2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
第三部 Q&Aパート(全1記事)
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榎本佳代氏(以下、榎本):これからはQ&Aに入っていきたいと思います。それでは、私のほうで質問事項を読み上げさせていただきたいと思います。上からいきますね。
「初対面の人や、利害がない相手との『聴き合う関係』よりも、同じ職場や夫婦間の人間関係がある程度は構築されていて、利害がある中での『聴き合う関係』のほうがとても難しいと思います。その時の違いやコツはありますか?」というご質問をいただいております。
篠田真貴子氏(以下、篠田):じゃあ私は『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』で書かれていることをご紹介して、内田さんは職場の1on1で実際に起きてることからお話しする、というかたちでいかがでしょう。
榎本:はい、お願いいたします。
篠田:『LISTEN』では、ご家族の間での聴く・聴かれることについて、さまざまな角度で取り上げられていました。その中で、今ご質問いただいて1つ思い出したのが、長年の夫婦関係を続けていく中で、関係性がかなり危うくなってきてカウンセリングをする方のお話があったんですが。
ポイントは、好奇心。はじめに(本の中で)「好奇心という言葉は、この本で35回出てきますよ」って言った、あの好奇心だったんです。つまり「ずっと一緒にいる相手のことは、自分はもう知ってる」って脳が判断しちゃって、好奇心を失ってるんですね。
なんですけど、自分のことを思うと、やっぱり日々変わってるわけじゃないですか。ましてや、1年前2年前の自分とはもう違うし、10年前の自分とは随分変わってるんだけど、そこに目を向けられなくなってるということのようなんですよね。
言ってみれば、相手への観察を細かくする。そこから脳の好奇心のスイッチを入れてあげる。そうすると聴けるようになる。こういうことでした。もちろん理屈はこうなんで、実際は大変(笑)。そのあたりも内田さんからお願いします。
内田修平氏(以下、内田):はい、ありがとうございます(笑)。実際に1on1をやられている方の声で、このご質問に関していきますと。やっぱり職場の中だと利害関係があるというか「業務を進めなきゃいけない」ということが第一優先になってるんですね。マネージャーの方の声を聞くと「もうぶっちゃけ、1on1では業務の話しかしてないです」ぐらいな感じなんです。
その状態の中で、要はお互いが「業務としての顔」しか知らないわけなんですよね。それで1on1をやると当然、業務的に評価・判断をするとか、そういった関係の中ではすごく難しさがあるなと思っています。
一方で、エールを使ってみて「よかった」っていう体験の声とかを見てみると。けっこうあるのが、上司の方が「『まず自分がこう思ってるよ』という感情の部分をちょっと話してみた」といった話をよくあげていただいてるんです。
部下からすると、先ほどの好奇心の話じゃないんですけど「業務だけやっているマネージャー」って、なんか興味持てないんですよね。上司からしても、部下も何考えてるかわかんないから興味を持てないんですよ。
そこを例えば、上司が「今はこういうふうに感じてて」とか、感情の部分をさらけ出すっていうのはけっこう大事で。そうすると「そんなこと思ってたんだ、上司」「そんなこと思ってたんだ、部下」っていうところで、やっぱり相手の“人となり”がわかるんですよね。
そうすると、利害関係があっても、そこ(人となりへの理解)があるからちゃんと聴き合える。要は、興味関心を持てて聴けるようになっていく。そんな感じなのかなと思っております。
榎本:ありがとうございます。今お話ししていただいた上で、やっぱり利害関係があると聴きにくいとか、バイアスがある。その「バイアスがある」っていう前提をお互いに認知した上で、コミュニケーションするのがすごい大事かなと思っていて。
