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『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』(日本実業出版社)、『あらゆる悩みを自分で解決!因数分解思考』(あさ出版) 刊行記念 山口拓朗×深沢真太郎 トークイベント 『理解を深める【因数分解思考】と論理を強固にする【理解力】』(全5記事)

「正論」を言わなきゃいけない人ほど、相手の「欲」を想像すべき 指導者が心がけている、人の「本音」の引き出し方

代官山 蔦屋書店にて開催された『あらゆる悩みを自分で解決! 因数分解思考』著者・深沢真太郎氏と『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』著者・山口拓朗氏の対談イベントの模様をお届けします。数学の専門家と文章の専門家という異なる立場から「理解力」について語られた本イベント。今回は、両者が人に教える立場として心がけていることについて語られました。

「人に教える」上で大切にしていること

深沢真太郎氏(以下、深沢):荒尾さん、今日この2人の共通点としては、「テーマは違うけど、人にものを教えている」というのもあると思います。人にものを教えている者同士として大事にしていることというか、共通点や違いはあるのかを聞いてみたいなとふと思ったのですが、大丈夫ですか?

荒尾宏治郎氏(以下、荒尾):はい。どうぞどうぞ。

山口拓朗氏(以下、山口):そうですね。僕が一番大事にしていることは、もしかしたら「そんな話?」と思うかもしれないんですが、「受講している人たちの伸びしろを信じる」ことですね。

深沢:ああ、これメモしたいな。

山口:伸びしろというか、講師が「できない」と思ったら、それは何かしらのかたちで伝わっていくと思うんです。言語でも伝わるし、非言語でもたぶん伝わっていくんです。表情とかちょっとした感じですよね。「この講師、自分にちゃんと期待してくれていない」という感じですかね。

だけど、「必ずできるんだよ」と言語でも伝えるし、非言語でも伝える。実際にそう思っているんです。人間は成長する生き物だと思っているし、僕は偉そうに本を書かせていただいていますが、それこそ出版社に入った頃は僕の書いた原稿なんて赤字で真っ赤になって突き返されてくるわけですよ。

「お前の文章で表に出せるか」という感じで、血のような原稿が返ってきて、それを1個1個直していくといい文章ができるんです。いい文章ができるんだけど、自分が書いた文章ではないんですよね。そうやって1個1個学んできました。

相手の伸びしろを信じる

山口:だから自分が常に成長してきたという、自分に対する実感が強いので、他の人も絶対に成長する。子どもの時から成長していない人なんていないじゃないですか。その伸びしろをちゃんと信じて話をする。向き合うということですかね。感覚論になってしまっていますが、それが一番大事にしていることです。

深沢:いやいや。「伸びしろを信じる」。いい言葉ですね。たぶん拓朗さんのセミナーを受けたり、拓朗さんから勉強している人は、それがわかっているんだと思いますよ。

山口:だといいですけどね。

深沢:たぶん伝わっているんだと思いますよ、だからついてくるんです。

山口:そういう気持ちでやると、本当にめちゃくちゃ伸びるんですよね。すごく伸びるので見ていて楽しいですから、たぶん相乗効果が生まれる。みんなもどこかでやる気になっているし、結果も出るし、僕もまたそこで承認するというサイクルが生まれていますよね。

深沢:これはリーダーとかマネジメントに関係ありそうな話ですね。

山口:一緒ですかね。

深沢:結局一緒の話だね、というまとめになりそうです。

相手の「欲」をちゃんと知っておくこと

山口:真ちゃんはどうですか? 講師として一番大事にしていることは?

深沢:「指導者として大事にしていること」という文脈ですよね。いくつかあるんですけど、相手の「欲」をちゃんと知っておくことが、すごく大事だと思います。

山口:欲を知っておくことですか。

深沢:どうなりたいのか、何をしたいのか、どうなったらうれしいのかを、ちゃんとわかってあげているかどうかということです。これは別に講師とか先生じゃなくていいと思うんですよね。もはや、リーダーの方、マネジメントの方でもいいと思うんですよ。その人の欲をわかっているかがすごく大事かなと思います。

山口:これはいい言葉をいただきました(笑)。いいですよね、すごく大事だと思います。

深沢:そんな反応をされるとは思わなかったです(笑)。

山口:すごく大事ですね。

正論を言わなきゃいけない人ほど、相手の「欲」を知るべき

深沢:結局私がふだんやっているビジネス数学、数学的思考、やれ「〇〇思考やりましょう」は、全部正論なんですよ。この人(私)は正しいことを言うんです。

(会場笑)

