2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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森本千賀子氏(以下、森本):私は中竹さんをよく存じ上げているんですが、視聴者のみなさんに自己紹介をお願いできますか?
中竹竜二氏(以下、中竹):はい。私は今、日本ラグビー協会というところで理事をやっています。同時にチームボックスという会社を経営している中竹竜二です。
森本:私も実は大学時代ラグビー部のマネージャーをやっていたんですけれども、ラグビーとの関わりを少し教えていただいていいですか?
中竹:ラグビーを始めたのは実は6歳のときで、小学校1年からずっとやっていたんですけれども、大学4年で卒業と同時に、まるっきり10年はラグビーから離れました。
その間に、留学してアカデミックなことを学んだり、サラリーマンを経験し、普通のサラリーマンをやっていたときに、母校の名将で前任の清宮(克幸)という大先輩からお声がかかり、32歳で突然素人監督でラグビー界に復帰すると。そういった経歴ですね。
その後、母校の早稲田大学でチームの監督を4年間やったんですが、日本ラグビー協会というワールドカップを主催する日本の統括団体に呼ばれて、「コーチのコーチ」がスタートしたという状況ですね。
森本:今、チームボックスの経営をされていらっしゃると思うんですが、具体的にどういう事業をやってらっしゃるんですか?
中竹:実は、その前にも別の会社を持っていて。今もその会社はあるんですが、たくさんの講演を受けたり、研修を受けていた中で、ちょっと立ち止まって考えたときに、1回の講演や研修じゃ人はなかなか変わらないなと思って。
人を本気で変えようとすると半年はかかるなということで、中長期的なトレーニングプログラムだけを売るチームボックスという会社を立ち上げて、今は基本的には企業の幹部などの経営を担う方々のトレーニングを行っております。
森本:実は私がまだリクルートに在籍中だった2017年に、突然連絡を受けまして。中竹さんが監訳された『マネジャーの最も大切な仕事』という書籍について、「森本さんにAmazonに書評を載せる際のコメントの1つをいただきたい」という、光栄なお話をいただいたのが最初のきっかけでした。
私もラグビー部のマネージャーをやっていた頃もそうなんですが、本当に中竹さんの大ファンだったものですから……。
中竹:ありがとうございます。
森本:本当に、とても感激したのを覚えております。
中竹:もちろん覚えております。それと同時に、僕も実は憧れというかファンだったので。
森本:あ、本当ですか。ありがとうございます。
中竹:誰に書評を書いてもらうかをメンバーといろいろと話しているときに、だいたいこういうのは経営者とか……有名な大御所の方々。
森本:はい。並んでいました(笑)。
中竹:なんですけれども、世の中にこれからもっと影響力を与えて、しかも組織うんぬんよりも自分を見つめることを発信している人がいいなと。それで、森本さんにぜひということで、依頼をさせていただきました。
森本:ありがとうございます。
中竹:実はもともと僕自身、留学しているときから「組織をどう変革するか」ということに興味があり、実際に学生のときは副業としてやっていたんですね。日本に戻ってきてからは、三菱総研という研究所に行って、その仕事も結局企業を良くするためということもあり。
それとは別に、もうすでに20代から個人で会社の役員もしていたので。僕からするとチームボックスで起業支援をしたというよりは、もともと手段の一部としてやっていたことを組織化して始めたということであって、僕自身はそんなにやっていることに変わりがないなと思っています。
けれど、いろんな経験を積んだ中で、やはり人や組織が変わるにはきちんと腰を据えてやらなければ変わらないなと強く感じて、法人を立てたというのが経緯ですね。
森本:中竹さんのご経歴の中ですごく興味深いのは、私もラグビー選手のお知り合いがたくさんいますけれども、たいがいは大学時代の先輩たちに誘われて、あまり働くとか職業観を持たずに就職する仲間が本当に多かったんですけれども。
中竹さんはその中でも、留学をされてらっしゃるじゃないですか。その辺りはすごく興味深いなと思っています。
