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伝える力【話す・書く】研究所所長であり、 ライティングサロンも主宰する山口拓朗さんに学ぶ 「伝わる文章」の実践的ノウハウ(全7記事)

要約力とは、「死んでもこれだけは言っておく」を見つけられる力 短く伝えるスキルを磨く、140字の「要約」の習慣

インターネットを通じて誰もが自由に発信できる時代。ブログやSNSなどで文章を書く機会も多くなっています。本セッションでは、「伝わる文章」をテーマにした、山口拓朗氏と高橋朋宏氏の対談の様子を公開。数多くの文章術をテーマにした著書を出し、ライティングサロンも主宰する山口氏から、「伝わる文章」の極意を学びます。本記事では、著者を目指す時に重要な「情報発信力」と、情報収集力の向上や主体的な生き方にもつながる「要約力」について語られました。

フリーライターになったことで、書き方の幅が広がった

高橋朋宏氏(以下、高橋):山口さんは最初に紙の書籍でコミュニケーションの本を出されて、その後に電子書籍を出されて、その次に書いた本がこの『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける87の法則』。ここから紙の書籍で、本格的に文章についての本を書き始めたということですね。

伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則 (Asuka business & language book)

山口拓朗氏(以下、山口):そうですね。ここがスタート地点ですね。

高橋:これが何年ぐらいですか?

山口:2014年の1月だったと思います。

高橋:ライターとして独立されたのが2002年ということは、12年、ライターとしての経験を積んで書いた本。

山口:そうですね。フリーのライターになった当初も、ありがたいことにいろんな出版社の編集者と付き合いができてくるわけですね。やっぱり編集者のタイプも本当にいろいろで。今まで1つの会社に所属している時に指導されたこととは、また別の要求がけっこう来るんですね。

「とにかくもっと導入に力を入れてくれ」とひたすら言ってくる編集者とか、逆に最後の一段落をすごく大事にされている編集者さんとか。だからフリーライターになっていろんな仕事をするようになって、「あ、こういう書き方もあるんだ」ってまた幅が広がったところもあります。

フリーになって十何年経ってからこの本を出せたのは、本にとっても、すごくよかったのかなと思っています。僕が学んできたいろんな要素を、ただこの中に盛り込んだかたちなので。いろんな経験と体験がつまった1冊になっているかなと思います。

本を出すには、「自分はこれだ」という武器を見つけること

高橋:なるほど。ライターのお仕事をされている方はたくさんいらっしゃると思うんですけれども、そこから本を書かれる著者になる方はそんなに多くはないじゃないですか。

山口:そうですね。

高橋:もしライターの方が、いつか本を出したいという志を持った時には、どういうことをやっていくべきだとおすすめされますか? 

山口:うーん、そうですね。私の場合はライターというスキルのテーマで本を書いていますけど、多くのライターさんは、別に文章術の本を出したいわけではないと思うんですね。

それぞれのテーマですよね。例えばファッションのライターとか映画のライターとか、それぞれの切り口やアプローチを持っていると思うので、やっぱりそこをとにかく磨くことでしょうかね。

高橋:専門領域を磨く。

山口:専門領域をとにかく磨くことが大事かなぁと思います。何か突出した、「自分はこれだ」という武器を見つけないと、やっぱり本にはならないと思います。

本を出したいのであれば、世の中には自分が書きたいと思っているテーマでどういう本が出ているのかを見ることもすごく大事です。その中で、自分にしか書けないものを探していくことですね。その意識を持つことがまずは大事かなと思います。

高橋:確かに、美容ライターの方で著者になっている方もいらっしゃいますよね。

山口:いらっしゃいますね。そういう意味では、本を書くということ自体は、もうライターとして、プロとしてやられている。アウトプットすることに関しては問題ないと思うので、テーマ設定と中身のほうが大事かなとは思います。

文章を書いて発信することで、自分のコンテンツになっていく

高橋:なるほど。あと「発信」について言うと、どうでしょうか? 

