2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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永井翔吾氏:さっそくフレームワークの中身に入っていきたいと思います。あらためてなんですが、私は現在VISITS Technologiesという会社で、創造力を可視化するテストや創造力を育むワークショップを開発しています。
私自身がこれまで働いていた中で、官僚やコンサル、それから司法試験ですと弁護士さんとか、本当にすっごく優秀な方たちがいて。優秀な方たちの母集団の中でも、極めて超優秀な方たちがいらっしゃって、「なんであの人たちは、優秀な人たちの中でも頭1つ抜きん出るんだろう?」と常に考えていたんです。
私がこれまで考えていたものと、今、会社で開発しているものがハイブリッドされたような考え方になっておりますので、まずはフレームワークを意識していただくだけでも、だいぶ変わってくるんじゃないかなと考えております。
そうしましたら、さっそく1つめですね。1つのフレームワークなんですが、まず、物事は「課題」と「課題解決」に分けられます。非常にシンプルなんですが、ここから始めたいなと思います。
新規事業をやる時には、おそらく「課題」や「ニーズ」という言い方になると思いますし、新しいプロジェクトを始めたりする時は、課題というか「目的」と「目的の達成方法」になると思います。
このように、まずはすべての物事をこの2つに分解して考えていただく。そして、その組み合わせが大事なんだということを念頭に置いていただけたらと思います。
例えばなんですが、髪の毛が濡れちゃったり、お風呂やプールに入った後は「髪の毛を乾かしたい」というニーズがあると思います。そのニーズに対して「タオルで拭く」という、昔からあるソリューション方法を組み合わせるのが既存のアイデアです。
ポイントなのが、この「髪の毛を乾かしたい」というニーズに対して、乾燥機を使うこと。乾燥機はすでに確立されているソリューションですが、これを「髪の毛を乾かしたい」という課題にマッチさせたことで生まれたのが、ドライヤーであると。それが新しいアイデアなんです。
非常に真面目に考えてしまいますと、どうしても「新しいソリューションを自分で考えなきゃいけないんじゃないか?」と思ってしまうんですが、例えばこの下のパターン(「ローションを開発」)ですね。
これはまだ誰も開発してないんですが、「髪の毛を乾かしたい」というニーズに対して、髪の毛に1滴つけたらパーっと髪の毛が乾いていくローションを開発する。仮にですが、これは新しい方法じゃないですか。
当然これは新しいアイデアなんですが、一番注目したいのは真ん中の「乾燥機を活用」したパターン。(乾燥機は)既にあったものなんですが、これを「髪の毛を乾かす時に使ったらええやん」と、組み合わせた。それによって生まれたのがドライヤーなんですが、それも新しいアイデアです。
なので、すでに巷にある方法を組み合わせたことのない課題にくっつけることによって、新しいアイデアが生まれる。そして実際に、世の中のほとんどのアイデアがこのパターンなんですね。なので、実は新しいアイデアは、作るのもそんなに難しくないんだとご認識いただければと思います。
そしてもう1つ。これはもう「当然」って感じなんですが、「髪の毛を増やしたい」という新しい課題です。おそらく、数十年前ぐらいにはまだなかったんじゃないかと思いますが、最近は「髪の毛を増やしたい」ということが、顕在的なニーズになってきていると思います。
そこに対して、現状ですとAGA治療などがあると思うんですが、いろんな薬を飲んでいる中で、すごく多毛になるような副作用が出てきました。そういう現象を「髪の毛を増やしたい」というニーズに掛け合わせることによって、AGA治療が始まった。
この副作用も以前からあったものなんですが、ニーズに掛け合わせることによって新しいアイデアとして生まれてきた。なので一番重要な点としましては、既存のものをうまく組み合わせるだけでも新しいアイデアになります。
