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仕事に効くパワーワード『積小為大』(全1記事)

「ショートカットの追求」だけでは“未来の成果”は残せない 他者の評価を得られる人が積み重ねているもの

日本最大のビジネススクール「グロービス経営大学院」が、ビジネスパーソンに向けて、予測不能な時代に活躍するチャンスを掴むヒントを配信するVoicyチャンネル「ちょっと差がつくビジネスサプリ」。本記事では、二宮尊徳の言葉「積小為大」をテーマに、ショートカット的な発想が重視される時代にビジネスで成果を残すために必要な考え方や姿勢が語られました。 ■音声コンテンツはこちら

「感動レベルの焼きそば」が生まれた背景

中村直太氏:グロービス経営大学院の中村です。このコーナーでは心に響いた言葉をシェアしながら、仕事やキャリアに役立つヒントを紐解いていきます。今回の言葉は、「積小為大」です。みなさんはこの言葉、どのように受け取られたでしょうか。

先日、こんなことがありました。親戚に元料理人で、今は民宿を営む人がいるんですが、そこに泊まりに行った時に出してもらったお昼ご飯の焼きそばが、とても美味しくて感動しました。私の語彙が乏しく味をうまく表現できないのが残念ですが、その感動を伝えたくてキッチンに行くと、そこに置いてあるのは見覚えのある、バーベキューとかでよく使うソース焼きそばの袋でした。

思い返すと、具材もニンジンとピーマンとシメジの3つだけ。調理時間はおそらく10分から15分。それでも調味料や火の使い方でこれだけ大きな付加価値をつけられる。料理は奥深いなとあらためて感じ入りました。

さらに別の観点から思ったことは、このように普通の材料を使って10分、15分の時間で人を感動させるレベルの焼きそばを作れるようになるためには、20年、30年という膨大な修業の時間や、数え切れない数の調理経験が積み重ねられてきたということです。10分、15分で目の前に出された感動レベルの焼きそばの背景には、20年、30年の並々ならぬ実践の積み重ねがある、そんなことを感じました。

二宮尊徳が「自然の営み」を通じて学んだこと

そろそろ焼きそばの話から今日の言葉に戻りたいと思います。今日の言葉は積小為大。ご存じ二宮尊徳の言葉として知られています。その意味は漢字のとおりで、小さな努力の積み重ねが、やがて大きな収穫や発展に結び付く。小事を疎かにしていて大事を成すことはできない。そういった意味です。

まさに私は焼きそばのエピソードから、積小為大を感じることができました。焼きそばよりもはるかに有名なのが油のエピソードです。幼少期に恵まれた生活環境になかった二宮尊徳ですが、毎晩読書をするための明かりを自分で手配する必要がありました。

そこで明かりを灯す油代を稼ぐために荒れた地に一握りの菜種を植えて育てたり、あるいは捨てられた苗を育てたりすることで、米を収穫したと言われています。そして、小さな努力の積み重ねが大きな成果に結実することを、自然の営みを通して学び取ったとされています。

そんな二宮尊徳が積小為大を語る一節を引用してみたいと思います。少し長いですが、そのまま読んだほうが伝わるものがあると思うので、読み上げたいと思います。

「大事を成し遂げようと思う者は、まず小さなことを怠らず努めるがよい。それは小を積んで大となるからである。だいたい普通、世間の人はことをしようとして小事を怠り、でき難いことに頭を悩ましているが、できやすいことに努めない。それで大きなこともできない。大は小を積んで大となることを知らぬからである。

一万石の米は1粒ずつ積んだもの。一万町歩の田は1鍬ずつを積んだもの。万里の道は1歩ずつ積み重ねたもの。高い築山も、もっこ1杯ずつの土を積んだものなのだ。だから小事を努めて怠らなければ大事は必ず成就する。小事を努めず怠る者が、どうして大事を成し遂げることができよう」。

実際に積小為大を実践する農民に向けて、米や田んぼなどイメージがわいてくる事例を取り入れながら、理解しやすい説明をしている点にも注目したいところです。

ビジネスで「大事を成す」ために必要な姿勢

小を積んで大となる。その原理はわかっていますが、仕事においてもその実践は簡単ではないように思います。その1つの理由は、小を積んでいる過程が見えにくいことが多いからではないかと、私は思っています。例えば、人の心を動かす優れたプレゼンについて考えてみます。そのプレゼンを聞いた人は、「あの人は何であんなに優れたプレゼン資料を作れるのだろうか?」とその才能をうらやましく思うのかもしれません。

ただプレゼンをした本人からすれば、そのプレゼンをするために数時間の練習を重ね、最終的な20枚のスライドを作るために100枚以上のボツスライドがあり、そのボツスライドを作るために数十冊の関連書籍を読み重ねたのかもしれません。

あるいは、「あの人はいつもミーティングで的確な意見を思い付いてすごいな」と思える人が身近にいるかもしれません。大抵は思い付きではなくて、そのテーマについていつも頭を回していたり、そのテーマに関連する重要な数字の日々の動きをしっかりと把握していたりします。

プレゼンの話も的確な意見の話も、小を積んで大となったものですが、小の活動は本人以外からはあまり見えません。二宮尊徳の言葉を借りると、「本人はできやすいことに努め、周りはでき難いことに頭を悩ます」そんな構図が自然と生まれるような気がしています。

積小為大。効率性やショートカット的な発想が重視されている時代において、あらためて小事を努めて怠らない、努力に日を当てることに意味があるのではないかと考えさせられました。

まとめます。あらためて今日の言葉は、積小為大でした。それは小事を努めず怠る者が、どうして大事を成し遂げることができよう、と投げ掛けてくる言葉で、小さなことを積み重ねる大事さを考えさせてくれる言葉でした。

こんなことも考えられるかもしれません。未来のよい仕事のために今日から積み重ねていきたい小さな努力は何でしょうか。ぜひ考えるヒントにしてみてください。今回も最後まで聞いていただき、ありがとうございました。今日も素晴らしい1日をお過ごしください。

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