山口:そうですね。私も最初の電子書籍を出した頃、2009年か2010年ぐらいにアメブロを始めたんです。そこの中で「文章の書き方」について書き始めたんですね。最初は、「なんてつまらないことを書いているんだろう」と思ったんです。「こんな文章の書き方のブログなんて読む人は、世の中にはいないだろうな」と思いながら。

高橋:当時はね。

山口:自分が学んできてよかったことだから、一応書き留めておこうぐらいの気持ちで書いたんです。そうしたら意外とコメント欄で、「文章の書き方について初めて学びました」とか、「山口さんの言うとおりに書いてみたら少し書けるようになりました」とか、「山口さんってセミナーとかやってないんですか?」とか、いろんな声をいただけるようになって。

高橋:おぉ~。なるほど。

山口:その時に、文章の書き方ってニーズがあるんだなって。なんとなくですけど、わかってはいたんですよ。それで著者になりたいということではなかったんですけど。「あ、世の中の人たちって文章の書き方を求めているんだな」とは感じました。

だからとにかく情報発信を始めることは、著者を目指すうえですごく大事かなと思います。さっきも話しましたけど、文章を書くことは自問自答していくことなので。日々ブログを書くことは、日々自問自答せざるを得ないわけですよね。それを意識的にしていけば、テーマとか内容がよりしっかりと自分のコンテンツになっていくと思います。

一度書いたものはまた書くこともできるし、口で伝えることもできるわけなんですけど、まったく何も書いてないもの、考えたこともないことをいきなり出すことはできないと思うので。

SNSで文章を発信していきたい人におすすめの本

山口:ブログじゃなくてもいいかもしれないけど、ブログってある程度の量で文章を書きますから。著者を目指す方は、ブログで、今だったらnoteとかで、文章を書いていくのがすごくいい方法じゃないかなと思います。

高橋:山口さんがこれまでお書きになられた本の中で、発信していくためにおすすめの本はどれですか? 

山口:そうですね。この本はすごくおすすめですね。『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』という本なんですけど。情報発信をする方をターゲットにして書いたものですね。

「うまく」「はやく」書ける文章術

けっこうSNSの話も後半に出てきます。SNSで文章を書く時にどういうことを意識しなくてはいけないのか、詳しく書いているので。文章術も学べるし、発信術も学べるということで、おすすめしたいなと思います。

高橋:なるほど。本では「5つのステップがある」ということですけど、どういうステップなんですか? 

山口:ざっくりと情報収集をして、準備をして、書いて、推敲してみたいな。いわゆる書く時に必要なステップを段階的に表現している感じですかね。

今日会った○○さんについて要約する

高橋:なるほど。こちらに『9割捨てて10倍伝わる要約力』という本があって、今朝Clubhouseでこの話をしたんです。

9割捨てて10倍伝わる「要約力」

山口:さっきTwitterを見て初めて知って、もし知っていれば入っていきたかったんですけど。ありがとうございます。

高橋:(笑)。ぜひぜひ、今度なにかやりましょう。

山口:あぁ、ぜひぜひ。ありがとうございます。もう、喜んで行きます。

高橋:この本の最後のほうに「140字の投稿で、日常の中で要約の練習をしてみよう」というところがあって、すごくいいなと思ったんですよね。よくやられている方もいるかもしれないんだけど、本や雑誌、漫画を読んだら要約する。映画・ドラマ・アニメとかを見たら要約する。セミナーに行ったら要約するとか。

この中で、これはぜひやってみようと思ったのが、「今日会った○○さんについて要約する」。

山口:すごくいいと思います。要約するというと、多くの方が映画や本だと思うかもしれないんですけど、いろんなことが要約できたほうがいいんですよね。

タカトモさんと初めてお会いするのであれば、タカトモさんについて、どういう人なのかを要約しようと思うと、会った時の意識もまったく変わってくるわけですね。

つまり、タカトモさんのことをしっかりと観察するだろうし。観察するというのは言葉の内容だけじゃなくて、例えばタカトモさんのファッションとか、表情とか、間合いといったものを含めてタカトモさんからなにかを感じ取って、自分なりにまとめていくと、文章力はもちろん、情報収集力のアップにもつながるんですよね。

最初は難しく感じるかもしれないです。意外と「人」はいろんな情報を持っているので。その人が何をしているかも情報だし、その時何をしゃべったかも情報だし、表情も言葉も、非言語的なものもすべて情報なので。

その中から自分なりになんかテーマ性を持って、例えばタカトモさんに感じた一番の魅力にポイントを絞って書くとかでもいいですし。その人の特徴をうまく抽出して書いていく練習は、すごくいいと思います。

初対面の時に感じたことも、アウトプットしないと忘れてしまう

高橋:そうですね。もしこれまで生きてきて、例えば編集者になってからこれをずっとやっていたら、人生が変わっていただろうなと思って。

山口:あぁー、そうですよね。たくさんのすばらしい方に会ってきても、なんとなくそういうものの情報は、よほどのことがない限り、基本はアウトプットはしないですもんね。

高橋:そうですね。

山口:だから、それをしておくとすごくおもしろかっただろうし、おそらくタカトモさんがお会いしてきた方々をまとめたら、1冊の本になると思います。

高橋:いやいや(笑)。

山口:(笑)。1人1ページくらいずつ紹介しても、なんか本になりそうですけど。

高橋:例えば一緒に写った写真も、いろんな情報を伝えてくれるんですけど、やっぱりその時に感じたことを文章に残していたら、それはどの本にも書かれていない情報ですよね。