中竹:それで言うと、考えていないという意味では同じですね(笑)。
森本:ああ、そうですか(笑)。
中竹:まったく考えていませんでした。大学4年目で早稲田大学のラグビー部のキャプテンになったので。単に4年目就活をしたくなくて、逃げるかのように「留学をする」と言い張り、しょうがなくというか、就活をしていなかったので留学から始まった。ほぼ当てのない人生ですね。
森本:(笑)。まあ、でもそこから三菱総研さんというシンクタンクに就職をされていますけれども、そこも、もしかするとラグビー界隈の中でいうと、非常に珍しいかなと思っているんですよね。
中竹:そうですね。もちろん体育会系のラグビー部の方はほとんどいらっしゃらなかったし、OBの方も知らなかったというか。そういう意味では新しい領域かなと。
僕自身、もともと行きたかったかというと、本当に当てもなく、海外で大学院に行っている中で、そのまま研究員で博士課程だったり、自分がやっていた社会学に進もうとは思っていたのですが、みんなが「日本で働くのは大変」と言っていたので、そんなに大変と言うんだったら、1回働いてみようかなと思って。
森本:やってみようかなと。
中竹:1回働いてみようと探して、パッと思い浮かんだのが三菱総研だったというぐらいですね。なので、そんなに真剣に企業を選んだということではなく、かなり適当な人生であります(笑)。
森本:(笑)。まあそれが必然になっているという感じですかね。
中竹:まあ、そうですね。運も含め大事にしているということですね。僕自身、実はスポーツとビジネスの違いはまったくないと思っていまして。わけることが難しいぐらいのイメージですね。
もちろん、試合で勝つという話と経営で利益を上げるというのは違うように見えますが、もともと組織というのは、すべてを上位概念に持っていくと、全部共通するので。
僕の場合は、ある大きな企業がいろんなカンパニーを持っていて、違う領域でやっているのと同じくらい、ラグビーとビジネスというのは共通するかなと思っています。
そういう意味では、スポーツとビジネスの観点でいうと、スポーツから学べる点はすごくシンプルです。ヒューマンスキルにかなり重点が置かれているんですよ。
森本:ああ、確かに。
中竹:僕自身、いろんな企業の支援をやっていますし、スポーツでチームの支援をやっていますから。極端な話、そこにいる人の質が低くても、組織がひ弱であっても、プロダクトとサービスとマーケットが良ければ売れるし、伸びちゃうんですね。
残念ながらスポーツには、そのサービスがないんです。サービスがヒューマンスキルなので。
森本:もうアセットがヒューマンキャピタルですかね。
中竹:そうなんです。そこを考えたときに、どこからエッセンスをつかむといいかというと、当然スポーツのほうがシンプルに人間の力をどう機能させ、伸ばせるかという意味では分析しやすいし、再現性を持たせられるのは実はスポーツのほうなので、そのエッセンスは当然ビジネスにも活かせますし。
今までビジネスの知見がスポーツにも入ることはよくあったんですけど、スポーツからビジネスに活かされることはあまりなかったので。僕自身はたまたま両方をまたいでいますし、僕の中ではほぼ同じことをやっていますので、今はそういった役割を求められているのかなと思ってやっていますね。
森本:はい、はい。確かに。私もずっとHRというマーケットの中でやってきたんですけれども、本当に最近やっと「人・物・金」の中でも、人に対しての考え方や指向性というものがすごく大事だという。組織論にしかりですね。それをひしひしとマーケットから感じるので、そこのメソッドにずっと向き合っていらっしゃったというので言うと、まさに世の中から必要とされていらっしゃる方になるんだろうなと思いますね。
中竹:専門的に言うと、Transfer Learning(学習の転移)というんですけれども、これが難しかったんですよ。スポーツでやっていたノウハウをビジネスでやるとか、自分がやっていたものを人の領域でやるという、この知が転換していくということが非常に難しかったんですけれど。
やっぱりビジネスのほうが、人がお金をかけてノウハウ化していくので、進化した部分があって。スポーツはそれにやっぱり力をかけてこなかったんですが、最近はようやく研究もどんどん進んだので、知の転換ができるようになった。
