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オリラジ中田が説く、人生を変える伝え方の極意 プレゼンで「下げてはいけないもの」とは何か?

2019年3月10日、「中田敦彦氏講演会『僕たちはどう伝えるか』 in Kichijo-ji〜人生を成功させるプレゼンの力〜」が開催されました。芸人になるために親を説得したことを原点として、「人生をプレゼンの力で切り開いてきた」と語るオリエンタルラジオ中田敦彦氏。当講演では、自分の気持ちを伝え、相手に協力や賛同してもらうプレゼンの極意を明かします。今回は、ビジネスシーンだけでなく、人生においてプレゼン力が必要な理由を語りました。

人生はプレゼンによって変えられる

中田敦彦氏(以下、中田):みなさん、よろしくお願いします。中田敦彦です。

(会場拍手)

ありがとうございます。素敵な会場でやらせていただけてうれしいなぁ。なにせ僕は、中学3年生から高校3年生までの学生時代という、一番多感な時期に吉祥寺に住んでいたんですよ。だから、僕という人間をほぼ作り上げた街といってもおかしくない。吉祥寺のせいでこうなったわけですよ(笑)。

(会場笑)

そこに自分の名前を連呼する歌とともに戻ってくるとは思わなかったなぁ。

(会場笑)

自分の名前を連呼する歌を作っているのは、あとはアントニオ猪木さんですね。『INOKI BOM-BA-YE(猪木ボンバイエ)』。ああいうジャンルですよね。あとは、『ジンギスカン』も人の名前だということを知っていましたか? 「ジン、ジン、ジンギスカン」というやつね。あれは「すごい男だジンギスカン」という意味で、ほぼ『PERFECT HUMAN』みたいな歌なので(笑)、ぜひ聞きなおしていただきたいですね。

(会場笑)

今日は「僕たちはどう伝えるか」講演会ということで、上手くおしゃべりをしたり、伝えるためにはどうすればいいんですか、という基本的なこと。そして、上手くおしゃべりをすることで、どのように自分たちの生活を変えていくか。そういったいろんなHowとその後の方法について。これを両方ともしゃべっていきたいと思っております。

60分ぐらいしゃべった後で、質疑応答などもございます。講演会もいろいろありますが、なにしろ私ですから、気さくに笑いながら、楽しみながら、そしてときには心の中で突っ込みながら「こいつ、しょうがねえやつだな」と思いながら聴いていただければありがたいので、よろしくお願いいたします。

まずは『僕たちはどう伝えるか〜人生を成功させるプレゼンの力』についてなんですが、この本は「どう伝えるか」というプレゼンテーションの技術だけを言うのではなく、「なんのためにプレゼンをするのか」ということを書いてあるところが、自分の中ではいいところだと思っています。

僕たちはどう伝えるか (単行本)

人間が他の生物より優れているのは、伝達能力と連携する力

なぜかと言うと、How to本というのは「こうしたほうがいい、こうしゃべれ」「言葉遣いはこうだ」など、かなりいろいろなことが書いてあるのですが、「ではどうしてしゃべらなければいけなかったんだっけ?」という部分が意外と書かれていないことが多いと思いまして。僕は、「まず人類とは」から考えたんですね。僕がこの中で人類とまで言い出すと、本当にヤバいやつだと思われそうなのですが。

(会場笑)

人類とは、まず非常に弱い生き物だと思ったんですよね。言ってみれば、相手がゴリラでも猿でもほぼ勝てない。サメなども、水中で遭ったら一発でアウトですよね。

それぐらい弱い生き物なのに、われわれは生態系で自分より上の強い動物を意識せずに暮らせていると思ったんです。それはどうしてなのかというと、地球上に天敵というものは、少なくとも日本においてはもうほとんどいない。

つまり人間は、この地球を制圧した生物なのだと。もうゲームクリアの世界にわれわれは生まれてきてしまい、あとはもう人間同士で争っているフェーズですよね。そういうことになっている。

ところが、「人間の優れたところはどこなんだろう」と思ったときに、腕力でもなければ体の大きさでもなく、スピードでもない。よく頭がいいなんて言われますが、頭の良さなんて本当に限定的なものです。檻の中でゴリラと二人っきりにされたらもう、頭の良さもなにもなく、普通に殴り殺されるだけですよね。頭がいいといっても、限度がある。

では、人間の何が優れているのかを突き詰めて考えると、「伝達能力と連携する力」だと僕は思ったんです。つまり、われわれは、たった1人ではマンモスを倒すことはできないわけですよね。ところが連携して「俺がおびき寄せる」、「俺は石で尖った槍を作る」、「俺は網を草を結って作る」、「落とし穴を掘って隠す」と。

