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トークセッション(全6記事)

スポンサーセッションを「好きにやっていい広告枠」にさせない 運営側がオーナーシップを持つことの重要性

イベント作りをサポートするコミュニティ「イベントの未来をつくる105人」。2019年10月23日、虎ノ門ヒルズフォーラムにて、同団体が主催する「続編!1000人規模のプライベートカンファレンスの仕掛け方」が開催されました。企業・個人で活動するイベンターに向けたトークセッションには、SaaS業界のカンファレンスや働き方改革イベントなど各種イベントでオーガナイザーを務める3名が登壇。カンファレンス運営時の基礎や極意について、三者三様の実体験を交えて赤裸々に語られました。本記事では、他イベントとの差別化に必要な考え方、スポンサーとの関係づくりの方法についてご紹介します。

プレイヤーが増えるなか、差別化するために大事なこと

(スライドを指して)トピック3番「マーケティング施策としてのカンファレンス?」のお話とも関わりがありますが、マーケティング系のイベントというか、「リードが欲しい」とか「見込み客がたくさん欲しい」とか「結果的に商談が生まれればいい」みたいな目的だと、テーマに興味の薄い人がいっぱい来ちゃって困るみたいなところがありますよね。

松林:だからノウハウというわけじゃないですけど、なんか思うのは、それを1人で決めるというよりは、例えば僕らみたいな、イベントをやっている人でもいいと思うんですよ。

そういう人たちとディスカッションをして、コンセプトを設計するのはけっこう重要かなと思っていて。あまり自分1人で決めきらないというか、そこをけっこう、時間をかける。

日比谷:登壇者選びのところに。

松林:そう。例えば場所を決めてとか、早く進めていかないといけないといって、先にタスクにおちがちなんです。

けっこうイベントが増えてきていて、イベントをやれるプレイヤーが増えているので、そこ(タスク)はけっこうできるようになってきていると思うんですけれども。最初の、そのところに時間かけて作り込むというのをやったほうが、これからはすごく大事だと思いますけどね。

日比谷:差別化とか。

松林:差別化的にもそうだし、中長期にはそっちのほうが(いい)。だから、そういう意味で変わってきていると思う。

カンファレンスをやるみたいなのは、世の中的にはすごく認知が上がっているということやと思うんでね。相談も相当あるし、そういうことやと思いますけれどね。

酒居:そうですね。そのコンセプトでありテーマというところを決めるって、本当に重要だと思っていて。登壇者自身の集客力も、実際重要なんですけれども。

結局その方々に来ていただくのも、テーマの中の旗というところで、「なんでここに集まる必要があるのか」という1フレーズにつきると思うんですよね。それがないと、結局世界観は伝わらないものになるかなと思います。

テーマ決定後、「タイムライン」でもう1段階深堀りする

酒居:ただ、テーマを作る中で、1つ「タイムライン」という考え方もあって、時間軸も重要かなと思っているんですよ。

日比谷:タイムライン。

酒居:「テーマさえ決めたらあとは集客しよう」となっても、意外とそのテーマでまだ深掘りの余地がけっこうあって。

例えば、若干マニアックな話になっちゃうんですけど、僕らがしたカンファレンスって「日本のSaaSシフトを加速する」というテーマなんですよね。前回は7月にやったんですけど。

「日本のSaaSシフトを加速させる」。これを実現する、みんなに集まってもらう旗だというふうにしたら、いろんな人にたぶん集まってもらえる可能性があるんですよ。

例えば1つは、実際に自社でSaaSを開発しているベンダーさんに来ていただくという可能性もありますし。そうじゃなくて、今はまだ従来からのビジネスモデルだけどSaaSシフトを検討しているような企業さんであったり。

日比谷:「新しいビジネスモデルにしたい」「参考にしたいよ」みたいな人? 

酒居:おっしゃるとおりです。まだSaaSを知らない方にも気づきになっていただくというので、集まってもらうという。

日比谷:いろんな層の人が来る。

酒居:そうなんですよ。ただ、「SaaSシフトを加速」というテーマだから、どちらかというとその後者側。

まだSaaSに気づいていない方とか、SaaSというモデルに興味を持っていただいているような方々に来ていただいて、「うわ、SaaSってやべえんだ。どんどん変わっていかないと!」っていうような気づきになればいいなと思ったんですよ。最初。

なので、そういうカンファレンスにしようかなと思ったんですけど、実際はやめたんですよね。それはなんでかというと、時間軸で見たとき、「現時点でそれって本当に実現可能性があるのかな」と考えると、ちょっとまだ早いなと思ったんです。

