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『「組織のネコ」という働き方』刊行記念イベント 「組織のネコは意志が10割」 仲山進也×守屋実スペシャル対談(全5記事)

“ネコ”を自覚した人が、“組織のイヌ”にならずに働くコツ 『「組織のネコ」という働き方』著者が教える、ネコが働ける会社の見分け方

代官山 蔦屋書店で行われた『「組織のネコ」という働き方』刊行記念イベントに、著者で楽天大学学長でもある仲山進也氏と『起業は意志が10割』の著者・守屋実氏が登壇。99パーセントの大企業が新規事業でやってしまう過ちや、「ライオン・イヌ」が多くなる大企業で、「トラ・ネコ」を活かす方法などを語っています。

「トラ・ネコ」ではなく、「ライオン・イヌ」に適した新規事業もある

中村優子氏(以下、中村):(会社が)人数的に20人を超えたらとか、100人を超えたらとか、あるんですか? なんとなくでいいんですが。

守屋実氏(以下、守屋):一般論としては「30人の壁」などはあると思うんですが、それよりは「何のビジネスをやっているか」で差が出てくると思うんですよね。

仲山進也氏(以下、仲山):そう思います。

守屋:例えば、僕は今製造業のスタートアップをいくつかやっています。製造業では自由奔放に作ってしまうとやっぱりダメなんですよね。

(一同笑)

守屋:そうそう。調達部門の人が真面目で、在庫が狂うなんてあり得ないと。そういう意味でやっぱり、きっちりかっちりやらないといけない。だけど「企画・創造」することが大事な業種だと、そうではなくて自由にトラやネコでいるべきだと思う。「『どうしたらいいですか?』って聞くな。お前が考えろ」という話なので。だから比較的、職種によるかなと思います。

仲山:ですね。

中村:仲山さんもそこは賛同されますか?

仲山:はい。守屋さんに聞きたいのですが、やっぱり新規事業を立ち上げる時も、ネコ・トラスタートでうまくいくパターンが多い感じですか? イヌの人が新規事業の立ち上げでうまくいっている事例はありますか?

守屋:新規事業と言っても、全部が「新規性の塊」かというと、そうでもないですよね。既存事業っぽい新規事業もあるじゃないですか。

仲山:ありますね。

守屋:それを何と呼ぶのかは、人それぞれだと思います。特に大企業の中での新規事業は「それ、実は新商品とか新サービスじゃね?」みたいなこともありますよね。そうなってくると、実は「イヌの人がやったほうがいいんじゃないの?」ということもある。やっぱりその事業が本業に近いのなら、ライオンやイヌが組織していったほうがうまく回ります。

仲山:なるほど。

守屋:ただ、飛び地みたいな新規事業だと話は別です。その場合ライオンやイヌではどうしようもない。

中村:本業を引きずっちゃいますからね。

守屋:そうそう。やっぱり何をやるのかによって、「適・不適」はちょっとずつ変わってくる。しかもそれは、0とか100というよりは、グラデーションなのかなと思いますね。

中村:わかりました。

99パーセントの大企業が新規事業でやってしまう過ち

続いて質問のある方いらっしゃいますか? ではお隣の方、よろしくお願いします。

守屋:ありがとうございます。

質問者2:がくちょ(仲山氏の呼び名)、G2でございます。

仲山:G2さん、いつもありがとうございます!

質問者2:帰りに『起業は意志が10割』買って帰ります。

守屋:ありがとうございます。毎度です。1冊16,000円。

(一同笑)

質問者2:10冊ほどで。

(一同笑)

質問者2:かなり一般的な、大企業的視点からの質問です。さきほど守屋さんから「企業が23.5年で倒産する時代である」という話がありましたが、多くの企業は今、21年、22年に差し掛かっていると思います。そういう企業はだいたいイヌ・ライオンで経営されているから、サバイブするためにはネコ・トラが必要ですよね。

でも、なかなかネコ・トラが生まれたり、生きていくというのは難しい。MAで取り込むにも、イヌ・ライオンロジックで飼い殺されてしまうところが多い。そんな中で、なんとかさらに23年延ばしていくために、ネコ・トラをうまく取り込んでいく方法があれば、ぜひご教示いただきたいと思います。