お互い何も認知しないと「あの業務どうだった?」「この業務どうだった?」「このプロジェクトどうだった?」と聞いたときに、それこそ篠田さんが今日の講演でおっしゃっていた犬の話になった時に「私の犬はね」ってなっちゃうんだけども。
やっぱ業務進捗の時間ばっかりになっちゃうから「次の30分は業務進捗を脇に置いといて、こういう話をしませんか?」って、お互いの目的設定をあえて話してみたりとか。
動画であった安全自動車さんのケースって、エールの1on1を受けていただいた時に「『1on1というのはお互いに聴き合う場なんだ』っていうお互いの認知があったからやりやすかった」っていう声が、部下からも上司からもあったんです。
なので、あえて口に出して「今日は業務進捗じゃなくてこの話しよう」といった目的設定ができると、意外とお互いの価値観を話す問いのフレームワークって世の中にたくさんありますし。
エールでもサポーターの方と初めて話す時の、自分の価値観を聴き合うインタビューシートみたいのがあったりするので、そういうツールも活用しながらやっていけるといいんじゃないかなと思いました。
篠田:聴かれるほうも、聴かれることに慣れてないっていう。
榎本:「上司が急にプライベートの話をしてきたけど」みたいな(笑)。なので、上司も「自分はもっとこのチームよくしたいから、こんな価値観のところとか、もう少し今日聴ければいいと思うんだけど」とか、「今の業務を超えたキャリアについて話したいと思ってるんだけど」とかの、前置きがあるといいかもしれないですね。
榎本:ありがとうございます。それでは次の質問です。「私は異なる意見、反論があるとつい論破したくなります。どうしたら効果的に聴けるマインドになるか知りたいです」という話がありました。どうですかね、こちらに関しては。
篠田:お気持ちよくわかります(笑)。私もベースはそういうタイプです。これ本当、一人ひとりのご状況・個性によるんですけど。私は例えば、この『LISTEN』っていう本から学んで、やっぱり1つは「この人はなんでそれを言ってるんだろう?」っていうことを、とにかく知ろうと。
これは今でこそ、まあまあ自動的にできるようになってきましたけど、もうメモにして置いてました。はじめの質問として「どういう背景、どういう流れでそういう考えになったのか、もうちょっと聴かせてください」にするって、決めた。それぐらいの強制力を自分に課してみました。
榎本:トレーニングですね、まさにね。
篠田:内心は、ずっと聴きながら反論がブワーって出てるんですよ(笑)。だけど、それは言わない。
榎本:なるほど。自分の中ではオッケーだけど、出さないっていう(笑)。ありがとうございます。内田さんはいかがでしょうか?
内田:マインドって「私はこういう考え方をしてる」っていうふうに、ちょっと変化がないように捉えがちな言葉だなとは思ってまして。でも実際はマインド自体が、その時のコンディションによってだいぶ変化されているんじゃないかなと思ってます。
篠田さんの本の話の中にもあったように、不安とかコンディションっていうところが、ちゃんと整ってる時と整ってない時で「反論をしたくなるか・したくならないか?」ってけっこう変わってるはずなんですよね。
僕も経験あるんですけど、もう忙しくて忙しくてしょうがない時って部下の話を聴けないんですよ。そういった時に、コンディション整えるためにちょっと深呼吸するとか。そういう切り替えをしていくことだけで、マインドが整いやすくなるっていうことが、実際あるんじゃないかなと思っております。
榎本:ありがとうございます。では次は、篠田さんにぜひお答えいただきたいんですけど。「聴くことに恐れがあります。聴かれたことに答えられなかったらどうしよう、批判されるのでは? という恐れがあります」と。
篠田さんはいろんな登壇とかで注目を浴びられる存在であり、コンサルもご経験されている中で「知識がないと」とか「ちゃんと答えないと」っていうのがあったりとか。なにかそれを乗り越えるコツ。「聴かれたら答えなきゃいけない」「ちゃんとしなきゃいけない」っていうところに対する恐れはどうですか?