これが10人15人のチームになると、あら不思議。マンモスを倒せてしまうというのがすごいわけですよね。こうしたことを他の動物もやっていれば、人間に勝つこともできていたわけなんですが、人間は非常に多様性を持っている。自分とあなたは違うんだというところを、たくさん作ったわけですよね。

人間は、連携することで課題を解決する「チーム生命体」

中田:A型、O型、AB型、B型。4つも血液の種類が作られている。なぜかといえば、例えばA型に非常に効いてしまうウイルスが現れたときに、A型だけであれば全滅している。だけど、ほかに3つの血液のタイプを持っていることによって、リスクヘッジになっているという話があるんですよね。

それと同じように、人間は無茶苦茶いろんな個性があるから、なにかリスクが起きたときに、連携を上手くとってチームを上手に組めば、ありとあらゆる課題が解決できるようにデザインされた、いわば「チーム生命体」なんですよね。

ここに意識が行っているかどうかであり、人間がチーム生命体だということを証明するものの一つは、選挙です。何千人、何万人と一緒に連携できる力を持っていれば、都知事にも総理大臣にもなれてしまう。選挙というのはそういうことですよね。

つまり、連携する力がある者こそが、人間の中でより大きな力を持って、それを発揮できる。それがこの人間という生命のデザインなのです。それを前提として、なにをもってして伝えるかというと、しゃべって仲間を増やすためなんですよね。仲間を増やさなければ、どれほどのトッププレイヤーであっても負けてしまう。

僕は最近、再び将棋を始めたんですが、飛車だけで敵陣に飛び込んでも死んじゃうんですよね。でかい駒の飛車。無敵のようなやつをもってしても、ぽわーんと敵陣に飛び込んだら、必ず殴り殺されてしまいます。

ですから、歩や桂馬といった、いろんなやつらを連携させるということを、ひたすら考えてやっているわけでしょう。将棋というのはとんでもないゲームですね。

プレゼンが人生に必要なスキルである理由

中田:連携というのは、本当に大事なことなんですよね。しゃべって伝える。それで仲間になったら一緒に行こうじゃないか。ドラクエですよね。勇者がいても、ルイーダの酒場で口下手だったらもうおしまいです。ずっとモジモジして、だんだん画面が暗転してゲームオーバーですね(笑)。

(会場笑)

これがドラクエの最後の最後かもしれない。ドラクエではまず、ルイーダの酒場に行って「戦士よ、魔法使いよ、賢者よ、僧侶よ。俺と一緒に魔王を倒さないか」というところから始まるわけですよ。

そこで口下手であったり、交渉が上手く行かなかったりしたら、ずっと村の周りで、スライムと死にそうな格闘をするばかりです。村に帰ってきて、もう一生がじわじわと終わっていくことになってしまいます。「冒険をするためには仲間を集めなければいけないんだ」という前提のもとで。

みなさん、これはたかがビジネスのスキルだけではなくて、もう人生のスキルなんだということから、しゃべる方法を聴いていただきたいと思います。

では、技術のほうにいきたいと思います。テクニックとしてしゃべるときに、やっちゃいけない3つのことと、やったほうがいい3つのこと。これをとんとんとんとスピーディーにご説明したいと思います。

やっちゃいけない3つは「読まない・下げない・さぼらない」。これはなにを読まないのかというと、カンペを読んじゃいけない。原稿を読んではいけないということなんですね。

これはなんとなくわかりますよね。こう言うと「ああ確かにそうだな」とみんなが思うのですが、ほとんどの人が原稿を読みます。僕、自分のオンラインサロンでプレゼンの授業のようなものを主催したり、大学でも授業をしたりするのですが、「プレゼンをしてみてください」というと、みんなここの台に必ず紙を置くんですよ。箇条書きでもそうだし、パワポにもびっしりと文字が書き込んである。あれもほぼカンペなわけですよね。

カンペを読み上げるとなぜ伝わらなくなるのか

カンペにするとなぜ伝わらないのかということなんですが、実は人間はプレゼンテーションを聴いているんじゃないんですね。プレゼンテーションをしている人を見ているんだというところがポイントです。

人間には五感があるんです。センサーがある。これはラジオではないわけですよ。カンペを見ながらプレゼンテーションをしている人を見た瞬間にどう思うのかというと、「あっ、こいつは覚えてきていないんだな」と。もしくは「自信がないんだな」。そのメッセージが強烈に伝わってしまうわけなんですよ。なにを伝えたいのかの前に、自信がないことのほうが伝わってしまう。これが一番の問題点なんですね。

さらに物理的な問題点を言えば、目線が下を見ることによって、言葉が下に行ってしまうんですね。言葉は「聞こえればいいや」という、なにか目に見えないもののようですが、完全に“物”なんですよ。空気を揺らして波のように、物理的に鼓膜に届かせるという“物”なんです。“物”をボールだと思ってください。このボールが下に向かって投げられた場合には、向こうのミットには届きませんよね。