なぜかというと、SaaSって業界内ではけっこうトレンドになっていますけど……。

日比谷:IT業界とかスタートアップの中ではね。

酒居:そうです。スタートアップとかIT業界では、Twitterとかで話題になっていますけど、それ以外ではぜんぜん注目がまだ集まってない。

まだぜんぜん火種もついていない段階で、そんなにみなさんに一気に集まっていただいて「SaaSすごい!」となるかなって考えると、まだ難しいんじゃないかなと思ったんです。

アプローチする層を見極めれば熱量も高まる

酒居:それだったら、今の段階ではSaaSのベンダーさんに集まっていただいて、みんなで「俺たちが盛り上げていくんだ」「俺たちがこの業界をもっと熱くしていこうぜ」っていうフェーズなんじゃないかなと思った。なので、その方々に集まっていただくように変えたんですよ。

スポンサーさんとか外に向けては、「日本のSaaSシフトを加速させる」というこのままを伝えるのではなくて、「みんなでSaaSシフトののろしをあげましょう!」と。“のろし”という言葉をけっこう使っていて。

これはなぜかというと、「自分たちで火をおこそう」という方たちにアプローチしたいと思って。テーマをそういうふうに変えて、伝えるようにしました。

結果的にはそういう方々に集まっていただいたところが熱量を高めた理由としてけっこう大きかったかなと思っていて。なので、テーマって重要だと思っております。

日比谷:今のは、なんとなく僕なりにまとめると、その「SaaSシフトしたい」という会社なり主催者なり意図があって。

とはいえ、世の中を見渡したらそれで直接動いてくれる人は限られているから、とりあえず近しい業界内とか、マーケティングの用語でいうとアーリーアダプターとかイノベーター層の人たちをターゲットにして、仲間になってもらえるようにちょっと言い方を変えて巻き込んで仕掛けたという感じかな。

酒居:そうですね。

松林:今、聞いてて思ったけど、うちのat Will Workもそうなってますね。

日比谷:そうでしたっけ? 

松林:結果的に。僕らがat Will Workという社団法人を設立したときに、まだ「働き方担当大臣」っていなかったんですよ。法人を設立した3ヶ月後に加藤大臣が働き方改革担当大臣に……。

日比谷:初代ね。そうですね。

松林:働き方とか、そういう取り組みにけっこう敏感な人に登壇者として出てもらっていたし、実際に参加してもらった方も「働き方を変えていくんだ」というところにすごく共感性があって。

そういう人たちに来てもらったというのが1年目で、すごく盛り上がったんです。だからイベントで「すごくよかった」って仲間感ができて、業界を……。

日比谷:業界をみんなで盛り上げようみたいなことですよね。

新しい概念を打ち出す“仕掛け”として、カンファレンスは相性がいい

松林:だから1回目はそういう設計がよくて。「自分たちがやろうとしている」「自分たちが発信したい」という、広げていきたいということでやるので、それを尖らせて、そういう仲間を集めるというのが1回目じゃないですか。

うちらも次で4回目なんですけれども、じゃあどうなっているかというと、働き方改革法案がこの4月にできたじゃないですか。質問されるのがすごく具体的なんですよ。「実際の企業の実例を知りたい」とか、「どういう課題があるんですか?」みたいな相談がけっこうあって。

あんまりそこまで深く考えていなかったですけど、より具体的な内容がいいよねということで、今回は企業の経営者とか、実際に取り組みをやっている大手の企業さんとかに来てもらって実践の話をしようというのが、次のカンファレンスなんです。

日比谷:カンファレンスの大きなコンセプトは変わっていないけれども、初年度は世の中の温度感がまだ幅広くはないけれども、でも一部「やんないと」って言ってる人たちがいたので、その人たちを捕まえて一緒にやって。時間が経つごとに浸透してきたので、今度は実際に企業の人たちを相手に、企業の人たちに事例なんかを語ってもらう内容に変わってきているということですよね。

松林:そうですよね。確かに、でも「BACKSTAGE」とかもそうですよね。なんか(笑)。よくよく考えたらそうやなと思って。僕がしゃべりながらめちゃ勉強になりました。

日比谷:そうですか。みなさんが勉強になるといいんですけれども。

松林:だから最初に尖らせて、すごい共感性が高い人たちを集うというコンセプトでスタートしつつ広げるというのが、けっこう重要なんですよね。たぶんね。

日比谷:察するに、「BACKSTAGE」も、SaaSの働き方の新しい考え方とか概念を世の中にボーンと打ち立てるのも、カンファレンスという手法を使うとしたら……もうちょっと言うと、新しい概念を広げるマーケティング手法として、最初にやっぱりアーリーアダプターやイノベーターとつるんで、しかも「業界を自分たちで引っ張るんだ」というプレイをするのがいいよ、ということのように聞こえますね。