篠田:まず、お気持ちよくわかります。私もそれはすごく直面してますね。これもある意味、まず感情というよりもロジック・理屈として「自分がすべて答えられるはずがないよね」っていうところを、自分に言い聞かせるところがスタートで。
理性の部分で少なくとも腹落ちができてると「私がお答えできるかどうかわからないんですけども」っていう一言が、まず冒頭で言える。これが言えると、いってみれば自己暗示なんで。私の場合はですよ、ちょっと楽になる。
それと、1つ前の質問でちょっと触れたように、いきなり答えたり自分の意見を言わずに「なぜその課題感を持たれたのか、どういう流れがあったのかをもうちょっと聴かせてほしい」っていうかたちで。
私にとって聴きやすいのは、その問題意識を持つに至った歴史。ここを事実ベースでおうかがいしていくと、そこまで相手の感情とかに深入りもすることなく、でも自分として理解が深まっていくんですよね。
そうすると、まあまあな確率で相手の方も「こういう方向の答えかな」みたいに、ヒントを自ら出してくださるので。それを材料に使って、お話しをしていったりしています。というので、いかにも“できてる”みたいで恥ずかしいですけどね(笑)。努力はしています。
榎本:ありがとうございます。確かに。相手の中に意外と答えがあるので、そこを深掘るだけでも、共同で答えに導き出していけるっていうのは、まさに篠田さんおっしゃるとおりだなと思いました。
榎本:もう1ついただいてる質問、これは内田さんにお話しいただきたいなと思うんですけど。篠田さんのスライドで「傾聴力・承認力・共感力・質問力」に分かれていて、内田さんのスライド「1on1で求められるスキルは、8つに分解できる」のところでも同様の分類がありました。
「この4つは説明する上ではわかりやすいけど、すべて『傾聴』の中に含まれると考えるのですが、いかがですか?」という質問です。
内田:ありがとうございます。まず「傾聴」の定義が、非常にばらつきがあるものだと思っております。例えば「アクティブリスニングは積極的傾聴」みたいな話で、承認もしながら傾聴していくんだっていう話とか。アクティブの場合、共感がくっついた共感的・積極的傾聴みたいなこともあったりして。もう何を言ってるのかよくわからなくなるんですけど(笑)。
こういういうふうに、いろんな定義の揺れっていうのは正直、存在いたします。説明上、瀬古(詞一)さんの資料も使いながら8個のところで分解をしていて。実際、エールのデータの中でも、例えば「雑談だったらこういう力が必要だよね」とか「相談だったらこういう力が必要だよね」っていうデータを取りながら、そこを僕たちもブラッシュアップしていってる最中でして。
ここは僕たちも引き続き、わかりやすい分け方を探求していきたいなと思っています。すみません、ちょっと歯切れの悪い回答だと思うんですけども。
榎本:ありがとうございます。では質問の中で、1on1の実践について質問がいくつか来ているのでいろいろお話を聞きたいなと。
「1on1を実施することによる効果の本質は何でしょうか? なぜ聴くだけで成果が出るんですか?」というご質問をいただいています。これはぜひお二人にお答えいただきたいなと思ってます。
篠田:じゃあ今度は内田さんから。
内田:ありがとうございます。よく「1on1って効果が見えづらい」っていうところがある中で、効果の本質とは? というのはすごくいい問いだなという感じなんですけども。やっぱり、エールの今までの事例とか体験を見ている中で、一番これかなって思ってるのは「感情が動くこと」だと個人的には思っています。
先ほどの事例にもありましたけど、上司が「これやれ」って言っても、みんな基本的にはやりたくないんです。人に言われてやるっていうことに対して、どうしても反発しちゃったりとか「とはいってもこんなに忙しいのに、上司は何言ってんだ」みたいな、そういった気持ちがあると、受け取れないんですよね。
それが1on1の中で、いわゆる「教える」とかじゃなくて。例えば部下がしゃべることで、しゃべる中でけっこう自分で気づいてくれるんですよ。気づくと「あ、そうだったのか。こういうふうにやってけばいいんだ」って(部下の)気持ちが動くんですよね。
そうすると、今までいくら言っても動かなかった部下が、自分でなにかやり始める。そうなると、単純にやりたいと思ってやってる仕事と、そうじゃない仕事でやっぱり成果って差があると思っていますし、上司・部下のコミュニケーションコストっていうところも、けっこう変わるんじゃないかなと思ってます。
その気持ちが動いてないと、逆にブレーキがかかっちゃう。そこがやっぱり成果が出ることの差なのかな? と捉えております。
榎本:ありがとうございます。篠田さん、いかがでしょうか?
