2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
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森まどか氏(以下、森):「働く」ということに関係して、少し過去のサリーさんを振り返ってお話をおうかがいしたいと思うんですが。「自分らしく」を非常に大切にされていると、いろいろなインタビュー記事などで読ませていただいたんですが。
自分らしく働く場を求めて就職活動などをされる時に、まだ完全に今の日本のビジネスシーンは変わり切れてないと思うんです。従来の働く場という考え方で、ご苦労されたことや考えさせられたこと、逆にすごく良かったことがあればお聞かせいただきたいなと思うんですが、いかがでしょう。
サリー楓氏(以下、サリー):それで言うと、私は4年前にカミングアウトしたんですよ。4年前はちょうど学生で、男子として大学に通っていました。その中で、学校の同級生の子たちに「女の子としてどうこうしたい」ってカミングアウトして。そこからメイクをして、こういう格好で大学に通うようになって、こういう格好で就職活動を進めることになったんです。
その時、LGBTの方やジェンダーマイノリティの方が、カミングアウトをして学校にそのまま通うとか、就職活動をする情報がぜんぜん出回っていなくて。私がアクセスできるトランスジェンダーの方の情報って、いわゆるニューハーフと呼ばれていたりしていて、どうカミングアウトしながら就職活動したら良いか、なかなかわからなくて。情報もないし、ロールモデルもいなくて困ってたんですよ。
その時に、私は映画を撮り始めて。なんでかと言うと、映画を撮り始める余裕もないぐらい、当時はすごく焦ってて。メイクをしたままスカートを履いた状態で、「果たして採用してくれる会社があるのかな?」って、ずっと悩んでたんです。
「私より若い世代が同じような悩みを抱えてるとかわいそうだな」と思って、自分より若い子たちがアクセスできるような情報の1つとして、自分の学生生活や就職活動をカメラに収めて1つのドキュメンタリーにしました。
就職活動も撮っていたので、今の会社も映画の中に出てくるんですが、そういう問題意識は今も続いていて、設計する中でジェンダーに気を遣ったり。就職をしてみて、実際に職場でどういうふうに自分らしく過ごすことができてるのか、ふだんから発信するようにして、当事者の方の役に立つアーカイブになるようにしています。
森:サリーさんもクリエイティブ、アイデアを形にしていく仕事をされているわけですが、そうした中でも自分らしく働くことは欠かせないこと。自分の個性を発揮するには、それは必須条件とお感じになってますか?
サリー:はい、そうですね。どういう仕事をするにも、自分のスタンスやポジショニングがないと、「自分はこのプロジェクトの中でどういうバリューを発揮できるのか」が言えないので。自分らしさ、もしくは自分の強みを把握してるのは、最低限必要なスキルかなと思います。
その中で、例えばコワーキングオフィスやヘッドクオーター、在宅勤務とか。今は多くの会社が、いろんな働く場所や働き方の選択肢を与えているので、今度は自分らしさを把握した働く側の私たちが、選択肢を選ぶ力を身に付けていかないといけないんじゃないかなって思います。
森:ありがとうございます。遠山さんは今のお話をお聞きになっていて、どんな感想をお持ちになりましたか?
遠山正道氏(以下、遠山):変な話で恐縮ですが、来年の1月に還暦になるんですね。100歳まで仕事をして、105歳ぐらいで死ぬ計画なんですが、そうすると22歳から社会人が始まって、ちょうど(今は)真ん中。サッカーで言うと、ここから大事な後半戦が始まるので、私は来年の1月から「新種の老人」と名乗ろうと思ってまして。
「新種の老人」というカテゴリを作って第一期生になると、10年経ってもずっと第1期生。そういう概念を作っておけば、「じゃあ、これは新種の老人に聞いてみようか」みたいな話もきっと来るんじゃないかなと思って。
だから、先ほど「自分らしさ」という話がありましたが、自分の概念を立体化させて見ると、自分自身も思ってもいなかった気付きに出会えたりするかもしれないので。個人としての価値にどう気付いていけるかを大事にしていきながら、ますます自分らしさを作っていきたいと思います。
森:「プロジェクト」と言うのも変ですが、自分が新たに発想したことを形にすることによって、今度は周りが影響を受けて新たなネットワークができたりとか、新たなビジネスが生まれたりも可能性としてありますよね。
遠山:アートをやってると、やはりコンテクストが大事なんですよね。私自身のコンテクストを作っておくと、その次の手段はいろいろ出てくるかなって。
森:冒頭のご紹介のところで少しお話しさせていただきましたが、アーティストを支援できる新しい仕組みをお作りになったということなんですが、これは具体的にはどういう仕組みなんですか?