でもそこでなぜイベントがいいのか、マッチするのかという話はありますけどね。察するに、イベントの場合だと業界の人たちに直接顔を合わせて、1つの物を作り上げるというお祭り感というか。顔を合わせて、後々何かやっていくときに、信頼関係が生まれやすいというのもあって。

なおさら「新しい概念を啓発しよう」とか「業界を0から盛り上げようぜ」みたいなときの、仕掛けとしてのイベントみたいなのは、カンファレンスの中でもマッチしやすいんじゃないかなというのは、聞いてて思いました。

スポンサーセッションは「好きにやっていい広告枠」ではない

日比谷:ちなみに前回も出た話で、(スライドを指して)トピック15番「スポンサーセッション、どこまでコンテンツに介入する?」に飛びたいんですけど。

業界で盛り上げようみたいな話になってくると、「うちも乗せてください」「いっちょ噛ませてください」というのは……言い方が悪いな。「うちも働き方(改革)に取り組んでいるんでスポンサーさせてください」「うちの社長を登壇させてください」「うちもSaaSをやっているんでどうですか?」とか。

やっぱり売り込み、ないしは「いっちょ噛ましてください」みたいな。「お金出します」と言ってくれる方は多いですよね。ポジティブに「盛り上げましょう」と言うのはいいと思うんですよ。だって自分たちで盛り上げましょうって言っているんだから。

だけれども、一部でちょっと宣伝のようなものが増えてきちゃったりとか、「ちょっと合わないな」みたいなときが、どうしても出てくると思うんですけれども、その辺はどうされていますか?

酒居:僕は、これ前回もお話をちょっとさせていただいたんですけれども。

「SaaSway」の場合でいうと、スポンサーセッションってけっこう多かったんです。ただ、全部の企画に僕も一緒に入らせていただいて、一緒に企画を作らせていただいたっていうのがあります。

スポンサーセッションって、「この枠を取っていただいたらあとはセッションを自由に決めてください」というかたちもあると思うんですけど、今回はあまりそういったかたちをとってなくて。

その方々と、まずコンセプトやテーマというところで「こういうテーマのセッションを作りたいんで、スポンサーをやっていただきたい」と。

「ただそれにあたって、企画のところはぜひがっちり御社のブランディングにも貢献できるような内容を一緒に作らせてほしい」というお話は、最初に握るようにはしていましたね。

日比谷:つまり枠というか、こういう内容がやりたいので、だからそこに協賛会社として登場いただけませんかという。

酒居:そうですね。

日比谷:「そこに賛同いただけるならどうぞ、どうぞ」だから、「コンテンツを好きにやっていい広告枠じゃないんですよ」と。

運営側がオーナーシップを持つことの重要性

酒居:そうですね。なので2つ(気をつけることがある)。1つは、自由にやっていただくと結局はテーマと若干ずれちゃうというのが危険性としてはあります。

別に、その方々のお話がおもしろくないとかっていう話ではなくて、「なんのためにやっているんだっけ」という一貫性というところは、やっぱり。

日比谷:カンファレンスのコンテンツとしての一貫性。

酒居:そうですね。カンファレンスってやっぱり、ビジョンの共有という場だと思っていて。そのためには、まずはそこをスポンサーさんともグリップする必要があると思っています。

2つ目は、結果的に集客が失敗すると、スポンサーさんにもWin-Winにならない。逆に言うと、「一緒にやらせていただく分、絶対に集客はします」というコミットはする。「だからこそ一緒にやらせてください」みたいな話はしていましたね。

日比谷:内容の一貫性とか質を高めるためには、まず自分たちで編集権を持つ。その代わり、ちゃんと集客とか運営全般とかだと思うけど、実行にはコミットします、責任を持ちますという。

酒居:おっしゃるとおりですね。

日比谷:松林さんはどうですか? 

松林:うちとしても、カンファレンスという世界観に共感してもらえるとか(は重視している)。

ただ「お金を出すから、認知のために名前だけ出させてよ」みたいな企業さんとは、基本的には、なるべくスポンサーをお願いしないようにしていて。なるべくというか基本的にはそうしています。じゃないと、カンファレンスの世界観が崩れる。それが1個。

僕も前回お話しさせてもらったところで、それ以降もすごく気をつけてやっているんですけど、スポンサー企業さんとのコミュニケーションの時間をだんだん増やすようにしていこうと。昔より増やしていっている感じですね。やっぱり「こういう世界観のカンファレンスなんだ」ということを繰り返しお話しすることも増えていますし。

