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経営者力診断スペシャルトークライブ できるマネジャーは、「これ」しかやらない!(全7記事)

論理的思考ができ、決断力もあるのに「判断を間違える」ワケ 結果的に正しい選択をするための「重要因子」

経営者やリーダー向けに、「経営」「マネジメント」をテーマとした各種セミナーを開催する経営者JPのイベントに、16万部のベストセラー『できるリーダーは、「これ」しかやらない!』の著者で、株式会社らしさラボ代表の伊庭正康氏が登壇。経営者JPの代表・井上和幸氏と共に、ロジカルシンキングの重要性が高まる背景や、組織のトップに必要な考え方などを語りました。

2タイプの「決める力」

井上和幸氏(以下、井上):だいぶいい時間になってきたので、ちょっとまとめのような話と、Q&Aの時間も少し取ろうと思います。

僕らは昨年の秋に経営者力診断をリリースをして、1つのフレームとして、経営者・リーダーの方には5つの力が求められるということを明らかにしたんですね。ここの5つの力の話だけではなく、リーダーや経営者の方、幹部の方にどういう力が求められるかを、いろんな側面からお話をうかがいながら、みなさまと考えて来ているわけです。

今日のような、部下にいい状況で働いていただく、それからチームをいい状態に持っていく。そういう観点でリーダーを見た時に、伊庭さんとしてこういう力があったほうがいいよねということを、少しおうかがいしてまとめていきたいと思います。

伊庭正康氏(以下、伊庭):わかりました。今までお話したところで言うと、「まとめる力」にフォーカスをしていたなと思っているんですね。

ここでちょっと違う観点で言うと、おそらく「描く力」「決める力」「やり切る力」について、まだお話してなかったなと思います。

特に「決める力」は、得意な方とそうではない方に分かれると思っています。得意な方でも2つに分かれると思っていまして、経験則で決めるという方と、経験則ではなくて、きちんとロジカルに決められるという人に分かれると思っています。

経験則ではなく、きちんと事実に基づき、何が問題かを特定した上でちゃんと課題を見つけ出し、きちんと効果的な対策を生み出す力が必要だと思った時に、「決める力」のところでこれからますます必要になるのが、ロジカルシンキングです、これができないと厳しいと思っています。

井上:そうですね。

ロジカルシンキングの重要性が高まる背景

伊庭:実際、各企業さまでマネジャーさま研修をやった時に、いわゆる筋の良いと言われる方々と、ちょっとずれているという方とがやっぱりいらっしゃるそうですね。ロジカルシンキング研修では、私はそれを知らずに研修をして、あとで「伊庭さん、どうでしたか?」といつも聞かれます。

ワークなんかを見ながら、「この方はすごくできていました。この方はご苦労されていました」と言うと、だいたい言われるのが「やっぱり」です。

井上:(笑)。

伊庭:決めるところが経験則でしかできない人がいる一方で、ロジカルにちゃんと整理できていい筋が立てられる人は、ロジカルシンキングができていると思ったので。世の中の環境変化が激しい中で、経験則が通用する場面が減ってきているなとは思うんですよ。

「描く力」「やり切る力」ももちろん言うことはいっぱいあるんですけれども、ただちょっとお時間の関係で絞って言うとしたら、「決める力」で経験則ではなく、きちんとロジカルに判断できる力は不可欠になってきているなと思います。

井上:そうですね。今日の話で言えば部下・メンバーの方たちが腑に落ちる、納得できる決め方をできる方と、そうではない方がいらっしゃる。それが、伊庭さんがおっしゃった思考力的なところを踏まえた決め方、背景の説明、「これだよね。こう思うよ」という部分に、現れると僕も思います。

そこで何か筋が通っていなかったりするから、「ん?」みたいな。「なんでこの人そう思うんだろう」と思われたりする方は、確かにいらっしゃると思うんですよね。

組織のトップに必要な考え方

伊庭:私の横に内田和成さんの『右脳思考』『論点思考』の本があるんですけれども。『論点思考』をこの間読んでいてまさにそうだなと思ったのが、「上に立つものは何を問題とするかによって、大きく影響を受ける」と書いてあったんですよね。そこに正解はないと。「正解はないんだけれどもそこの筋の良さというのが、やっぱり上に立つ人には求められる」と書いてあるんです。

