2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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渋谷修太氏(以下、渋谷):さっそく本題ということで、今日のタイトルは「ヒットアプリの裏にある『メモ』」なんですけど、SHOWROOMの裏にあるメモは、どう使われているのでしょうか?
前田裕二氏(以下、前田):キャッチーなので「メモ」と書いてあると思うんですけど、本質的には思考のフレームワークが重要です。SHOWROOMを作る時に、2つの大きなバックグラウンドというか、きっかけがあったんですよ。
1つは、僕は2013年ごろにSHOWROOMを作ろうと思ったんですけど、もともとアメリカで機関投資家向けの営業という株の仕事をしていて、日本に帰ってきたのは2013年5月です。そこからアプリを作ろうと思って、短尺動画SNSのアプリを作りました。それを1ヶ月で作って1ヶ月で潰して。
渋谷:決断が早いですね。
前田:そう。「これはだめだ、動画はまだ早い!」と思って生配信を作ったんですよ。動画と生配信は違うんですけど、2013年7月から1ヶ月ほど中国に行って調査をしていたんです。
その時のメモがいまだに残っていますけど、SHOWROOMを作る時の基盤になり、今も裏側で事業を支えているものです。当時YY(ワイワイ)というサービスとか、対話配信サービスがたくさんあったんですけど、YYのオフィスに行って、なぜサービスが流行っているかという説明を受けました。それをメモしてあります。
渋谷:すごい!
前田:さすがに「来ちゃった」と言って中国までわざわざ来たら、無碍に扱えないだろうと。
渋谷:確かに。
前田:実際、会ったらいろいろ教えてくれました。どうやってお金をかけずにアプリをグロースしてきたかとか。
渋谷:すごいですね。
前田:そこで、人には「しゃべりたい欲求」があるんだなと思いました。
箕輪厚介氏(以下、箕輪):不思議ですよね。自分もそうだけど、自分の本の売り方とか、前田さんだったらアプリのヒットのさせ方とか、それをしゃべりたいという思いは、人間の欲望のどこかにありますよね。自分がやってきたことを教えたり言ったりしたいという。
渋谷:「人の役に立ちたい」というようなことでしょうか。
箕輪:そうなんですかね。
前田:人の役に立ちたいこともあるし、「自分でちゃんと言語化したい」とか、人によっては「やってきたことを認めてもらいたい」とか。
箕輪:それもあるよね。
前田:「この世界でちゃんと自分を自覚している」とか、いろんな思いがありますよね。今の話を一言でまとめると、(人間には)承認要求があるということです。
箕輪:確かに。聞いて答えないことって、あんまりないもんね。
前田:ないですね。「競合と承認の天秤」とよく言っているんですけど、この2つはすごく違う。
箕輪:確かに。
前田:競合だと思っても、「とはいえ承認欲求を満たしたい」と思うことがビジネス界では常にせめぎ合っているんだと思います。だから、箕輪さんみたいにブルーオーシャンで「競争とか関係ないや」みたいなことを思っていたら、「競争」という天秤がぱっと外れますよね。
すると、なんらかの自分の心を満たしたい、という欲求だけがむき出しになって残るので、どんどん人に伝え始める行動を起こすんですよね。
渋谷:そうか。僕らも基本定量データで出しているんですけど、「教えてくれないんじゃないか」が前提なんです。それもあるかもしれませんけれど。ガンガン聞いていけばいいんですね。
前田:そっちのほうが価値はあると思いますよ。
渋谷:そういうことですね。
前田:本当にそう思いました。当時、ネットの記事がけっこう上がっていたんですよ。最初に分析しようと思ったんですけど、まず(YYは)海外のNASDAQに上場していたんですよ。
NASDAQに上場しているので、英語圏における投資家のマーケットの中で、YYなどのライブ配信のビジネスモデルを研究している記事やレポートがたくさん出ていたんです。だけれども、なんだかグロースの芯を食っていない感じがすごくして。
今、僕らのことを遠くから客観的に見て書かれた記事を見ても「そこじゃないんだけどなあ」と思うほど、実は実態とは乖離があるものだと思います。毎日真剣勝負で戦っている本人が一番本質を理解しているので、そういう当事者たちと連携をしながら、データと解釈という、定量と定性を見ないといけない。定性も、ちゃんと本人が言っていることのほうが(外部の記事よりも)本質に近いと思います。
渋谷:うちもApp Ape Laboという自社メディアをやっているので、確かにおっしゃるとおり、聞きに行くと教えてくれるんですよね。それは本当にあるなと思います。
前田:それはすごくいいと思います。
渋谷:「ヒットアプリの裏にある『メモ』」という意味では、「聞きに行く」というのはすごく大事だよ、という話ですね。
前田:はい。「メモというよりは、実はその裏側にある思考のフローこそ最重要です」と言ったのは、基本的に今具体的に起きているヒットの抽象化が必要だからです。