篠田:そうですね、短い答えは、ぜひ『LISTEN』をお読みいただくと、いっぱいいろいろ書いてあるんで(笑)。その中で、今日の私の話じゃない、特にハイライトしなかったけれども大事なところをご紹介すると。
今の内田さんの話と重なるんですが、感情ではなくいわゆる思考の部分においても、私たちは言葉にして物事を考えて、理解をして進めますよね。でも言葉にする時には、その言葉を受け取ってくれる相手がいないと、やっぱり限界があるわけです。
つまり「聴かれる」ことは「話せる」ことで。その話をした時に「バカ」って言われないとか「途中で遮られなくてずっと話してていいんだ」とか。あるいは「根拠は?」とか言われないっていう安心感があってはじめて人は、自分の思考の断片に……言ってみればアクセスをして、それを取り出すことができるわけです。
そうやって「ああ、自分はそういうことを考えていたのか」というように言葉になることを蓄積することで、思考が深まって、自分の仕事に対する理解が深まったり。あるいは、違う視点を得た時に、自分の仕事に対する考えが一定深まっているから、上司のアドバイスを受けた時に、受け取り力が上がってたり。こういう構造なんだと思うんです。
だから一言でいうと「言葉にする機会が爆増するから」なんだと。もしかすると、これはわりと対人のお仕事とか、あるいは思考力を必要とするようなタイプのお仕事だと、より効果があるのかもしれないですね。フィジカルなタイプのお仕事だと、また違った効果なのかもしれません。そんなところです。
榎本:ありがとうございます。「1on1って効果があるよね」という話の中での、次の質問です。「1on1で聴くことをする時に、聴く側が精神的に安定して、落ち着いた状態で臨むことが大事なのかもしれないなと思いました」と。
「例えば聴く側である自分が『今日はバタバタしてて気持ちに余裕がない日』だったら、1on1をリスケしたほうがいいでしょうか?」。篠田さんも内田さんも、日々、エールのみなさんと1on1されていらっしゃると思いますけど、いかがですか?
篠田:リスケするか、例えばもともと30分取ってたのをちょっと時間を短くしてもらって。はじめの10分は、自分が落ち着く時間にするとかね。たぶんみなさん、社内でどっちも経験されてると思うんですけど。ご指摘のとおり、やっぱりコンディションってすごく大事だと思っています。
榎本:なるほど、ありがとうございます。内田さんはいかがですか?
内田:基本的には篠田さんが言ったとおりかなと思ってますが、ちょっと別の観点としては「お互いの期待値が釣り合ってること」って、けっこう1on1では大事なんです。
例えば部下の側が「話を聴いてほしい」っていう時には上司も話を聴いてあげる必要があるんだけど、部下が「めちゃくちゃアドバイスほしい」っていう時に聴くだけやっても、なんかぜんぜん噛み合わなくって。結果的に部下が問いだけ投げられて、すごく不完全燃焼になっちゃうみたいな。そういうのがあると思ってます。
ここの期待が釣り合ってる状態に関して、今のご質問への答えでいくと、部下の方も「ちゃんと1on1してよ」って思ってる状態じゃなくするために、上司が「今日はちょっと疲れてんだよね」とか、言っても大丈夫なんです。
そうすると「今日、上司は疲れてんだ」と。聴き方とか、いつもと違うフィードバックをくれても「今日はそういうもんだ」って、期待値が調整されていると、結果的にお互いにとって有意義な1on1になる。そういうところがあるんじゃないかなと思ってます。
榎本:ありがとうございます。まさに内田さんが言ってくださったことが大事で。ちょっと前までエールは「できるだけリスケはしないほうがいいです」って言ってたんです。理由としては、やっぱりリスケが多いと部下に「この時間って大切にされてないのかな?」とか「自分って優先順位が低いのかな?」って思わせてしまう可能性があります、というのが1つですと。