新しい課題やニーズが出てきた時も、既存のありものをうまく組み合わせることによって、新しいアイデアが生まれてくるので、本当に「組み合わせ遊び」だと言われています。
組み合わせる一番大きい塊としては、まずはこの「課題」や「ニーズ」、それに対する「ソリューション」や「解決方法」の組み合わせの中で、新しいアイデアが生まれてくると考えていただければなと思います。
実際に仕事をしていて、新しい新規事業じゃなく通常の業務でも、「ここはどうしても業務がボトルネックになっているよ」という課題があった時に、ぜんぜん違う方法を掛け合わせてみても新しいアイデアが生まれます。そういうかたちで、いろいろな掛け合わせを意識していただけるといいんじゃないかなと思います。
その上で、ここでは「課題」と「課題解決」に分けさせていただいてるんですが、さらにもう1歩具体的に分解して考えると、このような構成になっています。「5W1Hのフレームワーク」は非常に有効ですので、ぜひ覚えていただけるといいなと思います。
先ほど「課題」と「解決方法」と言いましたが、もう少し具体的に「課題」がどんなふうに生まれてくるのかといいますと、「誰が、どこで、いつ」という具体的なシーンにおいて具体的な課題が浮かんできます。
なので、課題をもっとしっかり分析して考えたい時には、そもそも「誰が」課題を抱えているのかを考える。これは人であったり、toBの営業をやってる場合は「○○企業」になったりするかもしれません。こういう主体・ペルソナが「どこで、いつ、どんなことをやっているのか」から生まれてくるのが課題です。
そして、課題を解決する方法も具体的には2つあって、「何を」「どうやって」に分解できます。多くのビジネスモデルやソリューション方法には、それを構成する要素やものがあります。そして、それをどう使うのか、どう組み合わせるのか、どうモデルとして動かすのかという「How」の部分があります。
今、課題と解決方法に分けて掛け合わせるという話をしたんですが、課題と解決方法をさらに分解すると、課題であれば「誰が、どこで、いつ、どんなことやってる時なのか」、解決方法であれば「何を、どう使って」に分けられます。
より具体的に課題と解決方法を考える場合には、ぜひこの5W1Hのフレームで考えていただけると、非常にわかりやすく、すっきりしてくるのかなと思います。
その上で、先ほど申し上げた「技術革新」なんですが、「技術革新、技術革新」と言っているのは、あくまで解決方法のWhatのところです。物や技術が新しくなっているのが、技術革新です。
なので技術革新とは、イノベーションや創造的な物事のごく一部に過ぎないので、もう少し広く捉えていただけるといいんじゃないかなと思います。
ではさっそく、1つのフレームワークの次は、3つの思考法のうちの1つめ「統合思考」に進んでいきたいと思います。統合思考は、さまざまな課題を同時に解決しようとする考え方でして、おそらく海外では「Integrative thinking」とか「AND思考」と言われることが多いです。
なので、ここでは「統合思考」と言っていますが、みなさんがしっくりくるのが「Integrative thinking」や「アンド思考」だったら、そういう使い方をされてもいいんじゃないかなと思います。
加えて、統合思考のさまざまな課題の中でも、特にトレードオフになっている課題を解決する時に、イノベーションや新しいアイデアがものすごく生まれると言われています。特にトレードオフの課題を解決する場合を「統合思考」と言っていたりもしますので、細かいんですが、こんな感じで定義を使っています。
まずは、上の「さまざまな課題を同時に解決しようとする考え方」から見ていきたいと思います。こちらはデザイン思考の重要な考え方なんですが、人々のニーズを考える際に、デザイン思考では「このニーズの本源的なものは何なのか」「本源的な欲求は何なのか」を非常に考えます。
デザイン思考では、いろんな方たちをとにかく観察をして、この「本源的欲求」を探ろうとしています。その理由は、本源的欲求にアプローチするアイデアや解決方法は非常に重要だからなんですね。