オンラインのみなさん、今ね、会場で笑いが起きているんですよ。失笑です(笑)。

山口:いや、失笑じゃないですよ(笑)。

深沢:この人(私)の言うことは、全部正論なんです。みなさんもよくわかると思うんですけれども、人間には正論ほどイヤなものはないんです。でも私は人に正論を言って、それをやってもらう仕事なんですよね。さて、どうしたらいいんだろうと考えるわけなんですよ。

山口:それは正論だけを言っていると、やっぱり不具合とか反発がきたり、「そんなの受けるかよ」という対応が起きてくるわけですね。

深沢:そうだと思いますね。「まぁ言っていることはわかるけどさ」という反応は、まさに正論を言った時の反応だと思うんですよね。「言っていることはわかるけど、あんたは俺の気持ちをわかっていないね」と言っているわけです。正論を言わなきゃいけない人ほど、相手の心、欲がわかっていないといけないんじゃないかと思います。

だから私は、相手が新入社員の時は新入社員の欲、管理職の時は管理職の欲をちゃんと想像し、仮説を立てた上で前に立つわけなんですよね。

なぜ研修の休憩時間に受講生と話すのか

深沢:ちなみに新入社員の欲とは何でしょうね。もしかしたら、いきなり「仕事で成果を出したい」ということじゃないかもしれない。単純に「1回でいいから褒められたい」とか「同期から置いていかれるのだけはイヤだ」ということなんじゃないかと思うんですよね。そういったところにちゃんと接してあげられるような言葉を選んで、正論を言うんです。

山口:すばらしいですね。

深沢:それがやっぱり指導者として大事なことです。

山口:今その話を聞いて思い出しました。真ちゃんの……Facebookかなにかの投稿で、昔見たことがあるんですけど。真ちゃんは、研修の休み時間に受講者のところに行って話しますよね。違いましたっけ?

深沢:よく知っていますね。

山口:そうですよね。それを見て、すごいなと思ったんですよ。多くの研修講師は、意外と休息時間は休息するんです。やっぱり休みたいからね(笑)。だけど(真ちゃんは)話しに行くんですよね。話をすると、欲がわかるんだと……「欲」が「よく」わかるんだと。

(会場笑)

ちょっと笑いが少なめですけど(笑)。

深沢:(笑)。

山口:まぁいいでしょう(笑)。そう思うんですよね。

深沢:そのとおり。

山口:意識か無意識かわからないですけど、そういうことをされているんですよね。

参加者は講義中に「本音」を言わない

深沢:そうですね。あまりここを深掘りすると若干本題から外れてしまう可能性もあるので、これくらいにしておきますけど。セミナーとか研修の講義中には、参加者は絶対本音を言わないんです。

じゃあいつ本音をちらっと漏らすかというと、休憩時間の時だけなんです。だから休憩時間に必要な人に「ここまでどう?」とか「職場ではどう?」と声をかける。そうするとポロっと本音を漏らす。そこでキャッチしてコントロールしてあげるのが、現場でやっていることね。

山口:確かにそうですね。大勢の前では言えなかったとしても、講師と一対一だと言ってくれるケースはけっこうありますからね。

深沢:そうですね。そんなところが指導者として大事にしているところです。だからとても共感しました。

山口:僕も共感しました。

深沢:たぶんマネジメント、リーダーシップという文脈にもつながる話だと思います。

山口:相手の欲をちゃんと知っておくことは、すべてのコミュニケーション・人間関係において、すごく大事ですよね。

深沢:そうだと思います。どなたかの参考になればうれしいです……。もう今、目の前ですごく一生懸命メモをとっている方がいるんですよ。

山口:うれしいですね(笑)。

深沢:話しかけても大丈夫なんでしょうかね。ここまでのお話を聞いて、なにか印象に残ったことはございましたか? 一言でいいんですけれども。

参加者:今日意識していることは、本当になにか1個でも持ち帰って、自分の仕事につなげられればと思っているんです。今僕は、自分で会社をやりながら転職支援をしています。それでまさに「欲を知る」とか、求職者さんが正論は言うけどなかなか動かないということがすごくあって。なので今この話はすごく刺さりました。なにかしら実践して、変えて、今やってみているところです。

深沢:ありがとうございます。

(会場拍手)

山口:ありがとうございます。目的意識をちゃんと持って話を聞くのはすばらしいですよね。

深沢:そうですね、ありがとうございました。

理解力を養うには「知識の箱」を増やす必要がある

深沢:さぁ、このトークイベントも早いものでもう後半ですか? どんな展開にしていきましょう(笑)。

荒尾:ちょっと話を戻してしまうんですけど、先ほどの実際の生活とか仕事で使えるお話で、山口さんから「アクティブリーディング」。深沢さんから「書く」ことの大事さをお伝えいただいて、すごく実践したいなと思いました。もう1つずつくらいお願いできるでしょうか?

