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『営業はいらない』三戸政和×『無敗営業』高橋浩一 結局、営業っているの?いらないの?(全7記事)

コンペで8年無敗の営業コンサルが語る「営業」の誤解 恋愛・就職・副業に役立つ万人向けのスキル

累計16万部突破のベストセラー『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』の著者であり、『営業はいらない』にて「あと10年で、営業マンは不要になる」と語った、株式会社日本創生投資 代表取締役社長 三戸政和氏。一方で著書『無敗営業』にて「営業力とは技術である。誰でも身につけられる」と語り、自身の「コンペで8年無敗」のノウハウを公開した、TORiX株式会社 代表取締役 高橋浩一氏。「営業」に関するヒット書籍を持つ両名が、2020年8月11日に「結局、営業っているの? いらないの?」というテーマで対談を行いました。本パートでは「今、アポが取れている営業は何をしているのか?」などについて語ります。

今、アポが取れている営業は何をしているのか?

高橋浩一氏(以下、高橋):僕、ちょっと違う角度で。(三戸政和氏の著書)『サラリーマンがオーナー社長になるための企業買収完全ガイド』あるじゃないですか。

サラリーマンがオーナー社長になるための企業買収完全ガイド 起業よりも簡単! 独立できて低リスク

その中に「ホームページにこういう情報を載っけて、会社を買う時にはプレゼンをするのが大事です」みたいなのがあって。そこがすごくおもしろいなと思ったんですね。めちゃくちゃ営業マインドというか。事実、その本の中に「会社を買うというのは、単純に買うということじゃなくて、人を相手にするもの」というところがあって。

だから「営業力」はやっぱりすごく大事だとは思うんですけど。僕が、三戸さんの本を読んで思ったのは、単純な営業専任職の人は、だんだん仕事がなくなっていくというか。前工程が後工程とくっついていくと思うんですね。

例えばベルフェイスとか普及してきていますが、(対談当時)コロナの影響でどんどん会えなくなっているんですけど。アポが取れないのって、基本的に足切りラインをクリアできない人が、お客さんと連絡を取るというところに届かないせいなので。

今、アポを取れている人って、自分でちょっとしたマーケティング的な動きをやって。資料も送って、電話もして。(情報提供でお役立ちした後に)「ちょっとオンライン商談しますか?」という感じで、実態としてはマーケティングと営業がだんだんくっついてきているんですよね。

あと、いわゆる無形商材だと、納品とかデリバリーをやる人がむしろ営業もしてくれるとよいのでは? と。お客さんからすると、ちゃんとお願いする相手が営業してくれると、うれしいんじゃないかなと思って。

だから、(単体で付加価値を出せる営業以外は)だいたい前工程と後工程が吸い寄せられるような感じになっていくんじゃないかなと思って。マーケティング的なのとくっついていくのが、たぶんベルフェイスみたいな感じで。入り口で商談機会を作る人が、ついでにクロージングもやっちゃうみたいなパターンとか。

もしくは「私が納品します。ご満足いただけたら、追加で提案します」みたいな。例えばITだったら、エンジニアの人が営業するみたいな。弊社のお客さまでも、いわゆるSIやITコンサルの会社さんはそっちの方向にいくケースが多くて。「売るだけ」の人って、ズレやすいんですね。

僕は、やっぱりノルマの存在がすごく大きいなと思って。売り上げのノルマとか目標未達に引っ張られて「ただ売るという行為をする人」が、どんどんお客さんと離れていっちゃうなと。

それがこの本『無敗営業』を書いたきっかけでもあったんですけど。

無敗営業 「3つの質問」と「4つの力」

“営業”という言葉につきまとう、ネガティブなイメージ

高橋:だから、実は三戸さんの本の中ですごくおもしろいなと思ったのが、営業を前提としない組織設計とか、事業の設計をするというのが、これめちゃくちゃ大事な観点だなと思って。僕の会社も、前は分けていたんですけど。営業専任をなくして、すべて「後工程をやる人が営業をする」にしたんですよ。

三戸政和氏(以下、三戸):コンサルティングってこと?

