2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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--なるほど。ありがとうございます。では続きまして、そんな「食べチョク」さんがこの10月からスタートされた「食べチョクカー」という新しい試みについて、おうかがいしていければと思います。こちらもスライドをご用意いただきましたので、それに沿って「食べチョクカーとは?」をご説明いただければと思います。
秋元里奈氏(以下、秋元):ありがとうございます。10月から、移動型の八百屋「食べチョクカー」をスタートしましたマンションや恵比寿ガーデンプレイスなどでゲリラ的に、いろんな場所でお野菜を販売するキッチンカーです。
食べチョクには食材がたくさんありますが、その中から珍しい食材などもピックアップして、季節のお野菜や果物、農作物を中心に販売をしています。生産者さんから販売日に合わせて送っていただいている、鮮度が非常に高い状態のものを毎回用意して販売しています。
これは不定期ですが、実際に食材を作られている生産者さんと、オンラインでつないで会話をして買えたり。最近はちょっとずつ増えてきているとは思いますが、生産者さんも東京に来る機会がまだ以前ほどは回復していないので、マルシェのような感じで遠くの距離からもお客さんと接点が持てるような取り組みもしています。
それぞれの生産者さんごとに、こだわりなどを紹介するチラシを配っていまして。購入した食材がおいしかったら、今度は食べチョク上で、ネットで取り寄せることもできるようになっていますね。
--ありがとうございます。今のところは期間限定で、10月から1月末ぐらいを予定されているということですよね。
秋元:はい。
--これは率直な疑問なんですが。食べチョクという全国どこからでも購入が可能な、便利なWebやアプリのサービスをされているのに、あえて地域密着型のモビリティ事業に注目されたきっかけは何だったんでしょうか?
秋元:やはり食材の場合って、試食や「1個から買える体験」ってけっこう大事なんです。食べチョクだと、ある程度まとめて買わないと送料もかかるので、1回に数多く購入されることが多いです。その時に「誰から買ったらいいかな? どれを買おうかな?」と悩まれる方がすごく多い。
そういう意味で、少しずつリアルな店舗や、今回のような「食べチョクカー」で少量から試せる機会を作っていく。そうすると、お客さんとしても新しい食材との出会いや、例えば珍しい食材も「気になっていたけど量が多くて買うのをためらっていたから、ちょっと試してみたかった」と新しい機会を提供できるということで、(このサービスを)スタートしました。
--なるほど。例えば、私はさっきのスライドで気になったのが「バターナッツかぼちゃ」(笑)。
秋元:ひょうたんの形のやつ(笑)。
--あれがめっちゃ気になっていて。「何なんだろう、この不思議なものは……?」と(笑)。八百屋さんやスーパーで私がこれを見かけても、たぶん買わないと思うんですよ。なぜかというと、どうやって使ったらいいのかがわからないから。でもモニターを使ってその場で生産者の方とお話できれば「これってどうやって使ったらいいんですかね?」と直接聞けるということですよね。
秋元:そうですね。これまで、都内のマルシェなどでも生産者さんが来て消費者さんと直接やり取りしていましたが、なかなか今はそういう機会も減ってしまっていますので。生産者さんと直接おしゃべりをして、新しい食材に出会う。
「これはこういうふうに食べたらおいしいよ」「これとこれセットで、こういうのが作れるよ」など、自分だったらふだん買わないようなものにチャレンジする機会を、生産者さんとの会話や出会いで作っていくのも、これ(モニターで会話ができる食べチョクカー)だったらできる。生産者さんも農地にいて栽培しながら、東京のお客さんとの直接の接点を作れるのも、すごくメリットがあるかなと考えています。
--10月中旬からスタートされて、1ヶ月ほど経ったと思うのですが。消費者の方や生産者さんの感想というか、手応えというか。どんな感じのご意見でしたか?
