2024.10.01
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『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』(日本実業出版社)、『あらゆる悩みを自分で解決!因数分解思考』(あさ出版) 刊行記念 山口拓朗×深沢真太郎 トークイベント 『理解を深める【因数分解思考】と論理を強固にする【理解力】』(全5記事)
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山口:真ちゃんはどうですか、もう1つくらい。
深沢:明日からすぐできる理解力を上げるためにできること……これは山口さんの「要約力」もそうだし、まさに今回の「理解力」と「因数分解」、全部に関係してくると思うんですけど、「一言、一行、一分」というものの考え方を私はするんですね。少し窮屈かもしれないので、みんながみんなやりましょう、ではないんですけど。もし「確かにそういうほうがいいかな」と思われた方は、ちょっと取り入れてみるのもありかなと受け止めてください。
とにかく私は何を考えるのも「ひとことで言うと、それって何?」とまず最初に問いかけるんです。考えるとは問いかけること、と言うじゃないですか。まず、何を問いかけるかというと、「ひとことで言うと何だ」と問いかけるんですね。
それを言語にしたあとに、次に「1行で表したらどんな表現になるのかな」と考えるんです。この「1行で表現する」というのは、例えばこういう本であればタイトルのようなものだと思います。セミナーや映画のタイトル、1行で表現すると何なのか。
最後に「それを説明するのに1分だけもらえるとしたら、どう説明するかな」と考えます。別になんでも1分で説明するわけではもちろんないんですけど、ものの考え方としてね。こうやってものを考えていくことによって、まさにスッキリ整理された、分けられた、要約された内容ができる。これができた時「要するにこの話のテーマはこういう内容なんだな」と理解もできます。「一言、一行、一分」という考え方をします。
深沢:でも制限されるから、はっきり言って非常に窮屈ですよね。「1行か……」「1分と言われてもなぁ……」という感じになるじゃないですか。
山口:いや、だけどめちゃくちゃいい話ですよ。
深沢:(笑)。そうですか。
山口:僕ね、それめちゃくちゃ共感します。大好物です(笑)。
深沢:「大好物」、ちょっと何言っているかわからないですけど(笑)。
山口:(笑)。だんだん変態ぶりが出てきました。けどその「制限を加える」ということが本当に大事だと思います。だってみなさんも「明日死ぬ」と制限を加えたら、一番大事なものが出てくるわけじゃないですか。だから本質を浮き上がらせるためには、とにかく制限を加えなきゃいけないと思うんです。
おそらくその「1行で表現する」のでは、余計なことは当然言えませんし、無駄なことは言えない。この『要約力』の中にも書いているんですけど、「死んでもこれだけは言っておく」という言葉を見つけることは、本当に自分にとって何が大事なのかを伝える時に必要です。そういう意識、脳の回転をそこに持っていくことなので、めちゃくちゃ共感しました。
深沢:ありがとうございます。大事かな。
山口:めちゃくちゃ大事だと思います。
深沢:こういう本を読んでいただいて、一つひとつのエッセンスを知ってもらう、理解してもらうのは良いことだし、うれしいことです。だけど結局、今申し上げたようなことを日々やっていれば、結果的にできるようになっているという考え方を、私はするんですよね。
だから制限がすごく大事。「制限はクリエイティブの神」という言葉があって、良いものを作りたいんだったら自分に制限を課しなさい、それが一番良い方法だ、という考え方があります。「紙は何枚でも使っていいからね」と言われると、きっといい資料は作れないわけですよ。だけど「絶対に紙は1枚しか使っちゃダメよ」と言われたら、研ぎ澄まされた究極のペーパー1枚になるわけですよね。その1枚がすべてだったりします。
デザインをする時も「色は何色でも使っていいよ」と言われるよりも、例えばこういう本のカバーのデザインは「絶対に3色までしか使っちゃダメです」という制限があったほうが、工夫したり、新しい発想が生まれるものだと思います。結局、制限を課したほうが良いものができるんです。
だから私は、さっきもなにか言いましたよね。「ちょっとストレスをかけたほうがいいんだ」と。なんでもかんでも便利で、自由だと実はあまり良いものはできない。少し制限を課す、負荷をかけるくらいのほうが、良いものができると思いますね。
山口:いや、すばらしい。
深沢:なのでまとめとしては「一言、一行、一分」ね。ちょっとやってみてほしいと思います。
山口:これは、みなさんにたぶん持ち帰っていただける言葉じゃないですかね。
深沢:そう思います。
