2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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谷中修吾氏(以下、谷中):この「価値創造の思考」という話。実は、ここにある火焔型の縄文土器と深い関わりがあります。今日初めてオンラインでお目にかかるみなさんにおかれましては、「いきなりなんだ、この縄文土器は」「やばい世界に来ちゃったの?」というふうに思うかもしれません(笑)。
高松康平氏(以下、高松):ドキドキワクワク。
谷中:(笑)。その土器と「価値創造」が結びつく理由をこれから解明できればと。
高松:どんな話が始まるのか。みなさん、楽しんでいきましょう。よろしくお願いします。
谷中:ありがとうございます。私は、BBT大学では経営学部グローバル経営学科の学科長と教授を務めていまして、大学院MBAも兼務しています。また、国内では最大級となる地方創生イノベータープラットフォーム「INSPIRE」の代表も務めておりまして、今回のセミナーはBBT大学とINSPIREの共催で開かせていただいています。
私の略歴は、ざっくりと紹介しますと、クリエイター、NGO・NPOのマーケティングディレクター、そして先ほどお話のあった問題解決のど真ん中ですけど、戦略コンサルティングの世界を経て、現職に至っています。
このBBT大学では、マーケティングの専門科目を教えています。ふだんもマーケティングの専門知見を活かして仕事をしていまして。突き抜けたアイデアを生み出して、しかもそれを超速で事業化する「ビジネスプロデューサー」という職能で、いろいろな事業開発を手掛けています。
例えば、今回の新型コロナウイルスが来ても、その逆境に超速で対応して新しいプロジェクトを生み出すというのが私のスタイルです。
谷中:このBBT大学でも2月・3月でいろいろな課題に直面したわけですが、その1つが卒業式。オンラインの大学ですが、やっぱり卒業式は対面をすごく大事にしているので。コロナでリアル開催が中止になるという状況のときに、アバターロボットで卒業式をやろうと閃いて立ち上げました。これが、「アバター卒業式」です。
端的には、アバターロボットで卒業証書を受け取るという企画なんですけども、冒頭にちょっとだけ映像を流しましたが、こんな感じです。
……という感じなんです。このロボットを開発したのはANA、全日空さんですね。現在はANA初のスタートアップとして事業会社となった、avatarin(アバターイン)という会社が開発をしまして。私が2年前からANAさんと本業のほうで協業していたことがきっかけで、そのご縁からアバター卒業式の実現に至りました。
このロボットは「newme(ニューミー)」というんですけども、コミュニケーションアバターという最もシンプルなモデルです。今後、触覚とかいろいろついてくるんですけど、センサーの技術もすごいなと。それで、これは卒業証書の授与にぴったりだな、というふうにすぐ思いついたわけです。
それで、結果的にこのアバター卒業式という場を実現したのが3月の末ですね。1ヶ月半ぐらいで作っています。世界に向けてこういうポジティブな取り組みを伝えたいなと思って発信し、これも実質1人でやるんですけども、海外メディアから注目していただいて。世界5大陸、およそ300メディアぐらいに掲載いただきました。
谷中:ポイントはこれ。実は価値創造型の大事なところで、「立ち上げはガチで1人でやる」というところですね。やはり新規事業開発って、特に前例がないことは、基本的にはまず自分でやってみることがすごく大事だと思っています。
「(自分で)できねぇやつはダメだ」「飛べねぇ豚はただの豚だ」という感じで、ちょっとどこかで聞いた台詞ですが(笑)。自分で何事もやった経験があると、人にも響くし、仲間が集まるということを大事にしています。
それで、ビジネスプロデューサーとして、いろいろな企業さんの新規事業開発を手掛けてきました。ご縁のあった会社のロゴが並んでいますけども。みなさんがよく知るブランドの事業なども、かなりの数を私が手掛けていたりもします。
