2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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川原崎晋裕氏(以下、川原崎):実際、LINEには随分長くいらっしゃいましたけど、やっていくうちにだんだん「あれ? これ向いてなくない?」みたいな感覚で……。
桜川和樹氏(以下、桜川):そうですね。2018年の秋とかに……。
川原崎:退職される3年も前ですよね。
桜川:3年かかったのは、来たものをやるという性格からなんですけど、もしかしたら自分で自分の人生を切り拓こうというタイプではないのかもしれないというか。
川原崎:2018年は3年前だから38歳?
桜川:39歳とかですかね。
川原崎:来た球を打ち返して。
桜川:マネジメントもあるし編集の仕事もあるし、仕事はあるんですよね。でも、「何を差し置いてもこれはやるんだ」と情熱を傾けるほどのものが案外なくて。芸人みたいなことを言っていますけど。
川原崎:(笑)。
桜川:仕事が来る以上は、「それを断るのってどうだろうな」とは思ったんだけど、3年間くらいでビーカーに水がどんどん溜まっていって、「ああ、もうダメだ」となって。コロナ禍も影響して、リモートなのでコミュニケーションも取りづらくなるじゃないですか。そういうのも積み重なって、決断しなきゃダメなのかなと思ったという感じでした。
川原崎:私は新しいこととか苦手なことをやるのはぜんぜんなんとも思わないんですよね。新しいことができるようになったら、自分が成長できると思っているから。
一番嫌なのが、常にできることをやること。やっていると「何のために仕事をしているんだろう」とか、これは他の人でもできると思って。自分のコスパが悪いというか、今だと社長としての会社への貢献度として、「こんなことをやっていていいのか」と不安になる時があります。それですごくストレスが溜まるところがあるんですけど。
桜川:わかります。
川原崎:桜川さんの場合は、ビーカーに溜まっていった水の正体は何だろうなと思って。
桜川:街を作る道に行かなきゃいけないと思っていたし、行けるものなら行きたいとも思ったし、それが求められていることもわかっていて。
川原崎:会社から。
桜川:そうですね。
桜川:さっきの話と間逆なんですけど、それ(街作り)も技術だと思うから、積み重ねれば、ある程度インターハイベスト8くらいまでは行けたのかもしれないですけど。
僕は、人のアウトプットを決めるものって、マインド1割、技術8割、センス1割くらいだと思っているんですけど。たぶん、マインドが作れなかったんですよ。
川原崎:1割が。
桜川:そう。ある程度仕事のスキルを極めるなら、プロ野球選手だろうが、クリエイティブ職だろうがなんだろうが、技術がないとやはりダメだと思うんです。技術が8割くらいを占めると思うんですけど、たったの1割のマインドがないと技術が身につかないし、技術が積み重なっていかないとセンスなんて発揮できないと思っています。
順番はそうなんですけど、たぶんマインドが動かなかったんですよね。街を作りたいとはあまり思えなかったというのが、苦しい原因の大きいポイントだったんじゃないかと、今、振り返ると思ったりしますよね。
川原崎:それは、自分よりもっとうまくやれる人がいるんじゃないかとか。
桜川:そうですね。上司も優しい方ばかりだったので、誘導してくれようとはするんだけど、そこにうまくはまらないから、上司としても歯がゆかったり、それを申し訳ないなと思ったり。
川原崎:このへんはだいぶ話しづらいかもしれないんですけど、すごく意地悪な言い方をすると、プロダクトの方向性が桜川さんに向いていない、やりたくないと。会社がストレスが溜まることをお願いしてしまった結果、桜川さんが辞めてしまったという見方もできるじゃないですか。
桜川:そうですね。
川原崎:なんで他の方にやらせようとか、もっと得意な人を桜川さんに付けて一緒にやらせようとならなかったのかを、すごく知りたいなと。
桜川:わからないですけど、たぶん技術としてはできると見られていたんじゃないですかね。これは想像でしかないですけど、意外にマインドがでかかったんですよ。なんとなくマインドって気付きにくいじゃないですか。
川原崎:特に桜川さん、あまり何も考えずに仕事を受ける(笑)。
桜川:(笑)。そうですね。
川原崎:マインドの確認をせずに仕事を受ける。
桜川:そうですね。極端に言うとそうかもしれないです。誰もそうしたくはないとは思いますし、今でも思っています。僕もLINE NEWSが始まった時に、「やりたいです」と言って手を挙げて入ったので、過去のいろんな積み重ねの中で、上司もある程度任せたいと思っていたところもあるとは思いますね。