「自分はあなたとの時間を大切にしてるんです」っていうことをちゃんと表明するために、継続的に実施をするっていうことが大事だと思います。ただその中で、やっぱり上司も大変な時があると思うので、エールでは必ず1on1を含んだどの会議でも、始めにチェックインをするんですけども。1分ぐらい、今の気持ちとか感情とか状態を話し合うんですね。
それは「上司だから・部下だから」ではなくて、お互いに今日この場に来て「さっきまでめちゃめちゃバタバタで、今日中にやらなきゃいけない仕事があと10個ぐらいあって、ちょっと今ソワソワしてるんだよね。そんな感じで参加してるんだ」っていう話とか。「でもあなたとの時間は大事だから、はじめのほうソワソワしてるかもしんないけど、話聴かせて?」とか言うだけで、自分自身がちょっと落ち着いたりとか。
あと部下側も「今日は上司に話を聴いてほしいんだけど、自分もちょっと忙しいんです」とか。そういう感情をお互いにはじめの1、2分で「今の自分こういう状態だよ」ということを話して。「お互いにこの場をいい場にしようね。尊重していこうね」っていうことを話せると、部下も上司に対しての聴く姿勢を肯定的意図で捉えることができるので、ぜひ試していただければと思ってます。
難しいんですけどね、チェックイン。私は以前、かなりヒエラルキーのある企業で「チェックインやりましょう」って言ったら、誰も話してくれないみたいなことがあって。自分だけ「私、今日は元気です!」とか言ったりして、なかなか難しいなと思ったんですけど(笑)。1対1だったらやりやすいんで、ぜひお試しください。
榎本:その1on1の続きで「部下との1on1の中で、どこまでプライベートなことに触れるか悩みます」という質問をいただいてますね。
篠田:じゃあ一言だけ。『LISTEN』の中から引用すると、やっぱり「話し手がその話をしたいかどうか?」なので。特に、今の職場の環境だと上司側からそういうことグイグイ聴くっていうのは、なかなかダメな感じに受け取られやすいですから。部下の方がその話をされるんだったらしたらいい、っていう感じなんだと思います。
そうなるにはやっぱり「上司が十分に聴いてくれてる」ということを中心に「人間関係ができてるな」という前提がある状況から入る感じなのかな? と思って、ご質問をおうかがいしておりました。
榎本:ありがとうございます。内田さんはいかがですか?
内田:そうですね、僕も一言だけでいきますと。プライベートの話について「何のために触れるのか?」っていうのが、けっこう大事な気がしております。先ほどあった、いわゆる「人となりを理解する目的」だと私は捉えていまして、その1個の手段が「プライベートを聴く」ことだと思ってます。
もしかすると、プライベートって話したくない人もけっこういるんですよ。そういう場合は、仕事の中とかでもその人の価値観とか感情が表れてると思うので。その人が話したいと思える、その目的に沿ったテーマを聴いていくのがいいかなと思っています。
榎本:ありがとうございます。それでは、残り3問ですね。ラジオDJをされている方からの「聴くのが仕事だと思っていますが、受け止めるだけじゃなくて、あえて意図的にずらして話を広げるっていうことがあります。それは聴いてくださる方の視野を広めるためにずらす対応をしてるんですけど、これケースバイケースですか?」という質問です。篠田さんいかがですか?
篠田:本当におっしゃるとおり、ケースバイケースだと思います。ここまでご自身の聴くスタイルをご理解なさってるので、そういうことかなと思います。他の参加者のみなさま向けにちょっと補足をすると、先ほどの「ずらす対応・受け止める対応」っていうのは、まず1対1の関係・1対1の対話の時にどうかな? っていうところがベースにあるとご理解ください。
こちらの方のラジオ番組のように「多くの視聴者に向けて」という時の聴き方、受け止め方の表現の仕方は、(1対1の対話とは)また違った考え方があるんだと思います。
榎本:ありがとうございます。では続いての質問は内田さんに聞きたいんですけど。「どんな年齢でも聴き合えるようになれるんですか? 年齢別の特徴ってあるんですか?」というご質問ですが、いかがでしょうか?