守屋:僕がお答えしますね。僕は新規事業人生30年なんですよ。僕なりの結論です。「大企業は必ず新規事業を生み出せる」。これが僕の結論です。

ただ、残念ながら「99パーセントが同じ間違い方をしている」んですよね。それは「本業の汚染に遭っている」ということです。例えば、自動車メーカーが女性向けの化粧品の事業をやろうとしているのに、全部自動車基準で考えてしまう。「だから売れないんだよ」ということをやっちゃう。みんな同じ間違いなんですよ。

要は「みんながやっているその間違いをやらなきゃいいんじゃね?」ということだけだと思います。だから「仕組みが変われば会社は生まれ変わる」と思っています。

大企業が生まれ変わるまでのスパンは、60ヶ月をデフォルトにする

守屋:この結論に基づいてスライドにいろいろ書きましたが、特にスマホの方は小さくて見えにくいので、耳で聞いてください。

「生まれ変われば大丈夫だ」と考える会社が6社あります。この6社に、僕は就職させてもらったんですよ。本当に雇用してもらっている会社もあれば、7年間業務委託を受けているから「それって社員じゃね?」みたいなところもある。その6社が生まれ変わるために、僕はあらゆることをがんばったんですよ。その結果、本当に生まれ変わった会社があるんです。

全部が全部、本当に生まれ変わったかというと、そこまでではなかったところもあります。「上のほうの人事が変わった」「2歩進んで3歩戻った」などもありますが、そういうことも含め変わることはできたんですね。

なので、僕としては変わりにくいことは百も承知です。でもこれはあきらめずにチャレンジすることだと思います。1年くらいを目標にすると変われなくて心が折れちゃうので、どうせなら最初から60ヶ月くらいのつもりでデフォルト設定をしたほうがいいと思っていて。

5年かけてわが社が変わったら、俯瞰的に見た時には一瞬で変わったように見えると思うんです。例えばトヨタなどの大企業が5年で変わったら超早いじゃないですか。だから「これから60ヶ月の戦いをする」ぐらいの気持ちでがんばれば、実は変えられるんじゃないのかな。そう思ったほうがいいと思うし。

これは僕の勝手な持論なんですけど、我が国ではアントレプレナーが続々出てくるとか、三木谷(浩史)さんみたいな人がウジャウジャ出てくるというよりは、大きな会社が新規事業を生み出すことで活性化していくんじゃないかな。それこそカーブアウト(大企業や中堅企業が自社の事業の一部を切り離して、新会社として独立させること)とか。

どんどんスタートアップが立ち上がることを否定しないし、そうなったらいいし、僕もやってるんですけど、大企業が元気になるといいですよね。そうすれば我が国の失われた30年が、31年目にならない。僕は大企業を諦めたくないし、がんばればどうにかなっているので、がんばりましょう。

質問者2:本を読んでがんばります。ありがとうございます。

守屋:はい。ありがとうございます。 

質問者2:学長、ありがとうございました。

仲山:ありがとうございます。

チームビルディングの肝は、パズルのピースのサイズ感

中村:他にいらっしゃいますか?

質問者3:私、澤田経営道場の柳元と言います。仲山学長、先日はありがとうございました。

仲山:ありがとうございます。

質問者3:質問させてください。社外のビジネスパートナーで印象的だった方がいらっしゃると思いますが、そういった方は4種類の動物で言うとどんなタイプだったのでしょうか? また一緒に取り組んで成功した事例があれば教えていただきたいと思います。

中村:ありがとうございます。じゃあ仲山さんからうかがってみましょうか。いろんな方とお知り合いですからね。特にこの人はというのがあったらぜひ。

仲山:例えば今日のイベントもそうですよね。自分の「好みのこと」「好みの価値観」「考えていること」などを発信していくと、おもしろがってくれる人に響いて「一緒にやりましょう」と言ってくれる。それで何か立ち上がっていくとか、始まっていくみたいなことが、小さいことも含めるとすごくいっぱいある。日々そういう感じなんですよね。