山口:実践できることですね。僕の本の中では「まず頭の中に理解の箱を増やしましょう」と書いています。ではみなさんにちょっと問いかけをします。「平安時代の人にスマートフォンのことを説明して理解してもらう自信のある人?」。ちゃんと説明して、理解してもらえる自信があるか。

深沢:いやぁ、難しいですね。

山口:1人くらい「できます」という人がいそう……いないですか? これはやっぱり難しいんですよ。

なぜ難しいかというと、彼らにはそもそも「電波」が理解できないからです。もうなにを話したってたぶん、彼らは魔法としか思わないわけですよ。「いやそんなの魔法だろ」とたぶん言いますよね。それは電波という存在を知らないから。つまりそれは頭に「電波」という知識の箱がない状態ですね。だから物事を理解するためには、まず知識の箱が必要だということです。

だから私たちは、この知識の箱を日常の中でどんどん増やしていかなくてはいけない。これもただ単に増やそうとすると、今は情報過多すぎるんです。もうスマートフォンを見れば、みなさんにパーソナライズされた情報がどんどんくるわけじゃないですか。パッと広告が出たら、自分の欲しいものが出てくるんですよね。これは、頭を使わない状態なんです。

そういう受動的な知識の箱ではなくて、みなさんが本当にこれからの人生で成し遂げたい目標とか、夢に必要な知識の箱を作っていただきたいなと思うんですね。

情報に受動的だと、脳は退化していく

山口:もちろん、一般教養としていろんなことを知っているのはいいと思うんですよ。ワインのことを知っているとか、最近だと茶道もはやっています。そういう教養的なものを知るのもいいんですけど、もしみなさんになにか目標とか夢、仕事で「これを絶対に成し遂げたい」というプロジェクトがある場合は、まずそのテーマに関する知識の箱をちゃんと増やそうということです。能動的に知識の箱を集めていただきたいなと思います。

なので仕事であれば、例えばちょっと先輩たちがわからない言葉を使った時には、それはやっぱり調べなきゃいけないと思うんです。調べるのはすごく大事。スマートフォンは便利ですよね。昔だったら辞書でわざわざ調べないといけなかったんですけど、今はスマートフォン1つで情報を調べることができる。検索は自分にとって必要な知識を増やす上ですごく便利なものなので、興味のあることはどんどん検索していただきたいと思います。

例えば今、投資に興味があるのであれば、いっぱいいろんな情報がありますから、投資について検索をかける。だから受動的にただアプリを使っているとか、受動的にSNSを見ているだけでは、人間の脳は逆に退化していくと僕は思います。みなさんの中で、今日代官山まで来る時に地図のアプリを使った方はいますか?

(会場挙手)

もうほとんど全員ですよね。だけど、昔のことを考えてもらいたいんです。自分の家から代官山に来る時、けっこう頭を使ったはずなんですよ。家で路線図を見たり、時刻表を見て、「どこで乗り換えればいいんだろう」とちゃんと考えて、その場所に行ったんですよね。これは頭を使っているんですよ。

脳はやっぱりどんどん使わないと退化していきます。だけどアプリでポンと出てきてしまうと、もうそれに従うだけで楽に来れるわけですね。これは便利なんだけど、頭の筋肉はつかない。なのであまりスマートフォンに依存しすぎないで、能動的にスマートフォンを使っていく。能動的に使うというのは、自分にとって必要な言葉を検索するとか、アウトプットとして利用するということです。

スマホの「使い方」の工夫は、明日からすぐできる

山口:Twitterで140文字で気づきを呟くのは、めちゃくちゃいい方法だと思います。そういう使い方はいいと思うんですけど、とにかく受動的な態度を少し変えていくだけでも、人生が変わっていくんじゃないかな。スマートフォンの使い方、1つです。

深沢:いいですね、スマートフォンは身近ですぐできますね。「人生が変わっていく」とまた言いましたね。

山口:(笑)。人生を変えるのが好きなんでしょうね。

深沢:好きなんだと思います(笑)。

山口:相当変えたいのかな(笑)。

深沢:いや、でも山口拓朗さんという人はそこを見て生きている人なんですよ。人間のそういうの信念は語尾に出るんです。

山口:深いですね。

深沢:だからすてきだな、とも思いますね。スマホは明日からすぐできる。こういう話があるといいですね。

『1%の本質を最速でつかむ「理解力」』(日本実業出版)

『あらゆる悩みを自分で解決! 因数分解思考』(あさ出版)

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