「本源的欲求」と「具体的な場面」が掛け合わされて、「ニーズ」が生まれてくるということを、ぜひ意識していただければなと思います。
「これ、何の話をしてんの?」ということなんですが、本源的欲求というのは、場面が変わっても常に人間として持っている欲求です。
例えば、絶対にみなさんには「楽したい」という気持ちがあるじゃないですか。朝から晩まで、仕事中も楽したいし、食事を作っていても楽したいし、洗濯物も楽したい。これが本源的欲求です。つまり一般的な人であれば、どういうシーンでも持ってる欲求です。
具体的な場面で、例えば「会社員が月末に経費生産の処理業務に追われている」という具体的なシーンではどんなニーズになるのかというと、一番右側のニーズになってきます。
同じように、「楽したい」という本源的な欲求がぜんぜん違う場面。例えば1人暮らしの大学生が夕飯を食べようとしている場面においては、「もっと手軽に食事がしたい」というのがニーズです。
なぜ「ニーズ」と「本源的欲求」を区別して考えるのかというと、ニーズにばかり気を取られると、打ち手がめちゃめちゃ狭まっちゃうんです。ここで言えば、「もっと手軽に食事をとりたい」に対してソリューションを考えると、あくまでもこのニーズを解決しにいこうとするソリューションになってしまうんです。
一方で、「でも、おおもとは楽したいんでしょ」「じゃあ、こういうことも考えちゃっていいんじゃないの?」という発想になってくると、もっと打ち手が広がってくるんですね。
例えば「『もっと手軽に食事を摂りたい』というニーズを解決するための、新規事業や新規サービスを考えましょう」となると、チンもしなくてもその場ですぐに食べられるおいしいものを開発するとか、そういう発想になってくると思います。
なんですが、本源的欲求が「楽したい」だったら、サプリを1個飲んだら食事を摂らなくていい超楽な食事とか、飲み物の中に栄養が十分入っているとか、「食事を摂らないから楽させてあげるよ」というかたちで、打ち手の幅がとにかく広がってきます。なのでニーズだけではなく、ニーズの本源的欲求は何なのかを考えていくことが非常に重要です。
ちょっと細かいんですが、本の中ではこんなかたちで1つの例として紹介させていただいます。上から見ていただきたいんですが、スーパーで階段を上って2階に移動しなきゃいけない時。具体的なシーンの中で生まれてくるのは、「疲れずに階段を上って2階に行きたい」だと思います。
でも、「疲れずに階段を上って2階に行きたい」をもっと抽象的に考えていくと、つまりそれは「店内を移動せずに買い物がしたい」ということなんでしょうと。別に、1階から2階に行くのを楽したいというだけじゃなくて、もっとおおもとを辿れば、この人は店内で移動するのがめんどくさい。
永井:そういうかたちで、うまくニーズを本源的欲求に近づけて、抽象化して、本質化して、シンプルにしていく。(スライド)右下にあるんですが、「事前に注文しておけば入り口で商品を受け取れるようになる」というところまで打ち手が広がっていきます。
なので、ニーズと本源的欲求は違うものであることと、ニーズの中でより本源的欲求を意識しながら解決方法を考えるほうが、より打ち手が広がります。
今の例なんですが、じゃあ、どんなふうにニーズをもう少し抽象的に考えていくのか? といったところで、課題やニーズは「誰が、どこで、いつ」という組み合わせになっています。「Who、Where、When」のいずれかを抽象化すると、そこで掛け合わされて少し抽象的なニーズになります。
もしかしたら若干考えづらいといいますし、けっこう細かく分解して分析しているので、難しいということでしたら、まずはこの「ニーズ」のほうだけ見て抽象化を考えてもいいですね。
なので、「『疲れずに階段を上って2階に行きたい』を、もうちょっと本質的に、もっとシンプルに考えたらどういうことなんだろう?」「これって、店内を移動せずに買い物がしたいとか、動くのめんどくせえってことかな?」というかたちで考えていただいてもいいかなと思います。
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