ですから、必ず意識しておかなければいけないのは、そのボールを一番後ろの聞き手に投げるということなんですよ。これをみなさん、(手前を指して)このへんに投げちゃうから届かないんですよね。

だいたいキャッチボールでも、ボールが下のほうに行っちゃう人はリリースポイントが低い。ちゃんとあそこに届くリリースポイントは、一番遠くを見ることですから。だから、まずはカンペを読まない。

次に「下げない」。これは何を下げないかというと、一発目でわかる人はなかなかいません。僕の話が「まだピンとこない、これは初見だ」という人の中で、なにを下げないのかがわかる人は、手を挙げてください。

なにを下げちゃいけないんだろう。原稿は読んじゃいけないよね。何を下げちゃいけないんですか? わかる人はぜひ。 

プレゼンで「下げてはいけないもの」とは何か?

観客1:テンションを下げない。

中田:あっ、テンションを下げない。いいですね。確かにテンションを途中で下げられたら最悪ですよね。LINEかなにかを確認して、テンションが下がるようなことがなにかあったんでしょうね。

(会場笑)

中田:「誰にしようかな。適当にしゃべります」。こういうのも最悪ですよね。

(会場笑)

中田:テンションじゃないんですよね。なんだと思います? テンションじゃない。これはなかなか。おっ、わかる?

観客2:声の大きさ。

中田:声の大きさを下げない。確かにそうですね。声の大きさ。ボリュームを下げないということ。急にボリュームが下がる人って怖いよね。

(会場笑)

中田:絶対に体調異常があるもんね。「(急に小声になって)あとはですね……」

(会場笑)

中田:これは怖いよね。でもね、そういうことじゃないんですよ。下げがちなものがあるんですね。これがわかる人はいるでしょうか。なかなかいないかな。どうぞ。

観客3:ハードル。

中田:「ハードルを下げない」。正解、拍手!

(会場拍手)

覚悟を表明することが人の心をつかむ

中田:ありがとうございます。「ハードルを下げない」。これ、実はハードルを下げる人が多いからなんです。まず、ど頭でプレゼンの授業をやりますよね。自信がないんでしょうね。

「あのう、今回は資料にいくつかわかりにくい点があるかもしれません。ちなみに後半の資料に関しては準備不足が祟って、まだ用意ができていないところが何ヶ所かあります。メンバーの一人が今日は遅刻していますので、途中からはすったもんだなどもあるかとは思いますが、どうぞお手柔らかにお願いします。それでは、2時間の講演スタートです」

……地獄ですよね。

(会場笑)

最悪の2時間ですよね。時間という一番貴重な財産を「そんなことで奪うな」という怒りをみなさんも覚えると思うんですよ。つまり、みなさんに話を聴いていただくことは時間をいただくことですから、必ず価値あるものを届けることを宣言しなければいけないんです。

ですから、「つまらないものですが」というような表現を、謙遜と捉える国民性ではあっても……それだって、本当に謙遜ならいいんですよ。「つまらないものですが」と言いつつ「とらやの紙袋から出しているじゃないですか」となれば、これは謙遜なわけですよ。だけど、だいたいの謙遜は「謙遜に見せかけた言い訳」なんですよね。これをされると腹が立つ。

言い訳をしないというのは「いいプレゼンをします」と、ちゃんと宣言することなんですよ。「いいプレゼンをします」と、どうして宣言するのか。結果としては、もしかするとなにかトラブルがあって、いいプレゼンにはならないかもしれないし、受け手側のニーズとは違っていて、いいプレゼンだと思ってはもらえないかもしれません。

“絶対”はないのに、あえて宣言するのはなぜなのか。これは覚悟を表明することなんです。覚悟を見せなければいけない。「お時間をいただきます。だから私も覚悟をしてきました」。これを宣言しないと失礼に当たるし、心をつかむことはできないんですね。

極端な例で言いますと、手術ですよ。自分の身内や家族が交通事故に遭って、怪我をして担架でガーッと運ばれているところを想像してほしいんですね。ガーッと運ばれているときに、みなさん「先生、先生!」と言いますよね。「先生、うちの子は大丈夫ですか? うちの子は大丈夫ですか?」といったときに先生が「うーん、昨日はあまり寝ていないのでなんとも。」

(会場笑)

中田:地獄の始まりですよ。「あの医師をすぐに替えろ」「首を切れ」と。さらに「弁護士を呼べ。あいつを必ず訴訟する。」そうなるわけですよ。ですから「全力を尽くします。必ず救って見せますから」。われわれは、こう言ってくれるお医者さんを求めているわけですよね。

結果は天命を待つしかないわけですが、そういう医者をわれわれはリスペクトするわけですから、そうしたプレゼンテーションを始めなければいけない。これが「下げない」ということですよね。

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