山口:僕も持論として、1行で伝わらないものは10枚書いても、20枚書いても伝わらないと思うんですよね。良いものは本当に1行で伝わるんですよ。だからたぶん真ちゃんも同じだと思うんです。本の企画を考える時も、編集者の方もみなさんそうだと思うんですけど、やっぱり「この1行」でパッと良いか悪いかはわかるし、決まるところはありますよね。
深沢:ちょっと今思いついたんですけど、まさに1行で表現する……例えばこの本の内容を理解して、たった1行で表現することを仕事にしている人がいますよね。
荒尾:……。
深沢:こうやってタイトルをつける時、どういうものの考え方で表現するんでしょうか。せっかくなので(教えてください)。
山口:無茶ぶりがきましたね(笑)。
深沢:だって、まさに1行で表現する人ですから。
山口:そうですよね、本当にプロですからね。
荒尾:私は基本的になんにもやらない編集者なので。
(会場笑)
深沢:ちょっと待ってくださいよ(笑)。
荒尾:一般的な編集者の話をするんですけども、いかに書店に置かれた時にパッと目に入るのかは、読者目線でまず考えると思います。あとはパッと取って中を読んでもらった時に、内容と齟齬がないようなもの、強烈なものをどこかから持ってきてタイトルにするのが一般的な方の考え方だと思います。
深沢:ご自身のじゃなくて(笑)。
荒尾:私はなんにもやらないので(笑)。
(会場笑)
山口:なんにもやらなくはないと思いますよ(笑)。
深沢:ものすごい謙虚な方なんです(笑)。そんなことはないと思います。これもすばらしいタイトルだなと思いますよ。
山口:これも「理解力」という言葉以外は荒尾さんにつけていただいています。
深沢:当然この中身を読んで、理解していただいたうえでこれになっていますもんね。
荒尾:そうですね。
深沢:『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』。
山口:たぶん今の話とつながるんですけど、デザインはいくつか最初にバリエーションが送られてくるんですよ。以前、全部「書店で1回置いてみました」という写真が送られてきたことがありました。つまりこの本であれば、まず……表紙のペラ紙1枚をパッと置いて、全体の写真を撮るわけですね。それで、次のバージョンを置いてまた全体を撮るというのを、全部送ってくれたことが確かあったような気がします。
荒尾:はい、『要約力』の時にしました。
山口:そうですよね、それはすごいと思いました。やっぱり著者はそこまで考えないんですよ。書店に置かれた時にそれがどう見えるかまでは、なかなか頭にいかない。むしろ見た時にかっこいいかどうかとか、自分が気に入っているかどうかを見るんですけど。そうじゃなくて、やっぱり書店で置くものなので、書店に並べた時にそれがどう見えるかをちゃんと見ている。この視点はすごいし、忘れちゃいけないなとすごく勉強になった記憶があります。
深沢:それすごいですね。
荒尾:やる時とやらない時があります(笑)。
(会場笑)
山口:素直ですね、荒尾さん(笑)。
荒尾:山口さんの本は大事なので、やらせていただきました。
(会場笑)
深沢:そんなこと言って大丈夫ですか(笑)。
山口:その発言大丈夫ですか(笑)。
深沢:いや、でもすごい。初めて聞きました、そういうやり方。
山口:最初のデザインと、やっぱり置いた時のイメージはぜんぜん違うものなんですかね。
荒尾:実際置いてみて、山口さんのお知り合いの方々に投票してもらったんですけど、一番人気のないものがこれになります。
(会場笑)
山口:(笑)。そこがプロですよね、やっぱり。
深沢:そうなんですか?
荒尾:はい、それはこちらのほうで。
山口:投票したのは表紙だけ。それは書店の写真ではなくて、表紙。この単体で見たものに投票したんですよね。けど荒尾さんは書店に置いたものも見ているので、単体で見るとほかも良いけど、書店に並んだ時にはこれだよねという感じでたぶん決めていると思うんですよ。
荒尾:うまく解説していただいてありがとうございます。
(会場笑)
深沢:理解しました(笑)。この話はおもしろいですね。
山口:おもしろい話ですよね。そこまでちゃんと見るのは、すごく大事だなと思いました。本のゴールはやっぱり書店に並んだ時ですからね。もちろんAmazonも今はありますけど、そうじゃなくてやっぱり本屋さんで置かれた時の風格とか、周りへの影響をどう及ぼすかみたいなところまでたぶん見ているんでしょうね。
深沢:そうですね、なるほどね。いい話をありがとうございます。
深沢:もうだいぶ後半戦に入ってきていると思いますけれども、今後どうやってトークイベントをまとめていきましょう?
荒尾:この2冊に共通しているのは論理的思考が土台というか、論理的なものがベースになっていると思うんですけども。論理を超えた事柄に対する理解力と因数分解思考のアプローチ方法を、最後にお二人からお聞きしたいです。
深沢:もう1回いきますね。論理を超えた事柄……?