川原崎:同じことをずっとやっていると、例えば本人が飽きちゃったり、成長を感じられない。そういう時に、私もそうなんですけど、上司が新しい仕事を与えたり、そのための考え方やマインドセットを教えたり。
これもよく言っているんですけど、メンバーでいるうちって、上司の気持ちがわからないじゃないですか。編集だけやっていると、事業を見ている人の視点になかなか立てないけど、両方を知っていたほうがより自分の編集という仕事も磨かれるという感じで。
やはり新しいことをやらないと損だし、変な話、制作職だと給料がたぶんずっと低いままになる。だから、私は何とかしてあげたいなという親切心みたいなもので、新しいミッションを与えようとするところがあるんですけど。それがどうしても合わない人もいて。「放っておいてくれ!」みたいな。
桜川:それは難しいな。思惑が違うというのはそうなんですよね。僕はマネジメントが向いていないと思ったので、そのへんの感覚や機微はわからない(笑)。
川原崎:(笑)。
桜川:今、振り返ってすごく思うのは、リクルートの社員がよく「お前はどう思うの?」みたいな問いかけをしていて。それはすごく耐用年数の高い問いなんだろうなと思いますね。
川原崎:「お前はどう思うの?」というのが。
桜川:「これってAですか? Bですか?」と聞いてきた時に、「お前はどう思うの?」「今の仕事をどう思っているの?」とか。問いが上手い人がマネジメントができるというイメージもありますね。
川原崎:なるほど。
桜川:マネジメントができる人は人のムーブが気になる。ここに来る時に考えていたんですけど、クリエイティブを目指すのかマネジメントをやるのか、現場に生きるのか、マネジメントに生きるのかという話で考えた時に、マネージャーってやはり人のムーブが気になるんだと思います。
「ここは、こうやって動けばいいのにな」とか、「そこに不満があるんだったら相談すればいいのにな」とか動き方が気になる。それって「盤面を見ている」というか。それこそ『キングダム』の六大将軍とかが、「今、ここがこうなっている」という局面を見るのが気になるというか、好きなのかなと思うんですけど。
さっきの街の話の例でも言いましたけど、現場感覚のある人ってやはりクリエイティブとかディテールが気になるんですよね。自分はどっちのウエイトが大きいのかを常に考えていくといった時に、人の動き、所作や振る舞いが気になる人は、マネジメントの素養がひょっとしたらあるのかなと思ったりはします。
川原崎:なるほど。そこはちょっと向いていなかったというか。LINEを退職される時に、ブログに「武将として生きるか、職人として生きるか」というタイトルを付けて書かれていました。詳細は100円払わないと見られないような(笑)。
桜川:将来が不安だったので、100円でも課金しておこうかなと思って、noteに書きましたけど(笑)。
川原崎:武将か職人かというのは、平たく言うとどういう意味なんですか?
桜川:そうですね。プラットフォームを作るのもそうだし、プロジェクトを動かしたり、どういう人材を配置してやっていくのかも大きく見ればクリエイティブだとは思うんです。だけど、そっちにマインドが行かないなと思って、できなかったんですよね。
コンビニでA4のペラ紙に大きく1文字ずつ印刷して、それを窓に並べて貼っていたりするじゃないですか。何かのキャンペーンが始まりますみたいな。今日もここに来る前に、その改行の位置がおかしかったんですよ。
川原崎:(笑)。
桜川:「はじまる」が、「~~は、じまる」になっていたんですよ。そういうのめっちゃ気になるんですよね。
川原崎:はい(笑)。
桜川:本当はちゃんと「は」を上に持ってきて、「はじまる」と見せたほうがいいんだけど、大きい局面から見たら些末なことじゃないですか。盤面が気になる人には、そういうのは伝わればいいことであって。
でも、僕はこういうのはめっちゃちゃんとすればいいのにと気になるタイプなんですよね。
川原崎:それって、自分で直したいということなんですかね。
桜川:直したいです。「あれは、こっちにしたほうがいいです」って言いに行きたいです(笑)。
川原崎:けっこう経営者でも、美的感覚にこだわる方はいて、Sansanの寺田社長とかはすごくこだわりの強いタイプなんですけど。どっちかというと、「これは美しい」「これは美しくない」というジャッジをする人です。でもさすがに自分で糊を貼って直したりはしなくて、部下にやらせるわけじゃないですか。
桜川:そうですね。部下がいれば「これ、こう直しておいて」とかはもちろんありますけど、そこを言っていると全部言わなきゃいけなくなっちゃうから、言わなくていいかという武将感があると思うんですよね。でも僕はいちいち言っちゃうんですよ。マネジメントすると、けっこうマイクロマネジメント型になっちゃうというか。
川原崎:はい(笑)。
