2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
新規事業を成功に導くインタビュー講座~思い込みを外し、顧客の本音を捉える思考法~【Q&A】(全1記事)
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今井広夏氏(以下、今井):それでは、質疑応答のお時間にまいりたいと思います。今回も、事前に多数のご質問をいただいていますので、代理で私からおうかがいしたいと思います。では、1問目をおうかがいします。
「設問設計をして、あらかじめインタビュー先と共有しても、先方が自分の話ばかりしてしまうなど、想定どおりに進められないことが多々あります。傾聴が大切かとは存じますが、何か有効な手段はありますでしょうか?」というご質問ですが、こちらはいかがでしょうか?
田所雅之氏(以下、田所):インタビューの質問内容を先に送ってしまうと、そういうケースもあると思うんですけれども、みなさんも考えていただきたいのが、インタビューを受ける経験なんてほとんどないですよね。
となった時に、これは語弊を恐れずに言うと、人間はアホに見られたくないというのがあります。よく言われるのが、テレビの視聴率のモニターをつけたら、NHKの視聴がやたら増えたりすると。モニターをつけられたので、バラエティーを見られる家庭だと思われたくないわけなんですよね。
そういう感じで、ふだんと違うバイアスがかかるので、インタビューの時も「準備して準備して準備して」という感じになってしまうと、どうしても外向きの回答になっちゃうんですよね。そのバイアスで、欲しくないんだけど欲しいみたいな顔をされて、「これはユーザーが育っている」と判断したら、すごいミスリードになっちゃうと思うんですよ。
なので、できるだけインタビューの現場を大事にすることだ思います。先ほども解説しましたが、インタビューの中で質問を見つけていくとか、ユーザーの話している内容と顔の表情が一致しているかとか、そのあたりに注目するのが大事かなと思っています。
今井:では、続いての質問ですね。「ビザスクのサービスを利用して、海外の方へのインタビューを予定していますが、日本人が相手と、海外の方が相手の場合で違う点、気をつけるべき点などはございますでしょうか?」というご質問です。こちらはいかがでしょうか?
田所:欧米の方は、意外と「show and tell」という文化があるので、小さい頃からプレゼンをするなど、意外と言語化できる場合があります。あと、人の目を気にしないので、外向きの顔をしないというのがあると思うので、日本人よりわりと本音が引き出しやすいかなと思います。
ただ、どうしてもお金目的で、ある意味ギグワーカー的にインタビューを受ける方もいて、そういう方々からインサイトを引き出せるかって、けっこうクエスチョンマークだったりするんですよ。その場合は、「ビザスク interview」などを使うとか。
自分で探すとなると、海外でも国内でも、インタビュイーの見極めですよね。この人たちが本気でその課題に取り組んでいるかとか、具体的な5W1Hの質問をすべきだと思います。例えば、みなさんが海外のeスポーツの事業をやろうとしていますと。実際に、eスポーツのプレイヤーの方々にインタビューをされますよね。
その時に、最近はいつやって、どれくらいの頻度でやっていて、どんなプレーをしていて、何をやっているかとかですね。5Wとか1Hの質問をすることで、そのへんが確認できると思うんですよ。
「最近やったのは1年前です」の人はダメですよね。そうではなく「もう毎日やっています」「昨日もやりました」という方。「このあたりが課題だと思っている」みたいな感じで返ってきたら、そういう方はたぶんインサイトを持っているので。質問やいろんなキャッチボールを通じてクオリファイしていく、フィルターをかけていくのが大事かなと思います。
今井:では、続いての質問ですね。「インタビューの目的によって変わってくると思いますが、顧客のインサイト導出にあたり、設問の順番に何かポイントはありますか? 特に、最初に聞くべき質問と、最後に聞くべき質問が何かあれば教えてください」というご質問をいただきました。こちらはいかがでしょうか?