遠山:The Chain Museumという会社で、わかりやすく具体的なのは「ArtSticker」というデジタル上のプラットフォームなんですね。
4年前ぐらい前、アート・バーゼルにずっと行ってたんですが、その年は特に作品が2ミリオンダラー、2億円以上とかね。メガギャラリーとトップアーティストとすごい大コレクターの人たちが、ピラミッドの頂上を引き上げてくれるのはありがたいんだけれども、2億円(の絵)は買えないし。
音楽で言うとインディーズやオルタナティブ、このへんの中間層のアーティストがもちろんたくさんいる。でも、今は欧米でも中堅のギャラリーってどんどん苦しくて潰れちゃっているので、アーティストや作品が世界と直接つながる“高速道路”のようなものができないかなって。
そして今、デジタルの時代では、アートって古いと言えばすごく古いところもあって。例えばギャラリーでも(作品を)抱え込んだり、値段がよくわからなかったり、怖かったりとか。だから、もっと出会えるプラットフォームを作れないかなと思って、デジタル上で「ArtSticker」をやってます。
ただ、最近同時にやっているのは「REAL by ArtSticker」といって、実際に見ていただきながら販売できる機能を作ったギャラリーなんです。エントリー制で、人気のある作品に40人ぐらいエントリーが入ったりするんですね。ただのギャラリーだけだとそんなに入らなくて、デジタルでやっているので、その両方がうまく相乗的につながっていったりします。
あと、我々がやろうとしてる「REAL by ArtSticker」も、どこか固定的に場所を構えるのではなくて、いろいろな他のギャラリーさんの場を借りたり、あるアパレルブランドとかを巡っていくんですね。それで、デジタルでつながっていく。
固定的なものに縛られないで、デジタルと合わせながら浮遊するように進んでいくような、デジタルとリアルと両方で進んでいくようなことを進めてます。
森:ご自身の人生経験の中で、ふと「こんなものがあったら良いな」「こういう仕組みはどうだろう?」と思ったことを、ビジネスに立ち上げていらっしゃる印象です。
同じように、「こんなことをしてみたい」「こういうことを活かせないだろうか?」と考えている方はたくさんいらっしゃると思うんですが、それがきちんとビジネスとして立ち上がるためには何が必要なのか。そのあたりのヒントなどをお聞かせいただけますか。
遠山:そうですね。冒頭に申し上げたんですが、ビジネスってぜんぜんうまくいかないというか、大変なことだらけなので。どこかから聞いてきたような話じゃなくて、「誰がどうしてやってるんだっけ?」という、最初の根っこを我々はすごく大事にするんですね。
常にうまくいかなくても、彼が「もともと何をしたかったか」に戻りながら、じゃあ手段はちょっと変えるとか。そういうことをやりながら、気が付いたら何とかビジネスとして成立していたことの繰り返しなので、我々は最初のスタート地点を大事にしてますね。
森:ありがとうございます。サリーさんからは建築デザイナーという立場でアドバイスを頂きたいんですが、新たな挑戦や事業が生み出される場は、どういった環境があると生まれやすいとお考えになってるかを聞かせていただけますか。
サリー:まずは、人と人とのつながりができることは大前提です。それから壁打ちができる場所があるのもすごく大事です。自分が思ってることを自分の中で醸成していっちゃうと、どこか偏りのあるものや、どこか垢抜けないものになってしまうので。
それを人に話したり熱弁することによって、自分の中で整理されていくこともあるので。小さな発表ができるとか、小さな相談ができるような場所があるのがすごく大切だったり。
アイデアが出る場所は会議室ではないと言われていて、だいたい「たばこ部屋」か「エレベーター前のロビー」で新しいアイデアが生まれると言われてるんです。要するに、エレベーターって来る間に待たないといけないわけじゃないですか。そうすると、近くにいる嫌な上司とか、ふだんあんまり話さない人とかと話さざるを得ない。
