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劇薬の仕事術×超クリエイティブ 圧倒的な成果を生み出す仕事術(全4記事)

空気に流された意思決定がもたらす「言い訳」と「失敗」 マーケターの心得は、“逆張り”にトライすること

マーケターはトレンドを意識することが求められますが、コロナの影響により人々の生活スタイルが大きく変化し、従来のマーケティング戦略が通用しない状況が生まれています。そこで、あらゆる販促製品・マーケティングサービスを持つ企業が一堂に会し、サービスを比較・検討できる場として開催された、DMM[SHOWBOOTH]主催の「マーケティング・販促サミット2021 Spring」。本記事では「圧倒的な成果を生み出す仕事術」をテーマに、足立光氏と三浦崇宏氏が対談。広告会社・マーケティング会社が、意思決定を行う際のポイントを語りました。

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“現状の延長線上で考えるクセ”をやめるには?

足立光氏(以下、足立)なかなか示唆に富んだ話なんですが、クライアント側もけっこう近いことがいくつかありまして。たぶん「枠を外す」というか、目的に立ち返るのが大事で。目的と目標と2個あるんですが、そもそも毎月いろんな仕事をやっていると、仕事を進めること自体が目標になっちゃうことってけっこうあるんです。

そもそもこの仕事は、何のためにやっていたんだっけ? 何を上げるため? 何をするため? という目的に立ち返ってあげると、おっしゃるとおり「これじゃなくて他のことをしたほうがいいかも」と考えられるんですよね。なので、「目的は何か」を常に考え続けるのが大事である、というのが1つ。

三浦崇宏氏(以下、三浦):おっしゃるとおりですね。

足立:「目標」と言ったのは、例えば3パーセントアップとか、5パーセントアップを目指すと、みんな現状の延長線上でなんとか改善しようと考えちゃうんですよ。

それはそれでやればいいんですけど、本当に根本的なところから考えなくてはいけない場合は「2割、5割上げるにはどうしたらいいか」ということを考えると、みんなが「現状維持」「ちょっと改善」とは違うことを考えるようになるんですよね。

三浦:おっしゃるとおりですね。

足立:なので実は、5パーセントアップという目標設定は、人の心を縛り付けていると思っています。だったら最初から「20パーセントアップするためには、どうしたらいい?」と考えたほうがいいと思うんですよ。

三浦:あとはもう、一発逆転する(笑)。例えば、業界ナンバーワンになってみるとか。

「目的は言葉で設計する、目標は数字で管理する」

三浦:僕も、目的と目標って分けて考なきゃいけないと思っています。僕は「目的は言葉で設計する、目標は数字で管理する」ということをよく言っていて、これが真逆の方が多いんですよ。

足立:え? 目的が?

三浦:目的を数字で管理しちゃうんですよ。目的は「10パーセントアップだ」と言ってがんばって、目標を話すために「いいからがんばれ」「死ぬ気でやれ」と言う。これ、本当は真逆で。目的は業界ナンバーワン、あるいは「日本中のアクティブなお年寄りの全員に、もう一回車の喜びを思い出してもらう」とか。

概念や社会の変化とか、いわゆるパーパスということをよく言われますが、その企業・ブランドが目指す未来を言葉で設計する。「そのためには、今は市場のシェアが7パーセントしかないから、15パーセントまで広げないといけないね。そして今期の予算でできるのは、せいぜい10パーセントまでだね」みたいな。

目的は言葉で設定して、そこに至るまの道のりを、目標を数字で管理していく。ここをごっちゃにしないというのは、すごく大事だと思います。

足立:そうですね。確かに、けっこうごっちゃにしている会社があると思いました。

三浦:お仕事をしていくと、めちゃめちゃよくありますよね(笑)。結果、これをやっちゃうとメンバーのモチベーションが落ちていくんですよ。「10パーセント上げろと言われても、それで俺の給料が上がるわけじゃないしな。なのに『死ぬまでやれ』とか」……。

足立:外資もけっこうそうですけど、いろんな会社が目標値が上から降ってくるんですよね。自分で決められるわけじゃないんですけど、そうした場合にできるかどうか……。絶対にできないような数字がいきなり降ってくるのは、ネガティブに考えがちなんですが、そこは「気の持ちよう」だと思っています。

仕事は「難しければ難しいほどおもしろい」

足立:(スライドを指しながら)「意思決定のコツ」と書いてありますが、5パーセント伸ばすよりも、20パーセント伸ばすことを考えたほうが絶対楽しいんですよ。

三浦:楽しい。

足立:やっぱり仕事は、難しければ難しいほどおもしろい。みなさんゲームとかもそうだと思うんですけど、簡単にクリアできるゲームっておもしろくないんですよ。やっぱりね、難しくないと。

三浦:難しいことばっかりやっていますもんね(笑)。

足立:「人生難しくて困っております」という感じですが。

三浦:要はマーケティングって、不可能を可能にするためのプロセスです。普通に努力していく、普通に営業していくだけだったら……。

足立:達成できないんですよ。

三浦:達成できないことをどうやるかだと思うので、まさにそうですよね。足立さんの本の中でも「意思決定をする時には、みんなが反対することしかやる意味がない」ということをおっしゃったと思うんですけど。

