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会議が変わると組織が変わる!~隠れファシリテーターが会議を作る~ (全3記事)

会議の目的は「課題を議論すること」ではない 参加者の「迷い」をなくす、会議のゴールの伝え方

成果を求める組織において、チームの能力を引き出すために必要なのが「ファシリテーション力」です。今回は株式会社SmartMeeting株式会社SmartHRの主催で、「チームの能力を引き出すファシリテーション」をテーマとしたセミナーの模様をお届けします。 登壇者は『世界で一番やさしい会議の教科書』『世界で一番やさしい会議の教科書 実践編』の著者・榊巻亮氏。 最終回は、会議冒頭のNGパターン、会議を有意義にする「隠れファシリテーション」、そして新しい会議を定着させる3つのコツなどさまざまなトピックが語られました。

会議冒頭のNGパターン

榊巻亮氏(以下、榊巻):2つ目の基本動作に行ってみたいと思います。2つ目の基本動作は会議の頭ですね。頭と終わりを押さえるというのがとても重要です。導入のパートでは、今日どんなことをやるかを押さえる。ちゃんと頭と終わりが押さえられると、これだけで会議は相当良くなります。

ちょっとみなさん思い出してほしいんですよね。こんな会議の始め方に覚えはありませんか。部長とか課長が3〜4人メンバーを集めて打ち合わせを始めます。

「よし、みんな揃ったな。まず、1つ目の資料だけどちょっと目を通してくれたまえ」とか、「前回の続きだけど、課題について話したじゃないか。あれについてどう思うか意見を聞かせてくれないか」と、例えばこうやって始まる打ち合わせ。あるあるという感じですよね。

これは本当に良くないなと思っています。これだと参加者は「この会議、どうなったら終われるんだろう?」となっちゃうんですよ。「1つ目の資料」と言われているけど、あと何個資料があるのか、資料をどうしたら、どんな議論をしたら今日の打ち合わせは終われるのかがわからないですよね。

「課題について意見を聞かせてくれ」と言っているけど、意見を聞かせたあとどういう展開になって、どこまで今日決めるのかがわからないので、こうなっちゃうんですよ。

会議の目的は「議論・共有・報告をすること」ではない

これを解決するには「目的の設定」が効果的だとどこの本にも書いてあります。これは間違いないんですよ。会議の頭に「目的」の設定をちゃんとしよう。

ところが、その「目的」自体はいいんですけど、「目的」という日本語が曖昧過ぎて設定がすごく難しいんですよね。同僚に「今日の会議の目的って何だと思う?」と聞いてみてください。十中八九こういうことが返ってきます。「議論をすること」「共有すること」「報告すること」と。これでは駄目なんですよね。なぜ駄目かというと全部「すること」だから。わかりますか?

「すること」は目的たり得ないですよね。何か「すること」は、大抵の場合「目的」じゃないんです。何かすることで何かしらの状態を達成する。何かすることで、もともといた我々の状態から、新しい状態に変化するという。この状態変化が「目的」ですよね。

井戸端会議することが「目的」じゃなくて、打ち合わせすることで何か意思決定した状態。例えば「何か解決すべき課題が明らかになった状態」を作るとか、「対応方針が明確になった状態」を作るとか、「意思決定ができた状態」を作るという話なわけです。

「議論することで、解決すべき課題が明らかになった状態を作りたいのである」という文法構造になるはずですよね。伝わりますかね。「すること」ではなく、「目的」って「状態」で考えるのがポイントなんですよね。

サッカーもテニスもそうじゃないですか。ボールを蹴るのは「すること」ですけど、ボールを蹴ったり、ラケットで打つことは「目的」じゃないですよね。それをすることで相手より多く得点を取る。その「状態」で試合終了を迎えるのが「目的」なんです。

だけどほとんどの会議は、「議論をするんだ」と言っているんですよ。いやいや違うと。議論をすることでどういう状態を作りたいか明らかにしてほしいんです。だから「目的」は大事なんだけど、「目的」と言わず「終了条件」と言い直す。もしくは「終了状態」と言い直さないと、すごくミスリードしちゃうなと思います。

「状態」をどこまで表現するか

さて、百聞は一見にしかずじゃないですけど、試しにみなさんに考えてみていただきたいと思います。練習です。上司から、業務における課題と原因を調べるようにと指示を受けました。自分の業務に何か問題があるんですよね。