でもその中で、ふだん自分からはあえて取りに行かなかった情報に遭遇しちゃうことによって、意外なアイデアが出てくる。あと、今は喫煙所を置いてある会社は少ないですが、たばこ部屋は吸い終わるまでその場にいなきゃいけない。そうなると、横に知っている人が来たら、嫌でも話さないといけない状況になる。
そうすると、自分が「必要ない」と思って切り捨てていた情報が、嫌でも入ってくる。そこで新しいイノベーションや発想が起きる。今、在宅勤務になっていたりして、ミーティングもZoomミーティングになっているので、話し合いのための話し合いしか起こらないような状況なんですよね。
なので、望んでないんだけれどインプットがある雑談とか、エレベーター待ちの時間をどうデジタルで作れるかな、という個人的な悩みもあったりします。
森:偶然すれ違える場が、意外と良い場所になってたりするんですね。そうすると、コミュニティの役割もけっこう大きいと思うんですが、そういった場を多く作れる町はどんな町だとお考えですか。
サリー:そうですね。都市で言うと多様性というか、どんなことをしても許されるとか、ある程度失敗しても許される。失敗されて居づらくなるような場所って、そもそも挑戦が起きないと思うんですよ。なので、失敗したら挑戦したこと自体を表彰してもらえる仕組みがあるとか。
あとは最近ちょっと考えていることで、在宅勤務になってから家の中に仕事が入ってきました。最近は緊急事態宣言が明けて、ちょっとずつ出社できるようになって、仕事だけが家から引き揚げられていって、また会社でやれるようになってきてるんですね。
でも、会社でやっていたことが家に侵入してくるんだったら、家でやっていたことも会社に侵入して良いんじゃないかなと、最近思い始めてて。在宅勤務をもじって「出社休日」と呼んでるんですが。
例えばプラモデルを作るのが好きな人だったら、ちゃんと勤務時間からは外した上で、そういう作業を会社でやる。「え? 会社にこんな手の器用な人がいたんだ」ということを発見できたりとか。
あとは会社を使って、ぜんぜん関係ない個人的な映画鑑賞会や勉強会をできて、何かの情報にすごく詳しい人とか、知らなかったバックグラウンドを持っていた人が社内で見つかるんじゃないかなって。今、そういうアイデアを持ってます。
森:なるほど。そうすると、そういう会社や場がいくつもあるコミュニティが、いろんなイノベーションにつながっていく場になってくるとも言えそうですね。
サリー:やっぱり会社って、同じ興味を持った人たちの集合体だと思うので。年収の高さとかで集めている会社は別かもしれないですが、ほとんどの会社はある程度、みんなのやりたいことが共通してて、みんなでやると効率が良いから集まってたりするので。たぶん、趣味や興味で被る部分やシナジーが多いと思うんですよね。
今あるビジネスで興味が被るのはもちろん良いことなんですが、今あるビジネスじゃないところで、意外と興味が被ってたりする。そうすると、そこに新規事業が生まれると思うので、やっぱりイノベーションが起きるってそういうことなんじゃないかなと思います。
森:ありがとうございます。「イノベーションの起こる場」ということで、ここで柏の葉スマートシティのご紹介をさせていただきたいと思います。
柏の葉スマートシティは、「超高齢化社会」「市場飽和による経済停滞」「資源エネルギー問題」「地球環境問題」という課題先進国の日本において、それらの課題解決のため、「『世界の未来像』をつくる街」をテーマに、公民学が連携して、常にさまざまな領域において最先端のまちづくりを進めてきました。
近年では急速なデジタル化により、町と生活者からは大量のデータが生まれるようになり、これらのビッグデータを利活用することは、人々のより豊かなライフスタイルの実現、産業の発展、科学技術の発展のために必要不可欠となりました。