荒尾:論理で説明できないようなことです。
深沢:あぁー……論理で説明できないことに、どうやってアプローチしていきましょうか、というけっこうすごいテーマですね。
山口:けっこうすごいテーマをぶち込んできましたよ(笑)。
荒尾:もうちょっと早く言えばよかったです。
(会場笑)
深沢:いや、大丈夫ですけど(笑)。確かにでも、私たちの生きているこの世の中には論理で語れないことがありますね。
山口:ありますよね。真ちゃんをもってすると全部語れそうな気もするんだけど(笑)。
深沢:いや、そんなことはないと思いますけどね(笑)。でも確かに論理で語れないようなものも語っていこうよという活動、メッセージを発しているのは確か。私の場合は、そこにコツはないです。ただ1つだけこの場でなにか言えることがあるとするならば、論理で語れないものはあるけど、人間はどこかで「納得するために論理を欲しがる」ことはあるんじゃないかな、という考え方です。
山口:論理を欲しがる。
深沢:例えば私は、よく研修で「愛の値段はいくら?」という演習をやるんですよ。愛は基本的に、値段をつけられるものではないですよね。「そんな議論、ナンセンスだよ」という反応もとても多いと思うんです。だから私が「愛の値段はいくらか、みんなで計算してみましょう」と話をすると、まぁ99パーセントのビジネスパーソンは、「プライスレスです」と言うわけですよ。
確かにそうだけれども、そこでグッと論理の世界に行ってみると「愛の値段をどうやって計算できるか」という議論が始められるんです。一例ですけれども、自分の彼女に対する愛と、自分の普通の友だちへの愛は、どっちのほうが大きいと思います?
山口:みなさん、どっちでしょうね。
深沢:多くの人は自分の彼女、恋人への愛のほうが大きい、そっちのほうが強いと言うんです。じゃあその「こっちのほうが強い」というのをどうやって説明しようか、どうやって私たちはそれを納得しようか、という少し面倒くさいことを言うんです。
でも今のような投げかけをすると、意外と考えてくれるんですよ。確かに自分の彼女への愛のほうが友だちへの愛よりも大きい。それはわかっているんだけども、それはちゃんと腹に落ちるように説明することができないよね、となるんです。そこで論理の登場になるんですよね。
例えばですけど、すごくシンプルな例を言うのであれば……自分の彼女、恋人に対して「誕生日プレゼントでいくら出せるか」。例えば「5万円出せます」ということにしましょう。では普通の自分の友だちへの誕生日プレゼントにいくら出せますか。「5,000円しか出せません」だとすると、この差は何ですかとならないでしょう。
この差こそまさに、その人に対する愛の大きさの違いなんじゃないでしょうか。だからこちらの愛のほうが大きいんです、強い愛を持っているんです、と説明ができるかもしれない。あくまでも一例なんですけど、こうして私たちは論理で語れないようなものを論理にして、ある意味理屈や理由をつけて、自分の中で納得をする。
山口:なるほど、すごいですね。このやり方はたぶん、論理思考を身につける上ですごくいい方法ですよね。論理で語れなさそうなものをその人なりに定義しながら、最後は論理的に語るわけですからね。この中では必ず論理的な思考が養われます。すごくいい方法ですね。
深沢:それがいわゆる、今回の主役である「論理的にいきましょう」というテーマの大事なところ、うまく使っている人のやり方です。論理的なことが必要な場面では論理的であることは当たり前で、そうじゃない場面でいかにちょっと論理を持ち出してしゃべるか、考えるか、説明するか。ちょっと難しいことを言っているかもしれないですけど、それがこのテーマにおける1つの例かなと思いますね。
だから今みたいな考え方があると、例えば「うちの会社はブランド力があります」。「何をもってブランド力が高いって言うのよ、それをどうやって説明するのよ」ということも当然議論ができるし、もしかしたら数値化して説明ができるかもしれないですよね。それは私たちビジネスパーソンにとって悪くないと思います。なかなか論理で語れないようなことを論理で料理するのは、こういうことかなと思いました。
山口:なるほど、勉強になります。やっぱり論理で語るプロですから。でもどうしても諦めてしまいますよね。諦めたり面倒くさがったりして、そこを言葉にしないんですけど、やっぱり言葉にすることによって見えてくるものはありますね。ブランド力を1つ定義して、それをちゃんと論理的に説明できるようになれば、きっとさらに良い戦略が見つかったり、今の問題が解決できるので、すごく大事なことだと思います。
深沢:だからうまく行ったり来たりできるといいのかな。そもそも人間は論理的な生き物ではないので、相性が悪いんです。これはよく言うんですけど、人間と論理はこんなに相性が悪いのかというぐらい相性が悪いんですよ。だからそこをうまく行ったり来たりできるような柔らかさがあるといいね。
山口:いいですよね。
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