桜川:だから、あまりよくないんですよね。
川原崎:今回のイベントタイトルも、僕、絶対そうなると思っていたんですけど、やはり最終的に桜川さんの考えたタイトルになっているんですね。
桜川:(笑)。
川原崎:クオリティもそうなんですけど、好みも絶対にあるし、そこへのこだわりが強いので、あまり押し付けちゃいけないなと思って(笑)。会話をしながら、お金も払っていないのに案を出していただいたんですけど。
桜川:いえいえ(笑)。
川原崎:そういうところにすごく現れるなと思います。
桜川:だと思います。気になっちゃうんですよね。
川原崎:ですよね。ありがとうございます(笑)。
川原崎:というので、思い切ってVCへ転職をされたというところなんですけども。次のテーマが「現場に生きたい人へのアドバイス」と。桜川さんは41歳のタイミングで、マネジメントより、再び現場で生きることを選択されたんですけれども。
もうちょっと汎用化した話でいろいろお聞きしていきたいなと思います。クリエイティブ職の方の独立の選択肢って、営業をやっている人とかよりもわかりやすいじゃないですか。けっこう昔、デザイン会社や編集プロダクションの採用をお手伝いする仕事をしていたんですけど、その時の社長に聞かされたすごく怖い話があって。
編集プロダクションの中で年次が上がっていって、40代とかになるとこれ以上給料を払えないから、わざと独立させるんですって。「君、独立したらどう?」と言って、クライアントをちょっとだけ渡すらしいんですよ。
でも、長期で発注してくれるクライアントじゃないところを渡しているし、(編集者としてやってきて)営業もできない人なので、すぐにお金が入って来なくなって潰れちゃうみたいな話がけっこう(笑)。
桜川:え!? 大丈夫ですか、その話。
川原崎:貧乏な編集プロダクションでは起こると言っていて。当然、よっぽどずば抜けたスキルがあれば、スキルだけでいくらでも仕事が来るでしょうけど、そうじゃなければ営業や価格交渉もある程度できないとジリ貧になっちゃうので、独立するのはものすごくリスクがあるなと思っていました。
そうすると、マネジメントにも向いていない。独立もたぶんうまくいかないだろうみたいな感じで、どん詰まりになっちゃうケースがあると思っていて。制作の方はけっこうそういうところは難しいですよね。
桜川:そこに「現場に行きたい人へのアドバイス」と書いてあるのが。
川原崎:(笑)。まず現実から。
桜川:そうですね。
桜川:もうアドバイスできることは何1つないんですけど。でも、独立も結局会社をマネジメントしなきゃいけないし。
川原崎:なるほど。フリーランスでもそうですかね。
桜川:フリーランスのほうが動きやすいんじゃないですかね。
川原崎:マネジメントの道だということで、フリーランスは考えられなかった?
桜川:そうですね。さっき言ったみたいに、自分で切り拓いてやるほどのマインドはないんですよ。どっちかというと仕事と自分のスキルがマッチングするんであれば貢献したい、という気持ちでやってきている側面があるので。
もちろん考えたり話に出たり、知り合いから「フリーにならないんですか?」「会社作らないんですか?」とかいろいろ言われましたけど、たぶん向いていないから、サラリーマンのほうがいいなと思ってはいます。僕からは、あまり夢のある話はできないんですけど(笑)。あまり考えていなかったですね。
川原崎:なるほど。私は起業する前に、少しフリーランスをやって、それでログミーの運転資金を稼いでいたんですけど。フリーランスでメディアのコンサルをやってみて思ったのは、すごい言い方をすると、お客さんの持っているメディアや事業って、自分のものじゃないので、正直なかなか本気になりづらいというか。
社員であれば、言っても自分のものじゃないですか。だからすごく熱中できるし。チームワークもすごく重要なんですけど、他の人の持ち物だと、やはり一定以上の熱量を上げられないという。
あとコンサルだから「これがうまくいっていない理由はこうだから、こうしたほうがいいですよ」という時に、たぶん僕は正しいことを言っているんですけど、外様だからついてこないんですよね。
お金は儲かるかもしれないけど、けっこうおもしろくないなと思って。それで自分はコンサルというか、フリーランスが向いていないなと思いました(笑)。
桜川:なるほど。そうですね、僕は来た球を打っていたいというのはあるんですよね。自分から球を見つけに行くのはあまりうまくないかもなと思います。
川原崎:NAVERまとめとか、LINE NEWSでそれなりのポジションにいた方が、来た球を打っていたいという、けっこう衝撃的な(笑)。
桜川:とは思いますけどね(笑)。
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