柏の葉スマートシティはデジタル先進国・電子政府であるエストニアをモデルとし、個人データ主権の中でデータ利活用のまちづくりに着手し、2020年には個人が許諾することによってデータを流通させることができる、柏の葉データプラットフォーム「Dot to Dot」を開発。そしてこのプラットフォームを活用して、住民がさまざまなサービスを利用できるポータルサイト「スマートライフパス柏の葉」の提供を開始しました。
マスの時代から個の時代に向け、個々人がデータを有効に利活用し、個のニーズに応じて人々の暮らしがより豊かになるまちづくりを目指し、日々新たな取り組みを行っています。
また、コワーキングスペースや小規模オフィスを中心に、3Dプリンタなどの多様な施設や設備など、所属する人や企業をつなぎ合わせるコミュニティマネージャーが在籍するインキュベーションオフィス「KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」が柏の葉にはあります。大変好評いただいており、今年1月には「Smart&Well-being」をコンセプトに、多様な働き方に応えるオフィス「KOIL TERRACE」もオープンしています。
森:ということで、柏の葉をご紹介させていただいたんですが、いろんな人たちが交わる場所、出会う場所も用意して、新たなイノベーションを生み出そうというのがコンセプトでもあるんですが。柏の葉という町についてどのような印象を持たれたか、遠山さんはいかがでしょうか?
遠山:そうですね。なんとなくイメージですが、プロジェクト型のものが集まってきているような感覚があります。かつての工場やどっかの大きな会社がドンっとあるというよりも、もうちょっと緩やかで機動力の高いプロジェクトが集まっては開かれてるイメージをして、良いなと思いました。
森:人と企業をつなぎ合わせる場が町に存在しているのは、いかがですか。
遠山:そうですね。企業も良いですし、アカデミアと企業と生活が交じっているようなところはリアリティがあるというか。
さっきのコロナ前の話じゃないですが、仕事だけに行ってしまうんじゃなくて、もうちょっと落ち着いて学問的な思考とか、生活の中でちぐはぐになっていないかとか、家族とか。システム主体じゃなくて、人間主体の中でうまく絡んでいく感じがあると良いんじゃないかなと思いますね。
森:ありがとうございます。サリーさんはどんな印象をお持ちになりましたか。
サリー:今の遠山さんの感想、すごく私は共感していて。私も2つ感じたことがあって、1つはおっしゃるとおり、この町は大企業やオフィス街があったわけではなくて、もともとゴルフ場があったと聞いています。
先に場所があって、そこに目的と人がやってきてビジネスやイノベーションが起こるのが、1つの特徴なのかなって思いました。もう1つが、ここはマンションも一緒に建てられていて、職住近接型のイノベーション拠点だということが大きな特徴かなと思います。
そうなると生活してる中で気付いたこと、例えばスーパーに行く時に「こういうデバイスがあったら便利なんだけどな」「こういう移動手段があったら便利なんだけどな」という、職住の「住」の生活の部分で気付いた問題点を、即ビジネスとして町の中で形にすることができる。ファブラボみたいなスペースも入っていますので、プロトタイピングもできる。
それをビジネスにできるということは、つまりはこの場所自体が目的から出発して、みんながビジネスする場が後続的にできる。働き方としては、会社があるから会社に行くんじゃなくて、やりたいことがあるから会社ができた、という健全なイノベーションの場になってるのかなと感じました。
森:ありがとうございます。それではここで、視聴者の方から質問が来ていますので、お二方にお答えいただければと思います。
まず最初の質問です。「使われる人から仕掛ける人へ。これからの時代に絶対に必要な意識だと思いますが、いざ自分に置き換えて考えるとなかなか動けません。どうしたらいいでしょうか?」という質問なんですが、遠山さんはいかがでしょうか。