山口:いやぁ、本当ですね。メディアから拾ってきた情報ではない、自分の1次情報ですから、もう唯一無二の情報ですね。

高橋:ですよね。

山口:めちゃめちゃいい情報になりますよね。

高橋:その初対面の時に感じたことって、二度とないはずなので。どんどん忘れていくので。

山口:忘れていきますからね。先ほどの模写もそうですけど、書き出すことによって、その日のタカトモさんと会ったことの大事なエッセンスが記憶に残るというか、自分の体に残っていくので。アウトプットしないと、なかなかそこは残りにくいと思います。

Twitterは140文字の制限があることが本当にすばらしいと思います。ブログとかは逆にいろいろ書けちゃうから、こういうエクササイズとしてはよくない。制限があることは、その中で大事なものを抽出しようという意識が働くので、手軽に始められますし、ぜひやってもらいたいなと思います。

要約力とは、「死んでもこれだけは言っておく!」を見つけること

高橋:この要約力の定義を、ちょっと読んでいただけますか。

山口:読ませていただきます。「『要約力』とは一体なんぞや。そう聞かれたら答えはこうです。死んでもこれだけは言っておく! を見つけること。『これだけは言っておく』でもいいのですが、そこに覚悟を植え付けるためにあえて『死んでも』と添えました」。はい。

高橋:(笑)。すごい定義だなと思って。

山口:そうですね! まぁ、本当に一言で。究極的には、あなたがそれを10秒で表現するとしたらなんなのか。文章だとしたら、20文字で言うとしたらなんなのかを考えることが、要約力を高めていくすごくいい方法だと思うんですよね。だから本当に、それを言えなかったら死んじゃうぐらいの気持ちで、その一言を見つけていくのがすごく大事かなと思います。

高橋:子どもの頃、国語の問題で「これを20字以内にまとめよ」とか、「100字以内にまとめよ」とかってよくありましたよね。

山口:ありましたねぇ。

高橋:あれ、大嫌いだったんですけど。

山口:(笑)。

高橋:でも、編集者にとってあれ以上の勉強はなかったんだろうなと。

山口:そうですねぇ。今は時代的に、情報がとにかく多いじゃないですか。とにかく情報に飲み込まれてしまって、翻弄されちゃってる人もけっこう多いと思うんですよ。だから、主体的に要約をしていく作業をしていかないと、本当に情報に飲み込まれて、あぁわかんないみたいな感じになって……。

情報はいろいろ知っているんだけど、じゃあそれを人に伝える時に、なんて言えばいいんだろうか、どうしようかみたいになってしまうのは、すごくもったいないと思うので。やっぱり一言で伝える。死んでもこれだけは言っておくと常に意識しながら物事と接するのは大事かなと思っています。

「要約をすること」は、「主体的に生きること」

高橋:この本の中にも書かれているんですけど、人は往々にして「○○で、××して……」みたいな表現が、永遠に止まらないで続いていくと(笑)。

山口:そうですねぇ。

高橋:これ、日本語だけなのかな? 英語はどうなんですかね。

山口:英語は比較的少ないです。そういう症状は、特に日本語に多いですよね。日本語は主語と述語が離れやすいのも特性の1つじゃないですか。

「○○で、××で、□□で、△△で……私は感動しました」なのか、「感動しませんでした」なのか、最後まで話を聞かなきゃわからない言語でもあるので。

高橋:(笑)。わからない。

山口:先延ばしをするというか、曖昧にする。よく日本語的な特性として言われることですけど、「曖昧さこそが美徳」的な意識を持っている方も若干いて。

文芸的な表現とかではそういうのが重要な時もあるとは思うんですけど。世の中で多くのケースでは、やはりなるべく短く伝えることのほうが、相手にとって親切だし、理解してもらいやすいし、共感もしてもらいやすいので。やっぱりそこは短く伝えるスキルを磨いていったほうが、その人のためかなぁとは思っています。

「要約をする」のは、僕は「主体的に生きる」こととイコールだと思うんですよね。この情報の中で私にとって大事なものはなんだろうかという考えを、自問自答することだと思うので。そういった習慣をつけることによって、文章力だけじゃなくて人生そのものが良くなっていくんじゃないかなと(いう思いを)、僕はこの本の中に込めています。

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