これめちゃくちゃわかりまして、私は前職でトップになれないなと思ったんです。なぜかと言うと、当時の役員に「伊庭、君のところの組織の問題は何?」と言われた時に、「新人が多くスキルが足りていないところが問題なので、今から予算をかけてトレーニングをかけていきます」と答えました。

「それはやったらいい。もう1回聞く。問題は何?」「え、今言ったようなスキルが足りないことです」「そこなんだよ。そうではなくて、スキルがなくても、誰もが売れる仕組みを作れていないことが問題なんじゃない?」と言われて、目から鱗がボコッと落ちました。

井上:なるほど(笑)。

伊庭:ちょっと言い訳しましたね。「でもスキルが」と言ってしまったんですね。「伊庭よ。どちらが解決思考だ」と言われました。「どちらが時間がかかるの? どちらが100人いれば100人が結果を出すことができる?」。

もう目から鱗ボコボコボコと落ちた瞬間で、それを内田さんも言ってらっしゃるんだなと思った時に、「ああ、自分は論点がまだまだだな」と思いました。その時、これでは逆に何千人をまとめあげるには、ちょっとコストがかかるタイプなんだなと思いました。

井上:(笑)。なるほど。それぞれ必要なことはあるわけですし、お立場によってたぶんどの解像度で解決すべきか、異なるとは思うんですけれども。まさしく事業、経営に近づくと、今伊庭さんがおっしゃったようなところがあるかないかも、非常に問われますよね。

伊庭:まさに。何を問題とするかで差が大きいなと思いました。ロジカルシンキングに含まれていることですけれども、やっぱり「決める力」は、間違えた問題を解くことにもなりかねないので、大事かなと思いますね。

論理的思考ができ、決断力もあるのに「判断を間違える」ワケ

井上:経営者力診断では、皆さんが回答しやすいように1因子あたり3つずつぐらい聞くかたちにまで出た要素を重みづけと集約することで絞っているんですけど、「決める力」で僕、作っていておもしろかったのが、「決める力」の重要因子の1個に情報収集的なものが挙がったんですよ。

伊庭:まさに。

井上:僕は、決めるとは、どう決断するかとかの行動のほうだと思っていたんです。今、伊庭さんがお話しくださったようなことの「お膳立てができているかどうか」がない人は、決められないということだと思うんですよね。

伊庭:おっしゃるとおりです。ある深いお付き合いをしている会社さんのある役員さんがいらっしゃいまして。どの事業を担当しても業績ダウンさせられるという(笑)。

井上:(笑)。

伊庭:またか、またか、またかでなぜか役員を降りない。いい会社だなと思いながら、10年くらい役員をされていらっしゃいます。毎回そこで、現場のことを知らないことが原因として一番に上がってきます。現場の情報を知らない。なのでデータや一部の方の情報を聞いて、自分なりにロジックを作って、ロジカルシンキングはできるんですけれども、入ってくる情報に偏りがあるので判断を間違えてしまうんですよね。

井上:なるほど。

伊庭:なので現場がとてもできないことを、「この方針でやる」と言ったり、一部のお客さまが望んでいるんだけど、それは理屈だけであってそこまではできませんよということをやってしまったりするんですよね。

井上:なるほどね。

伊庭:今回もちょっとダメだったみたいでして、また別の部署に行かれました(笑)。でもまだ役員をできのかと。羨ましいですけど、なかなかそういう企業さんは少ないですよね。

井上:その方は、ちょっと残念ですけど。

伊庭:残念な感じです。

井上:逆の方というか、「この人は本当に何とかする」みたいな経営者の方とか事業トップの方がいるじゃないですか。その方のその筋の良さは、たぶん今お話しているようなところなんでしょうね。

伊庭:そうですよね。

井上:おもしろいな。ありがとうございます。

トップマネジメントにも有効な「方針はトップダウン、やり方はボトムアップ」

井上:「これから求められるマネジャー・リーダー像とは?!」というまとめの質問を入れてみたんですけど、伊庭さんはこのへんのことについてはどうお考えですか?