秋元:生産者さんからも消費者さんからも、すごく良い声をいただいています。生産者さんは、今は催事などもなくなってしまって接点が減っていたので「お客さんとの接点を作れるのがすごくうれしいです」という声だったり、「少量から買ってもらえるので珍しい食材の認知向上にもつながるから、すごくありがたいです」という声をいただいていますね。
消費者の方々だと「実は食べチョクが気になっていたんですけど、ちょっと量が多いからためらっていたんです」という方が、1個から買えるというので来て、喜んでいただいたり。
まさに「珍しい食材を買う機会が最近なかった」「どうしても家にいることも多くて、近くのスーパーにしか行かない」(という方から)「あんまり新しい食材との出会いがなかったけれども、すごく珍しい食材があって、久しぶりに料理するのが楽しみです」といった声をいただけているので、普段は食べチョクを利用していないお客さんの声を知ることができるのも、私たち運営としてはすごく嬉しいですね。
「どういうニーズがあるか?」を含めて、私たちも消費者の方々の声を聞けたらうれしいので。リアルな場というのは(訪れる消費者の)人数は少ないかもしれないですが、そこで得られるメリットはすごく大きく、オンラインではなかなか実現できないところ数多くあると感じましたね。
--確かにそうですよね。使っていない人はなぜ使っていないのか? どういうことがあったら使ってみたいと思うか? というヒアリングが、直接できるということですよね。
秋元:そうですね。「送料が気になっていたんです」といった率直なご意見が聞けると、それらは今まで私たちが聞けていなかった声なので、すごく価値が大きいなと感じます。なので、リアルの接点は持ち続けたいなと感じています。
--食べチョクカーは「都内で、期間限定で来年の1月の末まで」の予定だとお聞きしています。。今後、例えば期間がどんどん伸びていったり、範囲がどんどん拡大していったりなどはご予定されているんですか?
秋元:やっぱりオンラインとオフラインはぜんぜん特徴が違うとあらためて感じていて、両方に良さがあるなと実感しました。なので、やはりオフライン、リアルと拡大していきたいなと考えています。
今回の食べチョクカーもすごく反響が良いので、食べチョクカー自体もそうですし、他の形も模索しつつ、お客さんと生産者さんをリアルで接点を作るためには何がベストなのかな? と考えながら、リアルの施策を広げていきたいなと思っています。
--こちらの書籍『365日#Tシャツ起業家 「食べチョク」で食を豊かにする農家の娘』でも、事業を立ち上げる時のエピソードとして書かれていたかなと思うんですが。食べチョクカーみたいな新しい試みをされる際、人からアドバイスを受ける時に心掛けていらっしゃることが書いてありまして。私は「これってすごく大事な話だな!」と思いました。そこをあらためてうかがってもいいですか?
秋元:ありがとうございます。それこそ私は、実はリアルのマーケティングや販売の経験がなかったので、多くの方のご意見を聞きながら進めていったんですが「100パーセント背景を知ってアドバイスをくれる人」って、まずいないというか、難しいじゃないですか。
私も創業した際に「こういう事業にしたいんです」と相談したら、例えば私の思いとか農業の事情とかITの事情を全部知った上でアドバイスをくれる人って、ほとんどいませんでした。基本的には、その人の得意分野や見える世界でのアドバイスをいただくので「Aがいいか、Bがいいか」という、その答え自体に意味があるのではなくて、「なんでそう思うのか?」の裏側を見にいく。
なので、アドバイスはそのまま鵜呑みにせずに「なんでそう思うのか?」という背景を聞きにいくことを常に意識しています。例えば「Aがいいんじゃないか、Bがいいんじゃないか」というのはその人の考えですが、その裏にある「自分が過去にこういう経験をしたから」というのは事実なんです。
ただ、結論の「AなのかBなのか」は、ここはもうどちらかというと自分が決めるべき話なので。「なんでそう思うのか?」や「この人はどういうバックグラウンドでそういう話をしているのか?」という背景のほうを意識して、創業の時も話を聞くようにはしていました。
--あとは、その方がどれだけ偉大な方であったとしても、その方の意見はその方の意見で、そのまま鵜呑みにはしない。要は何を受け入れて、何を受け入れないかについては「誰が言っているかで決めるわけではない」というお話も書かれていましたよね。
秋元:そうですね。実績がすごい方だと「その人が言っていることは全部正しいんじゃないか?」と思ったりもします。でも、その人も100%を知っているわけではなかったり、その人の経験の中でお話しされていたりするんです。
なので「誰が言っているのか」や「何を言っているのか」より、その裏側にある背景だったり「なぜそう言っているのか?」という、根本の部分をなるべく見るようにしています。特にすごい方のアドバイスほど、自分の中でそのバイアスがかからないように意識していますね。
--「この方がおっしゃっていることだから、正しいに違いない」と思わないようにしているということですね。
秋元:そうですね。人間なので「この人が言っているんだし(正しいはずだ)」と思ってしまうことが、多々あるじゃないですか。だけどその時に「自身はバイアスがかかりやすい」と自分の中で思っておくと、冷静になれるんです。その中でも本当にその人が正しいケースももちろん多いので、いろいろ考えた結果それが正しければそうすればいい。(発言相手のすごさと、自分の最終的な決断は)切り離して考えるようにしていますね。
--noteの記事に、御社の「5つの行動指針」について書かれていたと思うんですが。そのうちのひとつとして「誰が言っているかじゃなくて、何を言っているかで判断するのが大事」というのを書いていらっしゃって。それもそこに通じるところかなと今、聞いていて思いました。
秋元:そうですね。前職のDeNAがそういう文化でした。新卒1年目の、それこそ入ったばかりの人が言っていることも「入社1日目だからこそ言えること」もあるので。「誰が言っているかじゃなくて、どういう背景で何を言っているかが評価されるべきだ」というのが、DeNAの時からの教えなんです。いま振り返っても、本当にこの教えは大切だと感じています。
--:なるほど。おっしゃるとおり、1日目だから言えることってありますもんね。
秋元:そうですね。長期間やっていると忘れてしまっていたり当たり前になっていて、逆に「1日目だから気付けること」もあります。むしろ入ったばかりの人は発言を積極的にしなさいと言われていたんですが、すごく本質的だったなと思います。
--ありがとうございます。では、次で最後のテーマです。「今後は『食卓・家食の未来』はどのように変化していくのか?」というテーマで、お話をうかがえればと思います。
今はコロナ禍ですが、例えばそれが完全に終息した未来。コロナ前のように外食がもっと自由になった際、食卓や家食ってどんなかたちで変わっていくと思われますか?