つまり、「なぜそういうことが起きているんだろう」「裏側にはどんな洞察があるんだろう」「人の心がどういうふうに動いているのか」を分析して、その抽象レベルになったものを、自分の具体的なアプリの企画に落とし込むという転用作業をする。
具体を抽象化して転用する、具体・抽象・転用という思考のフォーマットこそが、ヒットアプリを作る一番の秘訣だと思っています。
渋谷:出ました。ヒットアプリの秘訣!(笑)。
前田:そうなんです。だからTikTokがどうして上手くいったのかとか、メルカリがどうしてここまで市民権を得たのかということを(分析する)。
渋谷:ちょうど話を繋げていただいて。例えばPayPayとかですね。
前田:そう。忙しいとつい、「へぇ」と横目で見過ごしちゃうことがあるじゃないですか。「へえ、PayPay100億円か」とか。
渋谷:いろんな人がいますよね。100億円もらえるのにやらない人とか、すぐにやる人とか。
前田:これをいかに、見過ごさないでいられるか。アプリでヒットしたものがあるなら、その成功を絶対に抽象化すべきだし、アプリ以外でも、何らか人を楽しませているヒットコンテンツを見かけたら、積極的に抽象化して、常に自分で転用できる状態にしておく意識がすごく大事だと思います。
例えば今、この時点で『ボヘミアン・ラプソディ』を観ていなかったら、それはきっと、反省しなきゃいけない。だって、あそこまでぐうの音も出ない結果を出して、人を楽しませているエンターテインメントがあるんです。これほど学ぶべき対象ってないですよね。とにかく、ヒットを生む時の参考になる。
箕輪:僕は観てないよ(笑)。
前田:それは反省してください(笑)。
箕輪:まったく同じストーリーなんですけど、僕は本当に観たいと思わない限りあえて観ないようにしていて、逆に「なんで俺、こんなに売れているのに観たくないんだっけ?」ということを考える。
前田:それも大事ですね。逆の希少性。
箕輪:やり方は両方あるよね。
前田:両方ある。それでもいいと思うんですよ。“こんなにヒットしても関心を持たない自分”という層も当然ある。世界を『ボヘミアン・ラプソディ』を観た人と観ていない人で2つに分けるなら、観ていない人のほうが多いわけです。「そっちの人のインサイトは何なんだろう」といことを深掘りして考えることも大事ですね。
箕輪:SHOWROOMはまた若干ずれると思うんですけど、アプリは基本的にマスにヒットさせるものじゃないですか。本は10万部とか20万部とか、ベストセラーと言われてもニッチなんですよ。ミリオンセラーでも100万部ですから異常ですよね。
だから、僕はどちらかと言ったら本当に個人の心の動きを観察するような感じです。でも前田さんは、世の中のすべての情報をガーっと集めて抽象化して、自分のカードとしていっぱい持っておくのが大事、みたいなところがありますよね。
渋谷:僕、昔からこれから流行りそうなインディーズバンドとかを探すのが好きで、「売れる前にたくさん探しておきたい」という意欲があるんですよ(笑)。
前田:それ、すごくわかります。そっちのほうですよね。僕もそれで言うと、基本的にいきなりマスのために作るということはなくて、最初は1人のために作るというイメージでやっています。
そして、結果的にその「1人」がたくさんいて、マスになっていくというステップを踏んでいくので、「この1人のために作ろう」と思った時に、想像できる自分の能力というかプロトコルをたくさん持っておくというイメージですね。
「17歳、女子高校生、アニメが好き、男性アイドルもちょっと好き」みたいな子が触るものはなんだろう? と考える時、実際に「前田さん、明日からその17歳の女子高生になってください」と言われて僕がその子になっても、僕は普通に学校に行って、普通に友達と遊んで会話ができるレベルになりたいんですよ。それをあらゆるジャンルでやっておきたいという感じです。
それをやっておくと、誰か1人をイメージして何かを作ってそれを売っていこうとする時に、その1人のペルソナがすごく具体的にイメージできるようになります。そのためにたくさん情報を取っている感じですね。
渋谷:なるほど。今日はアプリの話なので、少しだけ2018年の振り返りをさせていただきます。「どうしてこれはヒットしたのか」という話を、後で前田さんと箕輪さんにいろいろ聞きたいと思います。
去年僕らが観測する中で伸びたカテゴリが大きく3つありました。
1つは店舗系アプリ。次のスライドに出ていた、セブンイレブンさんみたいなやつです。これもキャンペーン的な感じなんですけど、「揚げ物を300円以上購入すると飲み物が無料になるクーポン」プラス、テレビCMを連動させてすごく伸びた。
あとは決済のPayPayをはじめとして、去年は決済系のアプリがいっぱい出てきた年でした。あと、やっぱり動画は伸びていますね。先ほど「動画とライブ配信は違う」という話もありましたけど、いわゆるTikTokをはじめとした動画系アプリ。
前田さん的には、今こうして自分のSHOWROOMというアプリがある時に、競合というか同じジャンルのものというのは、どういうふうに見たりウォッチしていたりしていらっしゃいますか?