高橋:そうです。ちょっと前から『THE MODEL』という本が流行ってます。

THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

「マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスが協業する」という本なんですけど。単に数字のみを追いかけるフィールドセールスになってしまうと、お客さまの満足度を下げるのでは? というのもあって。だったらむしろ、どっちかに寄せるのがいいなという……。

三戸:いや、まさにそうだと思います(笑)。

高橋:世の中では、営業という言葉につきまとうネガティブなイメージがあって。僕も正直な話、この本を出すまでは、けっこう営業については複雑な思いがあったんですね。例えば僕、新卒で入ったのがコンサルティングの会社だったんですけど。そういう会社を出て、(その後に)営業にまつわる仕事をしている人って、基本的にいないんですよ。

僕はコンサル会社を出た後に、ベンチャーをやって。でもベンチャーって、自らめちゃめちゃ営業するじゃないですか。テレアポもやるし、会食とかもあるし。会社を大きくするために自分で仕事を取ってくるみたいな感じが、やっぱり最初の数年は必要なので……それをきっかけにたまたま「本を書きませんか?」みたいな話があったんですけれども。営業にまつわる仕事って、ちょっと世の中的にあんまり……。

三戸:印象が悪い?(笑)。「ノルマ証券」みたいなものですね。

若者の営業のイメージは「知的な職業」へ変わりつつある

高橋:……と思っていたんですけど。ただ、逆に『無敗営業』を書きながら「営業はズレないことが重要」と、整理する機会にもなりました。最近では「営業が知的な職業だ」という意見も、SNSとかでブワーッと多くなってきてるんです。

たぶんそれは、コロナの影響でデジタルマーケティングとか、対面を前提としない営業の人たちがすごく増えてきたので。どっちかというと「デジタルとかロジックとかが得意な人たちの主戦場」みたいな感じになってきた。今、けっこうTwitter界隈で「営業を語る」人たちが、めちゃくちゃ増えているんですね。

三戸:営業を語るんですか?

高橋:語る。

三戸:何を語るんですか? こういうふうにすべきとか……。

高橋:営業の体系や体験を語るみたいな。そういうふうに「世の中の見方はちょっと変わったんだ」と思うところはありますね。でも僕『無敗営業』の前に出した本も営業の本だったんですけど、あんまりPRとかしなかったんですね。怒られちゃうんですけど(笑)。

三戸:本出してるのに(笑)。

高橋:当時はSNSとか普及してなかったので、手段もなくて。ただ著者として、僕はこれの前に2冊出しているんですけど「3回コケると、だいたい著者は死ぬ」という噂みたいなのがありまして(笑)。3冊目の『無敗営業』は「日経さんのためにも、これは死ぬ気で売ろう」と。SNSで……来る日も来る日も本屋の写真……。

三戸:あぁ! でもTwitterも、けっこうやっていらっしゃいますよね?

高橋:やってます。そうしたら、気が付くと営業のイメージを「知的な職業」と捉える動きが進んでいるなと……特に若い人の間でけっこう増えているんですけど。その人たちの生態を見ていると、だいたいマーケティングとインサイドセールスとフィールドセールスが協業する世界観の中でやっている人が多いので。

三戸:今、現時点の人ですよね?

高橋:そうです。『無敗営業』は、営業が専任じゃない人もけっこう買っていて。マーケやっている人が買っていたりとか。なんかわからないですけど、人事の人が買っていたりとかしていて。

営業の定義をどこまでにするか問題

高橋:だから僕は、三戸さんの本の中の営業のエッセンスの中でも「営業力」というのがすごく大事だなと思っていて。

三戸:まだ「営業の定義をどこまでにするか問題」が、一番入り口に必要だと思うんですよね(笑)。

高橋:そうですね(笑)。

三戸:だからマーケティングがなくなるとは、私は思っていないんですよね。それはニーズを取り込んでいくというところもそうだし、自分たちがこういう良いものを伝えたいとか、売りたいというプロダクトアウト的なところもそうだし。その辺はなくならないと思うんですよね。

マーケティングってどっちかというと、モノづくり・サービスづくりみたいなところに近かったりすると思うので。その次の段階の、実際にリアルにモノを売ってくというところから、相当(仕事・役割が)なくなるねと思っている感じなんですよね。今のお話の納品のところで言うと、私はここもそんなに「営業」というイメージで捉えていなくて。

例えば製造業なんかでいうと、営業と技術者がお客さんの声を聞いて、それ専用に設計を仕上げていくみたいなところがあるじゃないですか。これは納品みたいなところだと思うんですけど。この辺は、営業っちゃ営業かもしれないんですけど。お客さんの声を聞きながら設計を変えていって修正していって、それを納品していくということだと思うので。だけどこれも営業と言っちゃうと、営業の幅が広すぎるので(笑)。