秋元:ありがとうございます。やっぱり外食の機会は増えるので、例えば「家で食べる頻度が今より減る」と思います。外食の機会が増えることはあるべき姿だと思いますが、1回変わった価値観は、大きく変化はしないかなと思っています。
外食の機会が増えると、家の中で食事をする頻度はコロナ禍中より減っていくけれども、どちらかというと質を求める志向などが残っていくので、買い方はここからずっと変わっていかないと考えています。
昨今、コロナもそうですがSDGsの流れもあって、例えば「廃棄される食材をなるべく買いたいな」とかフードロスの意識なども高まっているので。むしろ意識のほうは、どんどん高まって変わっていく、と私は見ていますね。
--なるほどですね。では、今から5年後10年後に御社・ビビッドガーデンが目指す未来についてうかがえますか?
秋元:私たちは「生産者のこだわりが正当に評価される世界」をずっと目指しています。今はまだ産直のお取り寄せに対し、少し特別感があると思いますが、それをより当たり前の状態にしていく。自分の“掛かり付け農家さん”というか、お気に入り農家さんが当たり前のようにいて、「私はこの人からこの野菜を買っているんだ」と、当たり前に日常の会話に出てくる。
日常生活に産直のお取り寄せが溶け込んでいる状態にすることで、結果的には生産者さんが正当に評価されたり、生産者さんがよりモチベーション高く仕事ができる状態になっていると考えています。
--なるほど。確かに自分の掛かり付け農家さんがいてくれる未来って、すごくいいですよね。なんとなく買っているんじゃなくて、「私はこの人のこれが好きだから買っているんだ」とか。それでまた友だちとかにシェアできるとすごくいいですよね。
秋元:そうですね。「本当にこの人良いんだよ」と紹介して、広がりを見せるそれがもう特別な会話ではなくて、当たり前の会話になっていく世界が作れたらいいなと考えています。
都市と地方の垣根もなくなっていって、どんどんフラットにいろんな場所にいる人たちがつながっていく世界が理想です。
--ありがとうございます。では、そろそろお時間になってしまいましたので、最後に本日ご視聴いただいた参加者のみなさまへのメッセージと、食べチョクさんからお知らせがございましたら、ぜひいただければと思っております。
秋元:ありがとうございます。お知らせでスライドを2つ入れていただいています。ちょうど昨日(イベント開催時)から、お歳暮冬ギフトの特設サイトをオープンしました。お肉などもありますが、果物やお野菜もすごくカラフルで、来たらテンションが上がりそうなものがいっぱい特集されていますので、ぜひ見ていただけたらうれしいです。
もう1つ。何を買ったらいいかわからない方に向けて、初回の方限定で詰め合わせのセットや、少しお得になっているものもあったりするのでよろしければ覗いてみてください。
最後に、メッセージ。私たちはまだまだ、本当にこれからのサービスなんですが、少しずつ生産者さんと消費者さんのつながりが食べチョク上ではできるようになってきています。生産者さんから一度買うと、食卓の会話が増えたり、単純に(味が)おいしいだけじゃなくて、雰囲気が良くなると「よりおいしく」感じるんです。食べ物って味だけじゃなくて、その場の楽しさもおいしさに影響すると思うんです。
「生産者さんと直接つながれば、食卓はもっと豊かになる」と私たちはずっと言っているんですが、ぜひそういった体験をしていただきたいなと思いますし、生産者さん側に興味を持っていただける方が増えていったらうれしいなと思っています。
--では、本日は以上とさせていただければと思います。ご視聴いただいたみなさん、そして秋元さん、本日はどうもありがとうございました。
秋元:ありがとうございました。
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