田所:そうですね。最後に聞く質問は、インタビューの中で見つけていく感じだと思うんですよね。最初の質問については、できるだけオープン・クエスチョン(答える範囲に制約を設けない、自由に答えられる質問)をすることですよね。
あと、Whyを聞かないというのもすごく大事です。「なんで、これをやっているんですか?」みたいな質問だと、言語化ができない部分があったりする。人はなんでやるのかみたいなことを、ふだんはあまり考えていないと思うんですよね。なので、ファクトを聞いていく。ファクトを聞いていって、その前後のプロセスなどをファクトで並べることかなと思います。
あと、インタビューは質問だけで終わりがちなんですけど、例えばBtoBのプロダクトを作っているとしたら、僕がよくやる手段としては、実際にそのプロダクトを使っていただいて録画するんですよね。そして、10分なら10分の録画したデモを一緒に見ます。この時、ユーザーのカーソルが止まったり、画面を戻ったり、不自然な動きをする場合があります。その場面で止めて、「なんでこれをやったんですか?」と聞くんですよね。
そすうると「このボタンを押したら、もう確定しそうで怖かったです」「このボタンが、ボタンなのか矢印なのかよくわからなくて」みたいな答えが返ってくる。みなさんもそうだと思いますが、ユーザーはいちいちクリックやカーソルを動かすたびに言語化しません。(直接確認をすると)そういうのがわかるんですよね。なので、使っていただくというのはすごく大事かなと思います。
ただ、みなさん、リソースによると思うんですよね。けっこう多くのリソースがある場合だと、細かくできると思いますが、新規事業だとそこまでリソースやお金がない場合があります。最初の質問に戻るんですけど、誰に対して質問するのかというところで、加えて言うと、僕は1人の方に対して何回も質問していいと思うんですよ。
この人はユーザーとして本音を言ってくれるし、自分のメタ認知をして発言してくれているなと感じたら、月1でもいいのでユーザーとして壁打ちしていただくような設定をしてもいいと思います。
今井:では、いったん事前にいただいた質問は以上としまして、本日、リアルタイムでも多数ご質問をいただいておりますので、こちらからもおうかがいできればと思います。1問目ですね。
「仮説検証から1次ヒアリングについての質問です。BtoBのビジネスでは、なかなか顧客の観察をすることが難しく、また、ある程度具現化したMVP(Minimum Viable Product=顧客に価値を提供できる最小限のプロダクト)がないと検証ができないと感じています。BtoBのビジネスにおいても、MVPから入らずに検証から進めるべきでしょうか?」というご質問をいただきました。こちらはいかがでしょうか?
田所:いい質問かなと思うんですけれども、実際におっしゃるとおりで、セキュアな環境だとなかなか入らせてくれなかったりすると思います。僕がよくやる手段としては、BtoBの場合だと、MVPの前にMSPと言いますが、いわゆる営業資料を作るんですよね。
インタビューを通じて発見しにいきながら、何バージョンも何バージョンも営業資料を作って、このレベルだったらお金を取れると確信できるところまで探る。僕はそれを「作る前に売る」と表現しますけど。
ちょっと画面共有させていただくと、このプロジェクトはちょっと文脈がわからないかもしれませんが、僕は4ヶ月のプロジェクトをやって、3ヶ月までプロダクトを1個も作らせなかったんですよ。
でも、こんな感じで営業資料を作ったんですよね。ユーザーインタビューをしながら、営業資料をばんばん作った。実際は、1行もコードを書いていないんですが、「こういうのを作成しています」「こんな感じの費用対効果があります」とか。あとは、「こういう値付けなんですけど、これって買いたいですか?」と。
こういうのを見ると、ユーザーも「確かに、この機能だと20万円だけど、この機能とこの機能が追加されたら32万円でいいよ」みたいな感じで言ってくれる場合があると思うんですね。なので僕がけっこうやることとしては、BtoBだと営業資料を作る。BtoCの場合はパンフレットとかLPを作って、実際にユーザーに話を聞きに行きますね。
なしのつぶてで全然ダメな場合もありますが、その場合でも、「何が足りないですか?」などを聞けるかもしれない。
田所:インタビューで大事なことは、時間とお金を使わないことだと思っています。一番お金を使うのは、MVPを作ってしまった時などですね。300万円かけて作りましたと。ただ、出したけど全然使われなかったですというケースがあるんですよ。みなさんがエンジニアで簡単にMVPを作れますだったらいいんですけど、そうじゃない場合だと、外注したりとかリソースがかかったりしますよね。
なので、機能やバリュープロポジションを盛り込んだ営業資料を作って、実際に、アーリーアダプターのお客さまに見せにいくと。それでフィードバックをいただくのが1つの手かなと思います。ただ、最近はノーコードとかFigma(フィグマ)やbubble(バブル)で、けっこう簡単にプロトタイプを作れるんですよね。
そのあたりのノーコードを使って、インタラクティブなプロトみたいなことで手触り感をもらうのもいいかなと思います。
最初は本当に紙だけ。次は、ノーコードでやる。そこで、ある程度顧客の解像度が上がり、「これだとお金も払っていいかな」となってきたら、ハードコードのプロダクトを作る。リスクを軽減するのは非常に大事だと思うので、そういうプロセスを踏んだらいいかなと思います。
今井:具体的にご回答いただきまして、ありがとうございました。では、続いてのご質問です。
「インサイトにたどり着けたと感じるのはどんな時でしょうか? 何をもって、インサイトを特定できたと感じられるのでしょう?」というご質問をいただきました。こちらはいかがでしょうか?