部下を集めて、まず課題について議論しようと思います。原因の話は次回でいいから。まず部署における課題はなんだろうと議論をするとします。こういう状態で終了条件をどう考えればいいか。会議のゴールですよね。どうなったら会議が終わるかを、「状態」でちょっと考えてチャットに打っていただけないでしょうか。

「状態」ですよ。「すること」じゃないですよ。課題について考えようと思っています。あ、いいですね。速い。「業務における課題をすべてリストアップできた状態」。ああ、もうこれはバッチリですね。「状態」と最後に付けるのがポイントですね。

「解決するべき課題のリストアップ」。「リストアップできた状態」ですね。「リストアップ」だとまだ動詞っぽいんですよ。動詞表現と状態表現がかなり近い場合もあります。「リストアップできた状態」というのと「リストアップ」はかなり近いじゃないですか。

だけど「すること」と「状態」は違うんですよね。「状態」で考えたいし、どんな「状態」を作りたいかなんです。「何が課題か合意できた状態」。いいですね。「リストアップだけじゃなくて、その先で何を解決すべきかちゃんと合意できた状態」。バッチリです。

では模範解答を見てみましょう。「課題を議論する」。これは手段ですよね。これじゃなくて、「課題が出た」もしくは「リストアップできた状態」。これはいいと思います。この「議論する」より100倍いいですね。出た状態を作りたい。そういうことがやりたいのねとわかるわけです。でもちょっと惜しい。

「課題が出た状態」は、どうなったら終わるのかがちょっとわかりづらい。例えばですけど、これくらい表現できるとイメージしやすいだろうなと思うんですよね。

「大小問わず参加者が感じている課題が出きった状態を作りたいのである」と言われると、なんとなくわかりませんか? 大きいものも小さいものも、漏れなく出す感じだとわかるわけです。全員に「もうない?」と聞いて「出ません」と言われたら会議終了じゃないですか。こんなイメージです。

もっと他の表現もできます。例えば「部をあげて解決すべきだと思う課題が出きった状態」。こういう視点もありますよね。

会議で参加者が迷う理由

ここで重要なのは、「大小問わず」と言われた時と、「部をあげて解決すべきだと思う課題」と言われた時で、やることも考えることも発言の仕方も変わることです。

「大小問わず」と言われたら、細かいものをどうやって漏れなくだそうかなとか、すごい数になるだろうからその場で1個ずつ言うんじゃなくて、事前に各自がリストを作ってそれを共有したほうが速いかなということが考えられますよね。

一方で「部をあげて」と言われたら、部をあげて解決すべき課題とはそもそもどういうものだろうかという、予備議論も必要かもしれないですよね。そこの認識が合わないと挙げづらいですから。

「大小問わず」の時は、例えば「部屋の蛍光灯が切れている。それが良くないと思います」みたいなものも「大小問わず」だからOKじゃないですか。

だけど「部をあげて解決すべき課題」という設定だとしたら、「蛍光灯が」と言ったら「何言ってんだ。雑談しているんじゃない」と怒られますよね。この違いはわかりますか? どっちの設定かによって、参加者の振る舞い方も発言しなきゃいけないことも変わるんです。

脱線かどうかの判断もこれによって決まるわけですよね。「部屋の蛍光灯が切れていまして」って上だったら○。ぜんぜんOK。だけど下だったら「そんな話してんじゃねぇ」と怒られます。

だけどほとんどの議論は、「課題を議論するのである」としか言わずに入るので、参加者が迷っちゃうわけですよ。何を話したらいいかわからないし、課題が出た状態を作りたいけど大小問わずの上なのか、部をあげての下なのかによって、どういう発言をするかが変わっちゃいますよね。

これがとても重要な考え方だと思っています。「今日はどこまでできますか? 終了状態はどうですか?」ということをちゃんと伝えられると、参加者が自律的に動けるようになるんです。

「課題を議論するんだ」と言われたら、もう前に立っているファシリテーターの言われたとおりに行動するしかない。「○○について発言してください」「はい。わかりました」しかできなくなっちゃう。だけど「部をあげて解決すべきだと思う課題が出きった状態を作りたいんだ」と言われたら、「じゃあこれやりましょうか」「ああやりましょうか」という動きができるようになります。

