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『100案思考』刊行記念 橋口幸生×田中泰延トークイベント 「仕事も人生も”下手な鉄砲も数撃てば当たる”でいい。」(全6記事)

「企画を1案持ってきて、突き返されると怒る人が多い」 電通コピーライターがアイデア出しの“数”にこだわる本質的な理由

代官山蔦屋書店にて、電通コピーライター・橋口幸生氏の著書『100案思考 「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる』の刊行記念イベントが行われました。本セッションでは、橋口氏と同じく電通コピーライター職を経て、現在は文筆家として活躍する田中泰延氏との対談の模様をお届けします。橋口氏いわく、いいアイデアを考えてくる人の共通点は「とにかくたくさん数を出すこと」。本記事では、橋口氏が『100案思考』を執筆した背景と、数をたくさん考えることの本質が語られました。

オンラインイベントならではのトークを展開

司会者:みなさんこんばんは。本日はご参加いただき、誠にありがとうございます。お時間になりましたので、『100案思考』刊行記念のトークイベント、「仕事も人生も“下手な鉄砲も数撃てば当たる”でいい。」を開催いたします。

それでは最後までお楽しみください。橋口幸生さん、田中泰延さん、よろしくお願いいたします。

田中泰延氏(以下、田中):よろしくお願いします。

橋口幸生氏(以下、橋口):よろしくお願いします。みなさん、本日はお忙しい中、集まっていただきありがとうございます。すごくたくさんのお客さまに来ていただいて、うれしいです。今日は改めてよろしくお願いいたします。

泰延さんもお忙しい中、ありがとうございます。

田中:みなさんこんばんは。今日はよろしくお願いいたします。リアルタイムでご覧になってくださる方も、それからアーカイブで見てくださる方もいらっしゃると思いますので、リアルタイムでしか見れない芸とかも、限定で見せようと思います。はい。嘘です。

橋口:ちょっと待ってください。画面の共有が……。

田中:これがウェビナーの難しいところで。

橋口:難しいところですね。

田中:こういうことが起こるたびに、僕はIZ *ONE(アイズワン)の話をするということに打ち合わせで決まっておりまして、私とIZ *ONEの出会いについて話をさせていただきたいと思うんですけれども、わりとニワカなんですよ。この話、画面の共有ができたら急に終わりますからね。去年の2月頃、YouTubeを見て……

(画面が共有モードになる)

あ、この話終わります。

橋口:すいません。泰延さん、IZ *ONEのコーナーは設けていますので、そこでたっぷり思い入れを聞かせてもらえればと思っています。

田中:(笑)。はい。

「青年失業家」から「地球始皇帝」に?

橋口:改めて、みなさん今日はありがとうございます。橋口と申します。ふだんはコピーライターをやっています。スライドの右から2番目にある『100案思考』という本を出版しましたので、その記念に、泰延さんと一緒に配信で対談をしているという次第です。よろしくお願いします。

田中:非常に名著と誉高い、前著の『言葉ダイエット』の時も、こちらの代官山蔦屋さんで対談させていただきました。今回もすごくおもしろい本で、一気に読んでしまって。まだ途中までしか読んでいないんですけど、だいたい3分の1は読んだので、今日は大丈夫です。

100案思考 「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる

橋口:(笑)。泰延さん、ずっと前に「全部読んだ」ってツイートしてくれてたじゃないですか。

田中:(笑)。誰が3分の1で登壇するんや! そんなん不安でしょうがないでしょう(笑)。

橋口:みなさんご存知、田中泰延さんですね。ベストセラーの『読みたいことを、書けばいい』を書かれて、最近、ひろのぶと株式会社を起業されたので、今日はそのことについても聞きたいなと思っています。

読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術

田中:あと最近、地球始皇帝に即位しました。

橋口:地球始皇帝という肩書きはどこから出てきたんですか?

田中:いやあ(笑)。なんとなく。

橋口:なんとなく(笑)。

田中:会社を作る前は「青年失業家」だったんですよ。青年失業家の次は、どれぐらい偉そうだったらいいかなと思って、なんとなく地球始皇帝にしてみました。

橋口:(笑)。起業されたので、次は社長ですもんね。

田中:そう。「社長」と言うの、恥ずかしいじゃないですか。

橋口:そうですよね。

田中:だから地球始皇帝になっています。「私の前に跪け」ということで生きています。

IZ *ONEを見て衝撃を受けた、K-POPのレベルの高さ

橋口:今日は、最近流行りの言葉でいうとアイスブレイクというか、枕として、僕の本となんの関係もないので、最近泰延さんがずっとツイートされているIZ *ONEの話を聞きたいなと思い。

田中:(笑)。まったく関係ないですね。

橋口:こういう仕事をしていてなんなんですけれども、ぜんぜんわかんないんですよ。

田中:IZ *ONEの「IZ」というのは、12という数字なんですよね。12をIZと見立てて、それが1つになるIZ *ONE。「みんなが注目する時」という意味で、「eyes(目)」もかけています。

