2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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中村直太氏 (以下、中村):平石さん、今日はよろしくお願いします。
平石直之氏(以下、平石):どうぞよろしくお願いいたします。
中村:まずはアベプラ前の貴重な1時間を私たちにいただき、ありがとうございます。
平石:いえいえ、こちらこそ。みなさん、お集まりいただきましてありがとうございます。
中村:ありがとうございます。そして「読者が選ぶビジネス書グランプリ2022」ビジネス実務部門賞を、初のご著書で受賞されたという快挙、おめでとうございます。
平石:本当にありがとうございます。恐れ入ります。
中村:今日はその『超ファシリテーション力』をテーマに、平石さんのお話をおうかがいできることを楽しみにしております。なんと1,700名に近い方がお申し込みくださっていると聞いていますけれども。
平石:びっくりですね。本当にありがとうございます。
中村:本の反響もこの後うかがっていきたいと思っているんですけれども。せっかくなので、本を読まれた方がこの場にもいらっしゃると思うので、ぜひチャットで本の感想を聞いてみたいなと思います。
ぜひみなさん、平石さんに直接感想を伝える貴重な機会になりますので、「おもしろかった」とか「勉強になった」とかでもけっこうですし、ちょっと心を込めてチャットのほうに書いていただければと思っています。
ただ時間の限りもあるので、ちょっとチャットに書いていただきながら、いくつか導入的な話をうかがってみたいなと思います。よろしくお願いします。
中村:今回受賞されたビジネス実務部門賞の他の候補書籍のタイトルを見たんですが、心理学とか、会計、プレゼン、文章力、リサーチ、統計学など、いろいろ実務の魅力的なテーマがある中で、今なぜファシリテーション力が注目されているか、背景を平石さんなりにはどのようにご理解されていらっしゃいますか?
平石:そうですね。もともと概念として存在していましたが、私もあらためて気付かされたところがあります。まずコロナ禍で人と人とのつながりが希薄になっていることが大きいと思いますね。
人が集まる場というのが極めて少なくなっていて、さらに人とのつながりをリモートで持たざるを得ない。リモート会議などが多いんですが、それをなかなか上手にできないというか、難しいんですよね。番組でもそうですが。
ですから、「人が集まる場」でいかに成果を最大化するか。そしてそれがさらにチームの活性化につなげていくことが、とても大事になってきている。まずこれが大きいと思います。
そして、もう1つは、いま社会のあちこちに分断が生まれつつある。お互い相いれなくなっている。同じ考えを持った人同士でしか話せないというか、それこそ価値観が違うと、家庭内でも分断が生じるようなことになってきていまして。
特にネット上のSNSで言うと、どうお互いに対話し、議論し、分断を(修復に)導いていくかが難しい。そうした中で「ファシリテーション」という概念が注目されているのかなと思いますね。
中村:ありがとうございます。コロナ禍でリモートワークが増え、必然的に仕事が分化されやすくなった。分かれて細かくなっていって、「個人化」と言われるような、個人で完結するような仕事がすごく増えているような気がしますよね。
平石:そうですよね。ですから、ある意味作業は自分でできますが、その組織に属している感じや、そこにいて居心地がいいとか、誰かと一緒に何かを話したいとか。そういう機会を持てなくなっている難しさがあるんだろうなと感じています。
平井氏:そこにファシリテーターが存在していると円滑にうまくいく。その場が好きになるとか、チームの力が最大化されるとか。ファシリテーションがうまくできなかったり、そもそも不在であると、人が集まってもその場が嫌になってしまう。
