参加してもらうのは絶対にいいよね。
大江加代:あればね。
大江英樹:そうは言っても、それがある会社は一部だと思うわけですよ。もし(夫婦で参加できるセミナー等が)ない方は、日常の生活の中で夫婦でいきなりお金の話をするって、ちょっと先の話は難しいと思う。
いいレストランでもいいですし、旅行でもいいんですけど、ちょっと非日常な空間で「話そうよ」と切り出すのはありかなと思ったりするんです。
大江英樹:旅行に行って、あんまりそんな話したくないなと思うけどね。
大江加代:でもほら、日常でご飯を食べながらのそれ(お金の話)はちょっと重いので。
大江英樹:まあ、それはそうやね。だけど、いきなり旅行に行って「ちょっと話があるんだけど」なんて切り出されたら、ドキッとするよね。だから、そこは自然に工夫するということですかね。
大江加代:なにかきっかけがあれば。夫の会社じゃなくても、そういうお金のセミナーに2人で出掛けるとかね。
大江英樹:そうだね。そういうのはいいよね。
大江加代:そういうのもいいかなと思います。
あと、よく女性陣から「定年で家にずっと旦那がいるとゾっとする」という話があったりしますね。
大江英樹:夫源病とか、主人在宅ストレス症候群というやつね。
大江加代:男性陣からはどうですか?
大江英樹:確かに女性からすると、そういう面はあると思うんですよ。ただ私が思うのは、「何でもいいから外に出ていけ」と言われて、仕方がないから公園に行って鳩に餌やってる人もいるかもしれない。だけど、別に行くとこもないしやることもないのに、無理して出掛ける必要はないと思うんですよ。
家にいて新聞を読んでいたって、Netflixを見ていたって、別に構わないと思うんです。だけど問題なのは、家の仕事をなんにも手伝わずに家出ずっとゴロゴロして、そして「おい、昼飯まだか」みたいな。これはやっぱり困ると思うんですね。
大江英樹:例えば料理ができる人だったら料理をやったらいいし、料理に興味がないとか苦手だったら、家の周りの掃除だっていいわけじゃないですか。
大江加代:お買い物に行ってくれたっていいし。
大江英樹:そうそう。買い物に行ったっていいし、それから風呂を洗ってもいいしね。奥さんがやってる家事労働をかなり軽くするという意味で、自分も参加してやる。それだったら、余った時間はテレビを見ていようが本を読んでいようが、別に邪魔にはならないと思うんですよね。
大江加代:そうですよね。今までの仕事が家事に切り替わったと思えばね。
大江英樹:そうそう。だから、会社でやっていた仕事を家でもやると思えばいいだけのこと、という感じがするのよね。
大江加代:確かにおっしゃるとおり。「自分だけがずっと家計を支えた」とか、ゴロゴロした上に「おい」とか言われたら、ちょっとかちんときますよね。
大江英樹:そうだよね。
大江英樹:時間もあんまりなくなってきたので、ここで最後に聞いておきたいこと、言っておいたほうがいいかなということは、定年になった夫婦がそこからの長い期間、うまくいく秘訣を1つあげるとしたら何ですか?
大江加代:リセット。お子さまがいる・いないはあると思うんですが、例えばお子さまがいると「お父さん・お母さんという役割で何十年もやってきました」とか。そうでなくても、今までのご夫婦の関係の中で2人でやってきたと思うんです。
大江英樹:なるほど。
大江加代:定年という大きな節目はいろいろ大きく変わるので、一緒にこの後を生きていくという意味で、今までのことをチャラにして、リセットして次に向かうことは必要かなと思います。
大江英樹:なるほど。なかなかチャラにできないことも多いような気もするけれども、でもチャラにせないかんっちゅうことやね。
大江加代:そうですね。例えば呼び方も「お母さん」でなくて、名前で呼ぶとかね。そんなところから変えてみてはどうでしょうか。
大江英樹:「お母さん」「お父さん」じゃなくて、名前で呼ぶ。
大江加代:どうですか?
大江英樹:これもけっこう「ハードルが高い」という人も多い気がするんだけれども、1つのきっかけとしてそういうことをやってみるのもいいね。奥さんに対して名前で呼びかけたら、奥さんにも変な顔をされたりしてね。「急に不気味なことを言うな」と言われるかもしれん。
大江加代:あると思うけれども。
大江英樹:慣れやね。
大江加代:「変えようと思ってるよ」という意思表示をしていく。
大江英樹:なるほど。それは大事なことだな。リセットね。
大江加代:そちらはどうですか?
大江英樹:私はいろいろあるんですが、これを聞いている方の多くはサラリーマンだったり、元サラリーマンという人が多いと思うんです。やっぱり、サラリーマン力を発揮することですよ。自分の奥さんを上司だと思うこと。これはとっても大事です。
結局サラリーマンは、上司に関しては気を遣ったり、気持ちを忖度したり、いろいろやってきたわけじゃないですか。ほんでなんとかうまいことやって、上司を自分の思うように動かそうとか、そうするにはどこで褒めて、どうやっておだてて、どうやってやらせたらいいかを考えている。
大江加代:今、私にやってるね。
大江英樹:そうです、やってる(笑)。それがサラリーマン力なんだよね。そのサラリーマン力を家でもやればいい。「奥さんは自分のものだ」とか、ちょっと下に見ているとか、そういうことがあるとだめです。
奥さんは上司だと考える。その上司にいかに気分よく仕事をしてもらうか、いかに気分よく自分が仕事をやりやすいように、自分が生活しやすいようにするか。それだけのことです。
だからね、サラリーマンはみんなその能力を持ってるの。だからそれを大いにやるべきではないかなと思いますね。
大江加代:それでこちらもいい気持ちで暮らせられたら、ぜんぜん問題ないですからね。
大江英樹:そういうことですね。だからぜひ、みなさんも今日のお話を参考にしてやってみていただいたらいいんじゃないかなと思います。じゃあ時間が来ましたので、これで今日のお話は終わりたいと思います。みなさん、今日は本当にありがとうございました。
大江加代:ありがとうございます。
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