とくに私は地方創生のビジネスプロデュースを得意にしてるんですが、復興支援でスターバックスさんと一緒に活動したり、Googleさんとストリートビューの新企画をやったり、東京オリンピックだったり、いろいろなコラボをしているわけです。国のほうでも実は地方創生領域ですと、たくさんの委員やプロデューサーを務めています。
谷中:このようにお話をすると、「どうやって超速で次々と事業を立ち上げられるの」というご質問をよくいただきます。実はここに、この「縄文型」というヒントがあるわけなんですね。価値創造型のビジネスデザイン技法です。
答えを先に言ってしまうと、その特徴は「直感的」「協調的」「フリーダム」そして「感謝オリエンテッド」でございます。高松さん、縄文のエッセンスをきっとDNAに持ってますよね。
高松:そうですね、問題解決の話をしたあとでアレなんですけど、私はこういうのは大好きでございまして(笑)。直感的で協調的でフリーダム。いいですね、こういう世界。
谷中:ありがとうございます。そこで、確実に、こういう世界は存在する、という話をしてみたいと思うんですね。例えば、先ほどお見せしたアバター卒業式。2月の中旬ぐらいに教授会に類する協議会という会議があって、そこで話をしたときにアバター卒業式を思いついちゃって、その場で提案して。その1ヶ月後にいきなり忽然と立ち上がると。
谷中:実は「最初から完成形をイメージしている」というのが、私のやり方です。縄文型の大事なところですね。それで今日は、当時私が使った本物の企画書を、ちょっと特別にみなさんにご覧いただきます。
高松:マジですか(笑)。本物の企画書を見せてくれるんですね。
谷中:本物です。縄文型はどうやってるかってことで。誰にも見せていないですね。本邦初公開。
高松:ありがとうございます。
谷中:これは企画書のトップなんですけど、写真はもともとあった素材をGoogle Imagesで引っ張ってきて、ペタペタと貼っています。ロゴを見るとBBTとANAとかってダブルネームになってますが、これも妄想です。ぱしぱし作っていきました。実際ファイルの上のほうを見ていただくと、小さいフォントで「【妄想起案者】谷中修吾」って書いてあるじゃないですか(笑)。
高松:(笑)。
谷中:こういうのを受け止めてくれる大学って素敵ですね(笑)。
高松:そうですね(笑)。
谷中:これは「全国各地の学生がANAアバターで卒業証書を受け取る」という企画です。続いて、「さすが元祖100パーセントオンライン大学! BBT大学の卒業式はアバターで参加できるんです!」というストーリーを。ぺらってめくると、「アバターって何? 瞬間移動を実現する、あなたの分身」と言われればすぐわかるわけですよ。その具体的なロボットがこれです。「newme」というものがあります。
それで、「新型コロナウイルスでビビってるんじゃねぇよ」と。これを普通に教授会に出してるんですけど大丈夫なんでしょうか(笑)。みなさん受け止めてくれる、素晴らしい大学ですね。
それで、「アバターインすればいいんです」。「BBT大学の卒業式では、普通にアバターが紛れ込んでいる!」。右下のロボットの図は、私が合成して作ったんですが。
高松:合成の写真でつくったんですね。なんだか知っている顔があると思いました(笑)。
谷中:意外性がありますよね(笑)。
高松:遊び心もありますね(笑)。
谷中:これ絶対、誰かがツッコんでくれるだろう、って(笑)。それで、ここから企画の詳細について定義を。「今回は、ANA様の特別協力により」……これはまだ実現する前ですよ。「ANA様の特別協力により、2台のアバターが登場! 遠方で参加できない学生、コロナ対策で参加しづらい学生が、アバターインして卒業式に参加! 卒業証書の授与を体感できます」と言われると、「これもう、本当に決まっちゃったことなの?」って思うわけですよ。
高松:「もうやるんだ」という感覚になりますね(笑)。
谷中:やる前提ですよ(笑)。留意事項なども書いちゃって「もう決まってますけど何か?」みたいな。これはやる前ですよ、一応言っときますけど。というのが実物の企画書。以上、これだけ。
それで、「鮮明な妄想は現実化する」ということをお伝えしたい。しかも、鮮明な妄想は人を動かす。「いいね、やろうよ」「え、やるんでしょ?」というふうになっちゃうわけですよ(笑)。あとは実務をやるのみで。