それもチームビルディングだと思うんですね。チームビルディングって、パズルのピースのサイズ感がそんなに違わないとうまくいきやすい。なので、自分より大きすぎる人と組んでも、小さすぎる人と組んでもうまくいかない。依存されてチームになりにくいこともあります。うまい答えになっているかわからないですけど。

ここで画面共有しますね。僕は「展開型」と言っていますが、「成り行きに任せる」やり方があります。「目標を立てて達成する」とか「狙いを定めて実現するために努力する」のとは違うやり方です。

要は、目標を立ててそれを達成しても、自分が立てた目標以上にはいかないんですよ。でも「展開型」で、自分が目の前のことをおもしろがって、没頭しながらやっていくと、いつの間にかそれが転がり、流され、思っていた以上のおもしろいところにたどり着いている。そういうことがしょっちゅう起こるのが「展開型」なんです。

いい感じに「展開型」になるための「7つの作法」をスライドに示しました。

中村:よろしいでしょうか? 仲山さん、ありがとうございました。

ライオンの群れの中では、長く働けないトラ型

中村:守屋さん、補足はありますか?

守屋:僕は新規事業屋さんだから、基本的にトラとかネコと出会うことが多いです。ずっと新規事業屋さんで、トラとかネコとばかりつるんで、いろんなことをやっていて、これまでに7社上場して、そうすると時々ライオンからも声がかかるんですよね。

「一緒にライオンやろうぜ」と言ってくるんです。要は上場企業で取締役にならないかという話なんです。ただ、ライオンの群れの中に入ってみると、ちょっと群れから出ようかなと思ってしまって。

(一同笑)

中村:やっぱり。

守屋:出会うか出会わないかというと、ライオンとも出会うんだけど、「あ、僕はやっぱりトラなのかな」と思うことも多くて。統率が得意な方々は、統率したほうがいいと思うんですが、なかなか僕には難しい。ライオンの人たちはライオンで、僕はトラの道を行きたいと思っているので、これからもトラの人と出会うといいなと思っています。

質問者3:ありがとうございます。

中村:ありがとうございます。

仲山:僕もその質問にお答えしていなかったですね。一緒に何かやろうという人はトラっぽい人が多いです。というか、トラしかいない。

中村:(笑)。仲山さんも、そのうちライオンから声がかかるかもしれませんよ。ちょうどいいお時間ですが、あとお一人、どなたか質問がありましたらどうぞ。

「ライオン・イヌ」が多くなる大企業で、「トラ・ネコ」を活かす方法

質問者4:先ほどの質問で、大きめの組織でのトラ・ネコのバランスをどう考えるか、あるいはまったく切り離すみたいなお話があり、私も興味がありました。

大きな組織の中にいるネコタイプの人が、その中でトラを目指していく時、会社の中にいながら模索していくことが大事だと思いますが、どう模索していったらいいのでしょうか? また副業で外の経験を積んでいくことで、トラとしての認知を高めながら、大きな組織の中へと還元していくことを考えたらいいのでしょうか? そのあたりの具体的なアドバイスをいただきたいと思います。

中村:はい。守屋さんからお願いできますか?

守屋:その大きな会社がどのくらいライオンの支配力が強くて、どのくらいネコとかが死滅するかにもよると思うんですよ。

仲山:うん(笑)。

守屋:僕は「本業の汚染」という言葉を使っていますが、あまりに本業の汚染がひどすぎて新しいことができないとか、新しいことをやる人間が常に追い込まれるのなら、同じ国の中でやるのはなかなか難しいと思います。

だから「出島」みたいなものを作ったほうがいい。「デジタルマーケティング」じゃないですよ。長崎の出島です。「出島みたいなものを作ったほうがいい」が答えです。

具体例で言うと、僕はJRの職員なんです。JR東日本という会社は、当然ですが鉄道輸送業なんですよ。だから鉄道を定時運行するために、あらゆる機能が組織体として並んでいるんですよ。だから、それこそさっきの仲山さんの話みたいに、勝手にカスタマイズすると、定時運行が崩れるのでよくないんですね。

仲山:(笑)。

守屋:でも人口減少社会において、ずっと鉄道輸送業だけでいいのかというと、そうでもない。「そうじゃない我が社を作るのである」と、1つ前の社長の冨田(哲郎)さんが言い始めた。

