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MEETING #07 ミーティング・ファシリテーターの仕事|青木将幸さん × 西村佳哲(全6記事)

“おもしろいイレギュラー”を起こすために、自分の権威を外す ベテランになっても仕事に飽きない理由

日本ではアイスブレイクやグラフィックレコーディングという言葉も知られていなかった頃から、青木将幸ファシリテーター事務所を立ち上げ、「ミーティング・ファシリテーター」の先駆けの一人として活躍している青木将幸氏。「結果的にどこへ辿り着くかあらかじめはわからないけど、集まった人同士がちゃんと話し合える場をつくり、本人たち自身で歩いてゆくことを可能にする」というファシリテーションを体現してきました。コロナ禍でリアルでのコミュニケーションが制限される中で、「ミーティング・ファシリテーターの仕事」はどのように変わっていくのか。本パートでは、リビングワールド代表/プランニング・ディレクター/働き方研究家の西村佳哲氏と、仕事の辞めどきと、飽きずに仕事に向き合っていく心構えについて語りました。

仕事の辞め時は飽きたとき

西村佳哲氏(以下、西村):ファシリテーターという仕事は、もう生涯の仕事としてやっていくの?

青木将幸氏(以下、青木):いいな。鋭い問いですね、そこ。飽きたら辞めようとずっと思っていましたし、不遜ながら、僕より上手な人が出てきたら辞めようとも思っていて(笑)。そういった意味では、最近うまい人がいっぱい出てきているんだよ。リアルのほうではもう辞め時だなと思っていた矢先にこうなったので。

「僕よりうまいどころか、僕が下手くそじゃん!」という状況で、ゼロからスタートできているので、飽きている場合じゃないというところまではきてますね(笑)。「商売というのは『商い(あきない)』と書きますので、飽きずにやることが肝心だよ」と落語の世界でもよく言うんですけれど。仕事に飽きたらダメだと思っています。飽きてファシリテーションされたら、されるほうが迷惑だと思うので。

西村:そうだよね。

青木:よくお店に入ると、本当は「いらっしゃい」とは思っていないのに「いらっしゃいませ、こんにちは~」と言われると、うわーという感じでわかるじゃない。

ああいうものは、受け手はよく感じることだと思っています。僕がもし飽きていたら、参加者はその瞬間に感じるはずです。そんな失礼なことはできないので、今も飽きたら辞めようと思っています。だから、一生やるかどうかはぜんぜん約束できなくてわからないです。

西村:飽きる飽きないということで言うと、マーキーのファシリテーションは、特にミーティング・ファシリテーションに関して言うと、コンテンツに関わらないじゃない。何について話すかはその会社やグループが持っていて、自分がそれを取り扱えるようにするという。

コンテンツには関わらないで、Wayやプロセスに関わるという立ち位置ですよね。初めてインタビューをさせてもらったのは10年ちょっと前だったと思うんですけども、「自分が経験したことがないことでもファシリテーションできる、と思えるようになってきた。子どもを産んだことがないけど、出産に関するワークショップもできると思います」と言っていて。

青木:言ってた。覚えてる。

飽きずに続けられる仕組み

西村:内容に携わらないことは、飽きずに続けられる仕組みにもなっているんじゃないかなと思うんだよね。まずそれがあって、さらにマーキーはときどき、青木ファシリテーター事務所で企画のプログラムも打ってるじゃない。その中で自分がやったことがないことだったり、最近この人に会っておもしろかったということも打ってきていて。

だから、どこで飽きるのかな? と。ミーティングをする部屋も毎回違って、ある時は行ってみたら、ミラーボールがずっと回っていて止まりません、でもこの部屋しかないんですとか(笑)。

青木:あったあった。あったね(笑)。

西村:ある時行ってみるとこんな部屋でとか、場所も全部違うし、マーキーにとって仕事に飽きるというのはどういうことなんだろうね。

青木:今の話を聞くと、僕が失敗しないように場作りしたり、ちょっと整え過ぎている感じ。もっともっと出ていかないといけないな。

西村:出ていく?

青木:ある程度、経験を積んでしまうと、それこそ空間や場作りもうまくいくように準備できてしまうのは、やっぱりちょっと考えものだな。準備が8割と言っているけど、ちょっと訂正する(笑)。8割準備しちゃだめ!(笑)。僕は、「準備が8割、当日8割」と言っているんだけれど、もっと当日の率を高くしないとおもしろくないな。

だって、行ってみたら葬儀場だったり、カラオケルームが会議室でミラーボールが止まらないというのは、本当に僕の若かった頃のことで……。そういうはみ出せる感じは、歳いくほどに減ってくるので、意識してはみ出さないと。ゆくゆくは大道芸人みたいに、渋谷のスクランブル交差点とかで仕事をしたいわけ。もっとああいうところで成立させるような方向に行かないといけないのかな。

西村:本気ですか?(笑)。

青木:昔からあるビジョンなんだけれど、よくわからないけど誰かがぶらっとやってきて、混雑している街中で仕事を成立させていなくなっている、ということはやりたい。だから、街角に立っているアーティストは本当にすごいなと思うんだよね。

何が起きるかわからないわけだし、お金をいくらもらえるかもわからない。石を投げられるかもわからないけれど、そこで何を成立させているあの人たちは……まだまだその領域までは行かず。僕なんか本当にうまくいく条件を整えて、土俵を整えてお仕事をさせてもらっているところはあるので。そこはちょっと自分の晩年に向けての課題です(笑)。