遠山:そのこと自体が良いと思うんですね。要するに、早く気付ける・仕掛けるってすごく大変。何かしらのアイデアなのか、自分の持っている経験なのか、関係性だとか、あるいは必然性とか。何かしら取っ掛かりがないと、立ち上がらないわけですよね。それって意外に大変です。
だから、ふだんから「自分ってそういうアイデアや強みとかがあまりなかったんだな」って気付けたら、まず良くて。「こんなのあったら楽しいな」みたいな、そこからフラットに楽しく考えたら良いんじゃないですかね。
森:まずは、自分の課題が見つかったことが良いことですね。
遠山:そうですね。今お勤めの職場とか、きっと何かしら切り口があると思うので。2つぐらいの切り口を掛け算してみると、他にはないようなアイデアが出てきたり。
今、ちっちゃな仕事がおもしろいと思うんですね。私は会社の中でも「はんこのない仕事がおもしろい」と言ってるんですが、はんこが課長、部長、本部長に押されると、たぶんそれだけでビジネスがどんどんつまんなくなっていく。
だから、はんこが要らなくて勝手にできちゃう、ちっちゃな仕事をいくつか試し打ちしながら、会社の中でも、あるいは外でもやってみたり。まさに職住近接で、奥さんから「そんなのぜんぜんおもしろくないわよ」と、ばさっと切られるとか。そんなのを繰り返してると良いんじゃないですかね。
森:サリーさん、この同じ質問にどのようなお答えを(お持ちですか)。
サリー:そうですね。今って「自分として生きる」というか、自分らしさがかなり前向きに語られるような時代になってきています。
みんなと違うということが、ポジティブに捉えられるような良い時代になった一方で、私もそうですが、若い人たちが「自分らしさを発見しないといけない」と、追われているような感覚があるんじゃないかなと個人的に思っています。
私もそういう感覚があって。「自分の個性を見つけないといけない」「自分らしさを見つけないといけない」って、焦ってた時期があるんですけれども。
自分らしさは取って付けて身に付くものではなくて、人から「それはやっちゃダメ」「みんなと同じようにしなさい」って言われて傷つけられて、それでも守り切った芯のあるもの、強いものが自分らしさだと思います。
ということは、自分らしさや自分のやりたいことを見つけるためには、最初は傷つかないといけないんですよね。インプットしたり、傷ついて傷ついて自分が挑戦をしないと、発見は得られないのかなと思うので、私もけっこう傷つくようにしていますす。
例えば、今日ここで遠山さんと話すのってすごく緊張するんですよ。さっきからずっと汗をかいてるんですが、今って私は「傷ついてる状態」なんですよ。でも、こうやってがんばって話したことによって、自分の中での発見とか、「意外とこういうトークができるんだ」って気付いていくと、次の挑戦につながっていく。
その中で、たぶん(自宅に)帰って「今日、自分が譲らなかったものって何だろう?」って考えると思うんですよ。今日はそれを大切にしたいなと思ってます。そういった気持ちで、質問者さんも「今日譲らなかったもの」「傷ついても自分が捨てなかったものって何だろう?」と、考えていただけたら良いのかなって思います。
森:ありがとうございます。もう1つ、今のお話に非常に関連する質問なんですが。「自分らしさを追求していくこと、他の人とのつながり、協働していくこと。自分らしさを追求し過ぎると衝突を生んだりしないかと、一見相反している部分もあるのでは感じました。どうやってバランスを取るのが良いか、ご意見をお聞かせください」ということなんですが、サリーさん追加で(お答えください)。
サリー:私ですか(笑)。けっこう難しいですよね。やりたいこととやるべきことって、違うと思うんですよ。どこかでバランスさせないといけないと思っていて。
例えば建築って、普通に自分が建てたい建築だけ作ろうとすると、なかなかビジネスにならないんですよね。かといって、世の中をマーケティングしてアンケートを取って「こういうのを建てると売れるらしい」というものを作ると、今度は自分がおもしろいと思わないものになってしまう。