田所:実際に検証した上で、ユーザー自身も気づいていない負を見つけた時や「この課題を解決できるんだったらお金を払ってもいいよ」というポイントに気づいた時ですかね。これがたぶん大枠としてあって、細かいUXの改善は定量的に見るべきだと思うんですよね。なので、インサイトは2つあると思います。
プロダクトとしてのコンセプトのインサイトで言うと、いっぱいプロダクトがある中でも、リーチできていないニーズを満たせるような、ユーザーから「お金を払ってもいい」みたいなフィードバックがあったところですかね。
ただ、箱の開け方とか、中に入っている製品の持ち方のような細かいところのインサイトは、改善的にやっていくことかなと思います。そのあたりは定量的と言いましたが、Webサイトやプロダクトサイトなどのログを取って、ちゃんと検証をしていくことかなと思います。
今井:ありがとうございます。では、続いての質問ですね。「確証バイアス(欲しい情報を集めてしまう、重視してしまう)に陥っているインタビューの典型的な例や、陥らないためのポイントをご教示ください」というご質問です。こちらはいかがでしょうか?
田所:典型的な例としては、最初に物を作っちゃった場合。ドリルを作ったら、ドリルの穴を探しにいく感じになっちゃうんですよね。なので、僕は『起業の科学』という本の中で、CPF、PSF、PMFの順番にしたんですけど、あれには理由があって、まず、PSFをしないと。顧客がそもそも存在するか、どこに顧客がいるのかですよね。
そこの検証は徹底的にすべきだと思います。僕の事例の中でありましたけど、どうしても新規事業をやる時って、「新規事業と言ったら物を作ることだ!」みたいな感じで、何かを作ってしまう。どうしても、作ったものにハマるような人たちを探してしまう問題が起きるんですよ。
そもそも、プロダクトって目的ではなく手段なんですよね。ユーザーにそれまでにない価値を提供することが目的だと思うんですよ。なので、まずバリュープロポジションですよね。その土台の上にプロダクトがあるのかなと思っています。
田所:僕もいろんな新規事業に入らせていただきますが、やっぱり難しいなと思うのは、もうプロダクトがあって「これをどうにかしたいんです」みたいなところです。費用や時間をかけることで、ニーズを見つけるケースもあるんですけど、そういうのって無駄が多くて、うまくいかないケースがあるんですよね。
それは言ってみたら、とりあえず釣竿があるんで、太平洋で釣りをするみたいな感じなんですよ。そうじゃなくて、まず、どんな魚を釣りたいのか。たぶん漁場によって変わると思うんですよね。この魚はここにいるので、こんな釣竿を作りましょうという話なんですけど、発想が逆になっているんですよ。なので、「最初に釣竿を作らない」こと。
釣竿を作ってもいいんですけど、釣竿のカタログでいいんですよ。それを釣りに詳しい人に見せると、「本当にこれでかゆいところに手が届くの?」みたいな質問も出てきますし。やっぱり顧客の課題に対する解像度ですよね。
先ほどのガラパゴスの例もありましたけれども、お客さんは自分たちがよくわかっていると思っていても、メタ認知はそんなにしていないんですよ。なので、プロセスレベルでバーって洗い出して、定量的にどこに負があるのかについて、顧客以上に詳しくなることが大事かなと思います。
今井:ご回答いただきまして、ありがとうございました。多くのご質問をいただいている中誠に恐縮ですが、お時間が過ぎてしまいましたので、Q&Aは以上とさせていただきます。多数のご質問をいただきまして、誠にありがとうございました。田所さま、最後によろしければ、みなさまに一言お願いできますでしょうか?
田所:700名以上の方に参加いただきまして、どうもありがとうございました。2022年で、日本は成熟市場なんですけど、まだまだ発見されていないインサイトはいっぱいあると思うんですよ。
テクノロジーもどんどん進んでいきますし、2020年代はいろんなものがDX化みたいな話もありますが、テクノロジーと掛け合わせた新たな価値が生まれてくると思っています。
この変化が向かい風ではなくて追い風となるように、みなさんもインサイトを得るスキルをぜひ身につけていただければと思いますし、その際はぜひビザスクをご利用くださいませ(笑)。僕からは以上になります。
今井:田所さま、本日はすばらしいご講演をいただきまして、ありがとうございました。
田所:ありがとうございました。
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