中村:(笑)。嫌になる。
平石:ええ。決別するとかですね。「集まればいい」とか「議論すればいい」ではない難しさは、私も番組の中で感じていることです。人は3人集まったら、1 + 1 + 1でせめて3にしたいところですが、3にもならずに2とか1になったりもするんです。目指すは5とか10なんですが。
その意味では、ファシリテーターの存在によってその場が円滑に回ってその場が好きになって、チームの成果も最大化されることが目標だとと思います。
中村:「好きになって」って、すてきですよね。本を読んでいても、平石さんがこういうファシリテーションをされたいんだろうなってすごく感じました。
平石:ありがとうございます。私は番組に参加してくださる方、レギュラーの方々はもちろんのこと、新たにいらっしゃるゲストも、見ている視聴者のみなさんも含めて、その場に関わってくださった方々から、ファンを1人ずつ増やしていくことを目標に毎日の放送に携わっているつもりです。
中村:ありがとうございます。
中村:グロービス経営大学院にもファシリテーションの科目があるんですけれども、今おっしゃっていただいたように、「生産性が高い会議運営をしたい」であったりとか、「創造性の高いチーム作りをしたい」とか、そんな問題意識がけっこう出てきたりします。(どの起業にも共通する課題感は、)おっしゃっていただいたようなところなんだろうなと思っていますね。
平石:そうですね。ただ集まるだけ、資料を読み上げるだけだと、集まる意味がない。その場で意見を引き出して、より良い相乗効果を生み出すことが大切ですよね。そこにみんながいたことでムーブメントが発生していく。「また次も集まりたい」。そして、決定事項にコミットすることで、力も湧いてくるという。
一つひとつの会議や、リモート会議で、その「点」をつないでいく。その「点」の効果を最大化していくことで、「点」と「点」がつながって太い「線」になっていく。それがチーム力になるんだろうということに、私が番組あるいはさまざまな会議に参加したり、記者会見に参加したりする中で気付いていったことを本にした感じです。
中村:番組の中で、(平石さんのファシリテーションで)あの場が一体になっていくのを我々は見ていますので、すごく説得力がありますね。
平石:ありがたいですね。うれしいお言葉です。そこはすごく意識しているところです。失敗もありますけど、今日はその点もお話ししたいと思っています。
中村:(笑)。ありがとうございます。
平石:私自身も発展途上で、今回、自分の考えをいったん整理するために棚卸しということで本にしました。自分自身のための指針・マニュアルでもあります。
その意味では、みなさんに「こういう失敗をしないでいただきたい」という失敗例も含めて書きました。しんどいこと、辛い思いをすることもありましたので(笑)、この辺りもお話しできるといいなと思います。
中村:ありがとうございます。みなさんも恐らく、どうやってファシリテーションのスキルを高めていけばいいのかということに関心があると思うので、後ほど聞いてみたいなと思います。みなさん(書籍の感想を)チャットにありがとうございます。
平石:ありがとうございます。
中村:温かいコメントがいっぱいあるなと思っています。ぜひこのまま肉付けして星5を付けて、Amazonの書評にも書き込んでいただきたいと思います。
平石:(笑)。それもありがたいです。恐れ入ります。
中村:読者からの反響がとても多かったと思います。平石さんはTwitterでもすごく大切に読者のコメントを拾われているなと感じたんですが、その中には想定に近い反響から、想定と違った反響もあったと思います。そのあたりはいかがでしたか?
平石:そうですね。まず想定に近いところでは番組関係者の方々ですね。ここはもう非常に刺さった感じがあって、ありがたいなと感じています。
中村:同業の方ですか?