やりたいこととやるべきこと、もしくは稼げることと仕事にしたいことは両極にあったりして、そのバランスを見つけるのが個人的にも難しいです。なので、自分に求められているプロジェクトやアウトプットの中で、いかにやりたいことを発見して忍び込ませていくかを考えていたりします。
それって、「自分らしさと社会がぶつかってしまうんじゃないか」という、質問者さんの気持ちとも同じところがあって。「そういえば今日、会社に何を着て行くか」「ジーパンやタンクトップはダメだろう」とか、いろいろあると思うんですよ。決められた服装や着こなし方の中で、自分ができる最大の表現をすることが良いんじゃないかなと思います。
森:ありがとうございます。質問は以上となります。それではお時間も迫ってまいりましたので、最後に「柏の葉イノベーションフェス2021」のテーマである「READY FOR FUSION?」について、お二人がこの「READY FOR FUSION?」という言葉にどんな思いを感じたか。視聴者の方へのメッセージも込めてお一言ずつ頂ければと思います。遠山さんからお願いします。
遠山:「融合」ですよね。先ほど申し上げましたように、一本足打法じゃなくてグラデーションのある生き方が良いんじゃないかなと思っているんですね。5個、10個あったら、それだけの社会関係資本が出てくるので、そういうものを融合させながら。
さっきの「自分らしさ」で言うと、私自身はスープも作れないし何もできないんですが、映画で言うと監督っぽいのかな。演技はできない、カメラは回せない、資金調達も苦手。だけど「こんなシーンはおもしろそう」とかね。
自分らしさに悩まなくても、自分は何もできなくても、ビジネス的に言うとビジョンを持って、良い仲間が集まればできるので。そういう時に1つの人種・部族だけじゃなくて、いろいろな部族との関わりがあるほうが、おもしろいものができてくるんじゃないかと思うので、いろんな社会関係資本を持つのが良いと思います。
森:ありがとうございます。では、サリーさん、「READY FOR FUSION?」、いかがでしょうか。
サリー:「融合」ですが、すごくプライベートな話ですけど、この間ミスコンを見に行ったんですよ。私も数年前にミスコンに出ていて、最近はミスコンがすごく減ってきていると。女性を格付けして1位、2位、3位をつけるのは良くないということで、ミスコンが減ってきてると相談されたんですよ。
私がこの間見に行ったコンテストが「プラスサイズコンテスト」という、日本で初めてのグラマラスな体型の方が出るコンテストなんですよ。そこですごく感動したのが、出てる人たちが1位、2位になるために格付けされて出てるんじゃなくて、「美」に対する物差しを変えるためにここに出てるんだなということを、すごく感じて。
つまり、今の時代にすごく必要なのって、これまでのミスコンみたいに「いかに男性受けするか」「いかにおしとやかでいるか」という、用意された物差しの中で自分を高めて「ほら。1番でしょ」というものではなくて。美とは何か、自分らしさとは何か、物差しのほうを世の中に問うてみる。そういう態度が必要なんじゃないかなと思っています。
私にとっての「FUSION」は、人の物差しを変えるために人にアプローチしていくこと、もしくは誰かと遭遇することによって、自分の持ってた物差しの目盛りが変わっていくこと。「そんな考え方もあるんだ」「そういうベクトルは持ってなかったな」って気付いて、そのための準備運動をするのが「READY FOR FUSION?」じゃないかなと思います。
森:ここまで、さまざまなお話を伺ってきました。遠山さん、サリーさん、どうもありがとうございました。
遠山・サリー:ありがとうございました。
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