森本:そうですね。そこでフォーカスされて、本当にメソッド化されて、さらに中竹さんのメッセージで再現されていくというのは、私も本を読ませていただいてすごく感じました。
中竹:まあ、たまたま僕自身は「コーチのコーチ」をやっていますので、そういう意味でいうと、コーチのコーチって競技を超えるので。
森本:はい。
中竹:サッカーでも野球でもラグビーでも陸上でも、そこは結局、知のTransferをどれだけやるかの勝負ですので。たまたま僕自身がその役割があるから、それがやりやすいという立場にありますね。
森本:客観視ということをずっとやっていらっしゃったというわけですね。
中竹:そうですね。この自律に関していうと、2つの論点があって。1つは組織としてですね。今はVUCAの時代、要するに先の読めない時代になってきて、トップの方が出す戦略・戦術が本当に正しいかというと、実は現場の人がいろんな知見を持っていて、現場の人しかこの変化を理解できないこともあるので。
実は言われたままやる人たちは、昔は物が少なかったし、サービスも少なかったので、作れば売れる時代だったので、どれだけ速い命令系統で動くかが重要視されていたのが……。
森本:トップダウンで。
中竹:答えがない中で、現場の人がいかに考えて自律して考えるかということに関して、今はビジネスに限らずスポーツもですが、どれだけ適応し、それを瞬時に自分たちの色に変えていくかということが大事になってきます。
そういう意味では、ただ決められたことをやるというか、計画されたものをやるという、ただのDOだと、今ほとんど競争には勝てない。そういう意味では自律が大事になっていきますね。
自律のためのキーワードは結局Decision(決定)なんですよ。自分で立っているというよりは、物事に対して決めていくことなので、そういう意味では僕自身も、この『フォロワーシップ(リーダーシップからフォロワーシップへ)』の中で書いていますが、現場にいる普通のメンバーやフォロワーたちが自分でDecisionしていく、そのプロセスを作っていくことが、どの組織にとっても大事だと思います。
中竹:もう1個の観点で言うと、実は今、この本もそうですけど、やりがいや生産性が非常に大事になってきています。これを紐といていくと、心理学でも脳科学でもそうなんですが、結局は自分自身で物事を決めるというアクションが、実は成功に最も近づいていくんです。パフォーマンスの向上に最も近づくわけですよ。
「正しいことをやる。だけど、ちょっといやいややっている」というのは、パフォーマーとして実はよくなくて。
そう考えたときに、目の前のことに対して「その仕事をなんでやっているの?」と言われたときに、「いや、それは部長に言われたからやっています」なのか、「いや、僕はこれが大事だと思うので、ちょっとつらいけどやりますよ」。
この発言を見ても、後者のほうが圧倒的にパフォーマンスが上がると考えたときに、一人ひとりが自律してDecisionすることによってパフォーマンスが上がっていくので、これからは自律が非常に大事になってきます。ただ、難しいんですよ。
森本:そうですよね。どうしたらそういう自律した人材に育つのかというところなんですけれども。
中竹:いきなり自律はできないので、とにかく経験値を積むために、例えばステージを作ることですね。要するに、ステージに立って自分で決めるという場面を持たなければ、人は成長していかないので。
成長には必ず失敗体験が伴うので、「失敗しても大丈夫だ、次にがんばれば大丈夫だ」というステージを用意し、完璧になるというよりは、過去の自分よりDecisionができるようになっている。物事が成功したことよりも、Decisionしているかということに注力を注がないと、自律した人間にはならないと思いますね。
僕が幹部の方々を育成するときに、「お前ら自律しろ!」「自分で考えろ!」と言いながら、自分で考えたことに対して褒めるのではなく、成功したかしてないかで褒めていると、まったくもって自律できない人材が育つので。
自律させたかったら、Decisionしていることに関する賞賛をたくさん投げかけるといいんじゃないかなと思いますね。
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