権威がつくと、イレギュラーが減っていく

西村:昔は頼む方も、ミーティング・ファシリテーターがどういうものかわからないとか、「ファシリテーターを呼んでみたいけど、どうしたらいいんだ?」という感じで依頼が来るわけですよね(笑)。

青木:そう。「ファシリテーターを呼んでどうなるのか」をみんながわかっていなくて呼んでいたので。場の設えも準備もしっちゃかめっちゃかだったのは良かったのかもしれない。

西村:マーキーがはみ出るんじゃなくて、向こうが最初からはみ出ているというかね。

青木:僕にちょっと権威がつき始めているわけ。もし「青木将幸さんを呼ぶのは大変なことだ」というふうになっていったとしたら、イレギュラーは減ってきちゃうね。それはちょっと昔、仲良しに「今、若いうちだからそれができているけれど、いずれあなたに権威がついてくると難しくなってくるよ」と言われたことがあったの。

西村:本当に。そんなことを言ってくれた人がいたんだ。

青木:それは最近、ちょっと思い出している言葉で。歳がいってくると、そういうところがあるな。なので、その権威を意識して自分でなんとかしなきゃなと考えあぐねていたところのコロナだったので、逆に何の権威もなくなって良かったのかもしれない(笑)。

西村:コロナの風が吹き飛ばした。

青木:風の前の塵に同じでございますよ。

権威付けを外すには、安全地帯から出ていくこと

西村:自分に対する権威付けを外していく工夫は、先輩格のファシリテーターがよく聞かせてくれたよね。自分の弱いところをわざわざ見せたり、失敗談を話したりとか。例えばチョクさんのことを思い出しているんだけど、でも、どうこうやったって結局権威はついてるじゃない。本人が外そうと思って外せるものでもない気がして。

青木:そう。飛び込むと外れる。

西村:わかる、わかる(笑)。全力を出すしかない状態ね。

青木:こっちが飛び込むのが大事だと思っている。安全ゾーンとか自分が成功しやすいゾーンに居続けるのはやっぱりちょっとあれだな。そういうわけで、全国の場所で聞いているみなさん。僕が行ったことがなさそうな「こいつ、これは絶対に無理だろう」というようなゾーンの仕事がありましたら頂戴したいと思います(笑)。喜んで伺います。

西村:私もよく覚えておきます(笑)。

青木:念頭に、なるべく「ここ難しそう」とか、「ここ変なやつがいる」とか「大変だぞ!」というところに放り込んでいただければ、一生懸命がんばって仕事をします。

西村:オンラインであろうとなかろうと。

青木:オンライン、オフライン問わず。

全力で球を投げ切った後に起きること

西村:まだ少しだけ時間があるからちょっと聞いてみたいけど、マーキーが近年で「これ難しかったけど、なんとかやったな」というものは?

青木:「これは難しかった」「なんとかやったな」か。首の皮1枚だったなぁというものはありますね。でも、それは「やったな」とはちょっと言えないな。僕は敗北してうなだれて「ダメだった」と思ったんだけれど、首の皮1枚でつながっていて、何か向こうの状況が変化して良くなったことはありますね。だから、本当に僕の中ではもう「死に体」だった。

死んでいる感じというか「打つ手がない、申し訳ない!」という感じの落ち込みはありましたね。「一生懸命やったんだけどダメでした、ごめんなさい」という感じ。でも、そういう時のほうが球としては投げ切れている可能性があるので。「投げ切った! すみません、身体も崩してあとは頼む!」という感じで、投げ切ったあとに、何かしらが動いて良くなったという時はありますね。それぐらいのほうがいいのかもしれないね。

「僕がやってやったぜ」とは思わないほうがいい。でも、うまくいかなかった仕事は本当にいっぱいあるんだけれど「今、首の皮1枚でつながったな」「あの人たちの力でなんとか整えていただいたな」ということはあります。

西村:了解、ありがとうございました。

青木:ごめんなさい。ありがとうございます。本当にもう、こんな私の話を聞いていただき。

西村:とんでもない、とんでもない。マーキーとかマーキーの周辺の人たちが今どんなふうに生きているかなと、いつも思っていますので。

青木:ありがとう。

「自分がやってやった」と思わずに、ジタバタし続ける

西村:僕らもなんとか生きています。ミーティング・ファシリテーションの仕事って基本的には守秘義務の世界だから、さっきはついモノサスの話をしゃべっちゃったけど(笑)。最後の話はご愛嬌ということで。

青木:いや、モノサスさんにはOKをもらっている。僕も始めは絶対言わなかったんだけれど。社長の林さんが「うちの会社のことは、どこで話していただいてもけっこうです」と、ご許可をいただいたので(笑)。今日はご登場いただきました。

西村:なるほど。あの人はどこまでもおもしろいな(笑)。

青木:本当だよね。

西村:でも、とにかく「やってやったぜ」じゃなくて、自分ががむしゃらにやるということですね。ジタバタするというか。

青木:はい、一生懸命やります。

西村:僕もそうします。みなさんこの辺で、どうもありがとうございました。

青木:この度はありがとうございました。最後まで聞いていただいてうれしいです。

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