伊庭:だぶってしまうんですけれども、やっぱり「聞ける人」かなと思います。聞かないと判断を誤るというレベルではなくて。部下の方を燃えさせることは難しくなっているなと思いますね。聞く時間を持つ。今、1on1の時間を持たれているのは、すごく理に適っているなと感じています。

井上:たぶん伊庭さんがおっしゃっているのは、目の前での会話もそうでしょうし、きっと広義の意味も含めて「聞く」なのではないかなと、今おうかがいしながら勝手に思ったんですけどね。そういう意味では、いろんなものに目を開き、耳を傾けるみたいなことは本当に大事ですよね。

伊庭:大事だとあらためて感じます。

井上:ありがとうございます。ご質問いただきました。「部下が自走するための『方針はトップダウン、やり方はボトムアップ』の方針は、トップマネジメントにおいても同じでしょうか」というご質問です。

伊庭:うーん。役割、責任が明確になってくるので、トップダウンの意向は強くなると思うんですけれども、どうなんでしょうね。私が見ている限りで言うと一緒だと思います。

井上:僕も一緒だと思いますね。

伊庭:社名を言うと流石に具合が悪いんですが、ある企業でめちゃくちゃ有名な経営者さんがいらっしゃって、実態はめちゃくちゃトップダウンですよ。でも現場の方々は、社長、会長さんに対して「もっとこうするべきですよね。だからやらせてもらえませんか」と言っている。

会長さんは「いやぁ、どうかな」と言うけど、社長さんが「まあちょっとやって見ますか」と言って。会長NO、社長「まあやってみる?」「やります」というような、どちらかというと会長が古いんですね。なので会社はめちゃくちゃうまくいっています。

「強い会社」になるために必要なこと

井上:強烈なトップダウンであれば、もうそれでいくみたいな会社も、有名企業でオーナー系のよくメディアに出てくる何人かの方々も、そういうところがあると思うんです。でも、逆にと言うか、トップとその経営幹部の方々とかは、そういう企業こそ僕はこれ(方針はトップダウン、やり方はボトムアップ)じゃないとダメな気がしますね。

伊庭:だと思いますね。責任権限は「これだけはやってくれ」とあるけど、やり方で「これでやらないとダメよ」というのはあまり聞かないですね。どちらかというと「やり方は任せるからお願いね」という感じですよね。

井上:「こういう方向で行こうぜ」というのは逆に強烈にあっていいと思うんです。じゃあ各事業とか各部門がそのためにどうするか。

あくまでもその組織を預かっている方がしっかり考えて決めているのが、このケースのボトムアップの意味だと僕は思うんです。その前提が間違っていなければ、各企業の責任者の方が、ちゃんと主体的に考えてやってらっしゃらないと、強い会社にはならないと思いますけどね。

伊庭:実際見ている限りは、そうされていますね。従業員規模にもよると思います。例えば30人規模でしたら、ある程度トップダウンでやってもやっていけるとは思うんですけれども、ちょっと大きくなってくるとやっぱり厳しいですね。

井上:だと思いますね。やっぱり伸びていて強い会社は、ここで言うケースのボトムのマネジメントの方が、ちゃんと責任感を持っていい動きをしている。逆に言うと、トップが全部できるわけではないんだから、機能的に例えばすごくトップより優秀な方がいるかどうかとかが、企業の成長率とか規模感を決めるんだと思うんですよね。

伊庭:感じますね。

井上:ありがとうございます。

伊庭:こちらこそです。

井上:みなさん、伊庭さんの本はどれも非常に具体的で役に立つ本ですので、ぜひお読みください。

伊庭:ありがとうございます。

井上:伊庭さん、今日はありがとうございました。本当にあっという間でしたが、非常にわかりやすいお話をいただきましてありがとうございました。

伊庭:ありがとうございました。またよろしくお願いします。

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