会議を有意義にする「隠れファシリテーション」

今までの話を踏まえると、「よし、みんな揃ったな。1つ目の資料だけど」という始め方がいかに良くないかがわかると思うんですよね。今日どんな状態までもっていきたいかを意識してもらいたいんです。

ここまでお話しても「自分は会議を主催しないし」「参加する側だし」という人もいると思います。でも、主催者じゃなくてもできることはけっこうあるんですよ。

部長がやってきて、会議の終了条件をちゃんと伝えずに始めたら、参加者としてこんなことを聞けばいいわけです。「今日はどんな状態まで持って行くイメージですか? 部長」「今日はどこまで決めるんですか。ちゃんと把握しておきたいので」と聞けばいいだけです。

そうすると部長の頭の中にはだいたい、「ここまでやりたいと思っている」「こんな状態まで持って行きたいと思っている」というものがあるので、引き出して確認してあげればいいということです。

これを僕らは「隠れファシリテーション」という言い方をしています。主催者じゃなくてもできることがいっぱいあるんですよ。いち参加者であってもさっきの「決まったこと、やるべきこと」を確認できるじゃないですか。終了条件が不明確だったらちょっと聞いてあげればいいだけなんです。

それができればみなさんが会議に投資する8年は、けっこう有意義な時間になると思うんですよね。前に立っているファシリテーターに全部任せて、8年間つまらない時間を過ごす必要はないというか、自分で変えられる余地を見いだせるんじゃないかなと思っています。

新しい会議を定着させる3つのコツ

ということで、頭とおしまいの話をしていきました。最後に、浸透のさせ方についてお話します。ここの8つの基本動作は、2つの基本動作をご紹介したので、スライドの「広めて定着させる3つのコツ」の話をしておしまいにしたいと思います。

「こうしたらいいよ」という定着させるコツはたくさんあるんですけど、あれもこれも知識だけ入れても変わらないと意味がないので、定着させるのに必要な浸透のさせ方として、押さえてほしいことを3つお伝えします。

1つは「『隠れファシリテーター』が会議を作る」という考え方ですね。

さっきお話しましたけど、前に立っていなくても1人の参加者としてできることがけっこうあります。それを忘れないでほしいというか、ビジネスパーソンとして、参加者だとしても会議をよくする義務があると思うんです。

義務もあるし良くする権利もありますよね。8年間つまらない時間の投資をしなくて済むんですよ。自分で良くしていく権利があると思います。前に立っていない人が会議を作れるというのを忘れないでほしいということです。

2つ目は同じ価値観。

共通言語化が私はすごく大事だと思っています。今日の「決まったこと、やるべきことの確認」とか、「会議の終了条件で決まる」という話も共通言語化しないで突然言い出すと「何言ってんの?」とか、決まったことを確認しようとした時に、「そんなことしなくていい」と怒られたりする場合すらありますので、共通言語化はすごく大事だと思います。

最後の3つ目は、私がすごく大事だと思っていることです。今日お話した話も「やろうかな。どうしようかな」と選択が発生するじゃないですか。みなさんが部内もしくは課内に影響力がある立場の方だったら、ぜひとも、「決まったこと、やるべきこと確認」の強化週間や強化月間と勝手に謳ってください。「やろうかな」じゃなくて、「いったんみんなでやるんだ」としてみてください。

「やろうか、どうしようか」で悩むんじゃなくて、「やってから悩む」という環境を作ってあげると、すごく定着が早くなると思います。人は悩むとやらなくなってしまうので、とりあえずやってみるというように、ちょっと後押ししてあげるといいと思います。

それではまとめです。ものすごい駆け足で大変恐縮でしたが、導入のところ。会議を始める時には「終了条件の確認」をしてほしい。どうなったら会議が終われるのかを確認してほしい。これがちゃんと行われると、参加者が自立自走してくれるという話です。ダーッと走っていって、「決まったこと、やるべきこと」を最後に確認して締めていただければ、会議の質はグッと上がると思います。

最後に定着させる3つのコツですね。「隠れファシリテーター」「共通言語」「迷わない環境」。しばらくやってみて良し悪しを判断してほしいなということです。私からはだいたい以上ですね。何か1つでも持ち帰っていただけるとうれしいです。もっと聞きたいと思ってくださったら、このへんも読んでいただければと思っております。

ということで、40分、ダーッと話してきました。私からは以上にしたいと思います。みなさん、ありがとうございました。

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