それで鉄道輸送業の本体の中に、そういうチームを作ってもなかなかうまくいかないだろうからと、わざわざ外に出島を作ったんですね。50億円の予算を付けて「JR東日本スタートアップ」という会社を作った。

当時、経営企画室にいた柴田(裕)さんという人を社長に据えて、柴田さんが信じられる7人を社内から引っこ抜いた8人の所帯。そこに僕も入れて9人の出島を作った。そこでバンバン新規事業をやり始めたんですね。本体では鉄道輸送業として定時運行のために、ありとあらゆることをきっちりこなす。もうライオンとイヌの塊です。

少なくともそこではトラとかネコよりは、ライオンとかイヌのほうがいいんですよ。定時運行が崩れるなんて大問題なので。でも新しいことをするには、違うカルチャーがいい。それを、南新宿のJR本社ビルの中でやるのはなかなか難しいからと、わざわざ転居もさせてもらえたんですね。

総勢8人で、4年で41個の事業を生んだJR東日本の出島会社

守屋:そんなふうにして、そこからどんどん今トラが生まれてきています。大きな大きなJR東日本という会社も、イヌとかトラとかネコとか、うまくやっている状況が作れていますね。こんないい手立てがありましたという僕の事例です。

中村:『起業は意志が10割』の第4章にそのあたりのことは書いてあるので、ぜひお読みください。

守屋:ちなみに、JR東日本という大きな会社が、新規事業を本気で生み出すとかなりすごいんです。どれくらいすごいかというと、たかだか4年で総勢8人で、41個の事業を生んでいるんですよ。これ、計算が合わないですよね(笑)。

当然、たかだか4年8人で41個なので、粗っぽい創出なんですよ。うまくいくのもあれば、ダメなのもある。でもそれだけやっていると、バカでかくなるものも中にはあるんです。これは、イヌの人たちが一つひとつライオンに向けてパワポで提出していたら、絶対生まれなかったと思うんですよね。

そういった点では、出島で良かったと思う。隠れネコ・隠れトラだった人たちが、出島に移って本領発揮でドンドン生み出したのが良かった。

その時にトラとかネコたちは、自分たちの力だけじゃなくJR東日本という力を使ったからこそ、それだけ思い切ってやれたと思う。良い事例だと思うと同時に、JRだけじゃなくて他の会社だって全部コピペしてできると思うので、みんなコピペしてくださいって思っています。詳しくは本に書いてあります。

ネコが働ける「イヌ式会社」の見分け方

中村:仲山さんもぜひ補足があればお願いします。

仲山:イヌの人が社長の会社もあると思うんですよね。イヌ式会社。イヌの会社にはトラは生息できないので、いる意味がわからな過ぎてどっか行っちゃう。だから「自分の会社にトラがいるかどうか」が1つの目安かなと。トラが活動できる会社は、ネコも比較的生きやすいと思うので。イヌの会社にネコの人が入った場合は、全員イヌの皮をかぶって働く状態になると思います。なので、まずトラがいるかどうかですね。

ネコがトラになるためには、トラと接することが一番重要です。そこがないと、ネコはトラにならないと思うんですね。そのあたり、守屋さんはどうですか?

守屋:うん、そう思いますね。人は人から影響を受けるから。例えば「新規事業をやったらいいじゃない」と言っても「何をやったらいいのかわかりません」という人がいます。それならやっている人のそばに行って丁稚すればいいと思う。

そうすれば「これだ」と思って一緒になってやるかもしれないし、「私は違うことをやりたい」と思うかもしれない。また「いや、こんなんだったら、これまで本業でやっていたことの方がいいや」と言って会社のプロを極めるのかもしれない。

いずれにしても、人は人に影響を受けるので、そういう現象が起きる場所に身を置くことですね。だからトラに接すると、トラと相性がいい人はトラ化していく現象が起きると思います。 

仲山:まさに。

中村:ありがとうございました。ご質問の答えになっていましたか? 質問者4:ありがとうございます。

中村:お時間が過ぎてしまいましたが、とても実りあるお話ができたと思います。ありがとうございました。

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