高橋:ハハハ(笑)。

三戸:こことここ(広すぎる「幅」の両極端の部分)は、私は基本的には現時点で営業とは言わないようにはしています。というのを一応、本の立ち位置として話しています。

高橋:そうですね(笑)。

三戸:だからそういう意味で言うと、たぶん高橋さんと一緒だなと思うんですけど(笑)。この、間のところがとにかく今、最初に言ったとおり「買い手と売り手で情報がマッチングしていないとか差があるから、営業がいるよね」というところに関しては、もうほぼほぼなくなるよねという感じなんですよね。

それは「商品設計の仕方」と「情報の流通のあり方」と、あと「人間の価値観」が……(最初の質問に対して)3つ言えましたね(笑)。それが……。

(一同笑)

喋ってきたらやっぱり思い出しますね(笑)。……というところで変わっていくな、と思っている感じですね。

エンジニアの人々が持つ「営業アレルギー」という“病”

高橋:そうですね。僕はまだ営業的行為はなくならないと思うんです。最近、IT系とか製造業の会社さんから依頼が多いのが「エンジニアの人に営業を教えてほしい」と言われます。

三戸:うんうん。それはなんとなく、意味わかる。

高橋:それはやっぱり、ノルマのために注文だけ取りに来る人は、だんだんいらなくなって。現場をわかっていて、お客さんのことをわかっていて。お客さんに何が刺さるかわかっている人には、ちゃんと数字を作るということを身に付けさせたいんだと。

でも、その依頼の中に注意事項がありまして。「営業という言葉は使わないでください」って言われるんですよ。

三戸:へー!

高橋:それはなんでかと言うと、アレルギーを起こすということで(笑)。

三戸:辞めちゃうんだ。嫌がる……。

高橋:辞めちゃうということはないんですけど。その「営業」という言葉にまつわるイメージというのがあって。だから前も、製造業の会社さんで講演してくださいと言われて、エンジニアの人たちに講演をしたんですけど。資料の中の「営業」という言葉はすべて「提案」という言葉に書き換えました。

三戸:それだから……いや、けっこう本質な気しますけどね。やっぱり営業って「じゃあ良いの? 悪いの?」「白黒はっきりさせようよ」みたいな感じで、良いの? 悪いの? と言ったら、たぶん99.9パーセントぐらいの人が……。

あ、でもこれはちょっと違うかもな。「営業いらないよね」って「ないほうがいいよね」ってことだと思うんですよね、それってたぶん。それとか「嫌なものなんだよね」という考え……。

高橋:それはどうなんですかね……。もともと「業を営む」というのは根本的なことなので。

三戸:良い言葉。

「営業職」は不要になるが「営業力」はもっと必要になる?

高橋:ノルマのために注文を取りに来る存在が必要とされなくなってくるというのは、けっこう確実だと思うんですけど。それと営業という型が、ちょっと紐付きすぎているから。普通にエンジニアの人もガンガン提案したら、絶対もっとおもしろいだろうし。

メーカーに勤めているエンジニアの人なんか、技術とかを新しくしたり、営業力を身に付けないとこれから生き残っていけなくなっちゃうわけなので。会社が研修をしてくれて営業力を身に付けさせようとするって、なんて良い会社なんだろうと僕は思ったんですけど(笑)。

エンジニアの人はエンジニアの人で「自分がこういうのを作るのはすごくやりたいんだけど、営業はしたくない」みたいなマインドがやっぱりあるんですよね。だから僕は、もう少し営業のイメージというか「本当は世の中の人、全員に必要なんですよ」ぐらいのことが言えたらなと。

三戸:逆にね。

高橋:例えば、恋愛とか「相手を見つける」というのは営業的なものだし。就職もやっぱり、自分をちゃんと売り込まないといけないし。あとこれから大企業の人たちも副業とかしていくとなると……けっこう副業とか独立の相談を、個人的に友達からよくされるんですけど「まずどうしたらいいの?」とか。あと「価格付けをどうしたらいいの?」みたいなのとか。

やったことがない人って本当にわからないんですけど「自分に値段をつける人」って、世の中では一部の割合でしかいなくて。ほとんどの人って、やっぱり適正価格の付け方がわからないんです。でも、絶対にそういうの知っておいたほうがいいじゃないですか。だから、それって広く言えば営業なんだけど、まつわるイメージにあまりにも先入観がつきすぎているので。

世の中全体で「数字のために注文をとってくる営業職」はいらなくなると思うんですけど、営業力はむしろ逆に必要としてくれる人がもっと増えるんじゃないかと思って。

それがさっきの、兼務というか。マーケの人が営業もやるし、納品の人は営業もやるみたいな感じに近づいてくるので。そうすると結果的に、もしかしたら営業職という存在はなくなっていくかもしれないな、という気がします。

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