でも、カンファレンスとしてスポンサー企業さん側のニーズもあって、それをしっかり満たせる、かつ参加する人がおもしろいセッションにするために、企画として入り込まないと。

「誰がオーナーシップを持つねん」って話になるんですけれども。運営が、仕切っている人間がオーナーシップを持つことはけっこう重要で。それはさっきのコンセプトから内容がつながっていくところでもあると思います。そこはけっこう入り込んでやったほうがいいと思いますね。

スポンサー営業とコンテンツ企画の担当者を分けるべき理由

日比谷:つい、最初だと「収支どうなっているんだ」って会社から叩かれたり、少しでも集客力のありそうな人を登壇させたいから、コンテンツにブレがあっても出そうとしちゃったりとか、誘惑はありますよね。

松林:確かにありますね。

酒居:めっちゃあります。

松林:めっちゃありますよね。「基本この人だけおったら、まあ人は集まるし」みたいなね。

酒居:そうですね。あと、けっこうスポンサー営業担当とコンテンツ企画担当は別の方でやったほうがいいと思いますね。そういう意味でも。

日比谷:別のほうがいい? 今、一緒がいいと言うのかと思った。

酒居:別のほうがいいと思います。そこで健全なコンフリクトが起こったほうがいいと思っていて。

日比谷:議論が起こる。

酒居:そうですね。一緒くたに考えると、どちらかにたぶん寄っちゃうんですよ。例えば、僕もスポンサー営業をしながら今回のコンテンツ企画もしていたんですけど、そうするとスポンサーさんの気持ちもわかるし、ただ自分たちもこれを実現したいし、みたいな。けっこうぶれるんですよね。

日比谷:どちらかに変に偏ったり、バランスを維持しなきゃいけない。

松林:そうなんです。そのバランスを取る……。

日比谷:自分の中で取らないといけないってことか。

酒居:そうなんです。

松林:それはそうなんですよ。僕で言うと、今年中で言うたら、スポンサー営業と登壇者のやつを1人でやってるじゃないですか。

日比谷:そうですね。

松林:でも絶対に日比谷さんとか理事会に、登壇者さんを挙げて話をするようにしていて。そこの牽制機能がないと、すごい……。

日比谷:暴走する? 

松林:暴走する(笑)。いや、セッションがすごい、すごくスポンサーさん寄りになって、なんかスポンサーさんのためにやっている……。スポンサーさんのためというのももちろんあるんですけれども、スポンサーさんのためだけになるとか、そういう方向性に向きますもんね。

日比谷:偏っちゃうね。

酒居:どうしても視界が、けっこう閉塞的になりがちになってしまうんです。

松林:オーダーはね、実際にやりとりがあったら、そこのためにって向いて言いますもんね。

酒居:そうですね。それはそうなんですよね。

短期的なリード獲得は追わないほうがいい

日比谷:やっぱり、それってなんでそうなるかなと思ったら、たぶん100人ぐらいまでのイベントとかセミナーだと、スポンサーのためにぐいっと内容をねじったりしても、広告でがっと集客できちゃうとか、人気のある人を呼べば埋まるみたいな。最悪、電話で呼べば100人ぐらい埋まるでしょ、みたいな感覚とかもなんとなくあるんですけど。

1,000人ぐらいになってくると、予算をちゃんとしっかり集めるのもしかり、集客もちゃんとするなり、本来の目的のムーブメントを起こすみたいなところまで考えると、その辺はちょっとでもチートっていうかズルをしちゃうと、あとでボロが出る。つじつまが合わないというところが、どうしても出てきちゃうかもしれませんね。

酒居:そうですね。僕はそういう意味でいうと、このテーマで逆説的ですけれども、カンファレンスを単純にリード獲得のためだけにやるというのは、まったくおすすめしないんですよね。

日比谷:さっきも言われてましたね。

酒居:はい。ぜんぜん労働対効果が合わないですね(笑)。

日比谷:それだったら広告をぶん回したほうがいいですね。

酒居:そうですね。他に集客できる、リードジェネレーションできる方法っていくらでもあるし、もっとCPAも安く取れたり効率のいい方法ってあると思うんですよ。

日比谷:「じゃあ、来月もまた1,000人よろしく」とかって言われても「おい!」って面とは言えないけれども。

(一同笑)

日比谷:広告だったら、同じ予算を投下してFacebookの中で広告を回しても、同じコスパで取れますもんね。

酒居:そうですね。という中で、あえてやるというには、短期的なリードジェン以上のものがあると思います。

日比谷:なるほどね。わかりました。今19時50分で、あと10~15分ぐらいしたら、Sli.doもしくはみなさんの挙手による質問を受けていく感じにしようと思います。

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