前田:そういう意味では、この2つは必ずしも競合ではないと思います。むしろSHOWROOMがもっと大きく国内で爆発するのに重要なことは、もう1点しかなくて。つまり、発信側に回ることのハードルを下げること。これに尽きます。
SHOWROOMのKPIの1つに、当然アクティブ配信者数があります。中国のサービスに比べると、日本はまだまだ配信者側・発信者側に回る人数が少ないんですよ。
渋谷:発信したことがない人がすごく多いですよね。
前田:そう。例えばTikTokみたいに「こんな感じで3Dキャラになれば、自分のアイデンティティを隠せるから発信できますよ」とか、ZEPETO(ゼペット)みたいにものすごくデフォルメされるというか、「本来の自分が見えなくなるぐらい加工されるようなものになっていけば、発信は怖くないんだよ」とか。
要は「発信って怖くないんだよ」という文化を作ってもらうと、僕らとしてはすごくハードルが下がって、発信の素地ができていくんです。アマチュアが発信者になることがすごく大事なので、(そうなると)やりやすいなと思っています。
渋谷:競合というよりは、参考にして一緒に盛り上げるみたいな。
前田:そうですね。ライブ配信のサービスにおいて、SHOWROOMをベンチマークにしていただいているサービスもけっこうあるんですよ。それでコンテンツの取り合いとか、協業先の取り合いとかになるけど、僕らは基本的にそこであまり勝負する気はなくて、どちらかというと、どんどんこのマーケットに入ってきてほしいんです。動画やライブ配信もそうだし、Abemaも本当に心から伸びて欲しいと思っています。
前田:スマホ上で動画を当たり前のように見るという体験をするには、2つの大きな課題があるんですよ。1つはバッテリーをものすごく食うこと、もう1つはデータ容量をものすごく食うこと。
渋谷:食いますね(笑)。
前田:Abemaが流行っていくという世界があるならば、この2つのハードルを下げないといけないですよね。それを僕らがやるにはお金がかかりすぎるので、それはメガプレイヤーに(やってもらいたい)。
渋谷:確かに。あとは通信速度とかね。
前田:そう。Abemaを流行らせようと思ったら、そっちのインフラを整えていかなければいけないという発想になるので、そういった通信インフラと組んでなにかをやらないといけない。Abemaに比べると僕らはそれをやる資本体力がないので、もう少しユーザーニーズの狭いニッチなところで満たしていくという地熱を作っておく。
それでマクロ環境やインフラ環境が整ったら、僕らもその波に乗れるので……というような発想ですね。Abemaで言うと、スマホで動画を見る体験のコストがもっと低くなることが推し進んでいきます。
そして、ほかの動画でこういうプレイヤーがいると、「発信者になるって意外にハードルが低いんだな」と思ってくれて敷居が下がっていく。だから本当に本心で、どんどん入って来てほしいなと思っていますね。
渋谷:素晴らしい話ですね。僕もAbema TVで去年、大賞でApp Ape Awardにさせていただいて。個人的には『麻雀チャンネル』をよく見ているのでがんばってほしい(笑)。
前田:ですね。Abemaには絶対に成功して欲しいと思っています。
渋谷:そんな感じですね。
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