平石:そうですね。同業の方も層ですし、あと番組を見ている方も含めて反響が大きくて。「ABEMA Prime」自体、同業者の視聴率がたいへん高いんですよ。私たちが先にやってみて、それを見て、言い方は悪いですけど真似して放送するというか(笑)、他でも同じ切り口で放送されるということが多くて。
私たちが先行して試してみようという、そういうチャレンジ精神で番組を作っていますから、同業の視聴率が高い。そうした同業者のアベプラファンのなかで本を手にしてくださった方々がたくさんいたという話は聞いています。
平石:それ以外で言うと、(この本は)テレビ的・メディア的要素をできるだけ削ぎ落して、企業向けにビジネスの世界でも、あるいは、それこそ飲み会でも、「人が集まる場」だったらどこでも使えますよというところまで広げたいと思っていました。
その意味では本当に幅広く「仕事に役立ちました」という声もたくさんいただけました。正直、狙っていたけど「刺さるかな?」と思っていたので、うれしかったです。あとは学校の先生とかですね。
中村:学校の先生ですか。
平石:ええ。私の中では「教育の場」というのが今後のターゲットといいますか、ぜひ手に取ってほしいと思っていまして。大学生や、中高生、あるいは新社会人とかですね。
人が集まる場にファシリテーターという存在がいると、その場が見違えるものになると思いますので、そうした人たちににアプローチできるといいなと思っています。
中村:ありがとうございます。さっき平石さんがおっしゃってくださっていた「場を好きになる」とか、それによって可能性が広がっていくこと、引き出されていくことは、教育の現場とも相通ずるものがありますよね。
平石:そうなんです。人が集まる場では本来、誰かが仕切ってくれたり、誰もやらなかったりということになっていますが、そこに「ファシリテーター」の概念を持っている人が1人いるだけで変わります。自分がやるか誰かがやるかはまた別の話ですが、そうした「場を取り仕切る作法」があると思うんです。そこをこの本で言語化してみました。
それを真似してみるところから始めるだけでも、結果的にかなり違うものになると思います。部活動とか、ゼミとか。教育の場でそういうことを意識してやっていくだけで、その概念を持つだけで、まったく人が集まる場が変わってくるんだろうなと。
コロナでそうした場がより持ちにくくなっているだけに、リモート会議でもその意識があるとぜんぜん違うという実感がありました。それが伝わるといいなと思いますね。
中村:私も拝読しながら、(本を読む前は)ファシリテーションってかなり奥深い高度なスキルだと思っていたんですけれども、それを平石さんが民主化してくださったと言いますか、身近で親しみやすいスキルとして変換してくださったなと感じました。今も本を手元に置いています。
平石:ありがとうございます。
中村:まさに手元に置いて、困った時に辞書的に対処法を教えてもらえるような本だなと思っていました。
平石:そうですね。かなり実践的なものを目指したところもあって、Q&A形式にしました。「こういう場合はどうしたらいいの?」という。お勉強のための教科書として読んでいただくよりは、ケーススタディとして、こういう場面でつまずいたとか、こういう場面が想定されるということに対して、どう対応するかを4ページずつのかたちにして、Q&A形式でまとめました。
中村:すごく読みやすかったです。ありがとうございます。
平石:ありがとうございます。
中村:せっかくなので、本の内容も少し入れながらおうかがいしていければと思います。今も少し話があったかもしれませんが、平石さんの中で「良いファシリテーション」の定義が(場によって)それぞれ違うような気もしていて。平石さんが定義される「良いファシリテーション」って、例えばどんな表現ができるでしょうか?
平石:そうですね。それぞれの人が集まる場の「目的」にもよるんですが、やはり目的が明確にある場合はそれが達成されたかどうかですね。
会議によっては「きちんと成果を出す」ことかもしれませんし、「物事を決める」かもしれませんし、飲み会だったら「その場が楽しかったか」「またこの人たちと会いたいか」といったことになってくる。
まずはその目的をファシリテーターが意識することがとても大事です。その目的に向けてどう進めていくか。いずれにしても、けんかするために集まっているわけではないはずなので(笑)。
中村:(笑)。
平石:いずれにしても共通しているのは、その場に対する「心地よさ」ですね。
中村:心地よさ。
平石:とにかく私が意識しているのは、そこにいて嫌な気になることをできるだけ避けたいと思っています。やはり意見が違ったり、あるいは出番があった・なかったとか、つるし上げにあったとか、いろんなケースが想定されますが、「そこに行かなきゃよかった」「二度と行きたくない」ということもあり得るので、そうならないようにということは強く意識しています。
平石:その場が好きになる。次もまたやりたくなる。そして何か学びがあったとか、さまざまなパターンはあると思いますが。それはPTAの会合でも、マンションの管理組合でもそうだと思いますし。
やはりそこに「目的」があって、基本的にはその場が好きになって、その場にいる人たちと仲良くなって次につながっていく。先ほど「点と点がつながっていく」と言いましたが、線にしていくイメージですね。
どうかすると、集まったことによってそこでその関係は終わりということもありますよね(笑)。「二度とこのメンバーでは集まりたくありません」みたいなこともありますので、すごく大事にしているところです。
中村:「目的の達成」と「場が好きになる」。その2つが大きなポイントかなと思いました。
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