足立:「『みんなが賛成すること』をやるだけなら、そもそも自分はいなくていいし」という感じですけどね。

三浦:マーケターは、みんなが「無理だ」と思うことに踏み込むから、意味があるわけですよね。

足立:これはまさに、意思決定もそうです。みんなが「これでいい」という時に、「本当にそれでいいのか?」と、一回立ち止まって考えるのはとても大事だと思います。

そうすると、なんとなく空気に流されて意思決定をしなくなるので、自分はいつも「みんなが賛成すること」の反対側も考えるようにしてます。あえてみんなと違うことを考えておくと、少なくとも「みんながいいと言っているからやった。でも失敗」ということはなくなると思いますよ。

三浦:でも足立さんって、今までのV字回復……。

足立:どっちが司会者でしたっけ?(笑)。まあいいや。

三浦:僕も聞きたいことがたくさんあるんですよ。

仲間を作る上で、一番有効な手段は「笑かす」こと

三浦:ある会社にあとから足立さんがCEOとして入ってきて、V字回復をしてきたじゃないですか。その時に現場から反対があったりとか、足立さんの改革や意思決定に対して、ネガティブな人がいることもあったと思うんですよ。そういう時って、どうやって貫いて巻き込んでいったんですか?

足立:笑かします。

三浦:「笑かす」。

足立:これは基本的に、意思決定というか組織を動かすという話なんですが。やっぱり、どこの馬の骨ともわからない人がいきなりポンと入ってきて、業界ももちろん知らないし、ぜんぜん「業界の常識」とは違うことを言うかもしれませんよね。その時に、最初にみんなに動いてもらうためには、仲間にならないといけないと思っているんですよ。

仲間になるにはやっぱり、笑かすのが一番いい。今はあんまりできないけど、昔だったら飲み会とかもありましたね。

三浦:今はできないけど、飲み会というものがあります。有効なコツなんですけども。

足立:ですよね。今はできないけどね。

なのでやっぱり、仲間になってくれないと初動は動いてくれないんですよ。笑かすでも仕事以外の関係を作るでもいいんですけど、「こいつが言うならやってあげるか」という状態にして、仲間になってもらわないといけない。

三浦:めちゃくちゃいいですね。マーケティングや販促で、まさに今日の「圧倒的な成果を生み出す仕事術」というと、すごくクレバーでクリアで無機質なやり方があると思いがちなんですが、結局は足立さんみたいな人でも「笑かす」とか。僕も本当に、辛抱強く根回しすることもめちゃくちゃやるので、そこはやっぱり忘れちゃいけないところですよね。

足立:そうですね。三浦さんはすごく乱暴者に見えるんですけど、ちゃんと根回しとか気を使うのは意外でしたね。

三浦:根回しすごく大事(笑)。

足立:根回しは大事ですね。

マネージャーは、部下に目標を“翻訳”して伝えることが大切

足立:いきなりワントピックで終わっちゃいそうなので、次のトピックにいきたいと思うんですが、この話はさっきちょっと出ちゃいましたね。

三浦:「意思決定のコツ」の中に入っていましたね。

足立:入ってましたね。「目標設定のコツ」は何かありますか?

三浦:繰り返しになっちゃいますが、目的は言葉で設計し、目標は数字でマネジメントしていくことをやっていただけるといいと思います。あと、さっき足立さんがおっしゃったとおりで、企業の中にいると上から数字が降ってきて「うるせぇ。目標だ」って言われると思うんですけれども。

それをチームのみんなに翻訳してあげることですよね。「我々のチームが部署の中で最高の成績を出すんだ」とかでもいいし、僕がよく言うのは「これをマーケティングの教科書に載るプロジェクトにしよう」という言い方をします。

当然、クライアントさんからいただいている課題はあるんですよ。「こういう数字を出してくれ」と。それはもちろん、クリエイティブディレクター・チームリーダーである僕の中にはあるんですが。

「この仕事さ、マーケティングの教科書に載る仕事にしようよ」と言うと、メンバーの中で「がんばろう」というモチベーションの高まりもあるんですが、ちょっと方向が変わるんですよ。

「これって、賞を獲る仕事・カンヌに出すような仕事じゃないんだな」とか。圧倒的なグラフィックでバズって、みんなが感動する。感動的なCMを作って、業界で褒められる。そういう仕事じゃないんだな、と思う。「マーケティングの教科書に載る仕事」という一言の中に、僕の目指したい方向性がいろいろあるんですよ。

だから「『目標設定』と言われても大変だな」と思われるディレクター・マネジメント層の方に関しては、どうやって自分の言葉に翻訳するかということは、一つ考えていただくといいかもしれないです。

どんな数値目標でも、チームの士気を高めることが大事

足立:そうですね。僕も2点だけで、現状の延長線上でできる数値を目標にしないこと。

それと今、三浦さんが言ったこととすごく近いんですが。特に高い目標の場合は、いかにそれが楽しいか・チャレンジングでおもしろいかということを、下の人や組織にはちゃんと言ってあげないといけない。「こんな数字来ちゃったよ。ははは」と、ネガティブな感じは絶対に出してはいけない。

三浦:そうそう。

足立:どんな数値目標でも、いかに楽しく「これは本当にチャレンジしがいのある目標だ」と思わせるのが、チームをまとめる人の役目だと思います。

三浦:おっしゃるとおりです。無茶苦茶な数字を出すことはすごく大事なんですけど、その数字を(見た)メンバーが「これってただの妄想でしょ」みたいな。

足立:「絶対できないよね」なんて思われちゃだめですもんね。

三浦:「これって、三浦さんがみんなを鼓舞するために言ってるやつでしょ?」と思われたら終わり。

足立:確かに。

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