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資金調達、大きな商談もお任せあれ。交渉力の源泉を一部紹介【世界のトップを10秒で納得させる資料の法則 - 三木 雄信】(全1記事)
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三木雄信氏:三木雄信といいます。1972年に福岡で生まれました。もともと福岡の田舎で生まれたので、ソフトバンクのような世界的な会社に入って活躍するとはまったく思っていなかったんですが、25歳の時に孫(正義)社長の鞄持ちとして入社しました。
実際、孫社長のアメリカ出張についていったこともあって。まだ日本にAmazonがない時代でして、シアトルでジェフ・ベゾスを訪問して、孫社長が「日本のAmazonをソフトバンクとジョイントベンチャーでやろうよ」というのを、横で聞く経験もしました。
そういう時に孫社長が使う資料があるんですが、当時は私が鞄持ちだったので、だいたい資料も全部作っていました。孫社長から「こういうふうに資料って作るんだよ」というのを、徹底して叩き込まれる経験もしました。
(著書は)『世界のトップを10秒で納得させる資料の法則』という本です。ソフトバンクから独立した後もいろんな資料を作っていて、それをプレゼンすると「わかりやすいですね」「これ、ソフトバンク流なんですか?」と聞かれることがすごく多くて。
「実はソフトバンクの資料は、こういう法則があって作っているんですよ」と話をすると、「ぜひそれを本にしたほうがいいんじゃないですか?」と言われることがあって。(この本は)10秒でどんな人でも納得できる、孫社長の資料作りをまとめたものになります。
そもそも「資料」と言っても、実はいろんなものがあるわけですよね。例えば、店舗ごとの営業実績の数字データが集まってるものも「資料」と言うかもしれないですね。
あとは孫社長が作るように、「一緒にジョイントベンチャーをしましょうよ」と誰かにプレゼンするような、会社と会社が大きな成長をするためのきっかけになる提携のための資料もあるわけです。
この本で解説している「世界のトップを10秒で納得させる資料」とは何かというと、「実際に、次のアクションとしてこういうことを一緒にやろう」ということに対して、相手が腑落ちして、「おし、やろう!」と10秒で決められるような、そういうアクションにつながる資料ということです。
単なるデータの集まりを見ても、「ふ~ん、そうなんだ」で終わるだけです。孫社長のようなトップレベルの人だけではなくて、あらゆるレイヤーの人が、資料を作ることでいかに組織を動かすのか、提携先を動かすのか、資料作りを通じてどう会社を変えるのか、世の中を変えるのかということのために、この本を書きました。
特に最近おすすめしたいものは、パレート図ですね。実はこの本を出した時は、パレート図を描くのはExcelの追加機能だったんです。追加のアプリケーションを入れなければいけなかったんですが、今はもう標準でExcelに入っていますので、パレート図を作るのはすごく簡単になっています。
パレート図とはどういうものかというと、例えばある事象の原因が10個ある場合に、どれが一番の原因なのかを探ったり、店舗の売り上げであれば、10種類なら10種類の大きな分類の中で売り上げがどう変わっていくのかとか、占める割合を示すのがパレート図です。
パレート図を書くと何に役に立つかというと、実はこの裏にはいわゆるニッパチの法則(80:20の法則)というものがあるわけです。
例えば、店舗の売り上げの8割は(全商品のうちの)2割のアイテムが売り上げていると言われています。何がその会社・お店にとって大事なものかという優先順位をつけるために、パレート図は非常に便利です。パレート図を作るためには、普通に表で書いたものを散布図にしてパレート図にするExcelの標準機能があるので、誰もができます。
特にオンラインの会議では、表を見るってけっこう難しいんですよね。なんとなく画面で表を見ても集中できないので、表で優先順位を作るということであれば、ぜひパレート図を作ってもらったらいいかなと思います。
もう1つおすすめしたいものは、プロセスの分析図ですね。例えば、工場で考えるとわかると思うんですが、一番最初に鉄板の板を車の形にして、そしてタイヤ、ハンドル、椅子をつけて色を塗る。さまざまな工程があるわけですね。
今、世の中いろんなサービスがオンラインで提供されるようになってきています。そんな中で、実は目に見えないけどいろんな工程がサービスとしてやっているわけです。それを認識しなきゃいけないんですね。
この切り口が、今は非常にバラバラになっている部分があるんです。いろんなツールごとにWebの管理画面で出てきたりもしますし、社内の過去のデータからも出てきたりします。ただ、それがどういう関係で・どうつながっているのか、入り口から出口まで1回プロセスを分析してほしいんですね。これをやると、会社にとって本当に大事なプロセスがどこなのかが、初めて把握できるはずです。