僕は本当に、TwitterではIZ *ONEのことしか言わなくなっているんですけれども。写真の左から、ヘウォン、チェウォン、ミンジュ、ヒトミ、ウンビ、ウォニョン、サクラ、ナコ、ユリ、チェヨン、イエナ、ユジンの12人です。逆から呼んでもいいですけれども、それはやめておきます。

僕は、ファンになってまだ1年ちょっとのニワカなんですよ。彼女たちはいろいろあったんですけど、去年の2月ぐらいにカムバック(新曲のプロモーション活動を開始)しまして。

それでYouTubeを見た時に、「今のK-POPってこんなレベル高いことになっているのか」と衝撃を受けまして、もうYouTubeをIZ *ONEが出ているものは全部、今や見るものがないくらい見てしまいましたね。

橋口:YouTubeに作品が上がっているんですね。僕も見てみよう。

田中:はい、ぜひ。もともと期間限定だったもんで、今年の4月28日をもって解散してしまいまして。今日は解散してからまだ2週間くらい。僕は涙も枯れてしまいました。

橋口:Twitterでもショックを受けていましたね。

田中:本当にショックですよ。活動期間は2年半、4月28日に解散すると決まっていたんです。予定通り解散しましたけど、でも、社会は、世界は予定通りだったか? というのが僕の疑問ですよね。 

橋口:はい、はい、はい。

エンターテイメントの世界で実感する日本と韓国の差

田中:だから、僕が今後、IZ *ONE再結成に向けての何かの過激な行動に出る可能性は否定できないので。

橋口:(笑)。

田中:その時は「みんな、僕についてこい」という気持ちでいます。

橋口:解散してもそのあと再結成とかは、ミュージシャンの世界ではよくありますからね。

田中:それが難しくて。12人もいますからね。そして事務所がバラバラなんですよ。

橋口:そうなんですね。日本人と韓国人が混ざっているんですよね。

田中:その日本人3人は、先週日本に帰ってきちゃいましたから。

橋口:なるほど。

田中:そうなんですよ。ただ、さっきちょっと橋口さんとお話していたんですけど。こういう芸能とか踊りとか歌とか映画とか、エンターテインメントの世界で、韓国映画がアカデミー賞を獲ったり、BTSがグラミー賞にノミネートされたり、日本と韓国でむちゃくちゃ差が付いちゃっているなという実感がありますね。

橋口:そうですね。僕は芸能とか韓国のドラマはあまりわからないんですけど、ポン・ジュノが『母なる証明』を撮った時に、ここまで差を付けられたのかとびっくりしたのはよく覚えていますね。

田中:いやぁ、『마더(母なる証明)』は素晴らしい映画でしたね。

広告業界では当たり前の「とにかく数を考えろ」の考え方

田中:橋口さんと映画の話になると、たぶん本の話にまったく行かない可能性があるので。

橋口:そうですね。たどりつけないと思うので、ここで本題の話に行こうと思うんですけれども。もともと僕がこの『100案思考』を作ったきっかけに、コピーライターの100本ノックがあるんですよね。

田中:はい。

橋口:コピーライターになって広告会社に入社して、新人としてクリエーティブの局に配属されると、「とにかく数をたくさん考えろ」と。CMプランナーであってもコピーライターであっても、アートディレクターであってもみんなやらされていて。

僕も会社に入ってやっていたので、当然だと思っていたんですけれども。意外と他業種の方って、優秀な人でも、あまりアイデアの数を出さないなと思ったんですよ。

たまにコピーとかアイデアとかのワークショップをやっても、1案持ってきて突き返されると怒る人がすごく多くて。僕もたまたま広告会社に入ってコピーライターになったから、100本ノックが当たり前になっているけど、そうじゃなかったらたぶん同じような反応をしていただろうなと思ったんですよね。

広告会社のコピーライターにとって当たり前のことだし、誰でもできることなのに、みんながやらないのはもったいないなと思って、この本をまとめたという経緯です。

数を出す本質は、「根性論」ではなく「確率論」

田中:もちろん僕も電通という会社でコピーライターになって、同じ経験を経たわけですけれども。この本のタイトルを見た時に、今回僕が橋口さんにお伺いしようと思ったのは、「誤解されないですか?」ということなんですよね。

スライドに橋口さんも書いていらっしゃいますけど、つまり、「寝ないでやれ」とか、「とにかく歯を食いしばって書き続けろ」とか、そういう根性論に聞こえませんか? 大丈夫ですか? という。「それとは違う」という話をお伺いしたいんですが。

橋口:ありがとうございます。そうですね。昔は根性論の部分も正直あったと思います。例えば、僕が経験した理不尽なトレーニングでいうと、「先輩がボディコピーを徹夜で書いているのを、横でずっと見ていろ」と言われたことがあって。