こう言うと「そんなことやったことないからわからん」と言う人も。BBTはそういうことないんですけど、一般企業で多いので。つべこべ言わずにやってみせるというのは、すごく大事ですね。わかっていただけない方にあれこれ説明してもわからないので、「できてるよ」「やっちゃったよ」という感じで説明します(笑)。
結果を見てみると、左側が今の表紙、妄想した現実ですけど、右側がリアル写真で実現した現実なので。
高松:どっちがどっちか当ててくれと言ってもわかんないですね、これ(笑)。
谷中:わりといい線いってますよね(笑)。だから本当に、イメージをそのまま実現しちゃったんです。縄文型という直感的、協調的な世界観をお伝えしたくて。要は1人でもちろん立ち上げるんですけども、やるときはみんなで一緒にやるんですよ、当たり前ですけど。だから協調的で、自由な発想で、みなさん一人ひとりのご協力に感謝申し上げる、ということをすごく大事にしています。
谷中:ところが現代のビジネスはどうかというと、KPI、PDCA、ROI……管理型経営がズドーン、という感じ(笑)。これが悪いわけじゃないです。でも、私も十数年前ですけど、高松さんと同様に経営コンサルの世界にガッツリいたので、こういうものを作っていた側の人なんですよね。
そもそもこういう管理型経営はいつから始まったんだと考古学を紐解いたら、なんと弥生時代に行き当たったと(笑)。稲作の世界です。実はこれが今に続く「企業が利益の最大化を求めることに最適化したビジネス」、すなわち「弥生型ビジネス」です。村の米の収穫量の最大化を考えたビジネス。
従って計画的ですし、周りの村とも競争するし。勝手なことをやっては困るので、コンプライアンスですね。ルールに従って正確に田植えしていただく。そして、商談に対しても「今年はこのぐらいやったんだから、このぐらい収穫できるはずだ」という期待が生まれる。高松さん、今のビジネスって、稲作となんだか似てませんか、これ(笑)。
高松:その前に、この絵(弥生時代の稲作のイラスト)にまず圧倒されちゃいますね(笑)。
谷中:そっちですか(笑)。でも実は管理型経営がここから息づいてるって、おもしろいですよね。
高松:おもしろい。なるほど。
谷中:今、SDGsというものがあるじゃないですか。管理型経営の中でSDGsという文脈が生まれてきて、みんながやるわけですよ。さっきの「上司から降ってきたからやらざるを得なくなっちゃった」みたいな。DXもSDGsも降ってきたという(笑)。
高松:ありますよね(笑)。
谷中:降ってきますよね(笑)。SDGsはすごくいいことです。サスティナブルなコミュニティは、私もすごく必要だと思っているんですが。
ふたを開けてみるとこうなるんですね。「会社のSDGsの目標」というものが掲げられて、「うちの施策は……」って1個1個あるんですけど、全部ナンバリングされてるんですよ。「私の施策はSDGs〇番です」と。で、気づくとこれは予算要求のロジックになっていて。
高松:これは、めちゃくちゃあるある話ですね。
谷中:(笑)。しかもお客様に「うち、SDGs〇番やってますから」と、「別にそれどうでもいいし」という感じになるわけですよ(笑)。それで、やっているうちに何がなんだかよくわからなくなって。
つまり、この弥生型でやっていると、物事をみじん切りにして考えるので、何をやっているかがわからなくなる。持続可能な世界を実現できないし、しかも新しいビジネスもなかなか生まれない。
ところが今日の話ですが「イノベーターの思考回路、新しいビジネスを生み出す秘密はなんだろう」といろいろ紐解いていったら、なんと縄文時代にあったということでございます(笑)。ちゃんとつながってきました。
実は私、令和元年、昨年にこの『最強の縄文型ビジネス』という本を出させていただいたんですが、ビジネスフィールドでいろいろご評価いただきまして。もともと本当に共感いただける方だけにと思っていたんですけど、実は非常に、時代にたまたまマッチしていて。うれしい限りでございます。
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