例えば工場だと、タイヤを1万個作れば、ちょっと形が悪いものが10個や20個出たりします。そこが減って残ったものを「歩留まり率」と言うんですが、歩留まり率がどうなのかはプロセスごとにあります。
例えばWebのサービスの場合であっても、Webで画面まで来たけれども、最終購入までいく率が出てると思います。その後さらにいろんなプロセスがあって、配達された後に返品する人・しない人にも歩留まりがあったりするわけです。
「会社にとって、どの工程が一番大事なのか」というのは、歩留まり率をよく見て、それが売り上げや利益にどういう影響があるのかを分析しないとわからないんですね。
これが今は、いろんなツールや社内のシステムでなんとなくバラバラには把握されてるものの、会社にとって一番大事なものが何なのか、自分にとって一番大事なのは何なのかが、むしろ把握できなくなってると思います。
そういう意味では、プロセスを分析したものを入り口から出口までバチッと作ってもらえれば、「今大事なことが何なのか」がはっきりすると思います。
一番大事なことは、資料の前提になっている数字がきちっと定義付けされて、共有されているかということです。会社の中ではいろんな用語があったりすると思うんですが、その用語がある部門ではこういう使われ方をしてるとか、ある部門ではこういうところで使われているとか、(定義が)違ったりすることがあります。
実際、社外取締役をやっている会社で経験したところによると、部門の中での資料と、取締役会の資料を別に作り直していたりするんです。いろんな数字の定義が違うから、解釈し直さなきゃいけないということがまあまああるんですが、一番大事なことは「現場の人からトップまで同じ数字を見ていること」だったりします。
数字の定義を明快にして、その数字が積み上がっていくと全体の売り上げにつながっていくところまで、みんなの認識が共通していることがものすごく大事だったりします。
もう1つ大事なことは、曖昧さを残さないことなんですね。例えばこれは私自身の経験なんですが、「太りすぎだよ」とかなりよく言われて。「今、あなた何キロなの?」って聞かれると、「ま、80キロぐらいかなぁ」とごまかしてるんですね。でも実際には82キロあって、それを(正直に言うと)怒られちゃうからごまかしたりするわけです。
きっと会社でも(似たようなことが)あると思うんですよね。「だいたい前月比と同じぐらいです」と、よく言ったりすると思います。実際の数字は明快にあるはずで、82は82で、81は81なわけです。
きちっとそこを明快にすると、初めて「その差が何なのか」という議論になって、アクションにつながっていきます。私自身の経験からも、数字に関しては常に厳密に・はっきり言うことはすごく大事だなと思います。
企画書とプレゼンテーションって、実はまったく違うものなんですね。プレゼンテーションの前提としては、まずプレゼンテーションをする人がいて、そしてスライドを見ながら追加的な情報を説得していくという、インタラクティブなコミュニケーションなんですよね。
相手がいて、「この人はわかっている。じゃあ、わかってるからここは短くしよう」「この人は質問がありそうだから、質問を聞いて追加しよう」というやり取りを前提にしているので、すべての情報をプレゼンテーション(資料)に入れる必要はないんですね。
むしろソフトバンクのプレゼンテーションは、決算資料や提携の発表資料などを見ていただければ明らかなんですが、ワンスライドにはワンメッセージと1つのイメージ。もしくは、1つのチャートが入ってるだけなんです。いろんな情報を全部入れようとすると、むしろ伝わらないというのが孫社長の考え方なんです。
そういう意味では、企画書はまったく違うんですね。例えば、ある会社に企画書を提出したとしたら、相手の会社の中では稟議で勝手に回っていくことが前提です。基本的には、すべての情報が入ってるものが前提になると思います。
自分が作っているものは、インタラクティブなやり取りを想定しているプレゼンテーションなのか、それとも社内でぐるぐる勝手に1人で回っていく、資料として一人立ちしなきゃいけない企画書なのかを区別することが、一番大事なことだと思います。
スタートアップで「今から資金調達をしよう」という会社であったり、「大きなクライアントをぜひ捕まえたい」という会社におすすめしたいと思います。
ソフトバンクの孫社長の成功は、孫社長の交渉力にあると言われますが、実はその交渉力の源泉になっているものは資料なんですね。
資料というものは、最後には画面に出てきたり、紙で出てきたりするものなんですが、その裏には孫社長のものすごい知識や経験であったり、長い思考の結果が凝縮されているわけです。
そういう資料の作り方を、誰もが真似できる作法にしたものがこの本です。誰もが孫社長のようになるのはなかなか難しいと思うと思います。ただ、資料作りを断面に、この本は誰もが真似できる作法になっていますので、ぜひ読んでいただきたいと思います。
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