田中:(笑)。

橋口:わりと現場の偉い人に言われたんです。ボディコピーを書いている先輩に「迷惑だからやめてくれ。帰っていいよ」と言われて帰ったので、徹夜はしなかったんですけど(笑)。

田中:邪魔ですよね(笑)。

橋口:そういう根性論の部分がないとは言わないんですけど、本質はそういうところになくて、単純に確率論だと思っているんですよね。

田中:確率論。

橋口:数を出せばその中にいいものが入っているというのは、確率的に間違いない。であれば、数を出したほうがいいに決まっているという。本当にそれだけの、単純な話だと思っています。

鉛筆1本あればでできるアイデア出しの方法

田中:はい。なぜ僕はこの話を持ち出したかといったら、以前、これも電通のコピーライターである阿部広太郎くんが本を出した時に、「僕は2,000本書きました」と言っていて。「1つのコピーを2,000本書いてその中から選んで仕事をしています」と言うから、「いや、それは寝られないんじゃないの?」という話をして。

「でも、それぐらいやんないと僕は芯に当たらないんだ」という話をしていて、それを今度、糸井重里さんがTwitterで見かけて、「いや、そんな根性論は今どきよくないんじゃないの」とおっしゃったことがあって。

橋口:はい、はい。

田中:でも、この本を読んでいただくとよくわかるんですけど、そうではなくて。100案考えてみることはすごく効率的で、しんどいことの逆だというのがよくわかったと、追々話していただければと思います。

橋口:そうなんですよね。一番手軽でやりやすいことだと思っています。アイデア出しのノウハウっていろいろありますけれども、難しいチャートを使ったり、付箋を壁にパチパチ貼っていくような特殊なものが多くて。実際そういう特別なことをやらないと、アイデア出しってできないと思っている人が多いと思うんですけれども。

そういうのが向いている人はそれでいいと心底思うんですけれども、僕みたいなズボラな人間は、とてもできないので。鉛筆1本あればできるやり方が一番いいんじゃないかと思ってやったんですよね。

配属初日の仕事は「50音を書き続ける」!?

田中:ちなみに、橋口さんの「隣で見とけ」じゃないですけども、僕が入った時はとんでもないことがあって。

橋口:はい、はい。

田中:「田中です。今日からクリエーティブに配属されました」と言ったら、鉛筆と、こんな5センチほどの厚みの原稿用紙をバサって渡されて、「今からここに、あいうえお、かきくけこ、さしすせそって50音を書き続けな」と言われて。

橋口:ええ! 

田中:ええ! 何これ!? と思って、一生懸命書いていたんですよ。これは『ベスト・キッド』のワックスがけみたいに、50音を書き続けることにきっと意味があるんだろうと思って必死でやっていたら、別の先輩が来て「何やっているの?」と。「あっちの先輩に言われたんです」と言ったら、「それ、お前、イジメだよ」と言われて。

橋口:(笑)。

田中:1日でくだらない冗談だとわかりました。そんなのは役に立たないです。

橋口:新人だとそんなのわかんないですもんね。僕も言われたらやると思いますよ。

田中:でしょ。

橋口:写経はありますけれどもね。名作コピーを書き写して、文章の構造とかリズム感とかをつかもうというのはありますけれども。天声人語とかでもなく、あいうえおを書き写すというのはすごいですね。

田中:(笑)。たぶん僕がそれをやっているところをみんなで見て、「あいつ、真に受けているぜ」と大笑いしていたと思うんです。

橋口:(笑)。もし、この中に広告会社志望の学生さんとかいらっしゃると誤解されるので、一応フォローしておくと、僕自身は「ボディコピーを書くのを徹夜で見ろ」と言われたくらいで、あまり理不尽な根性系のトレーニングをさせられたことは一度もないです。

存在価値を示すのは「数」くらいしかないというプレッシャー

橋口:ただ、僕がコピーを教えてもらったコピーライターの師匠が、強制はしないんですけれども、むちゃくちゃ数を書く人だったんですよ。磯島拓矢さんなんですけれども。

今でもよく覚えているのが、磯島さんと最初の仕事をした時に、僕がはりきってコピーを100案くらい持っていったら、それを一通り見たあと、「橋口、ありがとう。でも俺も書いてきたんだけど、見てもらってもいいかな」と言って、自分が書いた30案ぐらいのコピーを、当時3~4年目の僕に、真面目に見せて「意見を教えてくれ」と言ってきたんですよね。

田中:なるほど。

橋口:当然その30案は、僕のものより遥かに素晴らしかった。自分より技術と経験が遥かにある人が、努力までしているから、自分は最低でも数くらいは上回らないと、存在価値が0になってしまうと焦った経験がありますね。根性論ではなく、そういうプレッシャーは感じていました。

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