内田:質問としては「自分とどんな年齢層の方でも聴き合えるようになるか?」というご質問の設定でお答えしたいなと思います。
「理論的には」と言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、考え方としてはできるようになると思っています。一方でですね、年齢や、年齢の先にあるその方の価値観といった部分での「聴き合う難しさ」みたいなところが出てくることはあります。
例えばなんですけど、私は今30代後半なんですが、上司からは「ゆとり世代だ」ってめちゃくちゃ言われるんですよね。それで「ゆとり世代が言ってることって、ゆとりだろ」という(笑)。こういうバイアスで聴かれるんですよ。
ってなると、やっぱりちゃんと「相手が何を本当に感じてるのか?」という部分に行きづらい、みたいなのがあるんですよね。いわゆる年齢とかのバイアス。その方がどこに対してバイアスを持ってるかとか、そのバイアスの強さによって「聴き合いづらい」ということが起きるんじゃないかなと思ってます。
ここは実際サポーターの、さっきのAIのマッチングのところでも、性格・特性とは別に年齢のご希望を聞いたりするんですけど。そこって「この年齢の人に話したい」みたいなご希望を取るんですね。例えば「50代の人はちょっと嫌だな」とか。それってやっぱりバイアスだと思ってまして。
まずは、その自分の心地よいところから始めていって、だんだんそのバイアスが強いというか、ちょっと遠いところとも聴き合うことをトライをしていただけると、けっこう聴き合える輪の広さが広がっていくのかな? と思っております。
榎本:そうですね、年齢層に関しては、あまり関係はないと私も思ってるんですけど。ただ、経験ですよね。今まで本当、背中を見て厳しく育てられて、歯を食いしばって聴かれた体験がない層って、一定以上いらっしゃるので。体験の違いなので、トレーニングをすれば必ず聴き合えると思います。ありがとうございます。
榎本:最後のご質問です。「権威主義で自分を変える気がない上司のコミュニケーションが難しいです。相手に理解し合う気がない人に対してはどうすればいいんでしょうか?」。こちらについては、お二人からご回答いただけるとうれしいです。
篠田:そうですね。まず一般論と個別回答があると思うんですけど。一般論としては、相性の問題が1つあるなと思いました。先ほどの内田さんの回答ともこれ関連するんですけれども、この権威主義的だと感じられる上司の方も、素直に胸襟を聴く相手っていうのはたぶんいらっしゃる。そことの間では聴き合えている可能性があるとか。
そういう人にじっくり聴いてもらうと、この上司の方もだんだん聴かれた体験が蓄積されていくので、より幅広い人に対して聴けるようになっていくってことは、時間をかければ言えるんだと思います。
ただ、『LISTEN』の中でも最後のほうの章で書かれているように、「無理にみんなの話を聴く必要もないです」ということも非常に大事で。ご自身が相性悪いなっていう方と、無理にいい聴き合う環境を作ろうっていうのもなかなか厳しいので、そこはあまりご無理なさらず。
今お話ししたように、できれば間に人を置いて、そっちでいい関係作ってもらって。自分は間接的に関係を作るっていうのも、現実解かなと思って拝見しておりました。内田さん、いかがですか?
内田:ありがとうございます。難しいなと思っております。篠田さんの回答とちょっと重なるんですけど。「直接対決」みたいなことをするのは。けっこう難しいケースが現実では多くてですね。
例えば、上司・部下の関係でいくと。上司から見て「なんか部下がちょっと悩んでる」みたいな時に、部下にがんばってその悩みを打ち明けてもらおうとしすぎちゃうと、部下からすると「別にそれ望んでないんだって」みたいなところで。どんどん離れていっちゃうみたいのが、やっぱりあったりします。
そこは逆も、上司も然りで。ぜんぜん変わる気のない上司に対して、なんとかこう変わってほしいっていうコミュニケーションするのはかなりきついので。例えば、上司の同僚の人とか、上司と仲いい人と「ちょっと上司とうまくいかないんだよな……」とかっていう話をして。
「でも、あの上司こういうことあるよ」とか、自分の知らない一面を教えてくれたりとか。例えば、その方が「あいつちょっと悩んでるみたいだからフォローしてあげてよ」みたいなことを言ってくれたりとか。
やっぱり直接じゃないところで、その関係を保つ方法っていうところがあるんじゃないかなと思っているので。非常に難しい問題だとは思いますが、こういった方法もぜひ検討いただけたらなと思います。
榎本:ありがとうございます。職場の利害関係がある上司とのコミュニケーションは、一番難しいと思いますので。聴き合うのは、まず聴きやすい人たちから聴き合いはじめて、チームで解決するっていう進め方ができるといいなと思いました。ありがとうございます。
ではみなさん、今日は長い時間お付き合いいただきまして、聞いてくださいましてありがとうございます。
篠田:ありがとうございました。
内田:ありがとうございました。
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